ファンタジーだ!幼女だ!
キラキラと木漏れ日がまつ毛に揺れる
柔らかい風が頬をなでる
湖畔の辺りでブランケットに包まれて昼寝してたらしい
こんなに気持ちのいい目覚めなんて始めてだ
起き上がり目を見開く
昼間にホタル?
あ、違う妖精だ
水辺を妖精が飛んでる
木が揺れてる、サワサワと葉が風の歌のように聞こえる
ころんとプルーンみたいな実が3つ足元に落ちてきた。もちろん拾います
水の中に透けた馬?の妖精が水草を避けて泳ぐ
覗いてたら水をかけられた
「うわっ!
・・・あれ、冷たくないしあんまり濡れてない」
水族館のイルカショーかよ
あれ、俺泣いてたんだ
ファンタジーに感度して泣いてたのか
『クスクス、お寝坊さん起きたのね
やっと目が覚めたのね』
『目が覚めたの どこから来たの? どうやったら来れたの?』
周囲に浮かぶ妖精が話しかけてきた
『あなたたち、あまり引き止めてはダメよ
幼子よ、帰る時間なのよ』
「は、幼子・・・え?」
自分から小さい子どもの声が聞こえた
水に反射してるのは、3歳くらいの俺だった
『送って行くわよ きっと迷子になるわよ』
『またね きっと遊びにおいでなさいね』
『そうなの 遊びに来るの』
妖精に囲まれて森を歩く 足取りは軽く歩いて行く
一方で
「お嬢様ー どこですかー?」
「マリーウェザー!返事しなさーい!」
「いました!奥様こちらです」
「マリーウェザー あなた どこにいたの? 探したのよ
怪我はないかしら?」
金髪碧眼の深窓令嬢が心配そうな顔に、額に汗を滲ませ
豪華なドレスが汚れるのも気にせず膝立ちして抱きしめて迎えてくれた
「おかあさま しんぱいおかけしました」
「ああ、マリーウェザー
あなたが無事ならいいのよ
もう いなくならないでちょうだい」
俺は
マリーウェザー・コルチーノ
コルチーノ伯爵令嬢だ
俺は膝から崩れ落ちた 幼女かよ!
馬車で移動中、マルリーンお母様の膝枕でいろいろ質問されたけど
俺は、人知れず股の間の分身がいない事実に打ちひしがれていた
どうやら力尽きて寝てしまったようだ
3歳児の体力だと仕方ない
俺が寝てたのは確かに木漏れ日の暖かい昼間だったのに、なぜだか森を出たら既に夕暮れだった
あそこは桃源郷のようなところだったんだな
朝の支度を侍女に手伝ってもらった時にまた叫びそうになった
俺、幼女になってるじゃねーか
しかも、黒髪黒目の前世の俺に似てる
なんでやねん!
金髪碧眼の母親から産まれたのに残念すぎるだろ!
食堂に連れて行ってもらい
皆で揃ってたべたのは、とても豪華な朝食だった
「マルリーン 昨日は大事なかったか?
ソレがいなくなったのであろう?」
「ご心配おかけいたしました
マリーウェザーはすぐに見つかりましたもの
ありがとう存じます」
「フン!
領内とは言え コヨーテやオオカミくらいは、いるからな
目を離すなよ」
「承知いたしました」
この館の主
ハインツ辺境伯
ガチムチボディに、額に傷のあるイケメン紳士
国境沿いの領地を駆け回っていそうだ
多分ツンデレ属性だな、心配なら心配だと言えばいいのに
男のツンデレとかいらん
ふと、お母様のお茶のカップから紫色の液体が見えた
「おかあさま そんなものを飲んで 体は だいじょうぶなのですか?」
「え?
ただの紅茶よ?」
「見せてみろ」
ハインツ辺境伯が紅茶の匂いを嗅いで一口含んでみせた
「微かだが、味が違うな・・・
おい! 紅茶を調べろ!徹底的にだ」
バタバタと騒がしくなり
俺たちは部屋に戻されて特にすることもなく
昼寝も終わったところで
お母様の紅茶に毒物が入っていたことが判明した
犯人はこの館の使用人で
辺境伯婦人の座を狙っていたんだとか
なぜだか お母様が辺境伯と結婚するかもしれないと焦って、強行に及んだらしい
その後、使用人の処遇も あの美しかった湖畔のこともすっかり忘れて
翌日には、王都のコルチーノ伯爵邸に戻ることになった。
この時のことを3歳だった俺は覚えていられなかったのだった
ハインツ辺境伯とお母様は親戚です母親が従兄弟同士
南の方の通年暖かい領地