なんの鳥だろう
いつも通りの朝、アンナが起こしにきてスコットがおはようの挨拶をし、ベッドから出ようとしたところで
「マリー・・・卵なんて持ってきて
割れたら大変だよ?」
スコットが毛布の中から卵を出してきた
え?卵!いやいや俺じゃねーし
「おにいさま、私じゃないですよ
見せてください、あ、温かい!鳥が産み落としていったのよ!」
「そんな訳・・・あー、カッコウの隠し卵かもしれないね」
「カッコウの・・・?なんですか?」
「カッコウって鳥は、よその巣に自分の卵を産んで、数合わせで1つ持って行って隠すんだよ
近くに落とすだけだと、卵が割れないときは、親鳥が戻ってきて拾ってしまうからね
どこかに隠すようになったって」
すると、話を聞いていたアンナが
「あー、そうかもしれません
昨日の昼間は掃除のときに窓を開けてましたから、その時に入り込んだのかもしれません
もう卵を産んだんですね、少し早いですが取残したフラグムの実を鳥が春が来たと早とちりしたかもしれませんね
ポツポツ実がなってましたし、小さい実は取りませんでしたから」
「え!じゃあまだこの卵生きてるのね?」
「えーと、マリー、もしかして?」
「お嬢様、辞めましょう?持ち歩いて割れたら怒られますよ?それにどうやって暖めるつもりですか?」
「暖かくなる魔法陣を使うのよ!」
俺は、紙に暖かくなる魔法陣を書いてその上に布を乗せ全体をもう一枚布で包み、小さい子がよく斜め掛けしてるポーチに入れた
スッポリちょうど入って持ち歩けるようにした、卵の孵化の条件は確か
たまに上下を入れ替える、温度と湿度だったかな
何の卵か知らないけどあの魔法陣はグロウアップ魔法だったしな、ダメもとでいいんだよ
俺は一度やってみたかったんだ
孵化と刷り込み「ホラホラ、ママでちゅよ〜」ってやつをな!いいじゃん肩とか手に乗って貰いたい!ワクワク
「とりあえず、朝食には持って行かないで下さい見つかったら怒られそうだし、ハァー」
今日はヤン先生が来るから、後で見せてあげよう
ヤン先生が迎えに来るまで、ポーチをポンチョの内に入れて隠しておいた
別に悪いことでもないし、ポーチは普通にいつも使ってるけど後ろめたくなるのは、俺の精神が幼くなってるからだろう
子どもって、道端の石でもどんぐりでもポケットやカバンに入れて隠したがるけど、自慢したくて仕方ないんだよな
自分でそこに思い至り少し冷静になる、ソワソワしすぎだよな
ヤン先生が来てアンナとサイモンも馬車に乗り、しばらくしたところで
ジャジャーン
「カッコウの落とし子です!」と自慢した
「「カッコウの隠し卵」では?」アンナとサイモンにツッコミを受けた
「おや、どこかで拾いましたか」ヤン先生は、フっと微笑んだ
「ベッドにいましたのよ!フフフ昼間に窓から入ってきたのよ
私がママになりますの、楽しみだわ、どんな鳥かしら」
卵がかえるといいですねと話していてミネルヴァに着いたが、またしても研究所に寄らなかった
「今日は、こちらで先にお話をしてから研究室へ向かいます
2階に喫茶スペースあるので、そちらへ」
知らないお菓子屋さんの前で馬車が止まり、アンナが「王室御用達のお菓子屋さんよ!」と教えてくれた
案内された店の2階には豪華な個室がいくつかあり、中にはカールおじさんとカレッジの学長ヴァイスマンが話していた
「おお、来たかね、まだ時間に早いから先にお茶でもしてようか」と部屋に通された
ヴァイスマン学長は、この前カレッジで会った時は怖かったのに今は優しそうなじいさんに見える
アンナとサイモンも座ってお茶を貰い、お菓子を食べて待っていたら誰かが来たようだ
ヤン先生とアンナとサイモンが後の壁際に寄り、テーブルセットが一新され誰かが入って来たようだ
「お忙しいところ来ていただいて恐縮でございます」
とカールおじさんとヴァイスマン学長が挨拶をして、何やら話している
「はじめまして、アレキサンダー・ダビルドでございます
お見知りおきを小さな妖精さん」
「はじめまして、マリーウェザー・コルチーノでございます」
頭の薄い(ハゲてる)この方、お名前を聞いてビックリだわ
ダビルドって、公爵で宰相の人やんか!
アレだよな、パパがお世話(補佐)してる人だよな頭ハゲてるし本人だよな
うへー、宰相来たよ!挨拶ちゃんとしないとな
「父がいつもお世話になっております、雪で帰れないので代わりにご挨拶申し上げます」
「これはこれは、ご丁寧にどうも、確かに賢そうなお嬢さんだ
確か、4つになったんだってね?
お父上が帰ってこなくて、寂しいでかな?
こっちも色々と雪で荷物も人も無くて、決済が進まなくてね、やることやってしまって少し時間が空いたから今日は来れたのだけどね
ついに騎士団を派遣して除雪作業することになったんだよ
このままじゃ、春の宴に準備も人も間に合わないからね」
困った困ったと肩をすくめた
自衛隊の災害派遣ってやつか?
あれやな、パパ帰って来てから忙しくなるやつやん、今頃どっかの宿であっちも暇してんのかな?
「おとうさまは帰ってこられるのですね(キャハ)」ここは喜んでおこう、あざとすぎず
「さて、本題に入りましょう
今日お呼びしたのは、この成績発表をご覧ください、同じものを送りましたが
この論文はまだでしたね、多少お直しはしましたがベースを書いたのは彼女です」
どれどれと宰相が読みだした
は?俺は論文なんてやってないぜイカサマか?
やめろよマジで、偉い人に嘘とかキッツいわー
だいたい、なんの論文だよまったく・・・
「これを本当にこの子が?」一通り読んで宰相かわ疑わしいとイ・ワンばかりに見てきた
いやいや、知りませんよ!やめてよ先生達!
「では、聞くけど
ここのこの部分は―――」
色々と質問されて、わかった
それ、俺がこの前書いた地動説の駄作文じゃないか!
他にもヤン先生といつも馬車で話してる内容を聞かれて答えたんだが、ヤン先生がまとめたものなのか?ヤメテヨ先生!恥ずかしい!イヤァァ
その他にも、聞かれるのは魔法陣関連ではなく、俺にとっての一般常識だけどな
「ハァー、本当に素晴らしいよ剥げそうだ」
と自虐ネタをして宰相が溜息ついた、やめて笑えないから
「先日の試験結果もこの通りでございます、申し分ないかと」
学長さんが書類を出して何か言ってるが、どうやってか駄作文が論文の形になってしまったようだ
「そうだな、持ち帰って考えるよ
コルチーノ伯爵もいないのに勝手に決めたら怒られるんじゃないか?私が」
ふぅ~と、紅茶を入れ替えてもらってキッシュのような食べごたえあるケーキを食べたら「お嬢さんごきげんようと」帰ってしまった
なんだったの?さっぱりだよ
やっぱり地動説は異端審問とかに?魔女狩りとか?怖いよう! でもヤン先生も普通に話してる感じだったしな
その後、研究室へ寄り温かくなる魔法は、実はグロウアップ魔法でした!
ジャジャーンと卵をみせて、職員があれやこれや集まって色々と言ってきて
屋敷の人達より盛り上がって楽しかった
刷り込みの概念はあったようだけど、育児放棄の鳥や動物も多くて餌やりを忘れず自分でしないと、結局餌をくれる人に懐くよねーって話しだった
柔らかくなる魔法陣の話もして、スチュワート商会が試作したがっていた事や
自分たちが検証や実験をするからと、いそいそ材料集めや実験の用意をしていた
俺は図書室に入り、魔法関係の本を探したけど見つからなかった
「お嬢様、何をお探しでしょうか?僕も手伝います」
サイモンに魔法の本をきくとアンナもサイモンもキョトンとした顔で
「魔法の本なんて、多分ここにはありませんよ」
と言われた
「ここは、道具作り専門の研究室ですよね
それに、魔法とは、暖かくなるあのやつですよね?今まで見たことありません
新発見なので、皆さんが慎重になっていて先程の宰相様にもお話をしていなかったのではないでしょうか?」
え、そうだったの?じゃあ言っといてよ!ポロッと出たらどうすんの?
「じゃあ、言っといて欲しいわ!ついつい口を滑らせて喋ったらどうするのよ!」とアンナが俺の思ってること言ってくれたけど
「子どもの戯言とか、現実と区別ついてないとかそんな扱いになるのでは?」
ああー、そうなるわな
俺は適当な本を読んで図書室の窓から見える、雪の華(フラグムの花に雪化粧)を眺めて過ごした
異世界あるある、目立たないように過ごしてるつもりでも目立つやつ
論文がどっかで表彰でもされたらどうすんだよ!ヤダナァ
翌朝、アンナが来る前に目が覚めて、卵を探すと枕元に置いてたはずの鳥の卵が割れていた
「おにいさま卵がわれちゃった」泣きそうだよと思ってると
「マリー、おはよう
もう産まれていたみたいだ、小さいのが動いていてビックリしたよ」
見て見てとスコットの手にピンクの雛が乗っていた
「す、刷り込みが」
「刷り込み? あ、えっと、まだ目が開ききっていないし、多分最初に見たのはマリーの寝顔だよきっと」
そう言って俺の小さな手にピンクの雛を置いた
そして、すぐにピヨピヨとスコットの手に戻って行った
ここ最近1番ショックだ
「餌やりを毎日したら良いじゃないですか?
フラグム取ってくるから、そんなことでいちいち落ち込んでんじゃないわよ!ハイハイ朝食に行きますよ」
とアンナに言われてフラグムをあげようとしたら
スコットのところのメイドが小さく切った実を既にあげていた
膝から崩れ落ち「つ、次からは私があげます」
雛は鳥かごに入れられピンクのフワフワひよこになり、その日から足しげくスコットの部屋に通うようになった
もちろんお母様にもバレたけど
「あら、私も昔飼っていたわよ、可愛い色ね」
と怒られなかった
ムクホークとピッピで迷ったが、皆がピッピと言うので名前はピッピになった
モリモリ食べて日に日にデカくなり、3日後には肥えた真ん丸な雀ほどになったけどまだ飛べないらしい
飛べたら俺の肩にも、とまってくれよな
せっせと餌をあげに行き、スコットの勉強内容を見てカレッジ入学前の勉強範囲に驚愕した
そして
俺の勉強内容は絶対に内緒にしておこうと思った、お兄ちゃんに拗ねられても困るからね
明日か明後日にはお父様がご帰宅よと屋敷がさわがしくなりお母様は指折り数えて過ごしていた




