旅立ちとは別れじゃない
3日後にダンジョンへ行く事になった。
『チュットとかいうの終わったのかよ、今日はえらく楽しそうにしてたね、へぇ~?またロバートなの?僕あいつ嫌い!』
チャットな。
「あー、うん。隣国に賢者の祭壇出来たんだって。でもあの大使が壊しちゃって。
俺は聖女の祭壇なら壊してもいいって言ったんだよ?あの見た目でおっちょこちょいだな?」
『ふぅーん、それで?』
「カカオ欲しいから、交換条件で行くことにしました。チョコまた食べたいから。今度は生チョコっていって幼児の耳たぶくらい柔らかいチョコなんだよ!俺、北海道に出張行くと必ず買ってる。
物産展とかでも買えるけど限定品は行かないと買えないし」
『どれどれ?ハム』
「ひゃぁ!ちょっ何してんの!!」
『幼児の耳たぶ柔らかいな、へぇ~こんなチョコなんだ・・・お前、顔が真っ赤だ!アハハ、どーしたの?アハハ!なんて顔だ!アハハ』
「ヤメロォ!」
ホントにどこでそーゆーの覚えて来るんだろう?
今はダンジョン・コアの露天風呂に来ている。一定の魔力値がないと入れない挑戦者限定の露天風呂だ。
前に1度だけ温泉姫が一緒に入って来ようとしたから仕事しろ!と追い返した。
冷たいとか文句言ってたけど放置だ。
自分だけ行くのはスコットに悪いと思ってたけど
「マリーは本当にお風呂好きなんだね、いいよ僕に構わず行っておいで?僕は温まったマリーで温まって寝るから」
と言うので遠慮なく行ってる。
部屋に戻ってきて
俺「おにーさまただいま戻りました」
スコット「マリーおかえり、今日は長かったね?」
俺「カヤック達が無事に到着したようですわ」
スコット「そうなんだ、無事に帰宅できて良かった。そんな事までわるなんて便利だね。
さあ、もう寝よう、マリーが温まってるうちに」
俺「はい。
おにーさま、3日後ってどうなってますか?」
スコット「街道が新しくなって、真っ直ぐ王都に戻れるようになってるでしょ?
3日後って、街道の近くの宿かな。どうしたの?」
俺「3日後にあのダンジョンへ行きます。カヤック達が困ってるようなので・・・」
カカオ豆と交換条件で行きます。
スコット「え!」
俺「あの大使が賢者の祭壇を間違って壊して捕まってしまったようです」
スコット「えぇ?なんで祭壇なんて」
俺「聖女の祭壇が勝手に出来てたら壊して欲しいと頼んだの私なのです。だから大使が壊したのですが、他所の祭壇でした。
賢者さんは別に怒りませんが、賢者の弟子を名乗る人が出てきてややこしくなってます」
スコット「それは、大変な事になってるんじゃ?あれ、3日後って街道の宿でしょ?マリー大丈夫なの?」
俺「おにーさまは、ピッピがまだ雛なので行きませんよね?毛布を包んで人の型にして膨らまして、アリバイ工作してくれませんか?
誰か来てもわたくしはもう寝てるからと誤魔化して欲しいのです
こんな事頼んですみません」
スコット「それは別にかまわないけど、マリー大丈夫なの?危ない事はしないで?
マリーは強いしカッコイイけど心配だよ。
約束して、ちゃんと無事に帰って来るって」
スコットが俺の頭を撫でて、心配そうに見つめてくる。前回はなんだかんだ危なかったからな。
手前の神殿で祭壇組んでてくれたら楽なんだけどなぁ。
奥行くまで遠いじゃん!
はっ!もしかして、わざわざ神殿の中に入らなくても脇道通れたりしないかな?
ダンジョン・コアの案内で進んだから神殿の中に入ったけど。盗人いるし聞いてみようかなー。
翌日、朝食を軽めにとって昼から身内だけの送別会みたいなのをしてくれた。
オリバー先生やオースティン先生は開拓区の宿に泊まる事になり、研究棟兼宿泊施設をじーさんが計画してる。
「オリバー先生の授業は楽しゅうございました。わかりやすくて良かったです。お世話になりました。」
オリバー先生「私も来年の春はカレッジで授業を再開しますので、お会い出来るのを楽しみにしております」
オリバー先生は雪がふるギリギリまでいるらしい。そろそろ抱卵鮭を捕まえて卵を集めてる。実験したくて仕方ないようだ。
ヨシュアも来ていて、チョコの材料や作り方なんかも聞いてくるけど、チョコになってからの加工の話ししか出来なかった。
「ごめんなさいね、チョコになった後の事しかわからないのよ。ガトーショコラとかは工程がたくさんあるけど材料自体はバター、卵、小麦粉、砂糖とチョコだけなの」
ヨシュア「詳しく!詳しく聞きたいです!」
料理長たちにはチョコが手に入った後の料理本を渡しておいた。
茶色い絵が多くて、「カレーのルーみたいだな、新しいスパイシーな菓子か?」と聞かれてしまった。実物ないと難しいよな。間に合わなくて残念だよ。
おばあちゃまに無茶振りされて泣きをみるんだきっと。
アンナが厨房連中ととても仲良くなっていて、料理長たちからたくさん餞別のお菓子をもらったからこっそり半分くらいアイテムボックスに入れていておいた。
おばあちゃま
「あら、ずいぶん減ってるわね?マリーウェザーちゃん食べたの?」
「アンナと食べました。美味しかったです」
アンナが食べたことになったけど、多分俺が見てないところで食べてると思う。
おばあちゃま
「あらそうなのね。
マリーウェザーちゃんに会えておばあちゃまとても嬉しかったわ。貴女達はいつでも帰って来ていいのだからね?
困った事があったらいつでも力になるわよ。おばあちゃまは、ずっと貴女の味方だからね?
人生は長いの、挫けず頑張りなさい。
温泉宿が出来たら招待状を贈るわね。元気でいるのよ?風邪ひかないようにしなさい。
あら、年をとると涙腺が弱くなって駄目ね。
何年たっても、いつでもどんなときもマリーウェザーちゃん大好きよ」
「おばあちゃまぁ、うぇ〜ん絶対に温泉入りに来ますぅ」
幼児も涙腺が弱いのだよ。
アラアラヨシヨシと抱っこしてもらった。おばあちゃまはパワフルだった。
じーさんが次はワシもすると後ろでソワソワ待っていた。
門番ちゃんと置いてくからね!
ヨハンの工房でフィギュアを作っても顔の絵付けが出来なくなり、生産が止まってしまうけど冬場は閉めると元々言ってたから来年再開するときにどうするか考えるそうだ。
雪国の習慣だな、巣ごもり用に漬物とか干し野菜とかを地下に溜め込んでる。
奥さんのお腹がめちゃくちゃ大きくて、何人入ってるんですか?と聞いたら笑われた。
代わりと言ってはなんだけど、泡の実のシャンプーとロバートさんからもらったバラのハンドクリームレシピを内職代わりにやることに。
バラのオイルではなく、近くでとれるオレンジの廃棄を使ったオイルのハンドクリームだ。柑橘系の香り俺は好きだよ。
アンナが伯爵家からお菓子を持ってきて、工房だけの送別会もしてもらった。
みんな、アンナとヨハンが居なくなることをとても嘆いていた。
子ども達に卒業したら戻ってきて下さい!と慕われている。ヨハンのコミニュケーション力が違う!
満更でもなさそうに嬉しそうに照れてヨハンが喜んでいた。
あれ、アンナと子ども達の面倒見て、一緒に買い物してたのサイモンなのに?
チラッと見たら、もらい泣きしそうにウルウルしてたけど、お前あっち側じゃねーの?と思わずにはいられなかった。
ヨシュアもちなみにこっち側で微笑ましそうに見てる。
俺は伯爵家のお嬢様だからいいんだよ、みんな礼節をわきまえていて遠慮してるの伝わって来るし。
みんなと別れをすませて
俺たちは馬車を何台も連ねて旅立った。




