エジソン
電気の偉人とは別人です
食堂に行くとお父様がすでにいた、夜中帰宅したらしい。
相変わらず俺はコーネリアスの隣の席だ。まあ、春からカレッジ行くし、それまで別にいいかな。
そして、相変わらずコーネリアスは朝から俺に絡んでくる。
優しい弟よりも嫌味な妹の方がいじり甲斐があるのだろう。
「昨晩は驚いたぞ、急にいなくなったからベッドの下に落ちてるかと思って探したのだぞ。
帰ってくるときも急にふわっと出るから叫びそうになったのだ!お前の姿は夜中に見ると恐怖だ」
まあ、夜中に幼女が立ってたらハンニバルだわな。
「朝から元気ですわねコーネリアスお兄様。朝食の時くらい静かにしませんこと?
それに、朝食に出る量の野菜など微々たるものでしょうになぜ避けますの?
嫌いな野菜を無理して食べなくても、食べれる野菜に変えてもらえば宜しいのです」
「そんなわがままを言っては行けないのだぞ!それに食べれる野菜などない、どれも苦いし酸っぱいし青臭いのだ。フン、食べくてもこの通り大きくなれたし」
実は、お父様のヨーグルトだけ果物の酒漬みたいなのがのってるし、お母様の紅茶だけお高いのが出てる。俺は食べきりたいから量を減らしてもらっていて、みんなカスタマイズ済みだ。
「肉食は臭いのです」
ビクっとして、コーネリアスは小さい声で臭くないと呟き、なぜかお父様も反応していて2人してオドオドしている。この世界に加齢臭という概念はまだない
幼女からの臭いはキツイだろ!へへっ
朝食が済み、お父様が出かける前に声をかけてきた。
「マリーウェザー、この手紙をカール・オペルード先生に渡してくれ。今日の予定は知ってるの?」
昨日の手紙の返事かな、ハイと受け取る。
「今日は、カレッジの制服の採寸だと伺っておりますわ、毎年買い替えるのでお金のかかる娘で申し訳ないです」
「ハハハ、子どもはそんなこと気にしなくてもいいよ。むしろ制服で過ごす分、普段の服が減って安くすむよ。
本当はマルリーンが一緒に行くはずだったけど、城の茶会に呼ばれてね。どちらもずらせなくてね
一人で行けるかい?」
「アンナがいますから平気です」
お父様がジーっと俺を見る、まだ何かあっただろうか?カレッジ関係で迷惑をかけてる自覚はある。
「マリーウェザー、コーネリアスの相手をしてくれてありがとう。難しい年頃なんだけどね。
カレッジのことを知ってるだろ?本当にどうしようもない奴だ全く」
お父様が俺の頭を撫でながらしみじみ言う。
俺のことじゃなかった、ホッ。
まあ留年は仕方ないけど、普通はもっと早く気づくだろ、息子を放置し過ぎじゃね?
連絡係が必死で隠してたのか、コーネリアスの粗相は従者の責任だからな。
使用人の派閥争いも面倒だ。
「お父様の若い頃に比べると大人しくしてる方ではございませんか?」
「え?!」
お父様がピクっとして、俺の頭から手が離れた。
「おじいちゃまが楽しそうに話して下さいましたよ。お父様の若い頃は荒れ、やんちゃ・・・武勇伝がたくさんございましたのね」
「そ・・・の武勇伝は、スコットも知ってるの?
ハハハ、父上も冗談が好きなんだよ、違うからね。マリーウェザー達はからかわらたのだよ?」
「村のヴァルさんのお話も聞けましたわ、スコットお兄様はキラキラした顔で聞いてました。私よりたくさんご存知でしてよ」
「それは・・・マリーウェザーとスコットは賢いからよかった。賢者は黙して語らないと言うだろ?」
「口は災の元ですわ、心得てございます。
ただ、もう少し構ってあげればよろしいのに、コーネリアスお兄様も寂しくしてますよ。
たまにシェフ(チェスのこと)に付き合ってあげれば宜しいのです」
「シェフねぇ、コーネリアスは負ければ癇癪を起こすのだ」
「昨晩、負かしましたけど癇癪しておりませんでしたわ。負けても"強くなったな"と一言あれば喜びますわよ」
面倒がってないで、相手してやれよ、まあ思春期の息子なんて扱い辛いけどな。
ちなみに、このオヤジの武勇伝は多岐にわたる。
女性問題、カレッジに親呼び出し、お友達貴族殴っちゃった、約束ブッチなど。
領地で馬に乗って走り回り、迷子になって1週間行方不明に、村のヴァルさんがたまたま見つけた時は、ヒゲが伸びてボロボロの落武者のようだったとか。
この武勇伝は、工房の帰りにじーさんから思い出話として聞いてたからアンナとヨハンとサイモンまで知ってる。
アンナは興味無さそうに聞いてて、サイモンは覚えてなさそうだ。
スコットは耳がおかしいのか、憧れてる父のやんちゃな1面を少年のような顔で聞いていた。
お父様は、たまにならコーネリアスの相手してやるかと言って仕事に向かった。
俺達も、いつも通りアンナと馬車に乗りミネルヴァへ向かった。
研究室について、忘れないうちに手紙を受付で渡して
採寸の人が来るまで昨日の論文の山を読んでいき、時々若い職員さんが覗きに来てソワソワして帰って行く。
何となくだけど、この論文の山の中に知り合いか自分の書いたものがあるのだろう。
話しかけたいけど邪魔しないようにと気を使われていた。
クリス先生が来て、採寸の準備が整ったと話していて、この人は女性枠に入るのだろうか?付き添いをするような事を言っていた。
まあ全然かまわない、むしろ知らない人に囲まれて採寸するよりありがたい。
そして、どこかの店のマダムが挨拶をする
「この度は、当店をご指名いただきありがとうございます。ニコール・キッツマンと申します。
噂のミネルヴァの天才児にお会いできて嬉しく思います。
マリーウェザー様には何度もお目見えできると存じます。
成長期ですから、窮屈になればすぐにお申し付け下さい。ある程度調整が可能ですが、マリーウェザー様の場合は誂え直しになりますからね。小さい子の成長は早いですものホホホ」
「お初に御目文字いたします、マリーウェザー・コルチーノです。噂は存じませんがよろしくお願いします」
カレッジの制服は清楚なワンピースだ。上にジャケットを着るけど、最近の主流はマントらしい。貴族ってマント好きだよな。寒いしジャケッの上にマント着るのが流行りらしい。
日本の女子高生のようなミニスカじゃなくて良かった。あの手のは見るのはいいけどな。
男なら一生に一度なら着てもいいかな?と思わなくもない女子のスカートだけど、聖女アバターで満足しました、自分で着るのはもういいです。
ついでに研究室の白衣も作ってくれるようで、白衣と名札があればいつでも図書室に来て良いと言われた。ありがたいからお願いした。
採寸が終わって、お昼を跨いでいたのでアンナがお腹すいたと言ってクリス先生と皆で食堂へ向かった。
お弁当を広げて、職員さんにお茶を出してもらいアンナと3人で並んで食べた。
クリス先生と世間話しをしてたら、いつの間にか若手の職員さんが周りに集まっていて、みんなソワソワしながら近づき
「どこまで読みましたか?私も書いたんです」
と一人が話しかけてきて、返事をすると他の人も話しかけてきて論文の討論会みたいなのになった。
若手だし暇なのかな?
その中に俺の記憶に残った名前があった。
「貴方がトーマス・アルバス・エジソンさんでしたのね、思っていたよりもずいぶんとお若い方のようで驚きました。論文読ませていただきましたわ。お会い出来て光栄です」
5歳の俺が言ったら嫌味に聞こえたかもしれないけど。
貴方はあの有名なエジソンなの?
名前だけそっくりさんの別人にしても運命を感じる!長いものには巻かれろって言うじゃん、俺はこの人に巻かれるぜ!
乗っかるぜ波に!だってエジソンだよ?あのエジソンじゃなくてもいい!電気作ろうぜぇ!
貧乏男爵家の出だな、俺がパトロンになろうかなぁ。
「以前はミネルヴァの天才児と言われてたのに、本物の天才児が現れて焦ってる落ち目の天才児だな。
もう天才児でもないか。本物がいるしなハハハ」
と、いかにもモブがエジソンを馬鹿にしだした。
馬鹿野郎!本物はそちらのエジソン様だ!
俺なんか見た目詐欺のイカサマ野郎だ!比べるんじゃねーよ!やめてくれよ!
エジソン「んな!こんなガキと私が!」
俺「本当ですよ何を仰るの?この方の論文を見ましたの?世界の発明家に向かって失礼ですわよ?
エジソンさん、どうかお気になさらず、本物の天才は大成するまでに時間がかかるものですわ。時代が天才について来ないのです、ポッと出の私と比べる事はございませんよ」
エジソン「え?!・・・わかっているようで何よりだ??」
クリス先生「アハハ、マリーウェザー様は面白い事を言うわね。そうねぇ、時代がついてこないのよトーマスはちょっと変わってるけど悪いやつではないのよ、許してあげてね?」
俺「クリス先生わたくしはエジソンさんの発明を心待ちにしておりますわ、頑張って下さいね」
地動説を唱えたコペルニクスはみんなに馬鹿にされていたんだよ。人類初の飛行機で飛んだライト兄弟も笑われていたんだ。天才とはそういうもの
本当にパトロンになろうかなぁ
電気欲しいし、この世界の燃料は魔石エネルギーなんだよな。石炭にしか見えない石を燃やしてランプをつけてる。
エジソンは鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていた。
そのあと、挿絵が上手なコルトさんを見つけて話しかける。ヨハンの代わりに領地で温泉姫の絵とフィギュアの絵付けをさせるために絵師を探している。
俺「コルトさんが一人でこの論文を書いたの?挿絵が素晴らしいわ」
コルト「はい、あの、ミネルヴァの天才児に見出されるなんて!感激です!」
俺「その呼び名、本物の天才の前で失礼ですわ。
みなさん、私の事はマリーちゃんと呼んで下さいな。敬称をつけられるほど偉くもないです。伯爵家の娘ですが偉いのは家であって私ではありませんもの。普通に仲良くして下さいね」
「なんて謙虚なんだぁ可愛い」とか
「本物は違うな可愛い」とか
「流石です、マリーちゃんとお呼びいたします」や
「器が違う!将来大成するまでに仲良くしておこう」だの言ってる。
肝心のエジソンが俺を睨んで悔しそうな顔をしていた。
やめてくれよ!エジソンに嫌われちゃうだろ!本物はそっちだっつーの!俺を称えるんじゃねー!
やめろー!
俺「みなさん大袈裟ですわ、もう恥ずかしいからやめて下さい」
と言うと、余計にはやしたてる。
アンナがいつの間にかお茶菓子を買ってきていて、みんなで摘んで食べた。
ここにいる若手の職員は、貧乏貴族の出だからお菓子に喜んでいて餌付けをしてる気分だ。
そしてエジソンはいなくなっていた。
こりゃ嫌われちゃったかな、パトロンになれなくて残念だよ。
帰るときに、エジソンを見かけ挨拶したけどフン!みたいにツーンと無視されてしまった。
俺「アチャー、天才って難しいわね。流石天才ねフフ」
アンナ「お嬢様は無視されたのに嬉しそうですね、変なの。そんな凄い人には見えませんでしたよ?」
俺「いいのよ、私が勝手に応援してるだけなのよ」
30〜40歳くらいで大成する天才もいるし、死んでから歴史に名を残す人もいるのだ。
屋敷に帰ってきて、コーネリアスとスコットとサイモンとヨハンが出迎えてくれた。
「おい、お前!何をしたんだ!城からの呼び出しなんて、やらかしたな!」
コーネリアスがいきなりまくしたてる。今日はお母様が城で茶会だったはず、呼び出し?何なんだ?
スコット「マリー、おかえり。
多分マリーもお茶会に呼ばれたんだよ。城の茶会に呼ばれた母上を見た誰かが殿下に教えたんじゃない?
さあ、ほら部屋に入ろう風が冷たいね、ほっぺが冷えてるよ」
俺「スコットお兄様は温かいですねホォー、ただいま戻りました」
コーネリアスが何か言いたげな顔をしているけど無視して部屋に入った
湯浴みをするか考えたけど、寒くなってきたから迷うな。ダンジョン・コアの露天風呂行きたいし。
夕食までにロバートさんにダンジョンメッセージを送る。今日エジソンに会った自慢と、夕食後で暇なら露天風呂行かないかと誘っておいた。夕食後にまた確認する。
すると、マリアンヌが人形から実体化してきて
『今日もあの長男の部屋で寝るのかよ?3人なら寝れるけど僕も寝るならちょっと狭くない?』
「は?人形なら関係ないじゃん、いつも俺が抱えてるか枕元じゃないか」
『お前、7歳までは人形を持ち歩くって言ってたけどカレッジ通うと無理だろう?
僕は、いつか捨てられてゴミになるんだ・・・それが僕ら精霊なんだ!
僕を捨てないで、約束したじゃないか!まだ3年たってないのに捨てないでよグズッ』
お前は人形じゃあねーだろ!
でも、今日ちょっと思った。アンナがいつの間にか俺の横からいなくなっててマリアンヌ人形を部屋の端に置いてたんだ。
「別に捨てないよ、大事にするよ。ただ俺の想像より早くカレッジ行くことになったしな・・・わぁ、泣くなよ、ヨシヨシ。
あ、そうだ前に作ったお前のフィギュア売れ残って結局アイテムボックスに入れてたんだ。
コレ、使ってくれよ、依代って1つじゃないと駄目なの?2つあってもいいなら、カレッジに行くときはこっちにしたら?」
俺はアイテムボックスから、前にアトリエで作った、男子中学生に羽がはえたデザインのフィギュアを出した。
『これ、僕のフィギュアのやつ・・・僕のヤツ持ってたの?』
「これなら小さいからカバンとかに入るだろ?マントの内側にでも隠れとけば、いつでも一緒にいられるじゃん!
どっちも棲家?依代?にすれば?ハイ
泣くなよもうホラ、涙拭いてやるよ、ヨシヨシ
あ、ステルスモードとかないの?フィギュアでも見られないようにとか出来ないの?」
俺は自分の服の袖で涙を拭いてやる。精霊の涙って濡れないんだ。
『見られないように出来ると思う、普段も側にいてもいいの?僕を捨てない?僕のこと大事にしてくれる?僕のこと好き?』
「ハイハイ好きだよ大事だよ」
『じゃぁ・・・く、口付け』モジモジ
ハイハイ、チュッとな。コイツはロリコンか?
『へへ//』はにかんで抱きついてくる。
あれー?なんか可愛く見えるんだけど?え、俺洗脳されてない?えぇー?
アンナが夕食だと呼びに来て、俺はステルスフィギュアモードのマリアンヌを肩に乗せて見つからないか実験をしてみた。
バレても、俺がアホの子扱いですむかな?幼女の戯れだ。
隣のコーネリアスが気にしてない所をみると、ステルスモードは成功のようだ多分
コーネリアス「何を見ているのだ?はっ!
お前の言う通り野菜も食べたから臭くないであろう?」
俺「え?・・・あら、気にしていましたの?それで野菜が食べれるようになったのなら、良うございましたね。続けることが大事ですのよ」
これで、フランス人形を持ち歩く事なく過ごせそうだ。幼女が持つと様になるけどな。
ジョルジュがくれたドールハウスの横にでも飾っておこう。
今夜はお父様がコーネリアスをシェフに誘っていたけど、コーネリアスの顔は怒られる少年のように青ざめていた。
コーネリアスがこちらを見て助けを求めていたけど、いってらっしゃーいと見送った。
スコットが心配していたからネタばらししといた。
「父上に構って貰えてよかったね、僕たちも寝ようか?マリーは湯浴みはどうするの?」
「露天風呂へ行ってまいりますわ、終わったらおにーさまのお部屋に行きますね」
ロバートさんの返事を見ると、行くとあったので
「今からロバートさんの所いくけど、一緒に行くの?」
『行く』フィギュアの依代で行くようだ。普通に動くからまるで妖精のように見える。
ロバート邸に行き、ロバートさんを回収してそのまま一緒に露天風呂へ穴を繋げた。
俺はマリアンヌの頭を洗いながら、ロバートさんと世間話をする。
ロバート「ハァー、寒くなると温泉のありがたみが違いますねぇ。ああ、エジソンって本物ですか?」
俺「名前だけそっくりさんかもですけど、応援したくなりませんか?エジソンって名前を呼びたいし。一応若手の研究者なんですよ?
大成するまでに仲良くしておきたいじゃないですか」
ロバート「まぁ本物じゃなくても、気になる名前ですね。そうそう、聖女の偽者が出たそうですね?」
俺「聖女の偽物さんね、そうなんです、やっとね!でも大使が追い掛け回して、逃げられちゃって残念です。責任と役目を押し付けられたのになぁ」
ロバート「またそんな事言って、その偽者聖女がやらかしたことの責任を逆に押し付けられますよ?
シスコンさんは身バレしてるんでしょ?」
俺「カヤック達3人だけですし、ダンジョンの外では幼女ですからね、泣き落しで知らぬ存ぜぬ貫きますよ」
その後、マリアンヌに俺の頭を泡だらけにしてもらい
ホカホカ温まって、ロバートさんを自宅に送り俺はスコットの部屋にそのまま穴を繋げた。
「マリーお帰り、わぁ体が温かいねホカホカだ。マリーが温かいうちに寝ようか」
「温かいうちに寝ましょう」
しばらくはこんな感じで、たまに露天風呂へ行けるだろうか




