妖精さん盛りすぎ
本人視点の洗礼式
うへぇー、めっちゃ人いる・・・おっと、笑顔、笑顔で
会場のホールは、まるで結婚式場のように左右に席が並び、人がたくさんいた
真ん中のバージンロードならぬレッドカーペットを両親と手を繋いで歩く
光る玉ユラユラが天井のシャンデリアに見えた気がした
お母様と目が合って「大丈夫よ」と手をぎゅっと握られ、握り返した
舞台の手前で両親が脇の保護者席に移り
神父らしき人(ここでは神官)のいる舞台に上がる
祭壇らしき台には、聖典と聖杯が乗っていた
ここで聖句を暗唱するんだけど、幼子には神官がかんぺを出してくれるようだ
「なるべく覚えましょう」と年長者は暗記させられる
神官が聖典を開き朗々とした声で語る
「コルチーノ伯爵の3番目の子、マリーウェザー
今日を迎えられたこと感謝します(聖典の洗礼式の項目を読み始めた)」
ふと、視界の端
飾の盛花のあたりにフワフワ光る妖精がちらほらみえた
いつぞやの、レモンを甘くしてみせた妖精が親しそうに手を振ってる
ニッコリ笑って、スカートの裾をほんの少しつまんで小さくペコっとして返す、流石に手は振れない
そうしたら、他の妖精たちも同じようにスカートの裾を指で摘みだした
妖精同士で向い合ってお互いにペコペコしだしたとても可愛い
「・・・では、幼子よ聖句を謳えよ 声高らかに!」
来た!
「スヌマ・ブルプンタス グロリア・ミリ
ゲニウス・ロキ・ベネディクティオ
―我に祝福を賜り給え」
俺は聖典を見ていて気が付かなかった
妖精たちがこちらに注目しフヨフヨと集まって来てることに
『なまりがヒドイわ幼子よ』
『この汁は苦いから甘くしてあげよう』
『よし与えてあげよう幼子よ』
『黄色い果実の味にしてやろう』
『赤い果実の味がいい』
『おいら緑の果実が好き』
クスクスそこかしこに聞こえてきて、俺は顔を上げると
妖精たちが、あの甘くなる魔法をパンパン使っていて聖杯のあたりに光の粉が降っていた
ちょーっと!妖精さんたち、なにしてんの?
神官が聖杯を手渡してくる、その間もパラパラ光の粉が落ちてくる
いやいや、いいの?パラパラ落ちてるけど
ってか、どうなってんの?
明らかに聖杯の内容量以上に降って来てるのに溶けて消えていく
俺はニッコリ笑って、ふり返り観客を見る
皆、特に何も反応がない
こんなもんかと思うことにした
聖杯をおそるおそる飲んでみると、あら不思議
めっちゃ美味しいフルーツミックスジュースでした
メイプルシロップをちょっとお酒っぽいフルーティにした感じの香りが鼻からぬける
『甘くて美味しいです (妖精の)みなさんありがとう(もぅいらんよ)』
神官が
「今、この時より幼子は貴族として認められた
マリーウェザー・コルチーノ
父と子と精霊の御名において、我らに赦しと導きと祝福を」と締めくくった
『甘くしたわよ』
『美味しいよね』
『わはは、楽しかったのだ』
『また来てやるよ』
『幼子よまたね』
ニッコリ笑ってカーテシーをする
どこからともなく暖かい風がふく中で、
光る粉まみれの妖精たちが会場を通り抜けた
俺の洗礼式は終わったのだった
このあと
今日は、秋晴れで暖かく、風も少ないのでガーデンパーティになった
客をホールから出す間に、大急ぎで着替えて外に出るんだが
アンナに着替えを手伝ってもらい
「あんた、なかなか、あざといじゃない」
「え、何が?」
「フン!あの苦い樹液を飲んでよく笑えるわね!
そこは、褒めてあげるわよ!みんなコロット騙されてるわ!」
「苦い??」
「えーっと、ほら、
良き働き手には甘くて、怠け者には酸っぱく感じて、子どもには苦いだけの汁よ!」
「ああ、なるほどね
ちょっと(甘味を)盛りすぎちゃったね」
「(演技を)盛りすぎよ!・・・あんた、言葉が崩れてるわよ!」
「こっちが素なの、んん、アンナさん、2人の時は、よろしくてよ
ガーデンパーティ疲れそうだわ嫌だわ」
他のメイドが様子見に来てくれて
「あら、着替え終わったのね
ちょっと、ここで大人しく待ってて下さい
会場が準備できてるか聞いてくるわ」
ちらりと窓から庭をいてみる
あ、ヤン先生来てるじゃん
おー、あの後ろ姿はヨシュアだな
うおー!キツネっぽい人外もいる!
え?あの人はカメレオンみたいだ!
スゲーな異世界(笑)
「準備できました、お嬢様こちらへどうぞ」
外に出ると
お父様が挨拶して俺も挨拶する
取っ替え引っ替え挨拶に来るけど、みんな覚えられないわ貴族の名前長いし
疲れたー、朝から何も食ってねー、あ、そうだ
「お父様、お花を摘んでまいります」
「おや、マリーウェザーは疲れたのかい?
そうだな、あっちでケーキでも食べてきなさい
おい、スコットを呼んでくれ
マリーウェザーの代わりに挨拶させる」
俺は、ヤン先生やヨシュアたちのいるテーブルに逃げることにした
結婚式場のバージンロードをイメージしました




