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俺の異世界冒険記!  作者: ワシュウ
領主の娘 領地に行く
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暴君

マックイーン子爵領を通る街道が整備されたために、ゆっくり行っても3日で王都に帰れるようになった。


ダンジョンから帰還してカカオをロバートさんに渡して翌日、チョコが出来たと言うので、夜中にスコットに頼んでアリバイ工作してもらい、チョコを回収する。

穴を通ってロバート邸に行って、中に入れてもらった。

お茶とチョコ粒のお菓子が出てきた。香り高い!


「ロバートさんありがとうございます!」

俺はちょうだいの手を作ってチョコを貰う。

生チョコにチョコケーキにアイス、クッキー、ココアパウダー、チョコドリンク他にも大量に流れてきた。


「はぁー凄い量ですね!こんなにいいんですか?

お金払わないといけませんか?アルラシード国の金貨ならありますよ。

ちょっと古銭に分類されるみたいですけど、いりますか?」


「いやいや、古銭もらっても使えないです。それこそカカオを無料タダでもらったしね。それで、どうなったんですか?」


「どうもなってないですよ。

アブドゥル大使を助けてダンジョンボス倒して逃げてきましたよ。

大使めっちゃ怒ってて、殺されるかと思いました。感情表現がいちいち筋肉で怖いです

だいたいダンジョンの外には出れましたけど、幼女にできることなんて無いです」


「ハァ、まだ似たような輩が出てきますよ。

カインくんのメッセージ返してあげたら?寂しがってましたよ?」


「まあ気が向いたら。

あ、このあとダンジョン・コアの露天風呂行くんですけど送って行きましょうか?」


ロバートさんと露天風呂へ行った。

世間話に、まだまだ大量にあるカカオ豆の加工をチョコレート工場でする計画をマックイーン子爵とジョルジュがしているらしい。

工場の基礎はもう出来ているのだとか。


「着工が早いですね、この前計画が上がったのにもう基礎出来てるんですか」


「あのあたりも雪が降りますからね、積もる前に屋根と壁までは作っておきたいのでしょう。チョコを試食したら乗り気でした。貧民の食い扶持と保護も兼ねてると思います」


あっちは、ダンジョン区域じゃないからな。

雪が積もるのを前提に動かないといけないから大変そうだ。



それから、俺たちは王都に帰ってきた。

伯爵家に着くと屋敷の使用人が出てきて荷物を運び始めた。


そして、玄関の前に金髪碧眼の目付きの悪い男、多分この家の長男コーネリアスが仁王立ちしていた。

なぜかめちゃくちゃ睨んできている。

あれ?俺たちは初対面だよな?

俺が赤ちゃんのときにスコットとは会っているらしいけど。


玄関でお父様と少し話して、お父様がハァみたいなため息をはいて屋敷ヘ入っていった。

お母様はニコニコ笑いながら華麗にスルーした。

ママ一緒に連れてってよ!

俺を心配したスコットと一緒に対面した。


狙いは俺か?


「フン、お前が妹か?

ほぉ~、小さいな、人形おもちゃなど抱えて本当に5歳になっているのか?

オイお前、私に何か言うことはないか?」


特にありません


「始めまして マリーウェザーです」

とカーテシーしてみた。


「フン! いっちょ前に挨拶しやがる!

いいか、この家は私がこれから仕切る!お前の事もそこの馬鹿の事も私の匙加減次第だと言うことを覚えておけ!

私は、お前をまだ認めてないからな!」


ほぇ~


「フン!アホ面をさらすな!伯爵家の恥だ!

小さいからとフザケた行動は許さんぞ!恥をかくのはこの私なんだからな!この家の恥は、一人で充分だ!ヘッ!」


「兄上ご無沙汰しております。ご卒業おめでとうございます」


「お前は私に話しかけるな!穢らわしい!お前のような出来損ない、この家にはいらん!」


長男コーネリアスは、言うだけ言って去っていった。

とりあえずスコットから聞いていた兄像とは別人だった。もしかしたらスコットは、チクチク言われ過ぎて麻痺してるのかもしれない。


「この家の長男は、いつもああなのですか?」


「長男って、マリー変な呼び方しないの。

兄上は、昔は優しくてよく遊んで下さったんだ・・・ミネルヴァに行く前の話だけどね」


スコットが寂しそうに苦笑いしていた。

俺はスコットの手を握り、元気づけた。

長男の亡き母は、スコットに折檻していただけでなく、長男の教育にも失敗していたようだ。冬の間この家で、あの長男と顔を合わすのか。

俺も引き籠もりになろうかな。


アンナが見ていたらしく陰から出てきて

「性格の悪そうないかにもワルのお貴族様ですね!コルチーノ伯爵家の人間はみんな優しいと思っていました!

お嬢様!気をつけて下さい!

虐められたらすぐに言って下さい!

わからないように仕返ししますから!

ああいう輩は正攻法では駄目なんです!あっちの方が立場も上ですから!」


「アンナ何もしないで!本当に!

サイモンもヨハンも何もしないでね?

触らぬ神に祟りなしって言うのよ、視界に入らないようにしとけばいいわよ」


アンナ本当にやめてね?クビにされちゃうよ?


ヨハンは、こっちでもサイモンと同室にしてもらってる。勉強を見てくれるらしい。

せっかくだから、領地でやってたように午前中に勉強会をすることになった。


それからというもの、長男コーネリアスは、わざわざ俺の部屋の近くを無意味に通り、ウロウロしていた。サイモンが俺の部屋を訪ねるときに、とばっちりで睨まれたらしい。

俺が部屋から出るとわざとぶつかるように通り過ぎて、わかりやすく睨んで鼻息荒く


「フン!小さすぎて見えなかったぞチビが!」

と言って通り過ぎる。


何がしたいんだ?なんのアピールだ?


こんなことが何度も続いたけど、さっぱり意図が読めない。とりあえず後妻とその子供が気に食わないんだろうな。

漫画ならよくある展開だけど、現実でもありえるんだな。確か18歳の思春期だっけ?

俺はどういう対応をすればいいか考えていた。

睨まれてもぶっちゃけ全然怖くないんだよ、じーさんや父親に似て、ガッシリしてるのにぶつかり方がふわっとして気を使ってる感じだ。


比べる相手が悪いけど、大使のトラウマに比べると、そよ風にもならない。ゴリラとミジンコだ


長男は、食堂では大人しいと言うよりも無口だ。全然喋らない。お父様も特に話しかけないし、家の事を執事に聞いていて長男には聞かない。

お父様は城に仕事に行くようで、しばらく泊まりになると言っていた。仕事がたまってたんだな。



俺とスコットは相変わらず同じベッドで寝ていて夜に大丈夫か様子を伺うと


「マリー心配してくれてありがとう、僕なら平気だよ、兄上ももう少ししたら落ち着くよきっと。

留守の間は、一人でこの家を守ってきたんだ。お疲れなんだよ、マリーこそ大丈夫?気にしてない?」


「おにーさまが平気ならいいのですわ、私は全然気になりません。ピッピがまだ成長しきってなくて良かったですわ、アンナより仕返しがキツそうですものフフ」


「そうだね、ピッピも大きくなってきたね。また、おしゃべりしてくれるようになるかな?」



ただ、俺とスコットが仲良くしてるとスコットへの風当たりはキツイと思う。

いちいち恥だとか穢らわしいだとか言う。

スコットの様子を見ると苦笑いしてるだけで、これじゃどっちが兄がわからない。


スコットは、領地へ行ってメンタルが安定したんだな、いい事だ。


「オイ!そこのチビ!お前だ!

私がよんでるのに無視するな。あの馬鹿と仲良くしてるみたいだがな、あいつはそんな良くしてやる価値もないんだぞ?知らないなら教えてやる、お前が「聞きたくありませんわ!」


「何だと!私がしゃべってるのに遮ったな」


「聞くに堪えないお言葉でしたので。失礼いたします」


「待て!待てってばこの!あっ」


ついに手が出てしまった。

勢いあまって長男が俺を突き飛ばしたんだ。


俺はペタンと転けて「うっ」と息をはいた。

突き飛ばされて多少は痛いよ?でもそこまでじゃないから自分で立とうとしたら、運悪く俺を探しに通りがかったアンナに叫ばれた。


「きゃぁ!お嬢様に何をなさるんですか、コーネリアス様やめてください!」


アンナが俺を庇い前に出た。

「いいのよ、私は何ともないから騒がないで?」


長男は、やってしまったと言わんばかりの顔で逃げるように去った。

それからたった1日で屋敷中の噂になってしまった。


「マリー大丈夫?僕と一緒にいようか?そうすれば兄上は僕に嫌味を言うだけで去っていくから」


スコットがそう言って俺とよく一緒にいてくれるようになった。

長男は、謝るでもなく罵るのでもなく俺を睨み続けた。ただスコットには相変わらず厭味ったらしい。


「フン、どうやって懐柔したのか知らんが幼女と一緒に寝てるようじゃないか!穢らわしい!

お前のようなやつはこの家にいらんのだ!私が正当な跡継ぎなんだからな!いずれ出ていくまで、せいぜい家の恥にならぬようにしろ!」


「兄上の邪魔になることはいたしません」


スコットが平気だと言ってるけど、流石にちょっと嫌な気分だ。

正攻法では勝てない相手ならどうするか。幼女の力を甘く見るなよ!


「ウワァーン!お顔が怖いよぅ!大きい声が怖いよぅ!ウワァーン!ウワァーン」


マリアンヌに頼んで涙のアシストしてもらい、幼児の得意技、嘘泣きをした。多少の大根演技でもいい。スコットの服を掴んで元気よく!


「ちっ、う、うるさい泣くな!」

オロオロしながら長男は、案の定、足早に去っていった。


「マリー?」


「おにーさま!粛々とあんな暴言を聞かなくてもよろしいですわ!

次からは私が泣きます!子どもに泣かれると困るでしょ?退散するしかないのです。平和的解決策ですわ!そのうち絡んで来なくなりましてよ?」


「嘘泣きだったの?もうビックリしたよ」


そう言ってスコットは少しだけ困った顔を見せてから俺の頭を優しく撫でていた。


この泣きのイヤラシイ所は、相手が早々に嫌味を辞めればすぐにおさまるが、続けたらどうなるか。


俺はスコットが嫌味を言われる度に同じ事を繰り返した。俺にもお母様にも何も言わなくなったが、狙いはスコットだったのか?


「ウワァーン、お顔が怖いよぅ怒鳴らないでよぅ、ウワァーン」


「ちぃっ、うるさい!」

相変わらず睨んで鼻息荒くするけど、すぐに逃げるようになった。


「マリー、もういいよ兄上が可哀相になってきた」


「中々長男の嫌味がおさまりませんね、そろそろやめてくれたら私もこんなこと終わらせるのに。学習しませんねぇ、ハァ」


「マリーの嘘泣きも上手になってきたもんね」



そんなある日、久しぶりにヤン先生が会いに来てくれた。

「ヤン先生お久しぶりです」


「マリーウェザー様、しばらく見ない間に大きくなりましたね。女の子は成長が早いですね。ご機嫌いかがですか?」


軽い世間話をしてると、コーネリアスが通りがかったけどヤン先生を見たら逃げ出してしまった。


「コーネリアス様はお元気そうですね、カレッジを休学されてましたが。来年からは復学されるのですね」


「休学してたのですか?復学するなんて、まるで卒業してないみたいな言い方ですね?・・・もしかして?卒業してないのですか?」


「休学されてましたから」


長男って、カレッジ卒業してないの?マジか!

なんで休学なんてしてんだ、もしかして留年したのか?

その日からコーネリアスは部屋から出てこなくなった。引き籠もりになってしまった。


俺は平和が訪れたと思っていたけど、心優しきスコットは兄を心配していた。

「兄上はどうしたんだろうね?」


「留年がバレたと思って出てこないのでは?ヤン先生が言ってました。」


「え!そんな・・・僕、卒業おめでとうって言ってしまった、そのせいで嫌味を言われるのかな?」


「そんなの、留年したのを家族に黙っているほうが悪いと思います」


「うん、そうなんだけどね・・・」



スコットが気にするからマリアンヌに様子を見に行かせてみたら

『あの長男が手紙にお前の名前を書いて死のうとしてるぞ?

良かったな、勝手に死んでくれたら手間が省ける。そろそろウザいと思ってたんだ』


「良くねーよ!連れてけ!」


手紙に俺の名前を書いて死ぬなよクソが!

マリアンヌの落とし穴に入ってコーネリアスの部屋に飛び込んだら首吊りの準備をしてたけど辞めて暖炉の前でカウチに座ってぼーっとしてた。


「思いとどまったか!」


「はっ?お前、いつの間に部屋に入ったんだ!何だよ!

あっ、これは、その、首吊りじゃなくてお前を吊るすための道具だ!言うことを聞かない子はお仕置きされるんだぞ!

あ、待て待て泣くな嘘だ泣くな!はぁー・・・

もう、何なのだ・・・ハァ

すまなかったな、もう怒鳴らないし怖かったら私の顔を見なくてもいいから。少しだけ静かに話しをきいてくれ」


俺はしずかに頷くとその場に立ったまま話しを聞こうとしていた。

すると長男が俺の所にやってきて、遥か高みから見下ろすと手を伸ばしてきた。殴られると思ってギュッと目を瞑って咄嗟に顔を庇ったら


「別に殴ったりなどしない、この前は悪かった。手があたっただけだ、お前が小さいから予想以上に転んでしまって、その、すまなかったな」


そう言って俺を持ち上げると、暖炉の前のカウチに座って俺を膝にのせた。

向かい合って座らせるのではなく、お互い暖炉を見て話すようだ。

お父様より少しだけ硬い筋肉質な膝だ。大使のせいで後ろからいきなり締め上げられないかちょっと怖い。

顔を見なくてもいい配慮だろうが、それにしても意外だけど謝ってきたな。

良心の呵責にたえきれなかったな、幼女を泣かせるからだ。


「・・・・」


静かな時間が流れる、そろそろスコットが湯浴みを終わらせて寝るために部屋に来る頃だろう。


「言いたいことがあるのではなくて?」


俺が声をかけるとビクっとしたのが膝から伝わってきた。


「い、妹の扱いに困っている。

スコットが小さいときは、私が何を言っても後ろを着いてきたのだ。私が何をしても楽しそうにして、見下ろすといつも笑ってたのに・・・

妹は、女の子は違うから扱いに困っている」


色々と突っ込みたいけど、スコットが楽しそうにしてたのは本当なのかもしれない。

まあ、初めて会った妹の扱いに困っているのはわかるけどなぁ。

初対面のアレはないよな?

少しはスコットを見習いなさい!

でも、こんなんが朝起きて隣で寝てたら叫びそうだ。


「私はお前を認めてないからな!とおっしゃっていたではありませんか?」


「それは、その・・・」


「弱い者いじめしたかったのですか?後妻とその子どもが気に入らないのではなくて?違うのですか?」


これはちょっと意地悪な返しだな。俺のささやかな腹いせだ!


「確かにそれは!・・・そうだけど違うのだ、いや、そうじゃない。

お前結構口がまわるのだな?普通に話せるではないか!

あ、いやすまない怒鳴った訳では無いのだ。ハァ泣くなよ?」


よほど泣かれるのが嫌らしいな。


「別にイジメたい訳ではないのだ。マルリーン様にも態度が悪かったのは、そのすまない。

どうしたら良かったのかわからないのだ、お前はどうしたら私とも仲良くするのだ、スコットと仲良くしてて羨ま、じゃなくて

私とも普通に話せ!いつも、今みたいに!

仲良くしろとは言わぬ!普通に話すだけでいいのだ!

一緒に寝たいとか思ってない!私も撫でたいとか思ってない!可愛い顔で私も名前を呼んでほしいなどと思ってない!

あ、怒鳴った訳では無いのだ、泣くなよ?」


これは!ツンデレ?

仲良くしたかったの?あれで?そんなの全然わからないよ!めちゃくちゃ不器用なやつだな!


「このくらいで別に泣きませんよ。

仲良くするのは構いませんがスコットおにーさまとも仲良くしてくださいよ?」


「スコットは、本当の家族ではないのだぞ?お前は知らないと思うが・・・」


「そんなのとっくに知ってますよ!」


「え?」


「だから、そんなのとっくに知ってますよ。

それが何ですか?スコットお兄様は私の大事なおにーさまですわ!

たとえ血が繋がってなくても、私の大事な家族です。血なんか関係なくずっと大好きですわ」


「ずっと大好きか・・・私はスコットに許されない事をしてきた。もう今更仲良く出来ない。

私はグズッ 良い兄ではグズッ なかったなグズッ」


うわぁ泣き出した、面倒くせーな、何なんだ!


「今からでも間に合いますよ、良い兄になったらどうですか?

本当はスコットおにーさまとも昔のように仲良くしたいのでしょ?

しばらく会わないうちにスコットおにーさまの方が精神面で大人になってて戸惑いましたか?」


俺はゴツいコーネリアスの膝に遠慮なく立って頭を撫でてやった。

ちょっと驚いた顔をしてたけど大人しく頭を撫でさせてくれた。


でかい容姿なりでも思春期真っ盛りの子どもなんだな。可愛い顔の妹が慰めてやるから泣き止みなさい!

泣き顔も怖いかと思ったけど、少年のような顔だ。18歳、大人になりきれてない年頃だよな。


まあ、俺も多少は大人気なかったとも思わなくもない。


「私も泣いてばかりですみませんでした。

本当は怖くも何ともありませんから、こちらこそ意地悪い事してごめんなさい。後生ですから遺言書に私の名前を書かないで下さい」


俺は近くのテーブルにおいてあった遺書に手を伸ばすとクシャっと丸めて暖炉に放り込んだ。これでよし。


この部屋は暖炉があって温かい、調度品も上品で格式高いものが飾ってあるし、俺とスコットの部屋より倍ほどデカい。

大事にされてきたことはわかるよ。

けど、今は父親にも相手にされなくて、賢い弟には冷たくしちゃって、後妻とその娘の扱いに困っている。


更に、ホントは留年するほどアホだった。


思春期の少年の苦悩だな。

死ぬほどつらいことなんて、これから先もっとたくさんあるのに、こんなんで跡継ぎやってけるか心配だな。


「暖炉なんか眺めてぼーっとしてる暇があるなら勉強したらいいではないですか?

単位が足りなくて留年したのでしょ?分からない所はどこですか?私が見てあげますよ。

ウジウジしてないでシャキッとしてくださいよ」


「な!お前にわかるわけが無いだろ!黙って聞いてれば生意気な口をききやがって!

見てみるがいい!まぁ、お前には読めもしないだろうがな」


喝を入れてやったら、ちょっと元気になったのか、生意気そうな顔で教科書と問題用紙を出してきた。

教科書見たかったんだよな。知らん間にテスト受けて合格してたから。


「フムフム、地理も苦手なんですね?

領地の名前なんて確かに覚えるのが面倒ですが街道なんかは、他国に抜けるときの領地くらいは覚えておきましょうよ?迷子になったときに帰れなくなりますよ?

王都から西側に抜けるルートは、こっちでも行けなくは無いですけど、畑ばかりで泊まるところも無いですし野宿ですよ?

しかも到着した先にあるのはショボい船着場です。手漕ぎボートで海を渡ると?

あなた絶対に無理でしょ?そんなルート書いてもバツされますよ。

遠回りしてるように見えますけど主要な港やメイン街道はこっちです

この問題用紙の地図は簡易版なので載ってませんが、教科書には載ってます。ここの港町では、他国との交易品で賑わってるそうですよ、一度は行ってみたいですね」


「教科書に載ってないのに、より詳しくなぜ知ってるのだ!」


「商人の友達が楽しそうに話していましたし、教科書の地図を見たらわかるじゃないですか。

ってか教科書が綺麗すぎません?全然使ってないじゃないですか!

本当に勉強してないのね!

学校でもそんな態度してるんですか?先生にも友達にも聞けなくて勉強の仕方がわからないまま来ちゃいましたね

私が教えてあげますから卒業を目指しましょうよ?春からわたくしも行きますから」


「友達くらいいる!

って、はっ?なぜお前が春からカレッジへ行くのだ??まだ小さいし、跡継ぎでもないだろ?」


「え?聞いてませんか?

わたくし、勝手に大人達の都合でなりたくもない王太子妃候補にいれられたのですよ?

なぜ次の春から行くことになったのかもさっぱりわかりませんが、卒業したら城で王妃教育が始まりそうですね。

短い青春だと思ってカレッジにいる間は好きなことしようと思っています。

留年できるならわたくしもしたいですわ!5年通ったところで10歳ですもの

テストを受けなければ留年できるなら、最初の3年くらいは全部白紙で提出しようかしら?卒業試験なんて3日もあれば終わりますしね。

良い考えかも!留年したら王太子妃候補からはずされそうですね。

跡継ぎでもない女の子ですけど、多少の家の恥に

なるかもしれないので、卒業後は領地に籠もってますわ。なんなら籍を抜いて平民にしてくださると、さらに自由を満喫できますわ!

貴族って男性はいいですけど女性は損だと思いましてよ、しがらみばかりでつまらないわ!」


「聞いてない・・・

あ、だからレイナルド殿下のお茶会によく呼ばれていたのか・・・

殿下も何が言いたいのかわからなかったが、というか、お前よく喋るな!

見た目と違って賢すぎないか?私の弟妹は2人して優秀すぎないか?

それに平民に落ちてもいいなどと何を言ってる!そんなことしたらすぐに野垂れ死にだぞ!物事の道理を知らぬガキめ!」


「平民は落ちてなるところではありませんわよ?確かに今すぐに平民になると野垂れ死にですけど、大人になるまでにコネや金をためますよ。

貴族が関所を通る場合は多額の通行税がとられちゃいますけど、平民だとびびたるものです。

わたくしは自分が生きてる間にいろんな所へ行ってみたいです。城で陰湿で退屈で不必要な王妃教育よりも平民じゆうになって世界をまわりたいです。

民の血税で生きてる貴族がわがままを言ってはいけないので早々に自活出来るようになりたいですわね」


「関所を通っても金など払っていないではないか?何を言ってる?

自由だと?そんなもの今でも自由じゃないか?誰も私を縛ってなどないではないか。

私に興味のあるやつなどいないではないか!」


「いちいち関所を通る度に現金を払ってる訳じゃないですよ、貴族は誰が通ったか控えてるだけです。習ってないのですか?年末にまとめて請求がきます。

領主は決算報告書の最終のハンコ押すだけに見えてますけど、ちゃんと収支報告書を読まないと騙されて水増しされますよ?見つかったら罰金で済むので。まあ信用は失いますが。

今が自由な訳ないじゃないですか、あなたが死のうとしてたのって、狭い視野で身動き取れないからですよね?

平民になるって、無一文で追い出されるとか考えてませんか?

弟妹には馬鹿にされて、頼れるだけの仲の良い友達もいないし、婚約者には捨てられるとか考えてませんか?

金の稼ぎたかもコネも無ければそうですけど、他国には藁一本しか持っていなかった平民が豪商になる話もありましてよ?」


「何なのだ!何なのだお前は!

難しい言葉がよくそんなに出てくるな!何なのだ、何がしたいのだ、何が目的だお前は!

まさか私を蹴落とすために?」


「あなたの自殺を止めに来たのですよ。

元気そうなのでもう帰りますね?スコットおにーさまが私の部屋で布団を温めて待ってますから。

私たちの部屋は暖炉がないので、もう夜は寒くなってきましたし?

少しは素直になりなさいよ、思春期拗らせてないで。ではごきげんよう」


「なぁっ!待て待て!本当に一緒に寝てたのか!兄妹じゃないのに!ふ、フシダラだ!破廉恥だ!それに私は思春期を拗らせてない!」


「何言ってんですか!

兄妹ですよ、普通ですよ、小さい子は一人で寝ないんですよ!」


「フン!」


するとコーネリアスはテーブルにあったベルをチリンとならした。お付きの人がすぐに入って来て


「コイツの部屋で寝てる愚か者に伝えろ!コイツは今日はここで寝るとな!行け」


多分、公爵家から一緒にこっちにきた従者の一人かその子どもだと思う。伯爵家も使用人同士で派閥があるのだ。

「かしこまりました」

そう言ってスッと去って行った。


「・・・・」


「何だ?文句があるなら言え!黙るな!さっきまでベラベラ喋ってただろ!」


「寂しいからって、私の了解も得ずに強引に決めないで下さい。

まあ、条件をのむなら一緒に寝てあげてもよろしくてよコーネリアスお兄様?」


「くっ、何だ、条件だと?言ってみよ」


「スコットおにーさまを愚か者呼ばわりするんじゃないわよ!

それから明日からちゃんと私の部屋に来て勉強しなさい!一人でウジウジしてるから進まないのよ!

後、お前臭い!風呂入れ!」


「な!生意気な!私は臭くない!湯浴みならさっきした!」


動物性油の石鹸使ってるのか?

くっせーんだよ!一緒に寝れないじゃねーか!カヤック達の匂いとはまた別の独特の匂いだ。

無理でしょ。

俺のスコットはめっちゃいい匂いなのに!


「もう1回入りなさい!洗って差し上げるから入って下さい!

領地でシャンプー開発したんですよ、一本あげますから次から使って下さい!

早く湯浴みしますよ!お湯沸かしてもらって下さい!」

俺はチリンとベルをならしてよんだ


「な!お前が洗うのか!そんなこと伯爵令嬢がするものじゃない!何なんだ!」


「平民になるなら必要なスキルですわ」


「本気で言ってたのか?」


驚愕してるところ悪いけど、この部屋の暖炉が暖かくて眠いんだよ!はやくしろよ!

一応、お前も兄なんだろ?家族枠にギリギリ入れてやるから寝てやるよ!


従者がきたから

「お湯を沸かして!湯浴みをするわ」と言うと黙って頷いて下がった。


「勝手に命令するな!マックスは私の従者だ!」


「ハイハイわかりました、湯浴みしに行きますよ」


「そんなに早く湯が溜まるわけないだろ?馬鹿なのか?」


見に行くと、俺らの5倍ほどあるバスタブがおいてあった。このデカいコーネリアスの手足が広げられる程だ。

いちいちサイズが公爵レベルだ!


「本当に大事に育てられてたんですね、私たちの部屋にあるやつより大きいです」


「すまなかったな」


何が?


「お前たちの部屋が狭いのも私の母がそうしろと命令したからだ。

スコットは文句も言わなく黙っていたから、不満に思っていたなんて知らなかった。

あいつの部屋にはまだ鏡台はあるのか?」


「無いですよ?」


「そうか・・・・悪いことをした」


何なんだ?ちょっとセンチになってしまった。

しょぼくれた顔がお父様そっくりだな。

怒っててうるさいときは母親に似てるのだろうか。


従者が3人がかりでバスタブに湯を運んでいて、寝そべって頭を洗えるようになっていた。

たくさん従者がいるのにスッポンポンになり湯浴み用の服に着替えさせてもらっていた。


貴族だ!本物の貴族がいる!

恥ずかしくて俺には出来ない!こんな大勢の前で着替えさせてもらうなんて!本物のお貴族様や!


「ふん、何を見ている!洗ってくれるのであろう?」


ハイハイ洗いますよ。

俺はポケットから小瓶を取り出して洗い始めた。

スコットとは違って濃い金髪だ。

目鼻立ちもハッキリくっきりしててお祖母様の孫だと紹介されたら領民は恐れてひれ伏すだろうな。

目元も吊り気味で言いたいこと我慢しない、わがままが滲み出てる感じだな。


「珍しい香りだ。

お祖父様が領地で開発したのか?お祖母様は元気そうであったか?

お前は口達者だから喧嘩してたのではないか?」


「お二方は、わたくしの可愛さにメロメロでしてよ?」


「フッ減らず口を・・・ハァ、お前は不思議だ。スコットが懐くのもわかる」


俺は驚愕した


だってその言い方だと、まさか、俺がスコットを盗ってたのか?

なるほどな、そーだよな!


初めて会う妹より、仲良かった弟が知らん間に見た目も中身も大きくなって自分より妹を大事にしてたからショックだったんだな!

確かに嫌味のベクトルがほとんどスコットだったわ!

あっぶねー

スコットが下手に俺を庇うと、余計にこじれるやつやん!お前もブラコンだったんかーい!


なんてわかりやすいやつなんだ!

俺の方が阿呆でした。

一緒に寝たいのも、名前で呼んで欲しいのも手を繋ぎたいのもスコットなんだな!


こじらせブラコン兄貴か、俺の知らない世界だ。まあ頼れるお兄ちゃんしたかったんだな?

さっき俺が言葉の暴力でフルボッコにしたけど、スコットに恥かかせたくなかったから、ちょっと意味わからんことほざいてたんだな。


まあ母親死んで寂しい時に全寮制の学校にブチ込まれて

父親は構ってくれなくて

勉強が出来なくて留年して

多感なお年頃の反抗期も思春期も拗らせて

ずっと一人で寂しくて、会いたかった弟はなんか成長しててショックだったんだな。


クソ面倒だな!


尻を叩いてやるのがいいのか、甘えさせてやるのがいいのか迷う年頃だな。

反抗期拗らせてるなら、尻を叩くのは逆効果かもしれない余計に拗れそうだ。


スコットにますます当たりが強くなるとウザイからな!俺はスコットのために頑張るぜ!


「コーネリアスお兄様、泡を流すので目を閉じてて下さい。顔を覆っていてもいいですよ?目に入るといたいですから」

ことさら優しく言ってみた。


「仕返しに目に入れて来ると思ったけど、普通に洗ってくれたのか?フン!」


俺が虐め過ぎたようだ、すっかりイジケてやがる


「色々言い過ぎましたごめんなさい。

もう臭くないですよ?スコットおにーさまも同じ香りです。多分お父様も薔薇の香りがすると思います」


「私だけ違うのは知っていたのだ、そうかこれのせいだったのか。

お前のお陰で私もみなと同じになれたのだな、フン!こんなことで恩を売ったと思うなよ?」


「こんなしょぼい恩なんてわざわざ売らないですよ。スコットおにーさまの頭も洗って従者の頭も洗って友達の頭も洗ってますから。

そんなのみんなに恩売りまくりじゃないですか。

そこまで卑しくないですよ?ただのスキンシップですよ」


「お前はいちいち減らず口だ!少し黙ってろ、私の感動を返せ」


感動してたんかい!素直じゃないな全く。


頭も洗ってスッキリしたのか、顔からけんがとれて柔らかくなった。

小さい妹相手に緊張してたらしい


着替えてぎこちなく俺を抱き上げてベッドに向かった。顔を赤くしてドギマギしてるようだ。

布団に正座して、さあ寝るぞ!と気合を入れていた。


言われなくても、もう眠たいから勝手に布団に潜り込んだ。

するとコーネリアスもモソモソ入ってきた。


「スコットはいつもどうしてるのだ?どうやって寝るのだ?」


「どうやってって、腕枕したり抱き締めたりしてます最初だけ。

わたくしの寝相がよろしくないし、寝返りうちますから後は自由ですよ。最初だけくっついて寝てます」


そう言って仕方ないから俺からくっついてやった。

ふん!どーだ、小さい子どもの体温って温かいだろ?まあ暖炉があるから温かいけどなこの部屋。


「そ、そうか、そういうものか。

男女の契でもないのに、一緒に寝るなどと頭がイカれたのかと思ったぞ。

なるほど、悪くない。たまになら呼んでやらんこともないぞ?

クンクン、お前と同じいい香りだな、確かにこれと比べると私は臭かったな。

香水をふって寝るわけにもいかないしなハハハ」


ようやく笑った顔は、俺の知らない元公爵令嬢の母親に似てるんだろう、美人な顔だった。


「コーネリアスお兄様は筋肉ムキムキですね。なにか運動してるんですか?」


「家にずっといたのに運動などしてるはずがなかろう、スコットは乗馬してたのか?下半身がしっかりしてきたな」


天然でこれ?えー、俺なんて筋トレしてもこんなんならねーよ!

今日はダンジョンボート見れないけどまあ仕方ないな。

幼児の俺はすぐに寝てしまった。

マリアンヌは机の上で大人しくしてた。


朝起きたら、コーネリアスの従者が俺の着替を既に用意していた。

着替えと、髪のセットをしてくれて誕生会でもないのに複雑に編み込まれて頭がシャキッとさせられた。さすが公爵レベルだ!


「久しぶりによく眠れた。

なぜだ、誰かと寝るなど寝にくくて仕方ないと思っていたのに!

知らなかった、こんなに気持ちのよい目覚めなど初めてだ。なるほど、よくわかった!」


とか言って感激してた。よーございましたな。


「若様ようございましたね、妹君に許してもらえてよろしいですこと」


従者が慰めててなぜか俺が怒ってることにされてた、泣くほど嫌われてるの間違いかもしれんが。


「フン、またこの兄が一緒に寝てやる!覚悟しろ」


決め台詞まちがってない?覚悟って何の?

俺は笑って返事を誤魔化しといた。


部屋を出ると、サイモンが心配そうに迎えに来ていて「お嬢様!ご無事ですか?」と言ってきた。


「フフフ、サイモンは心配性ね。

コーネリアスお兄様のお部屋はとても暖かくて寝やすかったわ。それに、ちょっと虐め過ぎたけどちゃんと謝って仲直りしたわよ、多分」


「その言い方だと、お嬢様の方が悪者に聞こえますよ?仲直り?できて良かったですねホッ」


「フン、私が許してやったのだ!私の部屋が気に入ったのならまた一緒に寝てやる!私は心が広いからな!オイ!従者の分際で生意気だ!知った口を聞くなよ!」


サイモンがビクっとして、怖がるから仕方ないフォロー入れとく。


「今の言葉を訳すとね?

"スコットが大好きだけど妹に取られて寂しかったんだごめん"って言ったのよ。素直じゃないのよ全く」


「そんな事言ってない!」←コーネリアス


「そんなふうに聞こえません!」←サイモン


この2人はポンコツ具合が似てるんだな。


コーネリアスは、朝食の席順を変えるようにサイモンに申し付けて、サイモンが物凄く困った顔をしたから助言する

「サイモン、言う通りにしなさい大丈夫よ?」


サイモンが食堂まで走った。


「相手に了承を得ずに強引に決めるのはどういう事ですか?

席順くらいでごちゃごちゃ言いたく無いですけど、先に一言わたくしに断ってからにしてよ?」


「何を言ってる?いつもしてる当たり前の事だぞ?私より偉いのは父上だけだぞ?なぜお前の了承を得ねばならぬのだ?馬鹿なのか?」


馬鹿はおめーだよ!何いってんだ?

はっ!元公爵令嬢の伯爵家を下に見たためにできたコイツのルールだな!


「あのですね、身分が低いからと自分勝手な命令ばかりではいつか領民達に一揆をおこされますよ?

事前の根回しや相手に了承させるくらいのこと、貴族なら出来なければならないのですよ?

コーネリアスお兄様は跡継ぎなのでしょ!平民を目指してる私ですら理解してることを、なぜわからないのです?馬鹿はお前だとは言いませんが、私のことを馬鹿呼ばわりする前にご自身の事を鑑みては?」


「減らず口がよく回るな!あー言えばこー言う、1言えば10返ってくるではないか!生意気な!何なのだお前は!」


「その偉そうな物言いもどうにかしたほうがよろしくてよ?偉くなってから偉ぶりなさいなお兄様?」


「お前の生意気な口をひねってやる!このこの!ワハハプニプニだな!」


ほっぺたをプニューっと凹まされた、地味に痛いけど、まあ許してやるよ。

食堂に入ると心配そうな顔をしたスコットがいた


「おにーさまおはようございます」


「マリー、あの、おはよう」


スコットは何か言いたそうにしてたけど、コーネリアスが睨んだのだろう黙ってしまった。

相変わらず不器用なやつだな・・・。

俺はコーネリアスの隣に座らされたけど親たちは特に何も言わない。


そこでようやく気がついた、2日ぶりに帰宅したお父様が仕方ないなぁみたいな顔してる!むしろ微笑ましそうに見てる!


オヤジ、お前知ってて黙ってたな!なんだその"素直じゃないね全く"みたいな顔!


はっ!お母様の華麗なスルーもそうだ!

知ってるんだ!このデカい兄貴の馬鹿な暴言がツンデレだと!

俺は嘘泣きぶっこいてとんだ茶番を披露してたのか?


ぐはぁ!

めっちゃめちゃ恥ずかしいじゃないか!

幼女でよかった。お箸が倒れても泣く年頃だろ?

くっそー、今も俺を心配してるスコットを微笑ましそうに見てやがる!クソ親父め!


「なんだその100面相は!さっきからこのプニプニめ!オラオラ!」


俺のほっぺたをお気に召したようだ。

そうだコイツはアホだったな、呆れて物も言えんわ。皿を見ると野菜を避けていた、小学生か?本当アホじゃねーか!


「野菜も食べれないのに大きくなれて羨ましいですわ、でも頭の栄養ですのよ?足りていないのではなくて?」


お父様がブフッと紅茶を吹いていた。

コーネリアスが食後に俺の部屋で勉強することをちゃんと報告していた。

お父様は昨日従者から聞いたときに、空耳かと思っていたらしい。

俺を見てうんうん頷いて笑ってた。


「マリー、兄上と勉強するの?

じゃあ僕は自分の部屋で勉強するよ、邪魔にならないようにするから・・・。その、兄上と仲良くなれて良かった」


「待って下さいおにーさま!」


スコットの寂しそうな顔はムリ、絶対になんか勘違いしてるよな?

いやいや、長男なんぞよりもスコットの方が大事に決まってる!


「でも、マリーもそのほうがいいと思うよ?兄妹で仲良くしたほうがいいし。僕の心配してくれて嬉しいよ、ありがとう。

マリーは優しいね、それじゃあ」


「わたくしはスコットおにーさまの方が大事ですよ?

ぽっと出の長男よりスコットおにーさまが私にしてくださったものの方がたくさんあります。

そんな簡単に乗り換える尻軽だと思ってませんか?私の押しはスコットおにーさまですわ!

ずーっと仲良しって言ったのお忘れですか?」


「マリー・・・あっマリーから兄上の匂いがする、本当に一緒に寝たんだね・・・今日はどっちと寝るの?」


俺の頭を撫でたスコットがちょっとヤキモチ焼いてるように見えた。

スコットも懐いてた妹がとられたように思ったのかもしれない。


「それに、冗談ではなくサイモンレベルでした」


「え?・・・・えぇ!そ、それは」

スコットがサァーっと血の気が引いた。


「私の言いたいことがお分かりですね?」


「うん、それはみんなで一緒に勉強しようか、ヨハンって教え方がうまいよね。

マリーはスパルタだから兄上を教えても大丈夫なの?喧嘩にならない?」


「言ってる場合ではありません。教科書もあるので、この際にみっちりしごきます!多少泣かせますけど、スコットおにーさまがフォローしてくださると助かります。

後を継がせたあとコルチーノが没落されては困りますから」


するとコーネリアスが来て


「こんなところで喋ってる暇はないぞ?

お前の部屋で勉強などと狭くてかなわん!皆を連れてきてもいい、私の部屋に来い!お前の学力でカレッジに行けるのか見てやろう!さあ、準備をしてこい間抜け共め!」


間抜けはお前だ!スコットの方が賢いわボケ!

コーネリアスが楽しそうに自分の部屋に戻った、従者にお茶の用意を頼みながら。


その虚勢が薄っぺらく見えたのだろうスコットは憧れてる兄がポンコツだったショックを受けていた。





俺「だから、さっきも説明しただろ!何回言えば理解できるんだこの間抜け!もう一回言うから耳の穴かっぽじってよく聞け馬鹿!」


コーネリアス

「スコット、コイツは何なんだ、カレッジの教授でもここまでの暴言はかない!なんなのだ!グズッ

こんなの、何でもいいではないか!なぜ私の答えが弾かれるのだ!・・・ヒィ」


俺「やい!スコットおにーちゃんにすぐ頼るんじゃねーよ!

自分の頭で少しは考えろ!答えなんて何でもいいわけ無いだろ!質問の意図をよく読め、お前の頭は飾りか?ハイ問題文朗読しろ!」


スコット「マリー落ち着いて、サイモンが思い出して泣きそうだよ?」


俺「あら、ホホホ

サイモンは入学さえ出来ればいいのだからギリギリ合格ラインでしてよ?

後は自分のペースで頑張って学力を維持したらいいのよ?それに、サイモンはよく頑張ってるわ

だいぶ賢くなってきたじゃない、やればできるわよ?ね?」

サイモンが今朝よりビクゥっとしていた。

ヨハンが背中をさすっていて慰めていた。仲良くしてるみたいだ。


教え方が下手な自覚はある。

俺は教師になってはいけない人種だ。一応「何でできないの?」を言わないように我慢してたけど、ことあるごとにコーネリアスがスコットをイジるからキレてしまった。


コーネリアスの自信と虚栄心を粉々に砕いてしまったけど、まあいい。

スコットと仲良くなりたかった願いだけは叶えてやることが出来たと思う。俺と一緒に寝ようと言わなくなったし、勉強の大切さがわかったから一石三鳥だな。


コーネリアスの従者達にすごい目で見られたけど、俺の部屋まで遠くて、あんまり接点がないから全然構わない。

孤児出身のアンナはここに入れてもらえなくて寂しい思いをしてるからな、ついでに仕返し。


俺「わたくしは権力を持ってはいけないのよ、暴君になってしまうわ、きっと。

自分を基準にしがちだから、高水準を求めてしまうわ。わたくしは参謀か副将タイプと言うよりも歩兵に見せかけた飛車よ。普段は歩兵でいいのよ」


スコット「ハハハ、そんなわけないよ。権力を持ってもマリーは暴君にはならないよ。

たくさんの手札を用意して最後まで民を思っているよ。開拓区でもマリーは人気だったじゃないか」


コーネリアス

「スコット、お前の目はどうなっているのだ?

どう見ても暴君じゃないか!悪の女帝にしか見えん!こんなやつが王太子妃だと?

あの公爵令嬢を真っ直ぐに育てたほうが未来が明るいだろ」


俺「まあ!コーネリアスお兄様

私達は気が合いますわね?わたくしも同じ事を考えていましたのよ?

ただ、一応ライバルで年下で爵位も下のわたくしが公爵令嬢を応援しても嫌味にしかならないでしょ?心の中でいつも応援してますのよ?

わたくしは蹴落とす必要も無いですもの、自分から飛び降りますから舞台を用意して欲しいですわ。

お兄様がお会いしたときは、遠慮なくお伝え下さいな」


スコット「マリー、やっぱり嫌なの?

マリーがこの国の王妃になると国が良くなると思うよ?隣国とも良い関係が結べるんじゃないかな?」


コーネリアス

「こんなやつに隣国との関係?無理に決まってるだろ!スコット大丈夫か?洗脳されてないか?

引っ掻きまわして大惨事だぞ?外交官になってはいけないヤツだ!」


まあ、遠からず当たってるよ?少しは賢くなったじゃないか?


コーネリアスがヨハンやスコットに勉強を教えてもらいたがっていて、サイモンも自分でやりますと気合を見せていた。


暇になった俺はミネルヴァに呼ばれた。

アンナと2人で明日から行くことになった。

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