教科書の行先
結局、薄い教科書はお父様を煩わす前に落ち着いた
たまたま来ていたヨシュアにエロ本、じゃなく教科書を預かって欲しいと押し付けて持って帰ってもらったのだ。
「スチュワート商会を信用している、他のものの手に負えるものではないのだ・・・わかったな?」
とスコットが真剣な顔をして渡していた。
「ヨシュア大変なものを預けてごめんなさい」
「あの、マリーウェザー様、中身はいったい?」
「ヨシュア、君は見ないほうがいい。見てしまったらもう、見なかったことには出来ないだろう。預かるだけでいいのだ、決して誰にも見られないようにしろ。君のためだ」
お兄ちゃん、見つかったらヨシュアごと切り捨てそうだけどな。政治家がよくやる記憶にございませんってやつ。貴族とは、時に非情な決断を強いるものなのだ一方的に
そして、俺の知ってる海の生き物図鑑を適当に書いて表紙を【海洋生物学】
湖畔のほとりに別荘を立てて、バーベキューしてる、よくある旅行パンフレットを再現し、表紙に【泉における環境調査】
大急ぎで適当に作りそれぞれに渡して、何もなかったことになりました。
久しぶりにお父様が帰って来て、スコットが何食わぬ顔で見せて、こんな感じで夜の勉強会をみんなでやってますって報告したらしい。
海の図鑑も泉のパンフレットもお父様が面白そうだから自分も読みたいと借りていった。
騒動は、静かに終わった
そう思ってました
まず、ヨシュアに預けたエロい教科書が商会の人に見つかり商会で大騒ぎになっていた。
高名な著者が描いたのかとか、きこりの泉伝説を真に受けて泉探しに旅に出ようとしたりして、ヨシュアが出処を問い詰められてコルチーノ伯爵家へ行った帰りには持っていたとバレてしまった。
人魚の話は宗教的にまずかったのか、極秘扱いされていた。
だけど、隠すほど見たがるのが人間の性だ。翌日には社員のほとんどが知ってしまい噂が噂を呼び教会の偉い人が聖画を寄越せと商会に押しかけてくる始末。
ヨシュアは泣きながら、コルチーノの人には約束したから向こうに問い詰めないで欲しいと懇願し
スチュワート商会の上層部会議まで開かれ
商会の利益と伯爵家の信用を天秤にかけていた。
大事なあれ書いてなかった、この物語はフィクションです架空の人物・団体でありのくだり抜けてました。
スチュワート商会が大変な頃、そうとは知らず
おやつの時に何気なく
「雪が降っても別荘って儲かるの?」とかお父様が聞いてきたから
「若者にはウィンタースポーツ、雪像祭り、雪で小さなドームを作り中でバーベキューとか楽しそうです。
金持ちの年寄りには温泉宿を湯治を目的に月単位で予約してもらいます。 【美人の湯】と看板を立てとけばご婦人方に勝手に噂になりますよ。柑橘類をお湯に浮かべとけば雰囲気でますしね
エステやマッサージ、健康食品などいわゆる美容関係に力を入れれば女性受けは良いと思いますわ」
儲け話って楽しいよね、エロ本じゃなくて教科書から離れるなら大歓迎だ
「温泉ってテルマエのことだよね?そんなのが売りになるのかい?」
「公衆浴場ではなく、高級温泉宿ですわ。地元の珍味や豪華なお食事を出しますの」
ペンと紙でサラサラと俺の知ってる温泉街の町並みや温泉宿の絵を描く
「部屋ごとにお庭にお風呂を設置します。露天風呂です、こんな感じで開放感があって気持ち良いです」
美人がお風呂に入ってる絵を描く、高くて庶民には手が出ないけど泊まってみたいよな家族風呂ってやつ。
「温泉って、臭いやつもあるよね?そんなので、人が来るの?」
「硫黄の匂いですか? 好き嫌いがありますね。
お湯で薄めるか、水を沸かしたものでよいのでは? 入浴剤を使いましょう、わかりやすく言うと薬草風呂ですわ」
「薬草って、洗礼式の時に使う清めの薬湯のことかい?」
「そうですわ。体に良さそうですし、宗教的タブーでないなら普段使いしても良いと思いますわ。
ここでしか入れない幻の湯と触れ込み、数種類だけ特別にして
他は日替わりや週替りの湯として大浴場の脇に少人数用の薬湯風呂を用意しては?
気に入った香りはお土産として販売すれば記念に買って帰りたくなりませんか?
温泉街にして、街全体で宿泊客だけでなく、それぞれの宿の大浴場はお金を払えば入れるようにします。
どの宿の大浴場でも入れるフリーパスを少々高額で販売するのも良いですね。
こんな感じで洞窟風のお風呂も楽しそうですし、こういう神殿風のお風呂も素敵ですね、小さな池風のお風呂は普通ですが、壺や樽にヒノキの湯なども香りがいいですよ」
俺が知ってる温泉を描いていく、妄想でも楽しい。
温泉入りたいなぁ
「背の高さまでは積もらないけど、それなりに雪が積もるから冬は歩き回れないよ?」
「下水処理のために地下を掘ります、ついでに人も通れる地下道を作って、冬は地下を通ってもらうか、屋根付きの通路で温泉街をぐるりと囲んで雪の街を眺めながら歩くのも風流でいいですね」
「マリーちゃんが男の子だったら、領主に押してたかもしれないなぁ
ちょっと領地に遊びに行かないかい?夏には帰って来れると思うよ?」
「領地には行ってみたいけど、サイモンの勉強やミネルヴァからヤン先生が迎えに来ますわ」
「ミネルヴァは大丈夫だよ【海洋生物学】あれ提出しといたから」
ふぁっ!
何をどこに出したの?何してんの?あれ、この世界の魚ちがうよ!異世界の話!
鮭とか脂が乗ってて美味しいとかノリで書いちゃったよ!
さっきから温泉の話してるけど、もしかして適当に描いたパンフレットのことなの?
え?領地に温泉あんの?
ちょっと、事業失敗とかやだよ、責任取れないからね!
バブルが弾けて閑古鳥が鳴く古びた温泉街のニュースが頭をよぎる
「開拓区をどうしようか考えていたんだけどね、参考程度だよ、心配しなくても責任を押し付けたりしないさ」
ハハハと軽く笑って俺の頭を撫でてくる、なんだ冗談か、ビビるぜまったく
「それとね、コーネリアスが帰って来そうなんだよ。
春の宴の時に城でマリーを見たんじゃないかな?(苦笑)殿下の婚約者候補になったことも聞きつけたようだし。ほとぼりが冷めるまで領地に隠れるかい?」
長男の事を俺はよく知らないが、向こうさんはイチャモンつけに帰って来るのかね?ヤダなー
「ミネルヴァは、提出したあの海洋生物学?を書類選考にかけると言っていたよ。
いつの間に論文を書いたの?絵が素晴らしいと喜んでたよ」
論文なんて書いてませんが??何の選考だよ!
やめてよ!ちゃんと裏付け取ってね?この世界にいない魚もいるんじゃないの?適当に描いたやつだよ
あれだ、しばらく領地に隠れようかな?そうしよう
その頃ミネルヴァの教授連中は
「川で産卵した稚魚が海に出て回遊したあとまた川に戻ってきて産卵をするなど、あり得るのか?」
「川魚など泥臭くて食べれたものではないが、海に出るから脂が乗ってて食用になるのか?」
「サケとは?どこの地域とどの海の魚なのだ?知ってる者はいるのか?」
「北側の地域の魚に似てる、サーモントラウト種のことじゃないのか?」
「これは誰の論文だ!絵が素晴らしいではないか、精巧に書かれてある」
「例のあの子どものものですよ!」
「またか!何なのだあの子は?本当に妖精のたぐいではないのか?」
「来年からカレッジに通うと噂になってますよ、こちらへ引き入れたのに、どうします?」
「どうもこうも、王太子妃候補との噂もありますよ?」
「やはり、あの噂は本当なのか?」
「そんなことより、こちらの魚も!チョウチンアンコウ?メスがオスを吸収?深海の魚など、どうして生態がわかるのだ!」
「そちらは、たまに網にかかりますが気持ち悪くて食用だと認識してなかったですね、これには大変美味とありますが・・・」
「この絵を見て食べようとは思いませんな、一部の珍味好きの話でしょうか?今まで捨ててきた魚の価値が変わりますね」
「大きい声では言えないが、例の魔法陣は世に出すと教会とモメそうだが、こちらは出せそうですな」
「裏付けはどうするか、現地調査に行く調査班の選別をしないといけませんね。一つ一つを精査しながら我々が完成に導きましょう」
俺の適当に作った薄い本がヤバい事になっていた
城や上位貴族からの、面倒そうなお茶会に呼ばれてお母様が辟易していた。
領地に隠れる話がトントン進み、お父様も長いこと城で仕事してたから領地を見に戻るタイミングに合わせてみんなで移動することになった。
執事のマルクがしっかり留守番するのと、長男コーネリアスが帰って来るが、カレッジに定期的に通うとなると追いかけてこれず、これも勉強だと思ってしっかり館を管理しなさいと押し留めた。
ヨシュアの懇願虚しく、スチュワート商会が本の出処と真偽の確認の為にコルチーノ伯爵家に出向くが、時既に遅し。
コーネリアスがそんなもの知らんと突っぱね、常に不機嫌に当たり散らし話にならず、自分以外は領地に視察に向かったとだけ言ってスチュワート商会を追い返した。
教会の偉い人がスチュワート商会に人魚の本を寄越せと来ていて、どうするか迷った商会長が
金に困った某貴族の長男が当主に黙って勝手に売った物だ、出処を明かせば売られた事に気がついた当主が奪い返しにくるかもしれないから持って行くなら全て内密にしてくれと
かなり苦しい言い訳をでっち上げて教会の矛を収めてもらったのだった。
「スコット様とマリーウェザー様の信頼を失ってしまいました。お父さん、僕はどうしたらいいの?」
「泣くな息子よ。とりあえず、聞かれるまで黙っていなさい。領地にいるならしばらくは時間稼ぎができるだろう・・・
はっ!もしかして、きこりの泉の調査に行ったのでは?
追うぞ!ヨシュア、すぐに謝りに行くぞ!
教会の偉い人が奪っていったと正直に話すのだ!教会には逆らえないだろう?
後で他から聞くより、先に謝罪を申し出るのだ!」
「え?お父さん? え、あの、黙ってるって?」
「きこりの泉の真偽を確かめるためにも行くぞ!」
お父さんそっちがメインですね?と思ったけどヨシュアが口に出す前に移動の準備に出て行ってしまった。
その頃、
ミネルヴァの教授連の中に、ヤン先生やカールおじさんの派閥ではなく、カレッジ派の頭の硬い教授が勝手にコルチーノ伯爵家に訪れていた。
海洋図鑑にイチャモンつけに来たのだが、不機嫌なコーネリアスに、またかそんなもの知らんと追い返されていた。
どうやって知ったのか、教会の下っ端も人魚の本の出処を突き止めて勝手にコルチーノ伯爵家に来たが
不機嫌を増し増しにしたコーネリアスに、お前もかそんなもの知らんと追い返されていた。
コーネリアスが館の管理を始めてからちょくちょく、そんな人達が訪れては話を聞きたがるが
まったく関わっていなかったコーネリアスは、嘘偽りなく知らないと不機嫌に答えているうちに誰も来なくなった。
お茶会の誘いも、断りきれずコーネリアスが参加することになったが、城では王妃さまに睨まれたが念願の王太子殿下とお茶を飲む機会を得た。(話は全然弾まなかったけど)
上位貴族のお茶会では、公爵令嬢に訳の分からないマウントを取られたが、男子のコーネリアスは女子の話にあまり興味が無かったのと
顔が良い次期当主のコーネリアスに女の子達が満更でもなさそうにお茶を飲んでいた為、そこそこ平和に終わった。
大所帯での馬車の旅にアンナが
「わたし、王都から出たの初めてよ!馬車の旅も素敵ね!これ美味しいわ!お嬢様も食べましょう」
と焼き菓子の包みを広げていた。
マリアンヌ人形を抱えて座る俺は、騒動のあれこれを全て置き去りにしコルチーノ伯爵領へ
もしかしたら、温泉あるのかな?とかのんきに期待しまくっていた
ヨシュアが1番の被害者




