シンデレラボーイ
あれから、シャルル達は無事に過ごしてる
影でヒソヒソ言われてるけど、まぁ自業自得だしシャルル達が以前俺に言ってた暴言に比べると可愛いもんだ。
ジェイコブ寄りの所にいて俺たちの話に混ざってる。
それよりルイーゼの方がなんか可哀想だ。
いつの間にかルイーゼの所業が他のクラスに知れ渡り
卑怯なやつとレッテルを貼られてる
突き放すこともしないけど庇いもしない、レイナルドが何を考えてるのか分からない。
まぁレイナルドガードとしての役割があるから俺は声に出して応援してる
誰かが声を出してルイーゼを罵れば
「彼には彼の考えがあるのよ、私は個人の意志を尊重するわ」って頭お花畑いい子ちゃんぶってる。
当のルイーゼにはめちゃめちゃ嫌われてるっぽいけど
俺の為に頑張れよ!
ジェイコブがテーマパーク構想を面白がるから
付き合って色々と描いていく
ジェットコースターは死人が出そうだし、観覧車も倒れそうだから現実可能アトラクションを考えて
夏場はライブ会場を提案しといた
ステージだけ作れば、冬は雪像フェスティバルにも使えるかな?
この世界にアイドルの概念はまだない
「殿方は押しを応援したくなりませんか?」
ジェイコブ「ん?派閥のトップを支えると言う事か?」
俺は無名の少女がやり手の商人によってアイドルになるまでのドキュメンタリーを5分で語った。
が、理解を得られなかった
奴隷を捕まえてきて娼館で働かせる変態おっさんの話しをしてると勘違いされた
「えーっと、将来早く走りそうな子馬を見つけて、金銭援助して育てます
手塩にかけた馬がレースに出場して優勝したら嬉しくないですか?」
ジェイコブ「賞金が貰えるなら嬉しいな」
「賞金は馬主と馬とジョッキーに入るので、レースに掛けた分だけしか返ってきません
要するにファンです頑張れよとお金を貢ぐのです」
モーリス「マリーウェザーの言うアイドルとは劇場女優のことか?」
「そう!それが近いですね!
例えば、劇場女優さんは握手は出来ませんよね?プレゼントは一方的に贈れても
けどアイドルグループは握手会があるのです
握手チケットを買うか、グッズを購入してチケットを添えておきます」
フレッド「チケットいっぱい買ったら食事してくれるの?」
ぐぬぬ、金持ちのボンボンどもめ!
スコット「マリーの言いたいことはよく分からないけど、例えばピアノ伴奏で歌ったりするのとは違うの?」
コンサートね!
なんだ、そーゆーのでいいのか!アリ寄りのアリだな
ジェイコブ「歌か!」
シャルル「あー、なるほど分かったそれなら人寄せにいいかもな」
ステファン「普通に劇をやったらいいんじゃないの?」
うん、もうアイドルの説明いいや
実際見ないと分からんだろうな。
ジェイコブ「おお、これ凄いな!マリーウェザーは絵が上手だな、シェルタニアのリタ王も良かった」
シャルル「僕も読ませてもらった。分かりやすいし想像しやすかった」
ステファン「末の娘(胸が大きくて)可愛かったね」
サイモン「お嬢様はよく絵を描いてくださるのだ、屋敷ではそれを手本に字を覚えていた」
サイモンの為にオッパイ大きく描いたからね!
それから数日がたち
レイナルドのお誕生会の日が来た…
朝からスチュワート商会のお手伝いさんが来てアンナと湯浴みして待ってた。
グスコーブ商会のお高いシャンプーをつけてくれてもう一回湯浴みさせられた。
黄色いドレスはなんか初夏を先取りしたような明るい色で可愛かった。
やるなスチュワート商会!
そして髪を結い上げてもらって流行りのポンパドール風リボンが可愛らしい
靴は白のパンプスでヒール低めで歩きやすかった
アンナ「お嬢様すっごく可愛いー!
お姫様みたいですよ!
流石ですね〜!
ひまわりの妖精のようですね
アイザック殿下のお心遣いに感謝です!」
お手伝いさん「恐れ入りますお嬢様の美しさを引き出せましたでしょうか」
アンナ「助かりましたぁ!ありがとうございます!」
談話室に出るとスコットとサイモンが可愛い可愛いと褒める。
ふふん知ってる俺可愛いよね!
スコット「悔しいけど、アイザック殿下はマリーを良くわかってるね
黄色いドレスは元気に見えて可愛いよマリー」
頭を撫でようとしてくれたけど、編み込んでる髪の毛がヨレるから手を引っ込めてしまった
お嬢様ってスキンシップ減ってヤダね
ラウンジで待ってらチェシカお嬢さんが来て
「んまぁ!マリーウェザー様!
可愛らしいわね、へぇ~っ黄色いドレスもよく似合うわ
元気よく見えるのに清楚にも見えるわ」
「えへへ、ありがとうございます」
クルンと回ってニパっとする
フレッドと双子兄が出てきて
「一応クラスメイトだからちょっと顔だけ出してすぐ帰るつもりだよ
マリーウェザー可愛らしいね
君は何でも似合うよ」
2人は先に行くと言って出ていった
それから寮の人達を何人か見送ってラウンジで待ってるとアイザックの馬車が見えた
黒塗りの王家の紋の馬車だ
護衛騎士が馬に乗って着いてきて仰々しいです
馬車からアイザックが降りてきてうやうやしく挨拶をしてくれる
顔が赤くなって緊張してるようだ
「マリーウェザー
今宵の月のように美しいソナタをエスコート出来て嬉しいです……あの手を」
アイザックの手に手を重ねる
「アイザック殿下ごきげんよう
素敵なドレスをありがとう存じます」
「マリーウェザー…そのドレスを気に入ってくれて嬉しい」
「ありがとうございます
おにーさまサイモン行ってまいりますわ」
スコット「マリーいってらっしゃい、僕らもすぐに向かうよ。
アイザック殿下マリーをお願い致します。では後ほど」
「うむ、マリーウェザーはしっかり私がエスコートする、スコットも会場で会おう」
今年12歳になるアイザックは塔で過ごした10年が長かったようだ、歳より幼く見える
今年の秋に10歳になるサイモンといい勝負だ
まぁ5歳の俺が言う事じゃないけどね
エスコートの身長差が気にならない、ちゃんとステップ台が用意してある!アイザック陣営やるな!
馬車に乗ってる時間は10分程だ、中を通って行くんじゃなく一度道まで出る
「マリー、2人の時はアイザックと呼んでくれぬか…(照)」
「はいアイザック様」
そうだった、忘れてたけどアイザックの初恋って俺だったわ
この年頃ってちょっと年上のお姉さんに憧れてこないか?まぁ個人差あるかな
「お手紙ありがとう…しっかり受け取った
可愛い妖精が届けてくれてな、お喋りしてくれて嬉しかったのだ
マリーは妖精の友達がいるんだね」
え?
ランチュウ姿見せちゃってたの?
こっそり机の上にでも置いてくれば良かったのに
アチャー
笑って誤魔化す
「マリー、君の身が危なかったと聞いてとても心配したよ!胸が張り裂けそうだった!
兄上が守ったんだね…」
「すみません
急なお手紙を出してしまってご心配おかけしました
あの後、件の女生徒は退学になりましたから。
重い処分でしたが、お陰でもう安全ですわ
あれから、ミシェランド派のレイナルド殿下の取り巻きの方々とも和解できましたし
今では彼らとお友達になりましたのよ
アイザック様がお心を砕いて下さったお陰で、学生生活がとても楽しく過ごせています」
「マリーに男友達?
お友達は女生徒だと思っていたが?」
「わたくしは普段スコットおにーさまとサイモンと一緒にいますから
スコットおにーさまが人気者なのですわ」
「ああ、なるほどそうか
マリーはスコット殿といつも一緒にいるんだね
スコット殿は優秀だと聞いてる、学友も多くて、頼れる兄なのだな」
「はい、困った時はいつもおにーさまに助けて頂いております。ふふっ
カレッジの事が気になりまして?
アイザック様も兄君がおられぬのは寂しいですのね」
「あ、あぁマリーからの手紙で
カレッジはどんな所かいつも想像していた
今日来ることが出来て嬉しいのだ」
入学前ってこんな感じなんだな
ソワソワしてて初々しいな全く
「今日の思い出を忘れたくない、会えない時間が長くて辛い…
兄上は毎日マリーに会ってるのに」
初恋拗らせてんなぁ
え?どーしよ
「レイナルド殿下の派閥と違いますし、席も1番後ろです
わたくしは背が低いので最前列に座っております
挨拶程度しかしてませんわ」
否、最近は挨拶も交わしてなかったわ
不敬罪でしょっぴかれちゃう?ふへ
レイナルドガードを俺が盗ってやったからな!
自分で捨てた側近候補に今更話しかけ辛いよな、クククッ
「そうか……そうか
マリーと同じ時期にカレッジに通いたかったなぁ」
可愛い本音が漏れてるぜ?
馬車が会場に着いて、扉が開いた
アイザックがエスコートしてゆっくり降りる。
ちゃんとステップ台が用意してある!
すると同じように馬車が到着した
王族の馬車が停まってるのに待てないのかよ、マナーがなってないなぁ
けど降りてきた人影にビビってちびりそうになった。
アブドゥル大使が出て来たからだ
何でお前がいるんだよぉ!!ゴリラァ
そして花魁をエスコートしてザエルアポロなんとかアルラシードの殿下らしき人が出て来た。
多分マリアンヌがダンジョンで両足切っちゃった人だよな?あんま覚えてないけど
すぐにくっつけたからノーカンな!
アイザック「アルラシードより第二王子が来ていたのだ
今日の兄上のパーティに参加することになってる」
もっと早く言ってよ!漏らしそうになったやんか!
ザエルアポロ何とか殿下がアイザックの前に来たら挨拶を交わした。
そして、花魁とアブドゥル大使が俺の前に跪くと挨拶をしてきた
花魁「マリーウェザー様にご挨拶申し上げます」
大使「マリーウェザー様が来ていると伺って私も護衛がてら着いて参りました!お会いできて光栄です、今日のお姿は月も見惚れる女神のように美しい」
イヤァー!
お前らのそれって臣下の礼じゃね?創造主とか言わなかっただけ褒めるよ?でも王族すっ飛ばして何してんだ!俺はアイザックの影から睨んでおく
「私はザエルアポロ・ハールン・カエザル・アルラシードである
そなたがマリーウェザー・コルチーノか?」
俺はアイザックの影から出てカーテシーをする
「マリーウェザー・コルチーノでございます
アルラシードの王子殿下にご挨拶申し上げます」
「どうかカエザルと呼んで下さいコルチーノ嬢。
そなたに会いたいと思っていたのだ。
我が国との架け橋に協力してくれて感謝する……本当に感謝する、お礼を言わせてくれコルチーノ嬢
そなたはまさしく楽園の聖女だ」
アルラシードの王子は俺がダンジョンにいたアバター聖女だと気がついてるっぽい
冷や汗が止まらない!ひぇ
アイザック「マリー、マリーウェザーが驚くのも無理はない。カエザル王子はマリーウェザーが留学を希望してる事をご存知だったのだ。学生の交流が途絶えて何年も経つが、マリーウェザーがあらたな風をアルラシードに届けたのだ。私は昨日の晩餐でその話を聞いて誇らしくなった」
そーですかい!
ってか、アルラシードの王子には花魁がしっかり話をして口裏合わせてくれたんだなナイスだ!だったら跪くんじゃねーよ!谷間スゲーな
脳筋ゴリラめ!お前も跪くんじゃねー!
「アブドゥル大使ご無沙汰いたしております」
俺は涼しい顔を作って淑女の礼をする
大使が跪いた状態から手を出した…仕方ないから重ねたら、俺の手をおでこにつけてなんかブツブツ言ってた…怖っ
そしておれの小さな指先にキスを落とした
周りで見てた人は大使の正装姿にザワつく。
もうやだ帰りたいよ!俺といる時はたいがい裸か聖騎士の鎧姿だから正装姿に違和感しかない
アイザックが何故か憧れの眼差しを送っている
え?このゴリラになんで?
ホールまでのエスコートでアイザックから聞いた話では
城で白馬に乗りたがった騎士が乗れなくて怒って、収拾つけるために王様が模擬戦をやらせたのだとか
意味が分からないんだけど?
うちの王様もたいがいだな大使は賓客じゃねーの?
大使は10人抜きしてアイザックの憧れの的になった
紳士的で優しくて格好良かったらしい。
へぇー帰れよ
ホールに入るとチョコの香りがする
ロバートさんガンバったんだな、大使達が持ってきたカカオをおばぁちゃまが買い取ってグスコーブ商会経由でロバートさんに届いただろう。
多分今あるチョコはコルチーノの畑で取れた甜菜糖を使ってるかもしれない
工場建てる前に甜菜を運んで来られてもとかロバートさんも言ってたしな
レンジで早々に砂糖に変えてそうだ
俺たちがホールに入ったらザワザワッてなったけど
司会のアナウンスでアルラシードの第二王子殿下が留学のためにいらしてると説明してた。
留学のために?
え、もしかしてここの学校の事ですか?
アイザックにエスコートされたまま俺はレイナルドの前に来て一緒に挨拶を交わした。
「兄上、15歳おめでとうございます
健やかにお過ごしください、兄上のこれからをお祈り申し上げます」
俺はそれに合わせてニッコリ笑ってカーテシーしておしまい。
レイナルドの隣にいる婚約候補は、ベッツィお姉様の異母弟の母方の従兄弟でエリーゼ・コサック伯爵令嬢だ。
ショーンが時期公爵としてお披露目をしたから、母方から出て来た伯爵令嬢でマデリーンの対抗馬だけど
3回生で今年卒業しちゃうから、ミシェランド派の牽制に出しただけかもしれない。
ミシェランド派と違って意地悪してこない
コーネリアスとベッツィが結婚するから一応遠い親戚になる予定。敵じゃないけど味方って訳でもない。
キリッとした美人だ。
大使は今はカエザル王子の護衛として立っていたけど
特別親善大使だと正式に紹介されていた
花魁のオッパイをお母様より大きく作ってしまったから仕方ないけど、レイナルドはオッパイに釘付けになっていた。
お前もムッツリだったんだな
カエザル王子は「私の唯一無二の愛しい人である」と紹介していた。
花魁の衣装がエキゾチックすぎてどこの国の衣装かわからないっぽい。
派手で高級そうだから、みんなにはどこかの国のやんごとなき姫君だと勘違いして欲しい
インパクトある人達がいてくれたお陰で、俺たち目立たないから良かったです結果オーライ
アイザックがキリッとした顔で手を差し出してきた
「マリーウェザー私と踊ってくれぬか?」
「はい」
アイザックの手に手を重ねた。
ダンスに緊張してるのかアイザックの手が震えていた
「アイザック殿下、そこまで緊張せすとも大丈夫ですわ」
「慣れてなくて、足を踏んだらすみません」
「では踏まれないように避けて踊りますから、緊張なさらずにふふふっ」
視線を感じると思ったら大使がこちらを睨んでいた
多分睨んでたんじゃなくて見てただけだろうけど
顔が厳つくて怖いんだからそんな真剣にこっちを見るんじゃねーよ!
俺はチラッと大使と視線を合わせて笑えと意志を込めてニコリとしてみせた。
大使はお顔がパァと明るくなった
アイザック「マリー?どうしたの?」
「アブドゥル大使がアイザック殿下を見ていましてよ?」
アイザックが振り向くと大使が笑ってこちらを見ていた。
「アブドゥル大使殿は、コルチーノの屋敷でマリーウェザーに助けてもらったと言っていた
命の恩人だと
あの時のお祖母様のいい人の事であろ?
アルラシードではその…失敗してしまったと聞いたが
マリーウェザーのとりなしが無ければ大変な事になっていたかもしれないと…
何も考えてない私が恥ずかしい」
「アイザック殿下
前を向いて下さい、今は私とダンスの時間ですわ
アブドゥル大使の事は気にしないで下さい
ちょっと大袈裟に言って友好の証としてますのよ」
「マリー、君は本当に優しくて素敵な女の子だね
兄上が候補として縛り付けたらマリーは……」
とそこで音楽が終わりダンスが終わった。
俺たちは飲み物を取りに下がった
デカい影が着いてくる。目立つから動かないで欲しいわ
大使は今日はカエザル王子の護衛としているんじゃないの?
もちろん殿下の護衛
アイザック「マリーウェザー、飲み物を貰ってくる、ここにいて下さい」
アイザックが離れたからここぞとばかりに大使が話しかけてきた
「マリーウェザー様お会いしたかった…夢で逢えたらと願っても貴女は出てきて下さらない
けど、こうして会えました
あなたと繋がっている奇跡の御業で満足せねばならないのに」
(※街ダンジョンのメールのこと)
俺はコソッと話そうと思って口に手をやって
「あの目立つからあんま話しかけないで?
聖女アバターじゃないから強くないし
ダンジョンのモンスターなら物理的にやっつけておしまいだけど、政敵は人間だから簡単に消せない…わっっ!」
喋ってる途中で大使が俺を抱っこしてきた
目立つからあんまそーゆーことすんなよ!
しかも大使の抱っこはトラウマがいっぱいあって怖いんだよ!
大使「誰です?貴女を狙う不届き者は!私が何者からも守ります!私はむぐぐ…!」
俺は急いで大使の口を塞いだ
「私は自分で政敵を自陣に取り込んでる最中ですから!敵を端から排除るすスタイルじゃないのよ、わかる?余計な事をしないで下さい頼むから!」コソッ
今、中途半端に大使に何かされたらすごく面倒だよ本当に何もするなよ帰れよゴリラァ!
アイザック「あの、マリーウェザー??」
アイザックがドリンク両手に帰ってきた
「つ、疲れたと漏らしたら抱えて下さったのホホホ
アブドゥル大使ありがとう存じます
お陰で癒やされましたわ」早くおろして目立つから!
大使が失礼致しましたとスッとおろしてくれた。ホッ
「マリーウェザーは疲れていたのですか?すみません気が利かなくて、…ダンスをもう少し頑張ります」
アイザックからドリンクを受け取る
「アイザック殿下のダンスはお上手でしたわ。気疲れですのホホホ。隣国の大使や王子殿下など、重鎮にお会いして緊張してしまいました。お気遣い感謝いたしますわ。アイザック殿下ありがとう存じます」
アイザック「そうでしたか。わかります、僕も初めてお会いしたときはとても緊張しましたから」
「マリー!アイザック殿下、アブドゥル大使殿、妹のお相手をありがとうございます」
スコットが駆けつけてくれた。サイモンと一緒に来ていてホッとした
「アブドゥル大使殿、ご無沙汰いたしております。領地に立ち寄ったと伺いました、祖母の温泉宿はいかがでしたでしょうか?」
「スコット殿、ご無沙汰ですね。領主夫人の宿はカエザル殿下も大変お喜びでした。前回の滞在時より人も街も豊かになりましたな。我が国も見習いたいほどです」
この前獣人保護区で一緒にホルモン食べたけどね
アブドゥル大使が大使っぽいことを話してる、あれ?意外とまともじゃないか。俺にもそんな態度で接して下さい
するとカエザル王子もやってきた…来んなよ!
「お初にお目にかかる ザエルアポロ・ハールン・カエザル・アルラシードだ。スコット・コルチーノ殿だな?祖母殿の宿はとても居心地が良かった
楽園の湯に満足できた。素晴らしい取り組みだ、我らも平和を愛するこの国のようにつとめたい」
スコットがスッと姿勢を正して挨拶する
「コルチーノ伯爵家次男のスコットでございます。私には勿体ないお言葉恐悦至極にございます。祖父母が現役で領地を盛り上げております、アルラシード王子殿下にそう言って頂いて誇らしく思います」
お兄ちゃん格好良い
「カエザルで良い。私もスコットと呼んでも良いだろうか?貴殿とは気が合うようだ、仲良くしたい
寮の準備が終わればこちらへ通うのだよろしく頼む」
スコットが目を丸くして俺を見た
「私も先程伺いました」
まあ、その寮ってのは山の上のロイヤルスイート寮だよな?時間かかりそうだ。
スコット「光栄です……ちなみにクラスはどちらに入られますか?」
カエザル「14歳のクラスは貴殿らと同じクラスであろう?コルチーノ兄妹と同じはどうかとカレッジ側から申し出があったのだ。こちらもそのつもりだった、マリーウェザーとスコットは秋には我が国に留学すると聞いている。交流があったほうが良いだろと学長の配慮だ」
絶対に面倒事を押し付けたに違いない!ヴァイスマン学長やりやがったな!あっスコットの顔が引きつり笑いになってるぅ
アイザック「僕もアルラシードに留学してみたいです、母上に反対されましたけど。父上はカレッジの3回生になったら考えると仰ったのだ、今勉強を頑張ってるのだ」
へぇーアイザックは勉強を頑張ってエラいね
「アイザック殿下の努力が報われることを祈りますわ」
カエザル「マリーウェザーとスコットはハッサムの商会に社会勉強をしに留学すると聞いているが、あちらの王立貴族学校にも顔を出してもらう事にした
ぜひ貴殿らの優秀な姿を見せつけてくれ。我が国の貴族らにも見習って欲しいものよ」
俺・スコット「「え!?」」
スコットがハッとして「グロステーレの代表とし恥ずかしくないよう努力いたします」
俺もそれに合わせてカーテシーした
もう帰りたいよ!
なんなの?!本人たちの意向を無視して勝手に決めんじゃねーよ!嫌だァァ!
他国の学校なんて行きたくない!!絶対面倒じゃないか!
誰か助けてぇー!
すると、甲高い声が聞こえてきた遠くで
「レイナルド様15歳おめでとうございます。んまぁ、そちらはダビルド派のご令嬢ではなくて?
えーっとぉコサック伯爵令嬢ね!新しい婚約者候補だとお父様が仰ってたわ!マリーウェザーは辞めたのね!せいせいするわ」
俺の名前を出さないでマディリーンお嬢様
レイナルド「何をしに来たのだ!呼んでもいないのに勝手に来てはならぬ!ここはアカデミーの大ホールだ!学生以外は………とにかく帰り給え、誰から聞いたのだ?」
学生以外もいるもんな。
「あら、わたくしは正式にこちらに呼ばれましたのよ?白の美しい妖精が突然現れて今日アカデミーでパーティがあると教えてくれましたのよホーホホホ」
俺だよ、クリオネに行かせたんだよ。クリオネは余計な事を言わずにさっさと帰ったのか、今度から伝言はクリオネに行かせよう
ってか、こんなカオスって知ってたら呼んでなかった…砂糖のお話は今度にしようかな?ミシェランドで甜菜育ててもいいか、みんなの前で聞こうとしたんだけどね
うまく行かないなぁ
レイナルド「そなたは何を言っているのだ?馬鹿なのか?前は聖鳥の巫女姫などと嘯いていたが、今度は白の妖精か?公爵は何をしているのだ、これ以上問題を起こす前に帰りなさい」
「もう!レイナルド様ったら照れなくてよろしいのよ?殿方は気になる女の子につれない態度を取るものだとお父様が仰っていたわ、レイナルド様もお年頃なのね?」
レイナルドは顔を赤くして震えていた。
誰かマディリーンお嬢様を止めてやれよ、そう思ったら、ルイーゼが止めに入った
お前は勇者か!
「マディリーンお嬢様!あちらにチョコレートがございます!取りに行きましょう。そして今日はもう遅いのでお帰り下さい!侍女はどうされました?」
「こっそり来たからいないわよ?あなたは…ルイージだったかしら?ふん!わたくしに指図するんじゃないわよ、あなたがチョコを取って来なさいよ!
わたくしは来たばかりなのよ!カレッジなんて初めて来たわ」
「ルイーゼです。そんなことより、ここはお嬢様が来るところではございませんお願いします!帰りましょう!」
「ルイーゼ?ああっ!あなたね!レイナルド様の周りをうろついてる毒虫は!迷惑になってるのがまだわからないの?ミシェランド派の中の裏切り者らしいじゃない!穢らわしいわ話しかけないでよ!あなたが帰りなさい!」
ルイーゼが大ピンチだ!
マディリーンお嬢様それブーメランだよ?
ルイーゼはレイナルドを振り返ったけどレイナルドは冷たい視線を2人に向けた。迷惑だと言われたルイーゼを庇うことなく何も言わずに視線で切り捨てたのだ
ルイーゼはうつむいて走り出した
憐れすぎるだろ…うわぁ
気配がフッと消えたと思ったら壁際で大使が凄い顔をしていた。大使もトラウマか?
「ふん!レイナルド様のために毒虫を追い出して差し上げましたわ、別にお礼はいりませんわ当然の事をしたまでてすからホホホ」
「そうか当然の事か…そなたの派閥のものだが?」
「わたくしはミシェランドを代表していらないものは切り捨てたまでですの、お褒めいただき光栄ですわ!」ドヤ顔
「アイザックも来ているのだ挨拶をしてくるといい」
アイザック「兄上っ!?」
「あぁ!!マリーウェザーじゃないの?!あんたがなんでこんなところにいるのよ!」
レイナルドがアイザックに面倒を押し付けたように見えたんだが?そしてとばっちりだ、マディリーンは俺の所に1番に来た。
「ごきげんようマディリーンお嬢様。私もいと高き所におわすお方に呼ばれましたのよ」
王族に呼ばれたのだと言ったのだが
「なによあなたも妖精に呼ばれたって言うの?ふんうそぶくんじゃないわよ!」
アイザックがマリーウェザーを庇う
「違う!マリーウェザーは私が呼んだのだ!ミシェランド嬢やめないか!失礼だ!」
「んん〜?キャァッッーーー人攫いの変態よぉ!アイザック様怖いわぁ」
マディリーンお嬢様がアイザックに抱きついて叫んだ
叫ばれたアブドゥル大使はワタワタしだした
「ち、違う!私は人攫いなどではない」
カエザル「これがこの国の公爵令嬢なのか??」
レイナルドの失態だなアイザックの側には隣国の大使と第二王子がいたのに
「おにーさま、カエザル王子達を連れてって下さいここにいては巻き添えをくいます。マディリーンお嬢様は私が何とかしますから」
「ハッ分かった、マリーも気をつけてね。アブドゥル大使殿、カエザル王子、どうかこちらへ…大変申し訳御座いません。マックイーン子爵とうちの領地の共同開発したチョコレートはもう召し上がりましたか?アルラシードのカカオから作られています」
マディリーンに絡まれたアイザックが逃げようともがく
「ミシェランド嬢!やめないか!あの方は隣国の特別親善大使殿だ!人攫いなどとそなたの勘違いだ!!」
「そうだったかしら?黒いからみんな同じに見えたわ!私が拐われかけたのは事実よ!怖いわ」
「手を離してください!私はそなたに触られたくない!」
「んまぁ、マリーウェザー離しなさい!アイザック様が迷惑だと言われたのがわからないの?」
ちょっと離れた俺は触ってすらないけどな?
アイザックが可哀想だから仕方ない、アイテムボックスからとっておきの生チョコを取り出した。
俺は甘すぎてちょっとってなる甘々の生チョコだ!
「マディリーンお嬢様チョコレートです、ハイあーん」
マディリーンは癖なのか大きな口をあけた。公爵令嬢にあるまじきデカ口だけど、とても入れやすかった
「んん??んまぁーい、何これ美味しいわぁ!ここにあったの?」
「違います、特別に作ってもらいましたからここにはないです」
「ズルいわ!!どうしてマリーウェザーがこんな美味しいものを持ってるのよ!ズルいじゃない!」
マディリーンが俺を非難しはじめたからジェイコブ達が心配そうな顔をして近くまで来ていた。ふっ俺は良い友達を持った
さっきルイーゼがバッサリ切られたからマディリーンが怖いのだろう。でも俺の心配をしてくれるいい奴らじゃないか
「特別なお砂糖を領地で育てていますのよ?」
「は?お砂糖?」
「ええ、でも伯爵領は狭いでしょ?全然足りてませんのよ、広大なミシェランド公爵領でもお砂糖を育てて頂けないかしら?マディリーンお嬢様のお知り合いに田舎の領地にお砂糖畑を作ってくれそうなお方はいなかったかしら?」
「お砂糖を育てるですって?!んまぁ!公爵領にお砂糖?素晴らしいわ!ふん!仕方ないからお砂糖を育ててあげましてよ?」
「まぁ、ありがとう存じます。流石ですね、公爵令嬢のお心も広くていらっしゃる助かりますわ。チョコレートにはお砂糖がかかせませんもの、輸入砂糖は高くて」
アイザック「マリーウェザー?」
俺はアイザックにインクをしてから
振り返って心配そうに見てるジェイコブ達を示して
「アイザック殿下、先程申しました私のお友達ですの紹介してもよろしいでしょうか?」
「へ?…ああ、構わないぜひ紹介してもらおう。そなたらはマリーウェザーの友達なのか?」
「はい、アイザック殿下。ジェイコブ・サザーランドです、ご挨拶申し上げます」
シャルルとステファンも後ろに着いてきて一緒に挨拶をした
「んまぁ、アイザック様、彼らはわたくしの配下でしてよ?いつの間にマリーウェザーの友達になったのよ!」
「マディリーンお嬢様が泊まった高級宿に使われてる木材はサザーランド産ですのよ。冬の間に足りなくて困っていた時に融通して下さったの、とても助かりました。もしかして、先程のお砂糖の件を引き受けて下さらないかしら?マディリーンお嬢様から頼んで下さるとありがたいのですが?はいあーん」
マディリーンはあーんしながら喋る
「サザーランド子息、引き受けなさい!お砂糖よ?素晴らしいじゃない!作った者は私にも寄越しなさいよ!」
「ジェイコブさん買い取り先が出来て良かったですね。ミシェランド公爵が直々に買い取るそうですよ?」
ジェイコブ「え、は?はい!マディリーンお嬢様ありがとうございます。公爵様にもよろしくお伝えください」
「シャルルさんとステファンさんにも頑張ってもらいましょう!マディリーンお嬢様のお声がかかるのを待ってるのではなくて?」
「んまぁ、あなた達もお砂糖を育てなさい!命令よ!」
「公爵令嬢の命令ならご両親も無下には出来ませんわね?アイザック殿下の御前でのお言葉ですもの」
言質は取ったぜ!
シャルルとステファンがビクっとしたのが分かった
この計画は話してたよね?
みんながいる前でマディリーンお嬢様の許可を貰えたから概ね計画通りじゃね?
「お砂糖の品種改良をカレッジでしていましたのよ
まだまだ思うような成果はなくて
データ取りのために栽培領地を探していましたのよ
助かりましたわ」
「そうでしたか。そなたら、私からもよろしく頼みます。マリーウェザーは優秀なのですね、砂糖はどのようにして育てるのですか?」
「見た目はカブや根菜なのですが、甘いのです
煮出して煮詰めて水分を飛ばし煮汁が固まったら砂糖になりますの」
「マリーウェザーは物知りなのですね、それもカレッジで教えて貰えるのですか?」
「彼らと農学クラブに所属していますの」
「はぁ?農民みたいなことをしてるの?ありえないわダサいわね」
ネーミングがダサいのは認めるよ?ベジタブルサイエンスクラブとかにしたら良かったのにな?
「お陰でお砂糖開発が出来ますもの領地でお砂糖を育てるのも農民ですわ、育て方や肥料などの研究は農民には難しいでしょうね。カレッジがそこの部分を担っていますのよ」
「ふぅーん、まぁ確かにそうね」
「マディリーンお嬢様は賢くいらっしゃるのね。今の説明が理解できるなんて素晴らしいわ、公爵様の教育の賜物ですわね。さぞお勉強なさってるのかしら?カレッジの勉強は難しくて大変ですけど今から勉強をされてるなんて凄いですね!」
キャッとぶりっ子しておく。
「と、とーぜんじゃないの!毎日お勉強してるわ!忙しいのよ私は!」
「ではもう帰って寝ないとお肌が荒れますわ
マディリーンお嬢様のたまのようなお肌が荒れたら国の損失ですもの!早くお帰り遊ばせお嬢様。アイザック殿下、御前を失礼いたします。マディリーンお嬢様を送って来ますわ。ジェイコブさん達はアイザック殿下のお相手をお願いしますね?」
ジェイコブ「え、いやしかし…」
「すぐに戻りますから、では後ほど」
「嫌よ、まだチョコレート食べてないわよ!」
「お土産を用意しましたから、明日食べて下さい
夜食べると太るし虫歯になるしニキビが出来るのよ!明日の方がいいわよ」
俺はマディリーンと手を繋いで会場の外を目指した
きっと俺こそが勇者なはずだ!
「え?夜食べると太るの?」
「お腹とお尻に肉がつきます、二の腕と太股にも……マディリーンお嬢様、ちょっと見ないうちに成長しました?このあたり」
マディリーン「キャハッ!くすぐったいじゃないの!太ったって言いたいのね?そんなに食べてないのに太ったのよ!」
「バナナチップはハイカロリーですよ?」
「ハイカロ??」
「カロリーはエネルギーの単位です
余分なエネルギーは贅肉として蓄えられます
ハイカロリーとは太るという意味です
バナナチップは太ります、美味しいからと食べ過ぎましたね?」
マディリーンはガーンと言う音が聞こえそうなほどのショックを受けていた。
「平民や貧民にはありがたい食品ですが、普段から良いものを食べてる貴族令嬢は太っちゃいますね。
運動したらすぐにやせますよ、お嬢様は成長期でまだ若いし」
すると公爵家の馬丁が心配そうな顔をして待ってた
「お嬢様!騙しましたね!こんな格好だから追いかけられなかったじゃないですか!コルチーノ伯爵令嬢、お嬢様を連れてきて下さってありがとうございます!!助かります」
なるほどね、この憐れな馬丁は普段着のところをマディリーンに捕まっちゃったのか…侍女も護衛もいねぇ
「はい、お土産です。バナナチップは食べるなら午前中にすると太りにくいですよ?何事も食べ過ぎは良くありませんよお嬢様!ではまたごきげんよう」
アイテムボックスからバナナチップとチョコクッキーを出して馬丁に渡す。馬丁はマディリーンを馬車に詰め込むと大急ぎで帰って行った
ふぅ~
一仕事終えたぜ!俺こそが勇者だ!
そう思って振り返ったら元勇者が後ろに立っていた
ギャァァァ!お化け!なんて顔だ!
ルイーゼは走ってきて俺を抱き上げるとそのまま庭の東屋に向かった、レイナルドの置石にした俺への仕返しか??
ひぃごめんなさい!
「マリーウェザーごめんなさぁいウワァーン」
何故かルイーゼが泣いて謝ってきた
何がとーなった?
ルイーゼは花に囲まれた東屋のベンチに俺を座らせて泣き縋ってきた。服にシワがよるだろ、やめろや!今からジェイコブ達のとこ戻るんだよ!
「もう君しかいないんだ!君だけだよ僕に暖かい声をかけ続けてくれたのは…みんな、僕の事なんてどーでもいいんだ。レイナルド殿下は冷たい!もう嫌だぁぁウワァーン、マリーウェザー!一緒に死んでくれよ」
俺はアイテムボックスから賢者の杖を取り出して頭を殴った
「痛っ??何かした?」
こいつ頭硬ぇーな!
「あなたたち落ち着きなさい」
ヴラドとマリアンヌとルーシェが出て来ていたからまた影に落とした
「ひぃっ、今誰かいた?」
ルイーゼが益々俺にしがみつくから
頭を撫でて落ち着かせる
「妖精でも見たんじゃない?それよりどーしたのよ、帰ったんじゃなかったの?まぁあんな事があったら泣きたくなるのも無理ないけどね?」
「君を待ってたんだ…だって僕には君しかいないから」
「いつも睨んできたから嫌われてたと思ったけど?」
「嫌ってなんかない!!だっていつも君の優しい言葉に励まされて、泣きそうになってたんだよ!睨んでたんじゃない!嫌われてると思ってたのに優しくしてくれてたのか?なんて慈悲深いんだマリーウェザー、もう僕には君だけだ」
俺の腰にギュウギュウ縋りついてくる。困ったな、どーしたものか…こいついなくなったら、やっぱりレイナルドはスコットのもとに来るんじゃないか?
スコットはレイナルドから俺を遠ざけるために離れるだろ?
なんかムカつく!
「そんなことでへこたれてどうするの!もう少し頑張りなさいよ!あなたは仲間を踏み台にして側近に返り咲いたのでしょ?そこまでして側近になったのに忠誠心はどこへ行ったの?レイナルド殿下の側近は、あなたしかいないのよ?あなたが離れたらレイナルド殿下はジョナサンしか残らないじゃない!根性見せなさい!男の子でしょ!」
「もう無理ぃー!だってレイナルド殿下にすっごく嫌われてるもん、殿下は何も言わないけど無視されてるんだよ?知ってるでしょ?」
知ってる!鉄メンタルだと思ってたし、シャルルは少し気の毒そうに見てたけど声掛けられないよな。だからって、こっちにすり寄ってくんな!ふざけんな!
お前には卒業するまでレイナルドガードでいてもらうぜ!
「それでも貴方なら出来るわよ頑張りなさいよ、私は応援してるわ!側近にならないと家を追い出されるのでしょ?……もしかして、だからここで待ってたの?」
「ウワァーン!マリーウェザー」
この野郎!!俺をあてにするなよ!
その時マリアンヌがまた出て来た
『そいつ殺そう、見てて憐れにも思わない
自分勝手でお前をみくだしてた奴じゃないか?』
「うわぁ!誰だお前!マリーウェザー逃げろ!」
一応庇ってくれるんだ…仕方ない
「今すぐに聖者のローブ羽織ってもう一回出直してよ。レイナルドガードは必要なんだよ。カエザル王子も来るしさ…お兄ちゃんいないとやだもん」
マリアンヌが分かったって言うと一度消えてからまた聖者のローブを着て出て来た
ルイーゼは尻もちついてガタガタ震えていたけどな
「偉大なる大精霊様よ、どうか憐れな子羊にお慈悲をお与え下さい。迷える私達にお導きを!」
『は?何したらいいの?』
「黙ってろ!」コソッ
俺は変身ステッキを振って15歳の姿になった。
ドレスは面倒だからアルラシード観光で買った赤いチャイナドレスみたいなやつ。ヴラドに髪の毛を結ってもらって
尻もちついてるルイーゼの前に来た
「いいかよく聞けよ?たまたま通りがかった偉大な大精霊がお前に慈悲を与えた…ねぇ聞いてる?」
「フリージアの君?そんな!これは魔法なのか?マリーウェザーがフリージアの君だったなんて!?」
「違う違う!大精霊の奇跡だ!ちゃんと聞けよ!
ったく、いいかよく聞けよ?シナリオはこうだ!
私の名はただのフリージア、異国の商家の娘
納品に付いて来たら迷子になった俺をお前が見つけて助けた、って設定な?覚えた?殿下にお前をゴリ押ししておくから側近に戻れ。会場まで私をエスコートしなさい!」
ルイーゼはポーッとしてて話を聞いて無さそうだった
「おい!ちゃんと聞けよ!もう一回言うぞ?私はフリージア、異国の商家の娘だ!今日は偶然知り合いの商会の納品に付いて来て迷子になったの!殿下はフリージアの君を探してるんだろ?会場まで私をエスコートしなさい。私がお前を殿下の側近に戻して差し上げますわ」
俺が手を差し出すと、その手をとった。そしてそのまま抱きついてきた
「ちょっと!」
「好きです一目惚れです結婚して下さい!」
「はぁ?!」
ヴラドが後ろからルイーゼの頭を殴って気絶させた
ヴラド「お嬢様危険すぎます!こんなやつの為にその姿を晒す必要はない!殺して消しましょう!」
「レイナルドガードに便利なんだよ!」
癒よ!ルーンを刻んで頭を癒やしたけど起きないからポーションを無理やり飲ませた
ルイーゼ「ガボッゴホッ…ハッここは?僕は何を?……あっフリージアの君?!」
「起きたか?もう一回言うぞ?私の名はフリージア、異国の商家の娘よ。納品に付いて来て迷子になったの、助けてくれたお礼よ。レイナルド殿下が探してるのでしょ?貴方が側近に戻れるよう頼んであげる。私を会場までエスコートして……設定は覚えた?」
「あ、え??はい??」
体についたホコリをはらってあげて、いざ行かん!
会場からは、ちらほら帰る生徒がいて、カエザル王子とすれ違うと声を掛けられそうになった
「ややこしいから帰れ」
花魁「はい、かしこまりました。カエザル様、後ほど事情説明いたします帰りますよ」
カエザル「しかし……分かった従おう白銀の聖女様」
ルイーゼはポォーっとして俺を見てた、大丈夫かこいつ?今から殿下に側近に戻してくれと直談判しに行くんだぜ?
会場に入ったらザワザワしだした。レイナルドは別の令嬢とダンスを踊っていて俺たちに気付いてない
ルイーゼ「あのっ僕と踊っていただけませんか?」
「え、嫌だけど?」
「うぇぇそんなぁ」
「わかったから泣くなよ!」
仕方ないから踊ってあげました。ダンス授業では相手がいないから練習もしてないのに上手だな、貧乏子爵の次男なんて扱いが雑なのだとモーリスも言ってた。実家で一人で頑張ってたんだな
「貴女が何を考えてるのか分かりませんが…僕と結婚してくれませんか?」
「はぁ?無理だけど?」
「僕は貴女が商家の娘でも構いません」
ん?あ、そうか、これは演技だったのか!成る程な
周りに聞かせるための小芝居か!やるなルイーゼ乗ってやるよ
「ルイーゼ様…私は異国の商家の娘よ?貴族の貴方に嫁ぐなど恐れ多いことよ。ごめんなさい、助けてもらったのに何か他で恩を返せるかしら?私に出来ることならするわ。でも結婚は無理よ、だって私と貴方では身分が違いすぎるもの…ごめんなさいルイーゼ様」
ちょうど曲が終わりダンスが終わった、ルイーゼが名残惜しそうに俺の腰から手を離したところでレイナルドが小走りできた
「ルイーゼ!これはいったいどういう事だ?!」
俺は黙って頭を下げて腰を落とした。平民がするやつだ。チャイナドレスはスカートを摘んで広げられないから両手を胸にそえておく
「殿下っこれはそのっ、彼女はフリージアさんです。隣国の商家の娘で、知り合いの商会の納品に付いて来たら迷子になったそうです。たまたま見つけて保護したのですが、殿下が探してたので説明して連れてきましたっ…あのっ」
レイナルドはルイーゼの説明を聞いたら、お前はもうよい下がれと言って俺とルイーゼの間に入った。
任せろ俺がやるぜ!お前をレイナルドガードに戻してみせる!俺の為にな!
「娘よ面をあげよ、受答を許す名乗れ」
「私はただのフリージアにございます。海の向こう和の国の商家の娘です、グロステーレ王国王太子殿下にご挨拶申し上げます」
顔をあげるけどレイナルドの顔を見てはいけない
それが平民ルールらしい。名乗るとレイナルドは驚いていたようだ
「そなたは前に会ったな?」
「前にも一度こちらに迷い込んでしまいました
どうか、お許し下さい申し訳ございませんでした」
「私は…そなたを探していたのだ」
「はいルイーゼ様からお聞きいたしました」
「ルイーゼが?そなたに何をしたのだ!」
「道に迷った私を助けて下さいました、グロステーレのお貴族様は紳士的で優しくて素敵です。これも天井におわす方々の導きによるもの」
「彼が君を助けたのか?なぜ、そんな」
「王太子殿下様の側近様で御座いましょう?
助けて頂いたお礼を申し上げると、何も望まないと、殿下に会ってくれまいかと頼まれました。助けたのは当たり前の事をしただけだと対価を求めず、紳士的でお優しいルイーゼ様に心打たれました。
私などが殿下のお目汚しなどとお断りしようと思いましたが、殿下の為を思うならと…彼の忠誠心は本物のようですね?」
「ルイーゼが?そなたはルイーゼを……いや、いい。もしよければ私と少し話さないか?2人になりたいのだがどうだろう?」
俺は分かりやすく物凄く困った顔を作った、実際困ったけどね。平民が王族の申し出を断れるわけないやん!
「殿下っ!平民の彼女が王族の申し出を断れません!ご容赦を」
「ルイーゼ様!申し訳ございません私のためにっ
私は……どうなろうと構いません…うぅっ(涙を頑張ってホロリ)ルイーゼ様のお役に立てるなら良いのです」
頑張ってプルプル震える演技をする
レイナルドは驚愕して俺をみていた、この茶番をどうやって終わらそう?
「兄上!ルイーゼの言う通りです。平民の彼女には王族の申し出を断れません!平民が王族に連れて行かれるのは恐怖です!彼女が嫌がってるのが分からないのですか?兄上は弱者の気持ちに疎いところがあります!諫言をくれる側近を端から排していくことが正しいとは思えません!」
アイザックが凄い事を言ってる!いやぁ大人になったねぇ
大使「ご令嬢、会場の外までお送りいたしましょう。私も帰ろうと思っていたところです。アイザック王子、先程の貴重なお話をありがとうございました。レイナルド王子お先に失礼いたします。差しで口ですが諫言をくれる部下は何よりも大事になさいませ、ではごきげんよう」
有無を言わさぬゴリラの圧力にレイナルドは動けなかった。大使は俺をお姫様抱っこして大股でスタスタ会場の外まで出ていった
大使「マリーウェザー様の考えた茶番ですね?スコット殿がそうだと言っておりました」
「いかにも、私が考えた茶番ですわ、ファインプレーはおにーさまでしたのね?アイザック殿下にも話をしたのでしょう?」
「貴女が会場に入って来た時にスコット殿から伺いました。ルイーゼ殿を助けたかったのですね?本当に貴女はどこでも変わらずお転婆で慈悲深い方だ」
「そろそろおろして下さる?」
「……私と踊っていただけませんか?」
大使は、俺を抱えたままさっきとは別のところにある東屋まで来ていた
「踊ったら帰って下さいね?カエザル王子が来るならメールで知らせてくれたらいいのに」
「その極秘事項でしたので、ハッサムにも言われました、申し訳ございません」
そうか、そうだよな王族案件だもんな、言えないか
「いいのよ忘れて下さい、今のは貴方を困らせていい問題ではないわね、ごめんなさい」
「私もこの国の貴族に生まれたかった…貴女の友人達が貴女を愛し褒めていました羨ましかった」
ジェイコブ達かな?照れるな、マディリーンお嬢様を連れ出した勇者だもんな!まぁ呼んだのも俺だけどな。自分で蒔いた種を自分で刈り取ったに過ぎない、つまり勇者でも何でもなかった、みんなゴメン
大使が俺をゆっくりと下ろして腰に手を回す
遠くに聞こえる音楽が静かな月夜を照らし出す
「貴女にそんな誇らしい顔をしてもらえる友人達が羨ましい…無いもの強請りです、こんな私と踊ってくれますか?」
「悲観しすぎじゃない?ただの友達だよ?だいたい、俺の1番の友達はカヤックだし。この国の人間でも貴族でもないよ、何言ってんだよ」
大使が驚いた顔をしてから笑っていた、リズムに合わせて足運びをするんだけど下手くそ過ぎない?
と思ってたらクルンと俺を回しだした
「初めて踊りました!皆が楽しそうに踊っていたので眺めていました。貴女は美しい、皆が見ていました。あ、愛し……あ……、ふぅー!(ボソボソ)」
初めて踊ったの?どんどん上手くなるんだけど!
なんて運動神経なんだ!超人かよ!!
そして、音楽が聞こえなくなって、多分お開きの司会の挨拶があったと思う。会場から出てくるような足音が聞こえた
空から白馬が降りてきてこっちにきた
相変わらず俺のところにきてくれる。可愛いな
「ムチムチの太ももで寝たいです、舐め回していいですか?ブルルッ」
ドン引き!
大使「今宵の月のように美しい貴女に酔ってしまったようです。返さないとスコット殿が心配されるでしょう…また」
「うん帰るよ疲れたし、またねアブドゥル大使おやすみー!ヴラド、斬鉄呼んで?俺も乗って帰るわ疲れたぁ」
ヴラド「もうそこに来てます、幼児に戻って下さい人が来ます」
俺は幼児に戻ってヴラドに抱っこしてもらった
斬鉄を待たずに抱っこで寝てしまったようだ
ルイーゼはヴラドに殴られて直前の記憶が飛んでました。翌朝起きた時にマリーウェザーがフリージアの君だった!と思い出して、求婚して断られたぁぁとベットの上で悶えることに




