理想のフィギュア
おばあちゃまが俺の描いた王子様を自分の趣味部屋に飾っていた。
時折絵から顕現して、屋敷の中を徘徊してて俺は超絶ビビっていたのだが、無口で会うと会釈してくれるいいヤツだった。
誰にも見えていないみたいだけどな。
雑草抜いたり庭の落ち葉集めたりして、ピッピは特に気にしてないみたいだ。
おばあちゃまがたまに絵に祈ってたから、おばあちゃまの趣味に合っていたのかもしれない。
服くらい着てくれと絵の前にお供えしてたら、出てきたときに着ていた。
新しい家守かな?
『お前はとんでもないものを産み出したな・・・こいつは流されないだろう。
芯がしっかりしてるな付け入る隙がない
お前の趣味なのか?僕とは似ても似つかないな・・・』
ヒョロい中学生が鍛えようかなとか言ってる。
「好きな漫画ではあったけど、俺がよく知ってるのは近所のパチンコに・・・んん、あ、いや何でもない。
荒廃した舞台の世紀末の覇者だった御方だ。俺なんか足元にもおよばないよ。
お前はお前だろ? ムキムキになりたいの? この辺とかヒョロいもんな、えい!」
『ヒャッ!急に触るな、くすぐったい!このこの』
「キャハハ、やめろやめろ」
とじゃれあっていた。
そして、
お金だけはたくさん持っていた元教祖が開拓区にいまだに居座り、しつこくおばあちゃまに絡んでくるらしい。
本気で始末しようかと物騒な話が出ていたので、寝る間を惜しんで、娼婦好きな元教祖のために、花魁をフィギュアにしてやった。
仕事とは別腹で楽しかったけどな。
過去最高に盛ってやりました。あのエセ温泉姫の姿絵より下品にもりもりにして。
「おばあちゃま、変な元教祖など手にかけてはなりません。
死んだら化けて出そうで嫌です!
巣に帰るならこれを差し上げましてよ。
再び私たちの目に入るなら見つけ次第没収します。
我々の見知らぬ土地で新たに勝手に教祖でも伝道師でもなんでも好きにすると良いと言って国から追い出しましょう。」
近隣領地にいても困るしぃ?
「まあ! マリーウェザーちゃん
仕事の合間に作ってくれたのね。ありがとう心配かけたわね。
後の事は、おばあちゃまにまかせて!
勿体無いけどこの御神体をくれてやりましょう
二度とこの地に足を踏み入れさせるものですか!」
おばあちゃまとお父様がなんかやって無事に追い出したらしい。詳しくは教えてもらえなかった。子どもに聞かせられない大人の事情と言うやつだ。
この事件はこれで解決するのだが、
後に俺宛に宗教会報誌のようなものが定期的に届くようになり。
元教祖の出自にみんなが度肝をぬいた。
やつの正体は隣国の前王の王弟殿下だって。なんかやらかして国外追放されたから有り金全部持って出奔してたんだと。
今は、違う土地で新たに宗教活動していると手紙にあった。中途半端にカリスマ性があったからな、次は真っ当でいて欲しい。
と思ったけど、真っ当な宗教が花魁のフィギュアなわけないか。
手紙の蝋印に隣国の判子が使われてたので、一応読んでからおばあちゃまが燃やしていた。
一件落着かな。
温泉姫の事件が落ち着いたころ
スチュワート商会が、街から少しだけ離れてて、伯爵家の屋敷からは、そこそこ近くにあるボロ宿屋を買い取り1階の食堂を改装して工房を作った。
ヨシュアが案内してくれると言うので、スコットとじーさんは馬で来て、他は馬車に乗り、お母様と俺とアンナとサイモン、そして、工房の親方になるヨハンが下見に来ていた。
ヨシュアが中に入り数人が跪いて頭を下げていた。
「とりあえず工房として使って下さい。
元の持ち主の息子夫婦が鍵の管理や掃除もしてくれます。
新しく、職人候補も見繕っておきました。領内からと噂を聞いて弟子入りしたい人が近隣領からも来てます。
上の宿泊部屋をそのまま寮として使って貰いましょう。2、3人で一部屋を使えばまだ余裕があります。ゲストルームだけ簡単に整えておきました。
道具をまた発注しておきます。
画材など商会にストックのあるものは、こちらに運んでおきました。
他にご入用があれば言って下さい」
ヨシュア凄いな!
もう、一端の商人じゃね?すご!
人形作ってるだけの俺と違って、発注やら管理やらしっかりしてんなぁ
ヨハン「型も増やして作っていきましょう。
乾燥させるのに時間がいりますから、どうしても仕上げに3日かかりますね」
「パーツごとに大量に作っておけばいいのよ。胴体だけで30体とか足だけで60本とかストックを作っておくの。
髪もはめ込みやすいように最初から頭に穴を空けておけばいいのよ。色もパーツごとに塗ってしまいましょう。
わかりやすく言うと、ライン作業よ!例えば、
この机では粘土をこねて型に入れて乾燥させる。
こっちの机では乾いたもののヤスリがけ。
こちらはパーツごとの色塗り。と工程を分けていくのよ。
そのやり方なら働く人たちも覚えやすいわ。
お顔の絵付けは難しいから彼らが慣れるまでは私達(主にヨハン)の仕事になるわね。
組立だけなら一瞬で出来るわ」
ヨシュア「これが大量生産なのですね・・・これなら一日に何十体とできます・・・。生産の歴史が変わります。」
高級品は一点物の多いこの世界で、高級品の大量生産なんてしてなかっただろうな。
「毎年型を変えて売るから、最初に出回るフィギュアはそのうちプレミアが付くでしょうね。
価値が上がるわよきっと。売れ残りも安売りせずに高値になってから売るといいわ。
コアな信者なら全てコレクションしたがるでしょうね。金持ちは値段に射止めはつけないと欲しがるわよ。
ゆくゆくは、違うキャラも作っていくわよ」
ヨシュア「素晴らしいです!マリーウェザー様の考え方を理解していませんでした!儲け方が異次元です!」
当たり前だが、大量生産のフィギュアは全体的に丸くて太めで角がないのだ。
自分で作る一点物のフィギュアなら髪の毛や指先にもこだわるがな。
俺達は儲け話に盛り上がっていたけど、飽きたお母様は馬車ですぐに帰り
じーさんとスコットが遊びに行くと言い出したので、付いていきたいとゴネたら、ここまで来たんだし行くかと了承をもらい。俺たちを街まで案内してくれた。
ヨシュアは、発注がありますからと街に着くと別れた。
ちなみにアンナはお母様と馬車に乗って帰っている。
この領地にきてしばらくたつのに、俺はこの街に始めてきた。
なかなか活気があって良い街じゃないか、ワクワクしながら屋台や店を覗く。
街の人々がじーさんやスコットを見て
「領主様ごきげんよう」
「ジィ様これ食ってくかい?」
「スコット坊ちゃんこれ持っていってください」など声をかけていて
スコットは女の子から花やお菓子をもらっていた。モテモテじゃないか!
近くの屋根を見ると、ピッピがとまっていて、鳥に気がついた子ども達が手を振っていた。いつの間にいたんだ?(※最初からいた)
じーさんが
「開拓区で人手を集めてるじゃろ?近くの街や村にも人が来てな、どこも賑わっとるわい」
開拓区が整ったら街道も整備する予定だと。
じーさんが毎日スコットと来ては見回りしてると教えてくれた。スコットも馬に乗って、じーさんと駆け回るのが楽しいらしい。
俺も馬に乗りたいけどな!
俺に気がついた街の人達が、小さ子がいる可愛い可愛いと褒めてくれて
じーさんとスコットが孫自慢や妹自慢をしていて
「孫じゃ、めんこいじゃろ? 迷子になったときは皆頼むぞ?」ワハハと笑ってみんなに紹介してもらえた。
「こんな可愛いこが迷子になったら大変だぁ、見つけたら屋敷に連れてってやるよ嬢ちゃん」
と街の人も気さくに声をかけてくれて、
じーさんもスコットも楽しそうに話ていて街の人たちと良い関係が出来ているようで安心した。
良い家族を持って俺は嬉しいよ。
街のおねーちゃん達にイイコイイコされて気分が良くなり、愛想よくニコニコして、俺もアイドル気分を得られた。
両手を上げる抱っこのポーズをすると、近くにいたおっぱいの大きいおねーさんが「まあ!」とか言って抱き上げてくれる。
一人が抱き上げると、みんなモニモニ触ってくるのだ。
「お肌がツルツルね!若いわぁ」「髪もキラキラのツヤツヤ手触りいいわぁ」
「可愛いわぁ、目がくりくりよ」
小さい子って得!おさわり合法だ!へへへ
サイモンは執事見習いの服を着ていたからか、あまり馴染めずに離れたところで遠慮して立って、こちらをながめていた。
ヨハンは、小綺麗な服を着ていたけどアウェイの下町でもちゃんと馴染んでいた。
しかも、スコットの妹自慢にさりげなく混ざって、相槌を打って一緒に笑い合っていてコミュ力の高さが伺えた。
スコットもヨハンも金髪碧眼でイケメンだからな、あちらは、女の子が群がっていた。
黒髪のサイモンって地味にみえて、損だな。顔は可愛い系なのに。
ちなみにマリアンヌ人形は、アンナが汚れるといけないと言って持って帰ってしまった。
帰るときに、街の出口にスチュワート商会の馬車がとまっていて、ヨシュアが
「お疲れでしょう、スコット様とお祖父様は馬で帰られますよね。
マリーウェザー様はこちらの馬車へどうぞ。」
と馬車を用意してくれていた。
お前すごすぎる!
サイモンとヨハンと俺は馬車に乗せてもらって、
工房の話をする。全部スチュワート商会にまかせてしまって、正直めちゃくちゃ助かるけどな。
申し訳なく思うけど、ヨシュアが儲かってますと言ってたので4歳児の俺は気にしないことにした。
ゴトゴト馬車の激しい振動でも、両サイドをヨハンとサイモンに挟まれて、じんわり暖かくてサイモンにもたれかかって寝てしまった。幼児だもんな、疲れてたみたいだ。人の話し声がなんか安心する。俺は眠りに落ちた。
ヨシュア「眠ってしまったみたいです。こうしてみると幼いな。4歳の女の子にしか見えない」
サイモン「お嬢様は4歳の女の子ですが?」
ヨハン「サイモン様そうツンツンしないで下さい、わかってるでしょ? この方は普通じゃないって。僕たまに怖くなっちゃいますから」
サイモン「ヨハンはまだ付き合いが浅いから、それに不敬がすぎる。近すぎる、おい、顔を近づけるな!しっし」
ヨシュア「まあまあ、ヨハンは知らないのですから仕方ありません。」
ヨハン「何の話です?」
サイモン「お前には関係ないだろ、どうせ次の雪がふる前には王都に戻るんだ。知らなくていいよ王太子妃なるなんて!・・・あ」
ヨハン「え!本当に?王太子妃なの?」
サイモン「え、いや、違う!聞くな、言いたくない!コラ、お嬢様を見るな!」
ヨシュア「サイモン様、大丈夫です。周知の事実です。王都でも有名です。
新生聖女様が、マリーウェザー様より自分の方がふさわしいと、ことあるごとに宣言してます。
あれでは、マリーウェザー様が自分より優れている王太子妃だと逆に宣伝してるようなものです。
コルチーノ伯爵は、まだ候補であって、どうなるかわからない、年回りも離れてるからアイザック殿下の方が年が近いし分相応だと王太子妃には否定的だと噂ですが?」
サイモン「くっ!商人の方が詳しい!
旦那様は時間稼ぎしか出来ないと仰せでしたが!
レイナルド殿下本人がマリーウェザー様を推薦してます。
あのバカ公爵令嬢がお披露目でやらかしたのは有名ですから、賢いマリーウェザー様に目をつけたのでしょう。
マリーウェザー様は、殿下の御尊顔はタイプじゃないと嫌がってますね」
ヨシュア「あ〜、マリーウェザー様のお披露目にいらしてましたね、王太子殿下も公爵令嬢も。
ところでマリーウェザー様の好みのタイプは?」
サイモン「・・・・たぶんスコット様だよ。毎日一緒に寝てるし懐いてるから」
ヨハン「あ、それ僕も聞いたよ。毎日一緒に寝てるし懐いてるけど、兄妹なんだし別に普通じゃない?」
ヨシュア「・・・一歩先に行ってますよ」
ヨハン「なにが先に?」
ヨシュア「これも、一部では有名な話です。コルチーノ伯爵がもう蒸し返すことは許さないと仰せだから。
・・・スコット様は公爵家のメイドと馬丁の間に産まれた子だそうです。亡くなった前伯爵夫人が妊娠中にヒステリックにスコット様を罵っていたと当時解雇された侍女が話してました。
すでに馬丁もメイドも前伯爵夫人もみんな死んでます。
コルチーノ伯爵は自分が父だから、長男に爵位を譲ったらスコット様と領地に戻って代官をすると宣言なさったそうだ。」
サイモン「そんな! くっ!商人って本当に何でも知ってる!」
ヨハン「それじゃぁ、スコット様はマリーウェザー様と結婚できますね。
伯爵家の爵位の中の子爵でも男爵でもあればスコット様に与えて開拓区あたりを継がせたりできますね。そしたら僕も将来は一緒に働けます」
サイモン「それは甘すぎだ。ないだろう。
スコット様は元々、王太子殿下の側近候補だ。だから教育を受けていたし。
マリーウェザー様が王太子妃になったら王宮に仕官して支えると旦那様に言っていた。スコット様は有能な人材だ、宰相本人がすでに目をつけてると話していたし、宮仕になれるだろう(僕と違って優秀だから)ハァ」
ヨシュア
「スコット様がそうですか。それなら、さらに一歩リードしてますね」
(サイモン様は王太子殿下に宰相に、どうやって本人から聞いているんだろう?良い情報を感謝する)
ヨハン「まだ先なんだし、わからないでしょ?
その新生聖女?が殿下と結婚したらマリーウェザー様は側妃にでもなるの?
殿下と結婚なんて嫌がってるんでしょ?
領地に戻ってきたりしないの?」
サイモン「ヨハン、マリーウェザー様があなたと仕事するのなんて今年が最初で最後になるだろう。精々、敬って労って尊敬すればいい」
ヨシュア「まあまあ、サイモン様。
素直で可愛らしいマリーウェザー様がこのまま大人になれるように僕たちで守って導いてお育てしましょう。
あ、ヨハンは今年でバイバイでしたね。この土地では王都の噂も届きませんねハハハ」
ヨハン「マリーウェザー様をフィギュアにします、リアルに作ります。ヨシュアにもサイモン様にもあげませんから」プイッ
サイモン「・・・・」ガーン
ヨシュア「ヤダなぁ、僕の商会が工房の管理もしてるんですよ?王都の噂くらい知らせますよ。月一くらいなら手紙も届けます。
マリーウェザー様のフィギュア楽しみだなぁ」手揉み
サイモン「本当に商人ってズルい!」
ヨハン「あ!マリーウェザー様の好きなタイプわかった!王子様を描いてたでしょ?王子様ってふつう理想の男性像じゃない?マッチョ好きなんだよ!みんな残念だったね!アハハ」
「「・・・・」」
馬車がついて、起こされてすぐに湯浴みした。
夕食の時に、お母様とじーさんが工房の話をしてくれてヨハンが量産出来そうだと報告したら
信者総括から信者や親族など欲しい人がたくさんいるから100体は軽いわね!と言われて俺とヨハンは顔を引きつらせた。
夜寝るときに
『何で僕を連れて行かなかった!』
と怒られた。
「アンナが連れて帰ったんだよ。ごめんて、寂しかった?」
『僕が一緒にいないと、お前いつも変なことしてるだろ?』
「特に何もなかったよ?」
『城で拐われたくせに?僕がいなければ危なかったの忘れてないよね?』
「思い出した。忘れてたのに~、領地は安全?でもないの?
ハァ、ホントねぇ、次から一緒にいて下さい」
『わかればよろしい』
俺は大人しくマリアンヌに添い寝されて寝ました。
馬車の男子の会話が書きたかった。




