雪の華・赤い実
俺「まあ、そういう事ですので申し訳ありませんが種を回収いたしますわ」
エジソン「うむ、仕方あるまい」
翌日、エジソンを迎えに来て、簡単に種の中に毒草が混ざってたと教えた。
コップで既に3つほど育てていた。
荒いスポンジに種を置いて水につけておいたら根がでたらしい、伸びて双葉が出ていた。
葉の色がなんとなく毒消し草っぽいからそのままにしておこうかな?
マンドレイクもガラスの水槽で水栽培したら、水を抜くだけで収穫出来るんじゃね?
エジソンが賢くて感動した。将来はマンドレイク栽培を安心安全に流通出来るかもしれない。
用途は活力剤とか媚薬になるから高額取引だろうな。
大成するわ!
屋敷の俺の部屋で種の仕分けをする。
エジソンからしたらほとんど違いが分からないらしい。
せっせと空の瓶に毒消し草だけを入れていって、エジソンに改めて渡す。
ちなみにエジソンが傾けると少しずつ増えていく。
エジソンも清い人のようだ。
エジソン「君が傾けるとまるで魔法の瓶のようだ、不思議だ、どんどん種が湧いてくる。
どういう仕組みだ?割ったらもう出なくなるのだろうか?」
俺「フフ割ってみたいですか?
職業にも関係してるようですわ、わたくしとロバートさんは善よりですが、闇よりだとマンドレイクだけが出るらしいのです
ヤリチんん・・・えっと、非童貞の方が瓶に触れても種は増えないそうですわ」
エジソン「それはどこで判定してるのだ?童貞とそうでないので何が違うのだ?」
本当にそうだよな!俺は別に気にしないけどな!
俺「職業上の都合ではないでしょうか?
わたくしも・・・その、よくわかりませんわ」
エジソン「ああ!すまない!
子どもの君に話す話題ではなかった、配慮に欠けていた、すまない」
顔を赤くしてアタフタする、逆に気を使わせてしまったな。
俺「私から言い出した事ですのでお気になさらず。
以前トーマスさんはタブーは破らないとおっしゃっていましたね?
絶対に破ってはいけないタブーも存在しますけど、人が作ったルールや規則なんてものは時代や人が変わればどうとでも変わるのです。
トーマスさんの好きなようにすればよろしいのですわ、私は応援します!
そのうち時代の方が追いつきますから」
天才のおこす時代の波に乗りたい!
俺「サルマンにあげてしまった分も回収を頼んでますので」
エジソン「それは、本当にすまない。まさか宝箱から出た綺麗な瓶の中身に毒草が混ざっているとは思わなかった。
次からは安易に人に渡さないようにしなければ、大変な事になってしまった!サルマンの無事が心配だ」
俺が安易にエジソンにあげてしまったからね!ごめんなさーい!
俺「毒草と言いましたけど、正確には薬にもなりますのマンドレイクと言って」
俺は、ファンタジーあるあるのマンドレイクの説明をする。
そして、エジソンに説明したことで、マンドレイクはこの世界にも眉唾モノとして認知されていた。
人参や大根みたいな偽物がほとんどだけどな。昔の挑戦者が持ち帰った物かもしれない
俺「どこか開けた土地に植えてみますか?抜くときだけ気をつければ高額取引の金のなる木ですよ?
商人の友達が買付から帰ってきたら扱ってもらいましょうか?」
エジソン「偽物扱いされるだけであろう?普通に売っても薬に出来るのか?効果の程も分からぬではないか」
俺「そうですね、調合レシピなんてわかりませんものね」
これが仮に漫画やゲームなら、調合レシピがどっかに売ってるか隠されてて、店でマンドレイクが簡単に手に入るんだろうな。
ギャルゲーだと攻略対象の女の子達の好感度上げに使われたりするんだろうか?
エジソン「でも育ててみたい気持ちはあるな、色々と試してみたい」
お?エジソンもワクワクしてるな?
毒消し草は普通に栽培出来るとしても、マンドレイクだよな?どっかにないかなぁ
俺「どこで育てますか?
研究室の屋上とかだと・・・抜くとき響きそうですわね、道行く人が倒れて事件ですわ」
俺は先程のエジソンのコップ栽培から大企業が工場でやるような大規模な水栽培をエジソンに話すと
エジソン「ガラスの水槽でなくとも木の枠組でよかろう?面白そうだ、君の発想は豪商のようだな」
俺「資金はありますからお友達の商会に掛け合ってみますか?」
エジソン「待て待て気が早い、まずいくつかマンドレイクのサンプルを育ててみようではないか!現物がないと話が進まぬであろう?もう一つの瓶は?」
俺「瓶は私が持ってますわ。
ただ木箱2つ分ほど中身を出して来ましたけど。
ロバートさんは薬に出来ますのよ、もしかしたらレシピもわかるかもしれませんね」
エジソン「なんと!ロバート殿は商会のチョコ職人ではなかったか?」
あれ?俺の説明がおかしいのか?チョコ職人?
俺「ロバートさんは賢者を目指してますのよ?着々と己の道を進んでますわね」
エジソン「はっ?・・・賢者だと?
なんと言うことだ!世界は広いな、賢者を目指す偉人がいたとは!
君がよくチョコを貰うから食品商会の経営者になるのかと思っていたぞ!」
俺「二足の草鞋ですわ、何事にでもお金がいりますでしょ?
チョコレート工場も建設中ですのよ?楽しみですわね、まあ趣味と実益と言った所でしょうか」
マンドレイクの媚薬や活力剤が悪用されないように毒消し草で対抗薬も作れたら一緒に販売しよう。
間違って誤飲や性犯罪に使われると嫌だなぁ、毒消し草の方が種の数が多いから安価に作れるかな?
今日はもう一つ、やりたいことがあった。
先日、トモエちゃんに開拓区の事を聞いたら養殖場で魚の餌が付きそうだからオースティン先生の心が俺かけてるって。
言いだしっぺで何もしてないから申し訳ないよ。
温泉街は雪が降らないから無料の露天風呂入ってるかな?
まあ、置いといて今日やりたいことは去年と同様に雪の華をフラグムの実にします!
そして、魚の餌にします!アンナが聞いたら怒りそうだ。
エジソンとアンナと猫になったマリアンヌを連れて庭に出て咲き始めた雪の華をながめる。
マリアンヌのためにアンナが雪の上に板を乗せてラグを敷いて毛布を用意していた、やっぱり本物の女の子と女子力が違う。
俺にはない気遣いだ。ロバートさんにはありそうだ!
アンナはアンナで気が付くからな。
アンナ「今年もやりますか?
私は雪を見ると思い出すんです!
やっぱりもぎたては冷たくてフレッシュでジュルルヨダレが!
さあエジソンさんもやりましょう!カゴは2つあります!
私がまた上の方を取ります!」
エジソンが見守る中、木に暖かくなる魔法陣を施す。
去年は気が付かなかったけど、なんとなく魔力が流れているのが分かった。
雪の華がチラチラパラパラと落ちてきてドサァと散るとみるみる赤い実がなりだした。
相変わらず不思議な光景だ。
エジソン「これが、教授達が言ってた魔法のことか!この光景を見る事ができるなんてな・・・パク、あ、甘い!私の知ってる実はもっと酸っぱいのだ」
アンナが口にパクパク入れながら背中のカゴに入れていく。
俺「アンナも去年より大きくなったから、細い枝には乗っちゃだめよ?」
アンナ「わかってますよ!大きな枝に足を置いてますから!」
どこから出てきたのか、ピッピとヒンデンブルグも庭にいて遊んでた。
ピッピは鳥のように飛んで来て赤い実をついばんでいた。
ヒンデンブルグはマリアンヌと俺の影には近づかないようにしていて、アンナやエジソンに媚びを売って赤い実を貰っていた。
時々、ピッピがポイッと落としたりしてヒンデンブルグは犬のように駆け回っていた。
こいつら、俺の影にデュランかいるのわかるんだな、なんとなく気にしてる。
俺にはますます妖精が近づいて来なくなったんじゃないか?
アンナとエジソン2人でやるから収穫が早く終わった。ならば他の木もやる!
木箱3つと背負いカゴ2つ分収穫できた。
アンナ「こんなにいっぱいどうするんですか?」
俺「開拓区に人が溢れてるらしいのよ、あそこだけ温泉の地熱で雪が積もらないから人が集まっててね。
船着き場にはアンナが拾ってきた難民の子どももいるでしょ?
食料不足かもしれないから沢山取れたし、この木箱3つなら送ってもいいかしら?」
アンナ「そう言うことなら、仕方ないですね!
そうですか、あそこは人が溢れてるんですね?
人が増えると問題もふえますよね、あ、でもコンスタンツェ様がいるなら大丈夫そうですね!
街でも女傑とうたわれてましたから!」
おばあちゃん元気にしてるかなぁ
いつも通りエジソンを自宅まで送って、ロバートさんの夕食と赤い実をたくさん置いて帰った。
赤い実をエジソンが嬉しそうに見ていた。これも実験に使うのかな?
夕食に赤い実の果実水と赤い実を使ったデザートが出てきて
コーネリアス「今年はもうフラグムの実がついたのか?早いな。おお、甘いな」
俺「甘くて美味しゅうございますわね」
コーネリアス「お前は昼間、外で遊んでいたな?ヒンデンブルグが外に出たがるから出したのだ!
フン、勉強してるのかと思いきや、男と遊んでいたとはな!」
俺「まあ、コーネリアスお兄様は、私をお勉強に誘って下さるのね?」
これでいつも黙るんだけど
コーネリアス「ふん、私も少しは勉強が進んでいるのだ!」
俺「では、夜にでも?お兄様のお誘いに乗りましょうホホホ」
コーネリアス「あ、別に誘ってないのだがその」
夕食後にスコットが来て
「今日は3人で寝るの?
マリー勉強するの?あんまり兄上を怒らないであげてね?だいぶ勉強が進んだんだ。褒めて差し上げると喜ぶんじゃないかな?
最近エジソンと仲良くしてるからヤキモチ焼いてるのかもしれないよ?」
と、俺の頭を撫でながら話す。
スコットはコーネリアスの部屋で湯浴みして、俺は自室で湯浴みする。
アンナに洗ってもらったら、自分でコーネリアスの部屋に行くからアンナは戻っていいよと帰した。
「なあ、デュラン
ヒンデンブルグもダンジョンから出たんだけど、君達やっぱり相性悪いの?」
デュランが影から頭だけ出して話す、影の中で返事してくれたらいいのにな。
『あの白犬ですかな?
ダンジョンからドロップしたのですか?
我が君の魔力で出来ておりますね、起用なことです
あれは我が君の守護聖獣ではございませんか?』
「違うよ、あの細剣を振ったら出たんだよ?
あの剣がそもそも何なの?」
『大昔の錬金術を使えた賢者が作った宝剣でございます。
もしかしたら、守護聖獣が出たのは副産物ではないでしょうか?』
「俺の守護聖獣なのにコーネリアスにとられたんだけど?」
『我が君が心の奥底では兄上殿の事を大切に想っておいでなのですよ』
「あー、なるほど?」そうなのかな?
『その言い方だと、僕のこと心の奥底では嫌ってる事になるから違うんじゃない?
しょせんダンジョンの犬だよ!
僕たちは愛し合ってるから!お前のような、ぽっと出のゴリラの入る余地はないからね』
『フッ、マリアンヌ殿はまだまだ青いですな
本当の愛をご存知ないのでは?愛とは熱くて深くて強くて重いものなのです
我々の熱い戦いも、一重にマリアンヌ殿の黒い炎のおかげですなハハハ!
あの時はまだ敵ながら、我が君が御自らの身をていして我を庇って下さったのです。
心が震えて燃えて熱くて滾りました!深い想いに感謝しております』
『ぐぅ!』←マリアンヌ
『ぐうの音しか出ませんな?フハハ
愛を知らぬとは憐れなり。まあ、おぼこい男子だと仕方のないことですなハハハ』
『ぐう!
あいつがイジメる!
違うよな!お前は僕のこと大好きだよな!そうだよな』
潤々して必死に幼女に縋るなよ、抱きつくなら猫になってくれよな。
「ヨシヨシ。
年下をイジメるなよ〜、お前も大人気ないなぁ。
まぁ、確かにあの時は庇ってくれてありがとうな、落馬なんて大事故だもんな助かったよ。」
『我が君ぃ我々こそ相思相愛なり!』
「お前、見た目通りゴリラだからお前の愛も重いんだな。
愛の形なんて人それぞれ十人十色だよ?
もしかして、生涯ただ一人の女性を愛していた!とかで、そんで自分が先に死んじゃって、悔いが残ってるの?
お前も憐れだな・・・心残りがあって成仏出来ないのか?
そんなに心配しなくても大丈夫だよ!女の子って思ったよりたくましいんだよ?
女子になってまだ5歳だけどよくわかる、女はヤワじゃないんだよ。
あのな、女の子って失恋した後って特に寂しくなっちゃうから、すぐに次の恋人が出来るんだって。
逆に振った男は、しばらく自由がいいかなぁとか思ったりすんだよ。
で、街で自分で振った女の子が他の男と歩いてるの見て、捨てたはずなのにモヤっとするんだよ男ってな。
驚く事に逆の場合な、女は捨てた男の存在って本当に不要になってしまうんだよ・・・。
あ、俺の話じゃないからね?」
マリアンヌ『あ、うん』
デュラン『フォォォ!?
はぁっ?我の常識が足元から崩れそうです!
えぇ、我が君それって本当ですか?その女は軽くないですか?』
「いやいや、普通だよ?
お前が真面目で重いんだよ。まあ、生きてきた時代が違うんだよ。お前ら仲良くしろよ?」
『異議あり!我の扱いが酷過ぎる件について!』
『ふふん!』←ドヤ顔マリアンヌ
「あー、ドMゴリラの飼い方がちょっと解らなくて、どうしたらいいのかな?本当に俺別にSじゃないからさ?」
『ファッ?!我いつからドMゴリラ?違いまする!
あれぇ?先日の戦闘時は格好良くて潔くて美しくて優しくて痺れたのに?幼女になったから?』
「それは、ダンジョンハイだよ。ダンジョンって普通じゃいられないよな?」
『はっ!我が君まだ5歳だから間に合う!我が可愛い女の子にお育ていたしましょう!
我好みの女に変われば問題ありません!
我々は侍従関係ですが、お互いに影響しあって共に成長するのです。
10年あれば全然いける!』
『ああ、なんだ共に成長するのか!
僕がお前に一方的に引きずられてる感じしかしなかったけど?
あ!でも僕がこんな女々しいのって、もしかしたらお前の好みだな?
なんだぁそうかぁ、僕ってお前の好みなんだなフフフ
まったく、素直じゃないなぁアハハ』
えぇ〜?
ヤバい人たちだ!ゴチャゴチャ楽しそうに俺の話で盛り上がってる。
あ、ダンジョンメッセージ確認しておこうかな?
カインからの連絡で
カヤックから大使に、大使からサルマンにと伝言が伝わって無事に回収出来たらしい。
仕事が早いな、本当かな?
カインから、明日ダンジョンに早速行こうと誘ってきた。夜なら行けるかな?ロバートさんも速攻誘う。
コーネリアスの部屋に向かうとマリアンヌが黒猫になって付いてきた
『置いていくなよな』
「デュランと友達になれて良かったな。」
『え!?』
「仲良さそうに俺の育成計画たててたじゃん」
『あれって友達なのかな?』
「初めての友達が首無騎士とか、なかなかカッケーじゃんハハ」
コーネリアスの部屋につくと、コーネリアスが机にふせて寝てた。
スコット「マリー遅かったね、兄上が待ちくたびれて寝てしまったんだ。
暖炉の前ってあったかいから」
「遅れてしまいましたすみません。
勉強してましたのね、偉いですわ。
どれどれ、見せて下さいませ・・・相変わらず字は綺麗ですね。
フフフちゃんと勉強出来てるようですね、おにいさまとヨハンの教え方が上手なのですわ」
コーネリアスの巨体をどうやってベッドに運ぼうか考えていると
『我が運びましょう我が君、いかが?』とデュランから申し出があったから
「お疲れのようですからこのまま寝かせといてあげましょう。
おにいさま!ダンジョンで新しいペットを拾いましたのよ、見ても叫ばないでいただけますか?」
「え?叫ぶ?」
俺はスコットの横にイスを持ってきて、スコットの口を最初から抑えてマリアンヌにサイレントをかけてもらう。
「ではデュラン出てきてコーネリアスお兄様をベッドの真ん中において差し上げて?」
馬からおりた状態の巨体デュランが俺の伸びた影から出て来た。いそいそとコーネリアスを抱えてベッドに置いた。
スコットがビクゥっとしたのが分かった。
「私の新しい騎士ですわおにいさま。驚かれましたか?ダンジョンでテイムしましたのよ!
侍従契約を結びましたの。デュランご苦労様、戻ってくださる?」
「僕は夢でも見てるのかな?
マリー平気なの?侍従契約?大丈夫?あんなのがダンジョンにいたの?」
「先日の帰宅が遅かった時の事ですの、色々とやらかしてしまいました」
俺はざっくり説明した。
「マリー・・・どこから何を言ったらいいか
魔法の種?デュラハン?新しい友達サルマン?
ハァー」
「おにーさま?」
「怒ってないよ、心配しただけ・・・」
俺とスコットは暖炉の前で2人で座って話してるからトロンと眠くなってきた。マリアンヌは俺の横でまるくなる。
スコットは俺の頭を撫でてくれて、優しく語りかける
「危ない事はしちゃ駄目だよ?
マリーは女の子だからね、いつか僕らは一緒にいられなくなってしまうけど。
それまではしっかり無事でいて欲しいから、僕の可愛い妹でいてくれるんでしょ?
・・・マリーは遠くへ行くのが早そうだね」
スコットが少し遠い目をして潤々と寂しそうに見つめてくる。
心配してる、大事にしてる、けど、いつかは手を離れる・・・なんて悟のがまだ早いんじゃない?
いつかは多分必ず来るけどさ
スコットの寂しい顔なんてしばらく見たかない!
「わたくしは、まだ5歳ですわよ?
それに、大きくなっても大人になっても、わたくしはおにーさまが大好きですわ!
おにいさまに大切な方が出来て結婚して家庭を持っても私が結婚しても、わたくし達はずっと兄妹で仲良しですわ。
私は、おばあちゃんになっても可愛い妹ですわフフ」
スコットが一層切ない顔になっていて泣きそうだ。
このお兄ちゃんはどうやったら泣き止むんだろうか?
俺は立ち上がって、アイテムボックスからレンジ・マミィのフワフワタオルでスコットの顔を優しく包む。
「おにいさまに泣かれたら、どうしたらいいかわかりませんわ」
「うん・・・グズッ」
スコットがタオルごしに俺をギュッとしてきたから、俺もスコットをギュッと抱きしめてからヨシヨシした。
スコットの気持ちもわからなくもない。
俺もねーちゃんの結婚式泣いたから
けど、会えなくなるわけじゃないんだ関係が変わるわけでもなかった。
ただ少し大人になるだけ。
そのうち分かることだ。
「ピッピが大きくなりましたし、ダンジョン一緒に行きますか?
赤い実を食べたら美しい羽が生え揃いましたね?」
庭の木のアンナの取りこぼしたポツポツなってる赤い実は、飛んできた小鳥や集まっていた妖精が食べていて、ヒンデンブルグとピッピが楽しそにじゃれていた。
スコットがそろりと顔をあげて話す
「僕は足手まといじゃない?
その、あのピッピの鎧はピッピに凄く負担がかかるんだ。ピッピ僕のせいで卵になってしまって」
スコットのせいではなく、俺のせいなんだがな。
「上空でファイアジャベリンするだけで充分強いのです!
それに明日の晩、カインさんから誘われたのですけど、多分ダニエルさんが来ますわ。その方ちょっと怖くて。
ロバートさんも誘いますけど、おにいさまがいてくださると安心ですわ!
カインさんがコーヒー豆を下さるそうなのです!
チョコレートより大人向けの商品ですわ、おにいさまも試してみます?フフフ」
「マリー、うん行く!僕がマリーを守るから!
いざとなったらピッピに乗って飛んで逃げよう!」
「あ、ホバーボードもゲットしたんですの!
ほらこれ!浮いていて乗って飛べますのよ。ただ安定感が無いのが難点ですわ。
お部屋では乗れませんね」
「凄い、浮いてる!
え!この、薄い板に乗って?飛ぶの?」
俺は部屋の中で少しだけ実演してみせた。
5歳でも一応乗れて板が大きく見えた。
スコットが凄い凄い褒めるから調子に乗りそうになったけど暖炉に突っ込んでいく板がなんか想像出来たから早々にアイテムボックスに入れた。
「そうだ、忘れる所でしたわ。開拓区の船着き場で養殖場頑張ってるそうですけど餌が不足してると聞きましたの。
開拓区は雪が積もらなくて人で溢れてるようですわ、北からの難民もまた降りて来てると思います。
赤い実を届けたいのですが、船着き場の村に手紙を貼って置いといたら食べてくれますかね?
露天風呂が芋洗い状態かもしれませんわね。」
「あー、字が読める人の所に置いたら読んでくれそうだけどね、村の子たち字が読めないんだよ。
オースティン先生の所だと確実じゃないかな?」
識字率忘れちゃうな、俺の周りは元孤児のアンナですら読めるからな。
「おにいさま、今から船着き場行きましょう!なんか忘れそうですから」
「今から?!」
「赤い実を置いてくるだけですわ。
手紙に温泉姫のお慈悲と書いておけば、おばあちゃまがうまく誤魔化しますよ
本当に食糧難だと、早いほうがいいですから
領主の心に答えますと書いておきましょう、多分みなさん感謝してくれますよ」
スコットと落し穴に入り、マリアンヌが『僕も行く』と俺の肩に乗るとマフラーのように尻尾をクルリと首にかけてくれた。暖炉のおかげで暖かくなっていた。
船着き場の林の中におりた。夜中でも人が歩いていてランプの灯りがチラチラ見えた。
スコット「ここは船着き場の林の中?あ、あっちに灯りが見えるね」
俺「しばらく来ないうちに新しい建物が増えてますね
養殖場の建物はあれですか?
建物の前に、ちょうどいい木箱がありましたね、見つかる前にアレに入れて帰りましょう。」
スコットはサクサク落ち葉の上をあるいていて、俺はホバーボードに乗った。
多分養殖場の建物だと思う所について、木箱を除くと空だったから中に赤い実を入れていく。蓋はないけど手紙を貼って置いておく。
「え、聖女様?」
ギョッとして振り返ったら、異国の子ども、つまり俺が隣国のダンジョンから連れてきた子がいた。
スコット「しぃっ!静かにね?」
俺「アチャー
見つかってしまいました!そこの子!わたくし達は今日ここにいなかったのよ!
あなたは何も見ていないわ!いいわね?
約束が守れるならお菓子をあげましょう!」
「お菓子!約束します聖女様!」
お菓子をあげるけど、赤い実を物欲しそうに見る。やっぱり食糧難で足りてないのかな?
人が急に増えたからな。
俺「この木箱の中身は魚の餌にしょうと思ってるのよ、でもあなた達の分もあるわよ?
木箱をもう2つ持って来なさい入れてあげるわよ?」
「すぐに持ってきます!いなくならないで!」
スコット「見つかってしまったね・・・ここも随分と建物が増えたね。
あ、あっちの方、奥の所にあるのって露天風呂のヤツじゃないかな?
休憩所と簡易の更衣室を作ってたんだけど、完成したんだね」
俺「フフ、もう懐かしいですわ。秋頃までは露天風呂に入ってたのに。ここからでは人がいるかまでは見えませんわね」
スコット「まだ季節1つ分だけど、懐かしく感じるね」
そう言ってスコットは俺の頭を撫でた。
すぐにあの少年が戻ってきたんだけど、一人じゃなかった!
「ホラ!聖女様だろ?」
「あ、スコット様もいる!」
「スコット様も帰ってきてたんですか!」
何で俺だけ聖女呼びなんだよ?
俺「コラそこの子!仲間を呼んできちゃダメでしょ?
わたくしはマリーウェザー・コルチーノよ!
お嬢様とかマリーウェザー様と呼びなさい!
セイジョとかセイジャとかよぶんじゃないわよ!
早く木箱出しなさい!」
「あの、みんなに見つかって、木箱運ぼうとしたんですけど、どこ持ってくんだって言われてそれで・・・お菓子食べちゃったんです、ごめんなさい」
スコット「君達、今日の事は内緒にできるかい?
マリーも怒ってる訳じゃないんだよ?
他の人に見つかると、この赤い実を取られてしまうからね?村の人達で食べるんだよ?」
俺が木箱に赤い実を入れている間にスコットがフォローしてくれた。よくできたお兄ちゃんだよ本当に!
俺「いいかい!お前たちよくお聞き!
今日私達はここにいなかったのよ!あなた達は・・・そうだ、温泉姫にこのお菓子を貰ったのよ!
この赤い実も温泉姫から貰ったのよ!
誰かに聞かれたら、そう答えなさい!
ほら、お菓子をあげるから、みんなで分けて食べなさい!
ねぇ聞いてる?分かった?」
「モグモグ、聖女、じゃなかったお嬢様、スコット様ありがとうございます!」
「聖っ、お嬢様ありがとう。わぁ赤い実だ!パクパク」
「お菓子だ!聖女じゃなかった、お嬢様スコット様ありがとう!パクッわぁ甘いです!」
子ども達が喜んでお菓子と赤い実をぱくついてた。
やっぱりお腹空かせてたんだな。
俺「なんで、おにいさまはスコット様呼びなの?」
スコット「僕はお祖父様とよく来てたから、それに聖鳥の御使様って長いからね。スコットってお祖父様もよく呼んで下さるしハハ」
ここにも雪の華が咲いていたから暖かくなる魔法陣を近にあった3本の木に施した。
ハラハラと華が散ってぷくーっと実がなっていくのが暗闇の中でもよく見えた。
なぜなら木と言うか、実が光っていたから。
昼間では気が付かなかった仕様だった。幻想的でとても綺麗だった。
子ども達がキャッキャ騒ぎ出して人がチラホラと家から出てきたから
俺「おにーさま帰りますよ!
温泉姫の奇跡だわー!温泉姫様ありがとう!オンセンヒメー凄ーい!」
と叫んでから落し穴に入った。
入る時に一瞬、温泉姫がいたような気がしなくもないけど、あの場に引き寄せられて本人が出たなら丁度いい、適当に拝まれてくれ。
コーネリアスの部屋の暖炉の前に戻ると、暖かい空気が肺に入って来た、領地はめっちゃ寒かった。
スコット「まるでロバートさんの時みたいだよ、あの時は、賢者と叫んでいたっけ?
マリーが急に叫ぶから子ども達がみんな驚いてビックリしてたよ。集まってきた大人達も騙されてくれるかな」
俺「噂になっても、春まで王都には届きませんわよ。
それに、その頃には私達はカレッジですもの。
その頃には、あそこも宿が増えて噂の温泉街を見に、たくさん人が来ますわ」
スコット「暖炉で体が温まったら、もう寝よう
マリーはさっきまでトロンと眠そうだったんだ。ほっぺが赤くなってきたね」
2人で体を寄せ合い、暖炉の前に座って火に当たっていた。マリアンヌがいつの間にか間に入っていてゴロゴロしていた。
コーネリアスの布団に潜り込んで寝ると、暖かかった。
朝起きると必ずヒンデンブルグが足に乗ってて、重くてイラッとする。
おりゃといつも通りコーネリアスの上に乗せて、マリアンヌをイイコイイコして二度寝する




