春の宴も城は嫌だ
今日は朝から侍女とアンナがパタパタしてる、春の宴なんだそうだ
新年が春から始まるこの国で、新年会のような貴族のあつまりがあるらしい
この日のために用意した一張羅を着て、馬車に乗り城へ向かうのだ
昨日までお父様を家で見ていなかったんだけどな、夜遅くに帰って来たみたいだ
朝食の時にお父様に
婚約発表の時間稼ぎくらいはできたよー、頑張ってきたからねと頬擦りされた
剃り残しがチクチク痛いから頭を向けて頭突きしてやろうとしたら
猫がよくする、人の足とかにスリつくやつみたいに頭で擦ってきたと勘違いしてデレはじめた
馬車では、皆が周知なのかお父様の話を皆が黙って聞いていた
「誰が聞いてるかわからないから、馬車で手短に話す
まず、マリーウェザーの婚約はほぼ確定した。
どうもマージョリー様(前王の姉)の後押しがあったようだ。いつの間に知り合いになったの?予想外だ本当に。
後、カレッジの卒業資格を持ってるだけで通ってない事だけど、そこをうるさい連中に隙を与えない為に、スコットと来年からカレッジに通って貰うことにした。
既に全ての試験を終えていることは、カレッジ側と王室の一部しか知らない事だから他言無用だよ?
護衛を兼ねてサイモンも一緒に行かせる、この一年で勉強を死ぬ気でやらせろ
アンナとか言うメイドも連れて行きたいなら、この一年でしっかり教育しなさい。
学生らしく友達と青春がしたいと言ってただろ?
はぁ~・・・・
そして、婚約の発表だが、王太子殿下はもとから、来年カレッジに入学予定だったんだ、殿下の卒業と同時に婚約発表をしてマリーウェザーは城で王妃教育を開始する・・・ここまでしか出来なかった私を許してくれ
今すぐに王妃教育に取り掛かろうと、城に生活の場を移そうとしていた連中を抑えて、現王妃様を説得してカレッジ卒業まで伸ばしたのだ」
お父様が俺の頭を撫で、少し寂しそうに言う
「君たちは、・・・たまにお茶に呼ばれるだろうけど、まあ許容範囲だ」
「そして、我が家の長男コーネリアスもそうだが
レイナルド殿下と顔繋ぎしておきたいために、卒業してもカレッジに残ると言う学生が多くいると聞く。何を考えているのか学生気分が抜けてないらしい、まったく」
どうやら、クラブのOB会みたいなのを作って、興味なくて取らなかった外国語学なんかを履修登録して居座る気満々らしい
もちろん、有料だ
卒業してるから、寮も一度追い出されて有料で入りなおすか自宅から通っている者もいるのだと
「コーネリアスも色々と思うところもあるのだろう
卒業したら、領地でしばらく経験を積ませるつもりでいたが・・・まあ、こちらは再来年でもかまわん」
言いにくそうに、お父様がそのあたりのことを濁す。
先日、スコットから聞いた通り、俺達母子をまだ疎ましく思っているのだろう。
そんなんで王太子殿下の婚約者候補になってしまって、更に恨まれそうだ
色々と言いたい事や聞きたいことがあるけど、もう馬車が到着してしまった
現状報告と情報の共有程度だが、俺に言い聞かせる為だな考える時間すらない
お利口さんにしてるのよと言われて馬車をおりる
スコットとサイモンに挟まれて歩き
マリアンヌ人形を持って来ても良いと言われたので持たされたのだ
人形の販売元のマックィーン子爵家にお礼を言うときに、持ってるだけで宣伝になると言う大人の事情だ。
ちなみに、俺は持っていくのを反対したよ?
「失くしそうだから置いていきたいわ」
『連れて行けよな、勝手に着いてくぞ!』
結局連れて行くことになりました
城の大ホールに入り、お父様とスコット組と
お母様とサイモンと俺の組に別れた
除夜の鐘ならぬ、春の鐘の響きが聞こえてきた。昼間に聞くと、新年と言うよりも結婚式っぽいと思ったのは俺だけだ
そこかしこで、新年の挨拶が始まる
俺は、一言も話さず、母マルリーンの横でニコニコしてカーテシーをする
新年のはじめに元気な姿をみんなに見てもらうのが流儀みたいなもんかな
婚約者候補になったことをまだ秘匿したい我が家と、俺を持ち上げたい派閥と認めたくない反対派閥が睨み合っている
城は怖い所だ、人外だらけに見えるけど皆には普通に見えるんだよな?
たぶんマリアンヌ人形をくれたマックィーン子爵家の人かな、女の人が挨拶に来てくれて人形を気に入ってくれて嬉しいお揃いのリボンで可愛いと褒めまくってくれた。
周りに人が集まり人形の話題になり、見せろだの触りたいだの子ども同士の集まりに連れて行かれた
お母様はご婦人方に囲まれ動けずサイモンを見ると、スッとサイモンが斜め後ろについてきたが、女子の圧力に負けはじめサイモンからだいぶ離された。
サイモンは、実家の男爵家の誰かに話しかけられて、気を取られてるうちに俺は少し年上の小学生以上の女子数人に囲まれた
「聞きましてよ、貴女がレイナルド様の婚約者候補ですって?こんなおチビを相手になさる殿下がおいたわしや」
あ、いじめられるやつやんコレ
ってか、内緒じゃなかったのそれ?まだ候補だからね!
婚約者になりたきゃ努力しなさいよ!まったく
「見てよ、人形なんか持って来て!ここは遊び場ではなくてよ、貸しなさい捨ててきてあげるわ!」
「ふん、安物の人形ね!ワタクシの方が立派なものを持っていたわ」
「気味が悪いわね、黙ってないで何とか言いなさいよ」
「生意気よ!」
ドンと太め令嬢に突き飛ばされる
体格差と体重の差だな、すごい衝撃で派手に転がされた
「大袈裟ね!わざと転んだでしょ!いやらしいわね、誰の気をひきたいのよバカじゃない?」
「殿下は助けに来ないわよ、まだ会場にいらしてないもの、いつまで転がってるのかしらみっともない」
アハハと高笑いしてる子どもたち
俺は、とても安心した。良かった思ったよりもぬるいイジメだったぜ
毒入りジュース飲まされたり、劇薬ぶっかけられたり、毒針で刺されたり、髪の毛切られたり、服をひん剥かれたりとかは乙女ゲームあるあるだよな?(よく知らない)
ふぃ〜ビビった
このまま、大人しくしといて誰か権力者が通った所でぶりっ子涙で泣いてやんよ、お嬢さんたち
「お嬢様! 失礼!どいて下さい!貴女たちは恥ずかしくないのですか?小さな子をいじめて最低だな」
サイモンが駆けつけてくれて、令嬢達を睨み煽りだした
「サイモンやめてお願い」
ホントに、何してくれてんだお前は!煽るなよ、イジメがエスカレートするだろぉぉ
「従者の躾がなってないわね!ワタクシ達の話に入って来るんじゃないわよ!このっ!」
ドンっとサイモンまでもが吹っ飛んだ
あのポッチャリ令嬢すごいな、サイモン最近鍛えて足腰しっかりしてきたのに
「従者の躾をワタクシ達が、お前のかわりにしてあげたのよ、フン!
感謝しなさい!道理を弁えない愚か者、あなたなんて必要ないのよ!」
「さすが、マデェリーン様ですわ!貴族の令嬢たるもの従者の躾も出来ないなんて!あなたは殿下にふさわしくありませんわね!辞退なさい!」
「そうよ、マデェリーン様が婚約者候補筆頭でしたのに! ぽっと出のお披露目すぎたばかりの子どもが出しゃばるからこうなるのよ!」
「申し訳ございません、従者の失礼をお詫びいたします 御前を失礼しますごきげんよう」
と言ってカーテシーをしてサイモンに駆け寄った
「サイモン大丈夫?派手に転んだわね、受け身を取りそこねて足をくじいたのね? 私の肩に捕まって、立てる? 無理しないでお母様の所に戻りましょう」
肩をかしてよりそうように歩く
「お嬢様、申し訳ございません。僕が不甲斐ないばかりにお嬢様に恥を」
「フフフ 私は全然気にしてないわよ。それより派手に転がされたわね、お尻もぶつけたのではなくて?
そこに座ってなさい、お母様を呼んでくるわ」
サイモンがフラフラ歩くから小さい俺では共倒れだ、お母様を呼びに行く事にした。
俺は、一人になるなと言われていた事の意味を知ることになる
恰幅のよい、見た目が人外の大人数人に囲まれたと思ったら、口を抑えられてマントの中に隠されてしまった
あまりの速さと連れ去られる恐怖に俺は声すら出ず手も足も出ないまま、会場から連れ出されてしまった
人間、咄嗟には何も出来ないって本当だな
控室の1つだろうか、部屋に運ばれヤバそうな注射器が出て来た
見た一瞬で体が強張る
「だ、誰か助けムグムグ!」
口を布で抑えられて縛られる
「静かにしろこのガキ!おい、早いとこ打っちまえ!それすりゃ退散だ早く!」
紫色の液体入りの注射器のフタを外して迫ってくる
マジで無理無理俺ヤバくない?誰か助けて!嫌だ!
すると、フッと1人、また1人穴に落ちていく
『おい、誰か来るぞ!新手か?とりあえずお前も入っとけ!』
と床に転がった人形から声がした。マリアンヌが穴魔法で攫った奴ら全員を穴に落として、ついでに俺も落とされた
『大丈夫か?今外してやる、ヤバかったなお前!』マリアンヌ人形から実体になって縛ってた布を外してくれた。安心して泣きそうだ
「ありがとう助かった。マジでヤバかったな俺!死ぬかと思った」
膝に力が入らない。こ、怖かった
『こんな震えて可哀想に、僕がいるから、もう大丈夫だからな、ヨシヨシ・・・落ち着いたか?』
「うん・・・でも腰が抜けて力が入らない。何だったと思う?あいつら誰なんだ? あ、あいつらどうなったの?」
『ホレあそこだよ、固まってるだろ? 普通の人間はあんな感じで止まるんだよ本当に何でお前動けたの?』
「そんな事より
尋問するか?
今のうちに縛って一旦外に出て、マリアンヌ人形でコイツらのまわり歩いてよ
俺が適当に呪い殺されたくなければ喋りなさいって人形が喋ってる風に1人ずつやっていく!
他のやつらはとか聞かれたらみんな既に殺したとか言ってさ!ビビって1人くらい話してくんないかな?
あの紫色の注射器使えそうだよな! あえて、みんなの前で半分の量くらいを見せしめに使って、もう半分を誰にしようかな〜とかさ!
赤い実を潰して白いハンカチに血っぽく色つけてこれ見よがしに持っとくといい感じ!」
『お前、怖っ! ドン引きだわ、でも面白そう!やろう!』
「いやいや、ソースはテレビとかゲームだからね? 入口以外の出口ない? あの部屋は誰か入って来るだろ?敵でも味方でも尋問出来ないし」
『むかし、僕を閉じ込めた部屋ならあるよ!たぶん誰もいない埃だらけの部屋だと思う、尋問するならちょうど良さそうだし、行ってみるか』
穴からでたら何かに躓いて転んだ
「痛た、なんだよここ?暗くて見えない」
『おい、大丈夫か、立てるか?』
近くに壁があり立とうと手をついたら、ガチャ
っと開いた
「うわぁ」
「急に開けるなよ、ビックリするだろ、何だよ?」
ヤベ! 隣の部屋に人がいたじゃないか! あ、子どもだ!
良かった〜、ビビるじゃないか
「オホン、どちらさまですか?」
それから俺は、塔のアイザックと名乗る少年に絡まれ、無駄に時間を潰してしまった
いつの間にかマリアンヌが会場に戻り、お母様がサイモンを見つけて俺とはぐれた事に気づいたと知らせてくれた
誘拐犯の5人のうち2人を縛ったまま、紙に私達は誘拐犯ですと書いて、城の警備員の横に穴から捨てた。
いきなり隣に縛られた人が湧いて出たから警備の人もビビってたけど、スマン時間がないのだよ
残り3人は穴に入れたままだ。後で、尋問しようと思う
攫われた控室から出て会場に戻る前に迷子になったフリをして、適当に人を捕まえて、会場内のお母様の所まで案内させた
「娘を連れてきて下さってありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらず。
小さい子は、チョコチョコしますからね、小さいお嬢さん気をつけるのよ?」
「お母様サイモン心配かけてごめんなさい
お姉さん連れてきてくれてありがとう」
どう見ても年配だがお姉さんに、ペコっとカテーシーをして
俺は事なきを得た
お母様には内緒だけど、心配顔で睨んでくるサイモンに「後で、話して下さいね!俺は囲まれた所まで見てましたからね!」と言われて根負けした。
穴魔法から何から何までどう話せばいいか悩むな。
お父様達と合流して、お父様だけ居残って他は馬車で帰された
スコットも疲れた顔をしており、馬車ではお母様がスコットを労いマリーウェザーが迷子になったのよとか話してる
あのまま注射を打たれてたら今頃どうなっていたのか・・・考えると怖くなるのでやめた
俺は塔のアイザックの事などすっかり忘れていた
帰宅後、幼児の体力ではもたなくてウトウトしはじめる。
アンナに湯浴みをしてもらい「宴ってどんな感じですか?食べ物は出ましたか?」とか日常の会話に、帰ってきた安心感でそのまま寝落ちる
翌日、医療の心得のあるマルクに足をテーピングしてもらい1日休みをもらったサイモンと庭で話をすることになった
どうやらサイモンは、本当は何も見ていなくて
俺にカマをかけ、間抜けな俺はそれに引っかかのだ。
囲まれたって言ってたのも、大人ではなく、また他の令嬢達に意地悪され会場の端にでも連れて行かれたと思ったらしい
「数人の男達に控室かどこかに攫われたけど、逃げてきたわよ」って話たら肩をガシッと掴まれ
「お嬢様聞いてません!詳しく!大丈夫ですか!大変だ!体に異常はありませんか?奥様に!いえ、旦那様に!僕がついていながら!あああ!」とか
サイモンが壊れた
「落ち着いてサイモン、私なら無事よ。
かすり傷1つないわ。ちょっと落ち着いてサイモン、ねぇったら、落ち着きなさい、えい!こちょこちょ」
くすぐる攻撃で、サイモンが「お嬢様ハァハァ、やめてハァハァ」とウルウル悶えてキャッキャしながら少しずつ説明した
サイモンには誘拐未遂は衝撃すぎたようだ、純情ボーイに悪いことしたな
サイモンは、美少女顔だからウルウルハアハアされると変な事をしてる気になる。
立っていられなくなったサイモンが座り込んで、向かい合うようにしてサイモンに手をかける俺は
これじゃあ、俺が変態おにーさんのようだ
はたから見たら子どものジャレあいのハズだ!大丈夫、合法だ! たぶん
マリアンヌが喋ることも、サイモンには声が聞こえないから説明してもわからないだろうと思い、穴魔法を妖精に教えてもらったとだけ言って自力で脱出して誘拐犯をまだ捕まえたままだと説明した
誘拐犯を入れっぱなしでも俺は全然構わないけど、尋問するならサイモンにも手伝ってもらおうと思ったからだ
うちの家で尋問するとバレたら面倒だなと思っていたらサイモンに
ミネルヴァへ行ったときに、使ってない会議室か実験室でも借りて尋問出来ないか言われた。
実験室の拷問じゃなくて尋問!楽しそうだ!
「サイモンの天才的な案をいただくわ!」
「夜中に誘拐犯を1人ずつ地面から顔だけ出して埋めて、犬を周りに置いて人形をこう歩かせようと思っていたのよ。おどろおどろしいでしょ?
賢い犬の調達と地面を掘るの大変なのよ
実験室のほうが手っ取り早く雰囲気出るわ!」
「何の雰囲気ですか! ミネルヴァなら職員が常にいるから安全だと言う意味ですよお嬢様!
僕の優しいお嬢様が過激になってるぅ~、なんでぇ」
悪ノリ口走ってしまったな、すまねぇ中身おっさんで
でも自重しない
俺、被害者だし、注射器とかヤバそうなもん先に出したのそっちだし!
爪剥いだり痛いのはしないつもりだけどね
アイザックの存在が記憶に残ら無い




