獣魔たちのお悩み相談 少年マリアンヌ編
「なあ、マリアンヌも学校行く?」
「え?学校?」
「うん、聖王国の学校だよ。俺と一緒に学生やる?勉強も簡単そうだし7歳から人間やる?」
「マリーウェザーと勉強するの?」
「あぁ、人間を勉強する良い機会じゃん?あの幼年学校は財政難だろ?金払えば誰でも留学生受け入れるんじゃね?コルチーノの田舎の親戚貴族ってことにすればさ?どうせ調べても分からんだろ?」
「僕、マリーウェザーと学校で一緒に勉強するの?…やる!」
マリーウェザーはニカッと笑って変身ステッキを振ると、高校生男子くらいのマリアンヌが少年マリアンヌになった
黒目黒髪のムラマサに何となく似ている。それもそのはず、マリーウェザーがムラマサを創った時のモデルがマリアンヌだから
「わぁ!僕が子どもになったの?マリーウェザーと一緒?マリーウェザーと一緒に同じ時を生きていけるの?僕…嬉しい。
…あっマリーウェザーってやっぱり可愛いね」
キラキラ笑顔のマリアンヌが自分の手や体を見て少年になったのを確認し、マリーウェザーを見たら改めて一目惚れした。…子どもあるある
「そうだよ、マーリン・マリアンヌで紹介状書いとくよ…ついでに斬鉄も学校行くぞ!」
斬鉄の見た目はマリーウェザーよりやや年上で、アベルより少し低いくらいだ。(※馬面じゃないけど)馬だけに、擬人化してもがっしりしてるし大きめの7歳で通す
「え?僕もですか!やったー!母上と一緒に勉強できるのですね!僕も頑張ります」
斬鉄がギュッとマリーウェザーを抱きしめると、間にむにゅっとマリアンヌが割って入った
「僕もやったーする!マリーウェザーと一緒に頑張るの!と言うか、なんで斬鉄も一緒なの?」
「お前の面倒見てもらう為だよ?俺は要所で女子扱いあるじゃん?更衣室とかさ?斬鉄に面倒見てもらいなさい」
「かしこまりました!マーリンは僕がお世話します、だけど僕の一番は母上です。母上の次にマーリンをお世話しますからね」
「斬鉄ありがとう、マーリンをよろしくね。何か失敗したら聖王国は違うんですねーって誤魔化しきくかな?」
「僕は斬鉄のお世話いらない!ちゃんと自分で出来る!」
「うん、マリアンヌがちゃんと頑張ってるの知ってるよ。でもほら、どこの国にもさ意地悪する馬鹿いるじゃん?2人なら何とかなるだろ?それに勉強出来そう?」
「ムッ…僕は勉強したこと無いもん!」
「じゃあ今から皆で予習しような?文字書く練習だよ…上手に書けたらご褒美あげるよ?斬鉄も頑張ろう」
少年マリアンヌと斬鉄が睨み合ってヤル気を見せた。マリーウェザーがお手本の字を書いて2人が真似していく
マリーウェザーが「これ上手だよ」
デュランが「綺麗な字ですな」と時々褒めてあげる
――30分後
「僕ちゃんと頑張ったでしょ?ご褒美は?」
「あと30分やろうよ?…学校は1時間授業だからね?次は算数やる?1+1=分かる?」
「2だろ!そんなの簡単すぎる!」
「そっか…それなら100÷4=分かる?」
「……えっと、えーっと…むう!」
「お嬢様、いきなり割り算とか鬼ですかな?」
「諦めさせるために心を折りにいったのでは?」
デュランとヴラドが何か言ってるけど斬鉄が紙に書いて何やらブツブツ言いながら思案していたが
「ハイ!僕わかりました25です!」
「凄っ!計算分かるの?」
「冬の赤い実100個を四人で食べたら1人25個です」ドヤ顔
「その通り!さすが我が息子!賢い所は親に似るものですな」ドヤ顔
「へぇー…なるほど、文章題にすると分かりやすいの?あ、紙に書いてる…斬鉄賢いね」
「もー!マリーウェザー!僕だって賢いの、皆で斬鉄ばっか褒めてズルい!僕だって分かるの!でも、もうやらない勉強キライ!一生やらないプイッ!」
マリアンヌがプイッと言いながら顔を横に向けた
「アチャー…計算が嫌いな奴も大人になれるから大丈夫だよ?機嫌直して?」
「もうやらない!プイーッ!」
「ボディを子どもにしたからか?…マリアンヌはメンタルも子どもになったの?肉体に精神が引きずられるの早くない?」
斬鉄が眉毛を下げて困った顔をしてマリアンヌを見ていた。ここで斬鉄はお利口さんなのに、とか言うと余計にマリアンヌは拗ねる事をマリーウェザーは分かっていた
「じゃあ休憩するか?デュラン冷蔵庫のチーズケーキとアイスティー出してくれる?」
麦茶のように冷蔵庫にアイスティーのボトルを入れてすぐ飲めるようにしてる。子どもは喉乾くのもお腹が空くのも早いから
「マーリン、私とチーズケーキ半分こしよう?仲直りしてくれる?」
約束ごとでもないけど、小指を出してマリアンヌに突き出す。ふくれっ面してたマリアンヌも顔が緩んで「うん、わかった」と小指を絡めた。
ニコニコ幼女の可愛い笑顔の裏で、マリーウェザーは考えた。
マリアンヌを学校に入れて大丈夫かな?斬鉄に負担がかかりそうだ…こんな時にヨハンがいたら、とかカレッジに思いをはせた
「ほら、マリーウェザーあ~んしろ!僕が食べさせてやるから」
「あー(ガチッ)…歯に当てないでくれよ」
「む!体が縮んで手が届かなくなったの!」
「ふふっ、慣れるまで大変だな。ハイあ~ん」
「あー…(モグモグ)僕、ミートパイの方が好き」
「ミートパイはオカズだよ、夜食(寝る前)にちょっと食べるのはチーズケーキでいいだろ」
「お前の兄たちは掌くらいの鶏肉焼いて食べてたじゃん?」
「そうだね…男の子は肉食べたいもんか?俺は順調に女の子になってるんだなぁ」しみじみ
「僕もガリバタチキン食べたい!お前の兄たちみたいな事する!」
えー?深夜のラーメンとか前世ではよく行ったけどね?あんなん夜中に食べたら寝れないじゃん?
この体になったからか夜は寝たいんだよ
「わかった、明日デュランが用意するよ。鶏肉のバンバンジーサラダ食べような」
「バンバンジーって?」
「蒸し鶏と胡麻ダレの料理だよ、お前も胡麻ダレ好きだろ?」
「うん、胡麻ダレ美味しい」
「さて、休憩終わったらまたお勉強しような」
斬鉄がササッと皿を重ねて「母上、僕が片付けます」と持って行った。反射的に「なんてお利口さんなの、斬鉄ありがとう」と斬鉄を褒めてしまった。
またマリアンヌの機嫌が悪くなり、マリアンヌを褒めるを繰り返した
「ヨハンはどうやってコーネリアスに勉強を教えてたんだろう?」
ヴラド「根気よく何度も同じ説明をしていましたよ」
「…1回じゃ理解できなかったんだな」
ふぅとため息を吐いたマリーウェザー
しかし、疲れて眠たくなる頃合いはマリーウェザーが一番早かった
マリアンヌが湯浴みを手伝うと言ってマリーウェザーと一緒に風呂に入ったのも疲れた原因の一つ
マリーウェザーは、アンナと離れてからはヴラドに湯浴みを手伝ってもらってる。腰まである長い髪を洗う時だけどうしても手伝いがいるから
だけど、今日はマリアンヌが強行した。
結果、マリーウェザーが自分の髪も洗いマリアンヌも洗っていた。がしかし「僕がマーリンを洗うのをお手伝いします」と途中で斬鉄も入ってきてみんなではしゃいで疲れた
ヴラドに髪を乾かしてもらいながら船を漕いでいて、そのままベッドに寝転がった。マリアンヌが猫型にならずに少年のまま隣に来た
「僕が寝かしつけてやる、マリーはいい子だよヨシヨシ」
「ふふっ…マーリンもよく頑張ったね。明日から学校楽しみだね」
「マリーウェザーが可愛い」
「知ってるよ」
「お前は、分かってない。僕の胸がどれだけ苦しいか知らないんだ…だからそんな顔で笑ってられるんだ」
「少年になったマリアンヌも可愛いよ」
「マリーウェザー…僕の胸の痛みの半分で良いから分かって」
「…どうすれば良いか知ってるよ、チュッ」
「あっ…マリー好き……その可愛い顔は僕以外に見せるなよ!絶対に駄目!」
「ちょわっ…あんまり抱きつかないで、寝にくい」
「マリーウェザーが可愛いズルい」
「じゃあ手を繋いで寝ればいいんじゃない?抱きつかれるより寝やすいし」
「うん…こう?」
「うんいい感じ、手を繋いで寝るのってなんか安心するね」
「うん、ちゃんと繋がってるって感じがする」
「だよな?」
「うん、マリーがどこにも行かないって、そばにいるって安心するしドキドキして胸が暖かくて気持ちいい」
「…うん」
「マリーもう寝るの?」
「…お話しする?」
「…寝てもいいよ?」
「…むかしむかし、ある所に竹取りの爺がいました」
「え?何の話し?」
「寝れない子の為の昔ばなし」
「それ何の話?…僕、妖精が人間と結婚する話がいい」
「えー?男どもの求婚が嫌で姫が月に帰っちゃう話だよ?」
「は?何それ?」
「だから、竹を取ってきていろんなものに加工する職人の爺がある日、竹藪の中から光る竹を見つけました。珍しいしお金になるから平民の爺さんは取るよね?」
「中に金貨でも詰まってたの?」
「光る所を傷つけないように切ったら中から――(以下略)
――めでたしめでたし、おしまい」
「どうして姫はお爺さんを置いて帰っちゃったの?一緒に連れてけばいいじゃん!」
「お迎えに来た従者からの無言の圧力に負けたんじゃない?部外者連れていけないって。もしくは月には空気がないから、連れてけばお爺さんは息ができなくて死んじゃうからかもよ?」
「月って空気がないの?」
「前世の月には安全に吸える空気はなかったよ?この世界の月は知らない…夜空に浮かぶ月は2つあるよね?片方は精霊やドラゴンが住んでたりしないの?」
「…夜空に浮かぶ月が2つ見える人間は少ないから、捕まって監禁されたくなかったら他で言うなよ?」
「えっ!?」
「お前、知らなかったのか?賢いくせにバカだよな。ドラゴンなんていない、月の精霊がいるに決まってるじゃん。たまに月夜に降りてきて踊ってるぞ」
「え?!知らない見たこと無い」
「大丈夫、僕がちゃんと追い払ってやってるから!」ドヤ顔
「は?なんで追い払うの?見てみたい」
「お前、見た目が月の精霊に似てるから奴らに連れて行かれそうだ、僕が守ってやるぞ」
「ひぇ、誘拐怖っ…アリガト」
「もっと感謝しろ」
「…いつもありがとう感謝してるよ」
マリーウェザーがふにゃっと笑ったから、胸がギュッっとなってドキドキした。
ねむり始めたマリーウェザーの瞼やおでこや髪にそっと口付けをする、力が抜けたマリーウェザーの手を握りしめて瞳を閉じた




