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第8話 ダンジョン地下1階(その1)

やっとダンジョンに入ります

「入るぞ!」

ラムシュンドは自分に言い聞かせるようにダンジョンに入っていく。


「もっと魚を捕ってからでもよかったのにニャ」

カートは両腕を後頭部当てたまま後に続いていった。


「暗いニャ」

「暗いな」

ダンジョンの中はかなり暗かった、地下なのだから当然ではあるのだが・・・。だが、しばらくすると、ラムシュンドとカートには周囲がなんとなく見えてきた。そう・・・元がタヌキと猫である。人間には無いはずの夜目とでもいえばいいのだろうか、暗闇でも何となく周囲が見えていたのである。


「人間って暗いところでは目が見えないって聞いたような・・・」

箕島(長崎空港)で、人間から逃げることが多かったラムシュンドは、人間に夜目が効かないことを知っていたのだった。

(あいつら、島中、明るくしてやがったからな・・・)

昔を思い出していたのだった。


「ニャんでか見えるニャ」

カートも元が猫であるのか、夜目が効いたのである。なんだか黙って動かないラムシュンドを置いて中に入っていく・・・と。何かが動いた。咄嗟にショートソードを振ったところ、何かに当たった。よく見ると、昔、熊本空港内歩いていたとき小型機の整備士が落としていった菓子を大きくしたようなものであった。

(こいつも甘いのニャ)

咄嗟に咥えて逃げていったとき、後方で人間が

”グミを盗られた”

と叫んでいたことから、今目の前にいる巨大なグミという名のお菓子がいると思っていたのであった。思わず手で掴もうとするカートの手の先の前を石が通過していった。


「何してるんだ。スライムを手で触ってどうする気だ!」

カートが振り向くと、そこにはいつの間にか復活していたラムシュンドがいたのである。


・・・


「こいつは甘くはないのかニャ」

ラムシュンドの投石によってスライムは倒されたらしく、魔石を残して消えてしまった。


「私の記憶にある限り、こいつは酸を噴射する魔物だ。甘くはない。甘いのはお前だ!!」

ラムシュンドの記憶にはスライムという魔物が記憶されていたらしい。カートの持つ、阿久津の記憶にもあるはずなのだが、カートには、猫の時代に食べた、“グミ”の方が優先されてしまったらしい・・・。カートは、がっかりしながらも、落ちていた魔石を拾うと、アイテムボックスに回収した。


「ゴブリンより小さいニャ」

ふと、ラムシュンドとカートが周囲を見渡すと、2人はスライムの群れに囲まれていた。


「マズイニャ」

スライムがグミではないと理解したカートは、


「ファイヤーボール」

を周囲に連打し始めた。ダンジョンなので、壁に当たったファイヤーボールは、2人からあまり離れていないところで炸裂したのである。


「カート・・・」

全身火傷状態のラムシュンドがカートを睨む。


カートは右手で頭を掻きながら

「食えないと思ったら腹が立ってしまったのニャ」

彼自身も少なくない火傷を負っていた。


・・・


とりあえず、ダンジョンの外に脱出したラムシュンドとカートであったが、さすがに火傷がきつかった。


「ヒール」

「ヒール」

カートはラムシュンドと自分ヒールを重ねて使い、火傷を直していったのである。


名前 カート(Lv.4)

HP 1100/2100

MP 4660/10660

魔法 付加属性 :ヒール(Lv.2)

火属性  :ファイヤーボール(Lv.2)

スキル なし

称号 猫のブレーン


「ヒールがレベルアップしているニャ」

火傷を直し終わったカートがステータスを見ていた。


「ヒールのレベルが上がるのはいいことだけどな・・・やり方がな・・・」

ラムシュンドの声が低くなっていた。


「悪かったニャ。この通り」

カートはひたすら謝りながら、その日は暮れていくのであった。


・・・


「いいな。ファイヤーボールの連打は禁止!」

ラムシュンドは、隣にいるカートを睨みながら言った。


「わっ・・わかったニャ」

カートはビビりながら答えた。ラムシュンドは、昨日の火傷が嫌だったらしい。それでもダンジョンに入って目を慣らした後、暗闇を進んでいく。と前方に部屋が見えた。


「何故か明るいニャ」

部屋は天井全体が照明のように光っており、部屋全体を照らしている。よく見ると、目の前には大きな机と1冊の本があった。


「本があるニャ」

カートがそう言って近づいていったとき、何かがカートに向かって飛んできた。咄嗟に躱したカートは、慌てて、何かが飛んできた方を見ると、矢を構えたゴブリンが次の矢を放とうとしているところだった。ダンジョンから部屋に入ってくると死角になる所に潜んでいたのである。


「ファイヤーボール」

カートの後方で声がしたと思うと、火の玉がゴブリンに向かって飛んで行く。まさに矢を放ったかどうかくらいのタイミングでゴブリンに命中した火の玉は、ゴブリンの矢もろとも焼いていく。


「不用心すぎる」

声の主はラムシュンドであった。


「他にはいないニャ」

ラムシュンドとカートは、他に魔物がいないか確認していたが、倒したゴブリン以外には魔物はおらず、部屋の中央には机と、その上にある本が1冊あるのみであった。


2人が本をよく見ると、表紙に何か書いてある。


“猫のための照明魔法”


「どうやらカート用らしいな」

表紙の文字を見て、ラムシュンドは、興味を失っていた。一方カートは本を手に取って開いてみた。

(読めニャい・・・何が書いてあるチンプンカンプンなのニャ)

中身は見たこともない言語で何か書いてあったが、さっぱり読めなかった。どこか読める部分がないか、ページをめくっていくカート・・・しかし、読める部分が見つからないまま最後のページまでめくってしまったのである。


「だめニャ・・・読めんニャ」

そういって、カートが本を放り投げたつぎの瞬間、本が消えたのである。


「ニャ!消えたニャ!」

カートが叫んだのを見て、周囲を警戒していたラムシュンドが振り向くと、あったはずの本が忽然と消えていた。


(ひょっとして・・・)

「カート。ステータスを確認してみろ」


ラムシュンドに言われてカートがステータスを開いてみると


名前 カート(Lv.4)

HP 1100/2100

MP 4660/10660

魔法 付加属性 :ヒール(Lv.2)、ライト(Lv.-)

火属性  :ファイヤーボール(Lv.2)

スキル なし

称号 猫のブレーン


「ライトが増えているニャ」

驚いているカートを見ながら、ラムシュンドは

(やっぱり・・・本のページを全てめくると覚えるものらしい)


「試しに使ってみてくれ」

ラムシュンドの言葉を受けてカートは


「ライト」

と叫ぶとカートの頭上に光が降り注ぐ。どうやら、カートの真上にある天井から光が出ているらしい。元々部屋にあった照明と区別がつきにくいので、一旦、部屋を出てみると、何故か、光が降り注ぐ中心もカートに合わせて移動していく。


「ほう・・・これは便利だな」

ラムシュンドはその光景を冷静に見ていた。

いきなり火傷・・・。

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