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俺の異世界冒険記!  作者: ワシュウ
学園物語
329/372

異世界でバレンタインデーキッス

昼間のランチ営業が終わり、夕方のキッチンでみんなでお菓子作りなんて、めちゃめちゃ女子っぽいイベントじゃね?


ベル「ちょっと、生クリームが全然足りないわよ!全身に塗るんだからもっと用意しなさいよね!」


「は?…ロバートさんは変態プレイしないと思うよ?ベタなノーマルが好きなんじゃない?

ピンクのセーラー服あげるからハート形の生チョコでも作りなよ"これ手作りとかじゃないしっ勘違いしないでよね"とか言って押し付けられるの好きそう」多分


なんで俺がベルの面倒見なきゃならんのだよ…

隣のテーブルではマミとトウコとエマが令嬢たちにお菓子作りの説明をしてる。



――小一時間前

アブドゥル大使が白馬ヴァイスに跨りカカオを大量に持って来た。俺は約束した覚えは無いのだけど、夏にショコラティエ祭典のコンテストやった時にバレンタインとお返しの文化がある事を話した。

大使がチョコ欲しがるから義理チョコあげたんだけどね?

カカオお返しに持って来てくれた…俺は欲しいとも言ってないし、呼んでもないよ?

だけど大使が「マリーウェザー様、来るのが遅くなりました!」とか呼ばれて来たみたいに押しかけてきた。俺は宿の自慢は皆にメールでしたけどね?


大使がカカオを持って来た事で、バレンタインはアルラシードの一部の地域の文化だと皆が勘違いして納得した。大使が何か言う前に俺が説明する


「アルラフマーン領はカカオの産地ですの、恋人達のささやかなイベントですのよ、恥ずかしがり屋の女の子もチョコを贈ることで気持ちを伝えるのです。気持ちが伝われば殿方もお返しにチョコを贈ります」


スカーレット「ほぉ、面白い風習ね」


「そこからお世話になった恩師や友達や家族に感謝の気持ちとしてチョコを贈るようになったそうです。私もお世話になったのでアブドゥル大使に贈りました…お返しがたくさん貰えてうれしいですわエヘヘ」


その流れで、夏にカトリーヌに紅玉芋もらったからお返しするよチョコ作るね。と話すと皆がマリーウェザーが作れるの?

となり、エマがまだいたから残業代払うから手伝ってくれないか頼むとロバートが了承すればいいよ……と言うことでロバートにメールしたら、何故かベル達を連れて来た


女の子が集まると、キャッキャとかしましいのはわかるよ


いたたまれなくなった大使とロバートとついでにマリアンヌとデュランと馬丁たちは、一階の大浴場に入ってる(※もちろん無料)


その間に女子達がお菓子作りをするのだが、それぞれの侍女達も一緒にやるから結構な大人数だ。メアリが料理初心者でアンナがスカーレット達のテーブルへ行ったから、俺がベルと2人でやる


湯煎しながら板チョコ溶かしつつ、生クリーム入れて


「ベル、隠し味にレーズンいれる?」

「アタシは赤い実を入れたいわ」

「フリーズドライとジャムどっちがいい?」

「両方出しなさいよ、他にも隠し持ってるんでしょ?」


ベルがガシガシ鬼のように混ぜていくから「メレンゲ混ぜる時は潰さないように混ぜるから貸して、ベルはこっち混ぜてくれる?」と途中で交代しつつ


「練るんじゃなくてこう切るように混ぜていくんだよ…」

「え?こう?」(ガシガシガシガシ!)

「ちょっ!そこで一回止まって!練るんじゃなくて、ベル止まってってば……いいかよく見てね?練ると硬くなるんだよせんべいみたいになるんだよ?」

「わかんないわよ!」

「だから切るようにこう混ぜるの…混ぜるって言うから悪いのか?半分にしてかえす、半分に切ってこう」

「そんな混ぜ方じゃ全然混ざらないわよ」

「ヘラ押し付けたら駄目だよ」


クッキー生地を伸ばして型抜きして、クッキングシート(錬成したもの)を大量にストックしてるから天板へ乗せていく。

絞りクッキーで薔薇っぽいのや、チューリップっぽいのを作っていく。冷蔵庫で冷やしたふりしてルーンで冷やしたアイスボックスクッキーを作る、チョコや緑の野菜で抹茶風、冬の赤い実でピンク色とか女の子は好きそう


マカロンも可愛いクマやウサギやハートの形でチョコ色やピンク、オレンジ色、緑などカラフルだ。


オーブンで焼いてる間にマカロンに入れるクリーム作ったり、スカーレット達はお茶飲んで休憩してる。

焼けたら、こっそりルーンで冷ます、バターや砂糖やチョコの芳ばしい香りが漂う



――タイミングを見計らったように、ロバート達が帰ってきた


大使が風呂上がりの浴衣を着てるんだけど、多分ロバートが出してくれたのだろう。縦しま模様のいかにも温泉旅館っぽい浴衣と青い羽織りも着ていた。


とてもよく似合ってると思う…胸元からムッキムキな胸筋がね?裾も歩くたびにムッキムキな足が見えるんだけど、ちゃんとロバートさんがランニングシャツとモモヒキを渡していたようだ。公然わいせつ罪にならないように気を使ってくれたんだな


ロバート「おぉ〜若い達がいると華やかで良いですねぇ、甘い香りがします」


大使「マリーウェザー様が私の為に作ってる!」

マリアンヌ「違うっ!僕に作ってくれるって言ってたの!」

デュラン「身内用にたくさん作ると言ってましたぞ、義理でも嬉しいですな」



ロバート達だけでなく、スカーレット達も自分たちのチョコケーキを作り終えて俺とベルのテーブルを見に来た


カトリーヌ「まあ!これをマリーウェザー達が作ったの?凄いわね」

スカーレット「マリーウェザーは上手なのね、プロの菓子職人が作った売り物みたいよ…」

スージー「マリーウェザーは手先が器用ですものね」

メリンダ「凄いわ!お店みたいよ!」



チョコでコーティングしたり、可愛くアイシングしてマカロンにはクマやウサギの顔を描いた。

ベルはハートの大きなクッキーにロバートと自分の顔を作っていた。ちょっと歪な所も手作り感あっていいと思う

……割れないうちに食べてもらえよ?


箱や麻袋に入れて可愛くリボンつけて完成!


照れてモジモジしたような演技をしようと思ってたら、なんか本当に照れてきた

「どうぞ受け取って下さい、大好きな私の姫様にプレゼントですわ」


スカーレットにクマやウサギのマカロン詰め合わせを渡した。いの一番に渡したからびっくりしていたが嬉しそうだ

「私がもらっていいの?ありがとう」


スカーレットの照れた顔がとても可愛かった、ロバートやカトリーヌ達も微笑ましい目で見ていた。

それからカトリーヌやスージーと順番に配っていく、エマやトウコ達にもあげる…

散々つまみ食いしたベルにも一応あげるのだが「これ、ロバートさんと2人で食べてね、チョコにお酒入ってるから」(コソッ)


これで間接的にロバートにも渡せたと思う。ベルの嫉妬で変なフラグ立てて死にたくねぇ


期待に鼻を膨らませた大使に特別感ある大きなのを渡す。大使が跪いて、いかにもうやうやしく受け取る…パックリ割れた浴衣のすき間から胸筋と足がインナーごしでもムッキムキ…ひぇ、むさ苦しい


まあ、大袈裟なのは予想してたよ?やると思ったからあえて言うぜ


「ふふふっ…そうやって受け取って頂けると、私の拙い手作りチョコがとても価値のあるものに思えますわ。お気遣いありがとう存じます、そのまま飾りそうですけど腐る前に早めに食べてくださいね?マリアの時は飛び上がって喜んで受け取るのかしら?」


大使が、え?マリアからも貰えるの?みたいな顔でニヤけるのを我慢しつつ眉間に力をいれてニマニマしていた。

大使は気持ち悪いから放置して次の箱を取り

「はい、マーリンとデュランにもあげるわね。いつもありがとう感謝してます」


デュランが冗談っぽく「ありがたき幸せにござりまする飛び上がって喜びましょうぞ」と言うと、予想通りマリアンヌがぴょんとジャンプしてシュタッと跪いて受け取った。


早速開けて「わぁー猫のマカロンだ!お嬢様の作るものは何でも美味しい」とパックと食べて社交辞令みたいな褒め言葉を言った


これで、大使から始まった前振りはマリアンヌのドヤ顔ジャンプでコントになったと思う



「姫様たちのケーキは冷蔵庫で冷やすとバターが生地に馴染んで美味しくなりますよ」


アンナ「お嬢様、こちらの箱はコンスタンツェ様に持っていくのですか?」


「ヨハンとサイモンにも持って行ってあげないとね…他の子供達が羨ましがるかしら?」


ヨハンは職業訓練校で美容とネイルケアの講師をしてる。サイモンはヨハンの付き人をしつつ、読み書き計算の基礎を洗礼前くらいの小さな子供達に教えてる。

人に教えると勉強になるとか覚えるって言うよね?サイモンの自信に繋がると思って祖父に頼んだ。

別にどこに泊まっても本人の自由なのだけど、やっぱり俺の宿は気を使うようだ。ヨハンとサイモンは船着き場の無料の秘湯温泉に子供達と行き、孤児達の大部屋で夜も勉強を見てあげてるようだ



「暗くなる前に帰ります、お疲れ様でしたごきげんよう」


とロバートが帰ろうとしたから、大使が持って来たカカオを堂々と渡す


「製粉と加工お願いしますね、領収書はタロウくんに渡して下さい。学校のお菓子作りに使うので半分ほど純ココアに後は好きにしていいですよ」


大使に馬車までカカオを運ばせて見送る

「アブドゥル大使はもう帰っていいよ?送りましょうか?」


「マリアから愛の告白付きチョコをもらってません!」


「アブドゥル大使大好きありがと…チュッ」※投げキッス


早く帰れよと落とし穴でカヤックの家の前に捨てた。ヴァイスにもチョコを渡した

「お疲れ様、また今度ゆっくり遊びにおいで」

「マリーウェザーお嬢様…僕にもくれるのですね!嬉しい」

ガバっと抱きついてきてホッペにムチュっとよだれつけてきた。


マリアンヌが気付いて出て来て、ヴァイスを落とし穴に入れた

「ちゃんとカヤックの家の前に捨てた?」

「大使の館の前に捨てたぞ」

「え?!……近いからいいか」


スカーレットが平民の学校がどんなものか見たいらしい。

今からアポ無しで行ったら迷惑だよね、でも姫様にそんな言い訳出来ないから

「子ども達も既に帰ったので、明日の昼間に見に行っておやつにチョコを渡しましょうか?王女様からお菓子をもらえたら良い思い出になるでしょうね」


メリンダ「それは良いですわ、他領の平民の学校など見る機会がありませんから」


デュランに祖父にチョコ渡てもらうついでに、明日見学してもいいか伝言を頼んだ。

祖父は領地内を見回っていて、校長と言えど船着き場に毎日いるわけじゃない、船着き場にいなかったら領地屋敷タウンハウスまで斬鉄に乗って駆けさせた


外の足湯にポツポツと人が座っていてこちらを見て固まった。ニコニコと手を振ると緊張してぎこちなく返す。

貴族令嬢がぞろぞろ出てきたから驚いた様子


散歩がてら夕暮れ時の温泉街を歩く、侍女メアリが夕暮れで暗くなってきたのに出歩くのは危険ですとか言うけど


温泉街は警備服のおっさんが巡回してるし大丈夫だよ。

「警備員さん巡回パトロールご苦労さまです、いつでも私の宿に寄って下さいね」


ニコニコと気軽に声をかけて手を振る


「へぁっ?!…マリーウェザーお嬢様!ご、ごきげんようお出かけですかい」


暗がりで見たら山賊のような大男が幼女に声をかけられて逆に驚いた。しかし、すぐに目立つ白銀の髪の幼女がマリーウェザーだと気付いて、いかつい笑顔を返して手を振った


「マリーウェザー、あの方も知り合いなの?」

スカーレットが驚いたように聞いてきた


「ここはコルチーノの領地なので、領主の娘は領民なら知ってると思います。それに挨拶すれば挨拶を返してくれるのが温泉街ですよ」


メリンダ「コルチーノだからですよ」


暗くなってきたからマリアンヌに提灯を出してもらい「提灯クラシックランタンです」と皆の侍女に渡した。

白い息がホワッと出て寒いけど、皆と温泉街の夜の散歩が楽しかった



すると、静寂を破って声が響いた


「メアリーどこなのー!メアリー!私のメアリー!」

髪を振り乱して叫んでいる


チラリとスカーレットの侍女メアリを見るけど、違うようだ


「姫様、御前を失礼します。あの浴衣は祖母の宿のお客様ですから」

スカーレットに断ってマダムに声をかけることにした。迷子かな?


「マダムどうされました?お困りでしたら温泉組合の案内所へ行けば警備隊に迷子を探すのを手伝っ…」「メアリー!心配したじゃないの!勝手にいなくならないで、私にはもうあなたしかいないのだから私のメアリー」


「え?は?メアリー?え?どちら様ですか?」


膝をついて目線の高さを合わせて顔を覗き込んでくる老婆マダム

おばあちゃまの宿の浴衣を着てるから貴族客なのだろうけど…目がヤバい逝っちゃってる!なんてヤバい客を泊めてるの


そのマダムが俺の顔をガシッと掴むと、至近距離でニチャと笑った。生暖かい口臭がキツくて薄い唇から覗く歯がボロボロだった


「私のメアリー!」

「ひっ助けておばあちゃーん!」


心の叫びが口から漏れてプチ修羅場になったが、マリアンヌが後ろから老婆を引き剥がして羽交い締めにする


すぐにトモエが警備隊を連れて来た


警備隊に囲まれながらも、俺に手を伸ばして必死の形相でメアリーと叫ぶ見知らぬ老婆…


トモエに守られながらスカーレット達の所に戻って、無意識にカトリーヌの手を握っていた「大丈夫よマリーウェザー…びっくりしたわね、もう大丈夫よ」


スカーレット「あちらの婦人マダムは、マリーウェザーの知り合いなの?」


「いえ…、全然記憶にないです」


スージー「何処かのご隠居かしら?」

メリンダ「ボケてしまって、若い頃に産んだ娘と勘違いされてるのかもしれませんわね」


その後すぐにムラマサがコンスタンツェを連れて来て、集まって来たギャラリーに「酔ったお客様のようでございます。お騒がせして失礼いたしました。どうぞこの後も温泉街を楽しんで下さいませ」と解散させた


それから、コンスタンツェの高級宿屋に場所をかえて詳しく聞くことに、スカーレット達も気なるようで一緒に付いてきた。


コンスタンツェは王女を追い返すわけにもいかないので、小さく溜め息をつくと語り始めた。

ちなみにマダムはヴラドかマリアンヌがスキルで眠らせて倒れた所を警備隊に運んでもらって、今は部屋でお連れ様と休んでるそうだ


――以下祖母の説明を要約したもの

結論から言うと、彼女は嫁イビりの末に心を病んで離縁された子無しのアラフォーマダム。

見た目はおばあちゃまより老け込んでいるけど、お婆ちゃまの同窓生ババともの娘さんで、年齢的にうちの親父より下のツァネフ叔父さんの同期生くらいのマダムかな?40手前?

ダビルドの末端貴族に嫁いでずっーっとあっちのド田舎の領地屋敷カントリーハウスにいた。

この度、旦那の浮気相手の子どもがカレッジを卒業して正式に跡取りに決まった。今年の夏頃に親戚のボケ糞爺がポロッと浮気相手の子はもう卒業したんか?発言がありその時始めて存在を知ってマダムが壊れた。

およそ20年もの間、実質的に領地経営してこき使われ、義両親や親戚からはテンプレ嫁イビりのフルコースで石女と罵られ続けた。

旦那は一切庇う事なく無関心で王都邸宅タウンハウスで浮気相手と楽しくやって全く帰って来なくなった……。

この国では領地経営にはカレッジ卒が必須、田舎から出ない親戚貴族では領地経営が出来ないため監禁して嫁イビりしていたのだろう。

その浮気相手の息子がカレッジを卒業したのだから無能な石女は用済みとばかりに追い出された。それなのに親戚の男連中とそういう関係になったとでっちあげられて、不義理を働いたのだから離縁されたと近所中の噂になった。

祖母は俺の手前、言葉を濁したけど実際襲われたっぽいし、淫乱女とか噂をばら撒かれたんだろうな。

僅かな私物を鞄に詰めて憔悴しきって変わり果てた姿で実家に帰ってきた


丁度のタイミングで温泉宿に予約を取っていたから娘を一緒に連れてきた→憤慨してコンスタンツェに愚痴る→何処かのタイミングでマリーウェザーを見る→なんて可愛い女の子なのこんな娘が欲しかった→もし私の娘だったら私がお洒落させて可愛がってあげたのに→そこから妄想を拗らせて現実と区別つかなくなった結果→あの娘は私の娘、私の可愛いメアリーよ!


とんでも超理論だけど、婚家で20年も嫁イビリを受けて心がぶっ壊れたんだな…


俺達に謝罪しに来たババ友から謝罪と言う名の愚痴を聞かされた。

悲惨な末路をたどった哀れなマダムエピソードに年頃令嬢スカーレット達はドン引きして言葉も出ない。

特にスカーレットは複雑な顔をしていた


「私があのまま聖王国にいて王太子と結婚していたらと思うと…他人事に思えなくてよ」

「姫様は無事に脱出できてよかったですね」



不憫に思ったから俺の宿の2階の客室で長期の療養してもらう提案をする

「普段は宿泊客を取らないので"湯治"に丁度よいですよ、騒がしいのはしんどいのではないかしら?心身癒してゆっくりして下さい。気兼ねせずに、ずっといていいのですよ?」


「マリーウェザー、簡単にそんな事を言ってはいけないわ…ずっとは無理なのよ」

コンスタンツェは小さな子供を諭すように忠告する


「もちろん善意でもありますが、領地経営していたなら元気になったら私の宿で住み込みで働いて欲しいくらいです。身元のしっかりした経営に慣れた雇われ女将マダムを探していましたから」


コンスタンツェが驚いた顔をしたけど俺の意図を理解したようだ

「んまっ、本当にマリーウェザーはちゃっかりしてるわね」


ババ友の愚痴の中に見え隠れする出戻り娘の扱いと言うか、手に負えない感じが何ともね?

実家と言えど既に息子夫婦(マダムからしたら実兄)が継いでおり先月ひ孫の男児が生まれたばかり。王都邸宅タウンハウス領地屋敷カントリーハウスも跡継ぎ誕生にお祝いムードで、離縁された出戻りアラフォー娘には居場所はなかった


「たまに様子を見に来て下さいね、大勢で来られたら困りますが両親が娘を心配に思うのはわかります…」だから両親までなら泊めてやるよ?


「心配しなくても私がいるわよ、マリーウェザーは春からまたカレッジでしょう?おばあちゃまに任せなさい」

コンスタンツェがババ友と一緒に見に行くし、普段も様子を気にかけてくれるらしい。


ババ友割引で一泊くらいなら無料でいいよ?と言ったけどコンスタンツェの手前、払ってくれるらしい

娘の療養費が莫大になるのではと、ちょっと気にしてるようだ


「噂になって国中の病んだ人が集まって来たら困るのでロイヤルエステコースほどかかった事にして下さいませ。おばあちゃまの宿ほどのおもてなしは出来ませんから相場の宿代で充分ですわ」


「マリーウェザーの相場の宿は平民の安宿の事でしょう?本当にあなたは欲がないのだから」


「出世払いでもいいですよ。将来的には学生の見習い達に経営学を教えてもらいたいですね。第一線で活躍された方に学ぶ機会などないです」


「出世払いねぇ。酷なことを言うようだけれど…あそこまで心を病んでしまったら、もうまともに働けないかもしれないわよ?」


「……20年かけて壊されたのですから、ゆっくりでも治ってくれたらいいですね。10年は療養期間として受け入れましょう」


平民の安宿と聞いてババ友の顔が明らかにホッとしたし、ボロボロの娘が10年も生き延びないだろうと思ってそうだ…この世界の医療基準だとそうだろうな


「んまぁ…コルチーノの懐の深さに救われましたわ。私達はこの感謝を忘れません。私の娘のジルをどうぞよろしくお願いいたします」


そこからコンスタンツェが仕切り…あれよあれよと話がまとまり、こちらの準備もあるからマダムが落ち着いたら俺の宿に泊まりに来る事になった


これ以上、愚痴とババトークに付き合ってられないから眠たくなったふりしたら、もう帰っていいよと解放された。


去り際に「マリーウェザー、チョコありがとう。大好きな人に贈るものだと聞いたからおばあちゃまもマリーウェザーに贈るわね」

(※後日、おばあちゃまの仕立て屋が来てドレスの採寸した…100倍返し?ついでだからスカーレットの分も作ってもらった。お金は俺が半分出して残りの半分はメアリが請求書を離宮に宛てた)



外はすっかり真っ暗になったけど、宿の明かりが見えるし暖かく揺れる火の街灯も建ててる。

俺はマリアンヌと手を繋いでチラチラと雪が舞っている道を歩いた。道の端に雪が積もっていて、マリアンヌが片手に提灯を持っていて歩くと揺れる灯りがなんと言うか、とてもロマンチックだと思った



帰ってから皆で部屋風呂にちょっと入って暖まったけど、何故か俺が気遣われてる?


スカーレットも俺の頭を撫でて「暖かくなったら寝れる?」とかなんかいつもより優しい


見知らぬ老婆にいきなり掴みかかられて怖い思いをした事は記憶から抜けていた…

その事を思い出して、なるほどそれで皆が気を使ってくれてるのだと思い至った。

重い空気で夕飯は箸が進まず……デザートにしようと思っていたせっかくのチョコは明日食べればいいか


部屋の掘りごたつに入ってしばし休憩。トランプや人生ゲームやボードゲームやったりして楽しかった


寝る前に日課のダンジョンボードを見るとルゥからメール来てた。

マリアンヌとヴラドに頼んで眠れぬ皆を強制的に眠らせてから獣人保護区の温泉へ向かった。

もちろんヴラドの分身を俺の身代わりに寝かせてる


そして幼女だと眠いからとりあえず変身ステッキで15歳のマリアになった。15歳と16歳の違いが分からないから微妙に成長させられない……なんかもう5年後に急に大人にしようかな?


「おぅお疲れ様。知ってるかもだけどそのうち、表の宿に病人の療養するからね」


カヤック「お疲れ様でした、だいたいは聞きましたけど…マリーウェザー様は大丈夫ですか?」


「ビビったけど大丈夫だよ、ありがとな。

ハイこれ、チョコ作ったんだよ皆で食べて、とりあえず冷蔵庫にでも入れといて」


「え?いいんスか、いつもありがとうございます冷蔵庫入れてきます」


カヤックはバレンタインが何か分かってなさそう


「ヴラドにもハイあげるね。バレンタインだよ(照)」


ヴラド「ありがとうございます。忘れられてると思いました」

マリアンヌ「コイツにもやるの?…中を見せろよ」

ヴラド「は?嫌ですけど、オレのは特別ですから」ドヤ


「同じの入れたよ影から見てたでしょ?マカロンだよ」


「僕のは猫だった!」ドヤ顔


「あ、そーゆー事ね。色や柄は違うけど他意はないよ?…レンジ・マミィの作る生チョコケーキ本格的だったな」


トモエが拾った赤子を連れてきた。ぐっすり寝てるけど顔色も前より良くなってるかな

エピスキー ヨシヨシ、寝る子は育つから起こさないでおこうかな。トモエもお疲れ様、いつもありがとね」


小さな赤ちゃんは触るの怖い…代わりにトモエの頭を撫でてやる



ルゥ「お師匠様…僕が未来視さきみを誤りました。取り返しが付かない事になったかもしれません申し訳ございません」


「え?メールでも言ってたね…どういう事?」


震えて泣いて懺悔するルゥをなだめて、なだめて…

「大丈夫だよ誰も死んでないし?未来は変えられるんだよ?過去は無かったことに出来ないけど」多分


話してるうちに分かったことだが、なんとあのマダムは石女ではなかった。まあ旦那が帰ってこないのに妊娠するわけないけど…占星術師ルゥの見立てによると


ルゥ「…その夫の方が種無しです」

カヤック「うわぁ…」

グラ「え?!どういう事ですか?翻訳が間違ってますか?」

ヴラド「浮気夫は自分も浮気されていたと言う事です」

カヤック「その貴族の血筋が絶えるんじゃ?」

グラ「なんと愚かな事を…」

マリアンヌ「血筋とか分からないから別にいいじゃん」


「托卵なんて貴族に限らずよくある話だけど気の毒だね…あんなにボロボロに壊れるなんて私達の想像を絶する扱いをして来られたのだよ。彼女の気持ちを単純に推し量れないな…早く元気になるよう祈るほかないね」


ルゥ「彼女は頭痛薬をずっと飲んでいたのです…えっと…薬物依存症?おそらく今も中毒状態です…」


ヴラド「薬漬けですか…」


「偏頭痛持ちだったのかな?女の人に多いって聞くよね」前世の俺のねーちゃんも頭痛薬常備してたしな


この世界の痛み止めはアヘンやモルヒネに属るすもの、日常的に使った結果がこれ


カヤック「頭痛も嫁イビりのせいじゃないっスか?」


「あー、なんかそーかもね。体に良いものを食べて温泉入ってゆっくり治していかないとね…ロバートさんの高ランクエリクサーかエクストラヒールで体は治るかもしれないけど、壊れた心は治らないかも?」


低ランクエリクサーをちょっとずつ与えて、薬漬けの体を治していこうと思う。温泉効果は凄いねぇ…で誤魔化せる範囲でな。

治ったらいずれは雇われ女将をしてもらおう、身元がしっかりしてるし住み込みで働いてもらえそうだし、おばあちゃまとその友達に恩も売れる一石三鳥だよ


長年嫁イビりに耐えて領地経営してたならクレーム客の対応も任せられそうだ。デイビッドやヴラドの魅了スキルあんま使いたくないしな。

通常、精神を病んだ人は人里離れた別荘に押し込めるか、離島の修道院行きになる。現代ならあそこまで病んだ人は檻のついた病院だよな。


ルゥ「違うのです…僕が見た未来は…あの方が暴れたのは…僕たちのせいだと……責任を取る形でお師匠様が預かる事になっていました。だから僕たちがいなければ大丈夫だと思ったのです。

未来は変えられなかった…それに…僕たちの代わりにお師匠様が襲われました。申し訳ございません…うぅ~ごめんなさい、ごめんなさい!お師匠様ごめんなさい、僕のせいです、ごめんなさい」


「ん?…なんだびっくりしたぁ、そんな事?全然大丈夫だよ?むしろカヤック達を助けてくれたんだろ、偉いよ良かった良かった

いや別に襲われて無いからね?そりゃ漏らしそうな程びっくりしたけど、それだけだよ?

ルゥ顔色悪いよ、風邪?大丈夫か?エクストラルヒール!治った?」


カヤック「わっ!マリーウェザー様?…あっ畑仕事の筋肉痛と腰痛が治った。急に光るからびっくりしました」


ルゥの近くにいたカヤックとグラとついでにマリアンヌとヴラドが全回復した


ルゥ「あっ…視力が戻りました。お師匠様ぁ!ウワァァァン」


それからグズグズ泣くルゥを抱きしめてから根気よく話を聞くと、俺に関する未来を見ると太陽を見るみたいな容赦ない光で目がやられるが、不意に予知夢が現れる。これは試練に違いない!見なくては!ギャァァァ目がぁ!


「アハハッ阿保かよ。それを試練にして目が見えなくなったの?でも、まあ結果的にカヤック達が悪者扱いされずに済んだし、視力無くした甲斐あって良かったかな?でもそんな危ない未来視さきみなら無理しなくていいんじゃない?

まあ助かったし感謝はするけどさ、それに早く言えよ?別に治すの簡単だし」


ルゥ「オェッ…ウゥゥ…お師匠様ぁえっぐ…グズッ…えっぐゲボッゴボッごめんなさいぃすぅてなぃでぇ」


「ヨーシヨシ、大丈夫かよ?ルゥのおかげでこっちへの損害ほぼ無いからねー?恩も売れたし儲かったよ?」


カヤック「温度差えぐっいっス…」

マリアンヌ「何が?」

カヤック「マリーウェザー様は軽すぎ、ルゥは重すぎって事ですよ」


「ふぅーん、そろそろ引き剥がしていい?ルゥのくせに僕のマリアに触りすぎウザい!あっ、おっぱいに鼻水のシミつけるなよ、ばっちいな!」


ルゥがマリアンヌに威嚇されて「ウワァァァン……」と泣いた所でヴラドがサクッと眠らせた

「先輩、馬鹿ですか?余計に長引くだけです、部屋に運んできます」


「あっちょっと待って…泣きすぎると頭痛くなるだろ?低ランクポーションとバナナ。テーブルにでも置いといて?それと…マリーウェザーのヌイグルミ。寂しい時はこれを抱っこして寝ると落ち着くはず」


マリアンヌが「僕もそれ欲しい」と言うから「はい」とあげた、想定内だ!ちゃんと用意してるぜ。


ヴラド「手が塞がってるのでマリアが持って来て下さい…あっ、先輩は来なくていいですよ?ルゥが起きた時に先輩がいたらまた面倒ですから。そのヌイグルミの服でも脱がして遊ぶと良いですよ?人間なら脱がして遊ぶのですよ」


マリアンヌが「この服は脱がせるの!?」とヌイグルミを弄んだ。

間違ってない、着せ替えするし…間違ってないけど。まあいいかな?楽しそうに服を脱がせてるマリアンヌを放置してルゥの部屋へ向かった


そしてこっちも想定内だよ

ヴラドがルゥをベッドに転がすと、抱きしめてきた。テーブルにポーションを置いてたから後ろから抱きしめられて、ヴラドの腕におっぱいが乗って肩が軽くなった。


「マリーウェザー…オレは本命チョコじゃなく義理でも嬉しいですよ」


「…本命が2つあってもいいと思わない?」


「クククッ…あなたのそう言うゲスな所も嫌いじゃないですよ」


「ゲス言うなよ、本命やぞもっと喜んで?」


「オレだけの特別が欲しいです」


耳ともで囁かれてくすぐったくてヤバかった。

チョコの欠片をパキッとかじってディープな口移しで食べさせてあげました。大昔にこんな事してくれた彼女がいたんだよ。めちゃくちゃ萌えた夜だったなぁ…


チョコの甘い香りですっかりのぼせ上がった顔のヴラドが溜め息をついた

「ハァー…ここが夢じゃないって忘れそうです。あなたは罪深い人だ」

「エロい顔だね」

「犯して欲しいのですか?」

唇のはしについたチョコをペロンと滑られた。

ヴラドは切ない目をして期待した…が一瞬で諦めた顔をした


「ごめんねそんな顔しないで?」

胸がキュンキュン締め付けられるよ…何そのエロい顔


「オレだけの特別なチョコをありがとうございます」


「いつもありがとうございます。ヴラドがいないと大変ですよ?お兄ちゃんをよろしくね…あとオヤジの執務も大変だろうけど、色々とお願いします。もう、一生ヴラドに足を向けて寝れません」


「そうやっていつも感謝を忘れないで下さい…オレの事ずっと考えてオレに会いたいって泣いて下さい」


「…いつでも会えるじゃん?お前影にいるし安心感しかないですよ?本体がいると思うと何かヴラドを独占してるみたいだよ」


「クククッ…」※ヴラドは思ってたのと違ったけど嬉しかった



――さて、疲れたし眠くなってきたから帰って寝よ。


と呑気に思ってたら俺は統合失調症のヤバさを本当に理解してなかった。迂闊な俺を誰か殴ってくれ…


ぐっすり眠ってる深夜に突然「ギィェェ…」みたいな叫び声がして、宿の3階で寝てた俺たちは飛び起きた。

部屋の窓を開けてピョンとベランダに出て柵から顔を出した…俺が作ったんだけど子供の頭が柵から出る幅なんだな。もうちょっと狭くしよう…


部屋の真下に服と髪を振り乱して何かを叫んで歯をむき出して暴れまわるキチガイじみたマダムがいた。……それを獣人バイトとムラマサが抑えていた


タロウくんとトモエがコンスタンツェを呼びに向かった。深夜だから通行人はいないし、ここは少し奥まったところだから回りに宿が少なくて昼間のようにギャラリーはいなかった。


ドン引きして見てた俺だけどハッとなって「マーリン…寝落ちさせてやれる?」コソッ


猫「ブニャー!(え?!僕があそこにいくの!)」


すると深夜帯だけ働いてくれるデイビッドが颯爽と現れてスキルでサクッと眠らせて、ぐったりするマダムをお姫様抱っこした

三階の俺たちを見上げて何でもないように爽やかに笑った

「起こしてしまい大変申し訳ございませんでした、後は私がついてますから皆様は安心してお休み下さい…温泉に入ってからお休みなさいますか?お客様にホットミルクを」


デイビッドは慣れたように回りに指示を出して、トモエが着替えとお茶セットをワゴンで押してきた


「デイビッドさんが付いてるなら大丈夫だから、おばあちゃまに明るくなってから迎えに来てもらって。マダムは下の階で寝かせてあげてね…」


夜明け前の静かで冷たい空気が頬をかすめる

薄暗い空を見ながら、皆で部屋風呂に入った。こんな時間に入るのも旅の思い出だけど寝覚めが悪すぎるよな…


「温かいお風呂に入りながら飲む冷たい瓶のコーヒー牛乳は美味しいですね」


メリンダ「えぇ本当に美味しいですわ!もう1本もらえませんこと?あらメロンジュースもありますのね、この瓶が持ちやすくて丁度よい量ですわ(ゴクゴク)

ふぅー…メロンジュースもミルクが入ってますのね?甘くてまろやかで美味しいですわ」


「メリンダは絵になりますね、美味しそうに腰に手をあてて飲むところまで理想通りですよ。もしよろしければ看板のモデルになってくれませんか?」


「まあ!私がモデルですの?素敵ですわぁ、もしかして一階のビュッフェの絵もマリーウェザーが描いたのですか?」


「はい、祖父母の若い頃を想像して描きました」

コーヒー牛乳のポスターはもっとファンシーに仕上げるよ?



三階の調理場でデュランと斬鉄、アンナや皆の侍女達が朝食の用意を始めた。

マリアンヌが「倉庫から持って来た」と、しれっとアイテムボックスから野菜やフルーツを冷蔵庫につめて、キッチンワゴンにカトラリーや氷水のピッチャーを用意したり…ヴラドがいないぶんマーリンとして従者を頑張っている。

どうしても足りない時はヴラドの分身で地味目モブキャラのボブさんを出す予定だ。ボブは以前チョコハウスやビアガーデンでバイトしてた。


デュラン「朝食はエッグベネディクトですぞ、マリーウェザーお嬢様の好物でもありまする。姫君のお口にもきっと合いましょうぞ」


メアリ「初めて聞く料理です…」

アンナ「うちのお嬢様は美味しいものを探してくるのがうまいのです」



デュランの朝食を食べた後でコンスタンツェがマダムを迎えに来るのを待った…。


待ってる間に、昨日食べ損なったチョコを食べた。

生チョコのケーキやチョコプリンやチョコのババロアなどそれぞれが作ったものを食べ比べした。


「姫様の生チョコケーキが1番美味しいですわ」本当にね(ハート)


スカーレット「マリーウェザーのマカロンも可愛くて食べるのがもったいないわ」

「絵に描いておくので現物は腐る前に食べて下さいね」

メリンダ「腐らせたらもったいないですものね(パクッ)ん~~美味しい」


「このチョコ、下のマダムにも持って行ってあげて。起きたら知らぬ場所で混乱するでしょ?起きたらお菓子を出してお茶を勧めてみてね」


トモエ「かしこまりました」


メリンダ「食べてくれたら良いですね、一口で口の中が幸せになりますもの」



――少ししてからコンスタンツェが迎えに来た


トモエの報告では、マダムの母は娘が夜中に抜け出した事に朝まで気付かず、ぐっすり寝てたらしい

朝になって慌ててコンスタンツェの所へ行くとマリーウェザーの宿にいるからと朝食を食べてから来たそうだ


一階の足湯カフェでコンスタンツェとババ友がコーヒーを飲んでる


デイビッドがチョコハウスに出勤したから、デュランがマダムを運んでいる。

一応、俺達もデュランの後ろについて行って挨拶をする。お祖母ちゃんズは足湯カフェを気に入ったようだ


デュランが、ぼーっとしてるマダムを足湯に座らせた。マダムは起きてからずっとこの調子で俺を見ても無反応でチョコも食べなかったから、お持ち帰り用の箱に詰めた


もしかしたらデイビッドの魅了スキルか何かでこうなったのかと思って、こっそり解呪のルーンを試したが無反応だった


「…ジル?あなたどうしたの?」

母親が声をかけてもぼーっとしてて返事がない


「その…マダムは宿からここまで来て、錯乱…いえ、少し騒いでいたので、まだお疲れなのかもしれません」


「マリーウェザー達は大丈夫なの?」


「大丈夫ですわ。皆さん若いので、少し早起きしたくらいでどうこうなりませんわ」


コンスタンツェが苦笑いしてチラリと俺の横を見た。多分メリンダと目が合ったと思う


メリンダ「はい、あの、明け方に湯浴みして、早起きはとても健康的だと存じます」


言い訳が苦しい…


「娘がご迷惑をおかけして大変申し訳ございいません。王女殿下になんとお詫びすれば……ジルも今回ばかりは王女様に謝罪なさい…ジル?」


スカーレット「いえお構いなく、少しも気にしてませんわ」(※マリーウェザーの真似)


それからババ友トークが始まりそうだったから、サザーランドのチョコハウスに向かう予定だったと言うと開放された。


俺達はそのまま逃げるように馬車に乗ってサザーランドへ向かった。馬車ではズーンと空気が重かったが、サザーランドに着くと大きな雪像にテンションが上がり、雪の滑り台では小さな子供達が遊んでいた。子供が作ったような雪だるまが数体並んでいて和んだ。


チョコハウスに入った瞬間の華やかなチョコの香りに普段のキャピキャピした感じに戻り

席に着くなりデイビッドが挨拶をしてチョコドームに温かいチョコをかけて溶かして食べるやつを披露した。

中からピンクのハートや花のアイスが出てきて、チョコプレートに歓迎ウェルカムの文字が書かれていた


「んまあ!中からお花が出てきたわ!いい香りね、どうなってるのかしら?」

スカーレットがようやく年相応の可愛い顔で喜んでいた


「温かいチョコソースとアイスを絡めて食べるのですよ、溶けちゃいますから!さぁどうぞ」


久しぶりのチョコハウスだが、俺の身長が伸びたおかげでチョコレートファウンテンに手が届くようになっていた。

もちろん自分でやってクッキーやフィナンシェにチョコつける食べ方を説明した


スカーレットの侍女メアリが王女が自ら立って取りに行くなどいけません…とか言っていた。

スカーレットは皆と取りに行きたそうにしてると俺は思った


「欲しいものを欲しい時に欲しいだけ選べるのは贅沢な瞬間だと思いますわ。お皿に綺麗に乗せるのも楽しいのです。私は以前来たときは、幼くて手が届きませんでした。王族のように侍女に全部してもらっていましたが自分でやったほうが楽しいです」


メアリは渋々と納得した。カトリーヌや俺の皿を見ながらスカーレットが自分で楽しそうに取っていた

「これは何かしら?…あっ!とても柔らかいわ」

「生チョコですよ」


「あらこれは?」

「ロマンチョコですよ…物語の王子様の絵ですね」

(※ア○フォートみたいなやつ)

俺は遠慮なく取って頭からかじってやった



――たっぷり堪能して、最後にロバートさんがテコ入れしたせいでめちゃくちゃ濃厚で美味しいココアを飲んで満足して馬車に乗った


「美味しかったですね。お腹いっぱいです、もう甘いのはしばらくいらないです」本当に。


メリンダ「帰ったら温泉に入りましょう!温泉は痩せるのですわ、見習いでも良いので揉んでもらいたいです!ふぅー…食べすぎましたね」



ちなみに、チョコハウスには職業訓練校からキッチンバイトを派遣してる。コンスタンツェの名の下に派遣されてるから、ミシェランド公爵でも次は迂闊に手を出せないはず。

サザーランドはチョコハウスの人材がどうにか確保できて、こちらは派遣先が増えた。

チョコハウスも人気の就職先で「あそこで1年ほど勉強した」と箔が付くのを狙ってやった。

船着き場の学校に行くの忘れてた…

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