温かくなる魔法!
お母様がお菓子とパスケースを注文するためにスチュワート商会をよんだ
相変わらず、狸の毛艶よくて、儲かってるんだなぁと関心する
「このお菓子をご存知かしら?ミネルヴァで頂いたものなのよ」
とアンナから一枚せしめたクッキーを出して、同じものが欲しいわと
「こりゃミネルヴァ限定のやつですね」
「あら、やっぱりそうなのね 見ないお菓子だもの小さくて食べやすいのよ、一口で食べれるのがいいわ
用意出来るのかしら?」
「はい、できます」
「さすが、スチュワート商会ね
大変よろしくてよ」
「私どももミネルヴァに支店を出してまして、あそこは学生の集まる街でしてね
小さく小分けしたものが多くて、価格も手頃でございます
この王室御用達のクッキーは、一日50個限定ですが朝から並んでおけば必ず買えます
1人2つまでしか買えないものですが
いくつ買いやしょう?」
「そうねぇ 10ほど欲しいわ?」
「まいど〜」
あらら、結構レアなクッキーなのね
朝から5人で並ぶのかな?
ヨシュアも付いてきてて、後で一緒にお茶すんのかな
「ミネルヴァのクッキーと言うと、スコット坊ちゃんがそろそろカレッジですから、下見でございますか?」
「マリーウェザーの方よ
そうだわ、パスケースを作りたいのよ
こう、首からかけて無くさないようにしたいわ」
「えーっと? 皮がよろしいですか? 布にしましょうか?」
よくわからないけど、言われた注文は受ける、深入りしない、狸の商人賢いんだなぁ
ビニールがないからこの世界だと、ほんとに袋に入れるしかないけど、前世で仕事で使ってた入館証入れやネームプレート入れみたいなの欲しいよな
「お母様、透明なケースはありませんか?
袋から出すとき、落としてしまいそうです」
「・・・そうね、マリーウェザーの小さな手には入館証は大きいかもしれないわね
透明なんてあるかしら??」
「せめて片面だけで良いので、透明だと袋から出す必要がありませんよね」
どうやら、お母様はケースと言うよりも小さい子がよく首から下げるポーチみたいなのを言っているみたいだ
紙に書いて説明していく
こう、透明な入れ物で、ここに紐をつけて、クリップで止めたら白衣の襟やポケットにひっかけられるし
最近、書くことに慣れてきて、絵が以前のように描けるようになってきた
俺は、高校は美術の専門高校に通いたかったが、中学の時チャランポランだったため偏差値の高い美術高校へは行けなかった
行けなかったら、趣味で書くしかないよな
萌画やアニメの絵は得意だ!ネットで絵師のバイトもしていた
サラサラと描いてこんな感じで、ネームプレートを白衣に付けると説明すると
お母様は、感心して「まあ絵が上手でわかりやすいわ」と言っていたけど
狸が興奮しだした
「お嬢様、これは売れますよ
素晴らしいです!見てすぐにわかりますし
お名前も見えますからね! ウチの商人見習いに名前を覚えるのが苦手なヤツがいますがどうしたものかと困っていました
制服や腕章に並ぶ、所属がひと目でわかる!
さっそく作って見ましょう
ガラスで作ってみてはいかがですかな透明ですぞ?」
「薄くすると割れてしまいますし、分厚いと重くて首や肩がこりますよ
樹脂とか無いですか?
透明度は低くなりますが、松ヤニならありますよね?
シリコンはさすがに無さそうですが」
「シリコン??は何かわかりませんが、
松ヤニというと、楽器の手入れに使うものですよね?
確かに長く置いておくと固まりますが・・・
まぁ、出来なければガラスにいたします
薄いガラスに松ヤニで膜を貼れば割れても破片を飛ばさないようには出来るでしょうか?」
「松ヤニで強化ですか
考え方というか目の付けどころがいいですね、流石持ってる商人さんですね!」
「お嬢様の発想こそ、金の生る木でございます
他に何か欲しい物はございませんか?
今は冬の終わりですので、何か作るなら今ですよ!春になれば工房や工場などは一気に忙しくなりますからな」
「なら、調理器具がほしいです、こんな感じで」
俺は、俺の知っててこの世界に無い調理器具を説明しながら描いていく
木や鉄を加工するのはそんなに難しくないのか、狸の商人が面白そうにあれやこれや聞いてくる
お母様が時々
「これは? 何に使うの? どうしてこの形なの?」と聞いてくる
「前にサイモンの料理を作った時に不便に思って・・・アンナが」
「そういえば、こちらのサイモン様が小麦粉を食べられないのだとか?
ごくごく稀に、聞きますな
豆の粉からパンを作っているとか?」
「あと、ライスでもいいんです
麦と同じように加工できます」
「ダイズやライスの加工品も取り扱っておりますよ、どんなのをお探しでしょうか?」
「ライスからお酒を作ってませんか?」
「ございますよ、ただ流通量は少ないですが(よく知ってたな)お酒を料理に使いますか?」
「いえ、米麹が欲しいのです あ、えーとライスのお酒を作るときの酵母のことです
その酵母を豆と塩と混ぜてワインのように寝かせておくと発酵食品になります
塩漬けなので保存食にいいですよ?」
「もしかして、発酵したソイペーストのことでございますか?」
「あ、あるんですか?」
「お嬢様が自作なさる為に一生懸命お調べになった事に驚いております
私もそこまで詳しく知りませんでしたが、海を渡って来るので西側の領地の名物料理ですよ」
味噌あったんかーい!
「では、ソイソースもあるのでは?」
「よくご存知で!」
何だよ、あるんかい!
そこで俺は思い至った、他の異世界人の存在を!
みんなやるんだな味噌と醤油作り
じゃあ、なんで天然酵母ないんだよ
あ、気温か
この国って雪国なんだよな・・・、戦国時代は小氷河期で夏でも25℃とか
酵母菌って30℃前後だったような・・・少なくとも28℃以上だったような気がする
海の向こう側の国か・・・日本みたいなのかな
お母様が飽きてきたので、ヨシュアを連れて退散することにした
部屋から桜に似た木が咲いていた、うっすら雪化粧していて「花が寒そうだな」と思うのは俺が日本人だからだと思う
「雪の華が光って見頃ですね」とヨシュアに言われて、これがこの世界の普通で満開の花の眺め方なんだなと感慨深くなった
「サイモン様がこれ見よがしに、木の下で木剣を降っていますね
構って欲しいのでしょうが、動きが雑すぎますね・・・わざと転んだりして」
俺も同じこと思ったけどな、言ってやるなよヨシュアくん
あ、本当に転んだ・・・
もし、あれが演技なら、あどけない少年もずいぶん逞しくなったもんだ
「サイモンを迎えに行きましょう、ヨシュアの言う通り構って欲しいのよ、きっと」
「マリーウェザー様は、慈悲深くお優しいですね
サイモン様が羨ましいですよ」
「甘やかしすぎと言いたいのね?
いいのよ、私の身長より小さいうちは弟みたいだものフフ」
「すぐに追い抜けるように、たくさん食べてもらいましょう
こう、ピョンピョン跳ぶと大きくなると聞きますね、木の枝からキャンディでも括り付けて跳ねる遊びをしませんか?」
「ヨシュアも背が高くなりたいのね?
面白そうね、皆でしましょう!アンナは木登りが上手なのよ、枝にキャンディを付けてもらいましょうか?
誰が1番高く跳ねる事ができるか確かめてみる?」
「キャンディならポケットから出てきました、マリーウェザー様が怪我でもしたら大変です」
「もう!行くわよヨシュア」
俺は、ヨシュアの手を引っ張って外に向かって走り出した
どこにいたのか、アンナが可愛いポンチョを持ってきて着せてくれる
サイモンが仔犬のような目で見てくるので、拾うことにした(手を貸してあげた)
「サイモン跳ねてみる?」
「え?あ、ハイこうですか(ピヨン)」
「マリーウェザー様は、サイモン様の身長を伸ばすお手伝いがしたいそうです
私も手伝いましょう」
「え! か、感激です!お嬢様、僕の事を思って下さってありがとうございます」
皆でピョンピョンしてたけど、何もないと続かないな
ケンケンパを地面に書いてみたり、縄を貰ってきて縄跳びしたりして遊んでみた
男の子だね、見様見真似で跳んで頑張ってる
サイモンとヨシュアがどっちが多く飛べるか縄で遊んでいるので
俺は木の下で遊んでる小人に話しかけてみた
「何をしているの?」
「木を温めているんだよ」
「木を温めてどうするの?」
「食べるんだよ」
「木を食べるの?」
「アハハ、面白い事を言うね!木の実を食べるんだよ」
「ああ、赤くて酸っぱい木の実ね」
「そうだよ、木を温めないと実がならないからね」
「え?そうなの?」
「おや、知らないのかい?この木は寒すぎると実がつかないんだよだから木を温めているんだよ」
「どうやって温めているの?」
「こうやって、魔法陣を木の周りに描いていくんだよ 花が萎む前に温めておくと実ができる
冬は寒いから、どこも実がなりにくい」
「寒くないと雌株にならないが、寒すぎると実のらないんだよ」
この世界では、まさかの事に、授粉は小人がしてたの?驚きの異世界事情だ
それに気温で雌雄が決まるのか!皆知ってんのかな?
「マリーウェザー様
何をしているのですか?」
「ねぇ、この木は寒いと実がならないそうなの、知ってた?」
「フラグムの実は、どの木が実るのかわかりません
去年実がついても今年もつくかわからないので、実がついてる木からいつも収穫しています
寒くないと花が咲きませんよね?」
「花が咲いてから、寒すぎると実がつかないから温めるそうなのよ」
「はじめて知りました、それもミネルヴァで教えですか?」
「いえ、そこに・・・あら、いなくなったわ
他の木に行ったのかしら
ここに不思議な模様があるでしょ?木を温める魔法なんですって」
「「魔法!?」」
2人が根本をみて、どれだどれだと探す
「これよ、コレ、わからないかしら、指でなぞるわ・・・あ、光った」
「「わっ!!」」
一瞬にして、満開だった木から花が落ちてきた
びっくりして上を見上げると、見てる間に次々に赤いフランボワーズみたいな実がなりだした
ファンタジーだ!ウオオ!
まるで植物の高速再生動画のようだ、プクーっと膨らんでいく赤い実は美味しそうに見えた
「凄いわ!こんな木の実なのね!甘いのかしら」
手の届く枝から実を摘んで食べてみた
「あ、マリーウェザー様
下の方の実は酸っぱいので熟してから・・・」
「ヨシュア甘いわ」
「え?そんなはず」
「本当よ、甘いわ、ホラ食べてみて」
口に放り込んでみると
「酸っぱくない?甘い、なぜ?」
「サイモンも食べてみて?」
「こんな実のり方なんて見たことないです、それにどの枝も甘いです、不思議です」
「マリーウェザー様は、妖精だったのですか?」
「もう、ヨシュアったら、そんなわけ無いじゃない、普通の女の子よ」
「そうでないと、お嬢様はいつか飛んでいってしまいそうですね」
ファンタジーだな
アンナも呼んで皆で収穫した、結構な量が取れてジャムやケーキにクッキーと楽しそうにアンナが厨房の方に持って行った
あの小人が来たら、できたジャムをあげようかな
コレって、天然酵母に使えるんじゃね?
さっきの実をひとつかみ残してもらって、煮沸した瓶に湯冷ましと少し砂糖を入れて、しっかり蓋をして振る
サイモンやヨシュアにも振ってもらい
紙に先程の暖かくなる魔法陣を書いて瓶を置く、瓶がジワジワ温かくなってる気がする
サイモンには悪いが、俺は小麦粉の柔らかいパンが食べたいのだ
米粉でも天然酵母のパン作れるかな?
それから毎日瓶の世話は、アンナがするそうだ




