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俺の異世界冒険記!  作者: ワシュウ
領主の娘 領地に行く
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ホームグラウンドじゃないからね

どう見ても4、5歳くらいの、色白でくりっとした儚い美少年が、この家のお披露目主役のサイモン少年だった

アンナもスコットも驚愕してバツが悪すぎて何も言えなくなっていた

「それでも、お披露目してもらえるだけ羨ましいわ」

そんなことを力なくアンナが呟いた


痩せてガリガリだったな

ドライフルーツも高いからそんなに買ってもらってないんだろうなぁ


余計な事を言ってしまった気がする

それだけド貧乏なら、米粉や大豆なんて買ってもらえないんじゃないか?

パンが食べれると期待させて、無理だったときの罪悪感がパネぇ


俺の時と違って、今日は冷えるから暖炉のある小さな会場に30人くらいの人がいる

驚いたことに、ヤン先生がいた 男爵家の横の繋がりりかな

ヤン先生も男爵家の三男だったけど、話を聞く限りまだマシだったんだな


「おや、マリーウェザー様

いつもの元気なお姿がありませんね、いかがなさいました?

伯爵家のお披露目とずいぶん違って質素でしょう?」

「ヤン先生・・・」

俺は、先程の事をかいつまんで話した

スコットが補足説明をするんだけど、ヤン先生もいまいち理解しきれてない様子だ、アレルギー概念がないのか?

まぁ異世界だもんな


「免疫、ふぜん?で、どうして吐いたりするんですか?」

俺もそんな専門的な回答できねーよ


「蜂に刺された時、1度目はそんなに腫れなくても2度目に刺されたときに体中で腫れたりしませんか?あれも、体の免疫が蜂の毒に過剰に反応して暴走してるんです」


「中々、とても興味深い話しですね、どこでそれを?」


「あーの、いや〜、その〜・・・「マリーウェザー様、今日はお越し下さりありがとうございます」

主役のサイモン少年が来た

ふぅー、前世なんて言っても信じないだろうな


「洗礼お祝い申し上げます」

「ヤン先生お久しぶりです、今日は僕のために来てくださり、ありがとうございます」


「「マリーウェザー様、先程の話の続きを」」

2人してやめてくれ


「あの、すみません 余計な事を言ってしまいました・・・聞かなかった事にしてください」

言葉の尻がすぼむ


悲しそうなサイモンの顔に罪悪感が胸をしめる

キラキラ笑顔で期待に輝いていた瞳から光りが消えていく

諦めるだけだと、そのくりっとした瞳が沈んでいく


そんな顔をするなよ・・・

違うな、そんな顔をさせたのは俺か、悪い事したな

スコットも黙ったまま見ている

でも俺はまだ子どもで何も出来ないんだよ

どうしょうもないんだ・・・ゴメンな


「お嬢様がそんな顔してどうするんですか!辛気臭いわね! いつもみたいに我が儘を言えばいいじゃない!

伯爵邸のお屋敷には、同じような貧乏男爵家の3男や4男なんか他にも働いてるじゃない!

今更1人2人増えた所でそんなに変わらないわよ!」


「アンナ」

気分は、目から鱗だ


「私の時みたいに、何とかしなさいよ!

お得意の慈悲振りまけるチャンスよ! 見なさい可哀想な少年よ? それにさっき言ってたヘンテコな料理だって他の人には作れないんでしょ!

期待させといて、何もしないなんて言わせないわ!

アンタなら出来るでしょ!諦めた顔してないで、やりたいようにやりなさいよ!」


俺もスコットも、鳩が豆鉄砲くらったようにアンナの勢いに飲まれてしまった


「おにいさま、勝手に連れて帰ったら怒られますよね? 一緒にお母様たちを説得して下さいませ」


「マリー、それはちょっと・・・うっ、皆でそんな目で見ないでくれよ ハァまいったな」


「ありがとうございます おにいさま大好きです 一緒に怒られて下さいませ」


「マリー1人だけ怒られる訳にはいかないね、僕も一緒に怒られることにするよ」


「サイモンさん、お母様に聞いてみますわ

もし駄目でも、米粉でパンが出来たら送りますわ」


「あの、僕は伯爵邸に行っても迷惑じゃありませんか? マリーウェザーお嬢様は こんな僕が側にいても嫌じゃないですか?」


「ちっとも嫌じゃないわ」

両頬を手で包んでモミモミする

サイモンの顔は冷えていたが揉んでるうちに手の体温が移ったのか暖かくなり、白い顔に朱がさす


「今更だけど、ウチに来ても良いかしら?あなたはどう思っていて?」


「僕は、マリーウェザー様と一緒にいたいです

僕を・・・連れて行ってください!おねがいします!」

サイモンの手が、俺の手に重なる

手も冷たいじゃないか、どんだけ冷えてんだ


「サイモンさん、期待せずに待っててね まだ何も決まってないからね」


「どうか、僕の事はサイモンと呼んで下さいマリーウェザーお嬢様」


ちくしょーっ、この儚い系の美少年がっ!

サイモン少年の輝く笑顔を見たら、期待に応えたくなる


離れた所から見ていたお母様の侍女が、あちゃーみたいな顔をしていたことに、俺は気づかずにいた





結論から言うと、擦った揉んだの末にサイモンの就職先が俺んちになった


男爵家の方は、両手を挙げて荷造りし、早々にサイモンを追い出すように送ってきた

来てしまったものは仕方ないと両親が折れてくれて、サイモンは貴族の三男として奉公に来てるからアンナより少し広い使用人部屋で暮すようになった


俺の乗馬の時の介添えとか、専属の従者として鍛えるとマルクさんが張り切っていた

また丸投げ申し訳ない


俺は、ヨシュアんとこの商会で取り扱ってるライスと大豆を粉にしてもらって


スコットとサイモンが見守る中

いざ、アンナと一緒にパンを作ってみた


大豆粉はしっとりしていて、砂糖と卵を一緒に混ぜて、パウンドケーキみたいに型に入れて焼いたけど、全然膨らまなくてケーキに見えなく、噛みごたえのあるソ○ジョイみたいになった

ドライフルーツと砂糖を練り込んでるから、かろうじて食べれる感じだな

あれだ、乾煎りしてないから水分が抜けてないんだな!と豆をフライパンで焦げないように煎って、すり鉢で擦ったんだけど粒が荒くて、きな粉とは言えないものになった

胡麻の代わりに野菜と一緒に炒めてみたら、皆は香ばしくて美味しいと褒めてくれたけど、粒が舌に残って何か違う!


米粉でパンをつくるとき、パン製造機に材料を入れてスイッチを押すだけだったのにな


初めて米粉で焼いたパンは固くて食べにくかったが、サイモンは喜んで食べていた

スコットは、ジャムをたっぷり使ってたな


ゴメンよぉ、

なんとか改良してみせるから

そんなのがパンだと思わないで欲しい


日本人の情熱で改良しまくった現代の米と違って、異世界の米はぶっちゃけクソマズかった

色も黄色っぽくて、ヌカ臭いんだよ

玄米のまま粉挽きにかけたのか?


異世界あるある、たまたま見つけた米が日本で食べてたほど美味いなんて、それこそファンタジーだ


もうミカンとキンカンくらい違ってた

大豆も俺の知ってる豆と微妙に大きさも味も違っててさ

俺、大学の時に料理屋のキッチンのバイトしてたから料理にはそれなりに自信あったのに・・・


出汁と四角いフライパンが無いから、丸いフライパンで作った塩のみの卵焼きは俺の知ってる味に近くて、1人満足していたが

みんなは、味が薄いのか瓶詰めのケチャップかけて食べてた


「食材を無駄にするんじゃないわよ!」

「本当に、これでいいわけ?」

「このまま、ここに入れていいのね?」

と、まあ楽しそうだった

アンナも言い出しっぺなことを気にしてたんだな、料理器具も俺の知ってるやつと違うから思ったようにいかないし


思うように料理できなくて悔しくて、こっそり甘くなる魔法を使って甘味を足してみた

本当はこんな味じゃないんだよと思いをこめて


「ところで、なんで、コメ粉って言うのよライス粉じゃないの?」とアンナに言われて

「ライスの粉は『米粉』って言うの、豆は『きな粉』ね、黄色いからきな粉なんだけど」

「どう違うのよ、2つとも黄色いじゃない?」

「・・・そうだね」


味見してたらお腹がふくれて、昼食をあんまり食べれなかった


小麦を使わない料理はたくさんあって

男爵家の料理長がめんどくさがったのか、材料費ケチったのか、サイモンだけの別メニューを作っていなかったんだなと思い至った


お母様は、俺が厨房に出入りしてるのを

俺が料理をしてるとは微塵も考えてなくて、オヤツをつまみ食いでもしてるのかしらと微笑ましそうに勘違いをしていた

まあ、ほとんどアンナに作業してもらってるからな・・・

「あんた、どんくさそうだから私がやってあげるわよ! さあ、指示を出しなさい!あんたの考えた料理面白そうじゃない!」

って言われたらねぇ


「暖かいお布団も嬉しいです」

と可愛い笑顔で喜んでいた

あの家からサイモンを引き取ってよかったかな


「あんた、孤児院の孤児より扱いが悪いじゃない!

私も生家のあの男爵家に縋り付いてたら、こうなっていたかもしれないのね! あんな家こっちから願い下げよ!

別にここがとにかく居心地がいいとか、褒めてるわけじゃないんだからね!」

今日もアンナは元気にツンデレだ



それから、水を得た魚のように不足だった体に栄養が満たされサイモンはすくすくと育っていった

外国でおにぎり作っても粘り気も少なくポロポロと落ちて握れませんでした。

小麦粉を混ぜて焼きおにぎりにして固めて食べたんですが、醤油や味噌もなくて、トマトケチャップとマヨネーズで代用、皆がヤキオニギリとはしゃいでくれましたが、ホームグラウンドでしか活躍出来ないんだなと地味にショックでした

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