第16話 ダンジョン地下3階(その3)
「やっぱり小屋だニャ」
「小屋にしか見えない」
2人は、途中、数匹で現れるコボルトをショートソードで薙ぎ払いながら小屋までやってきたのだった。周囲を調べてみるが、特に異常はない。小屋には入り口と思われる扉が1つあるだけで、窓1つない。
「中に入ってみるかニャ」
カートはそう言うと、小屋の扉を引いてみた。
「普通に開くニャ」
扉は何の抵抗もなく開いた。
カートが中を覗き込むと、小屋には、ベッドが2つ、テーブルが1つ。椅子が2つ。そして、テーブルの上には、大量のパンと本が2冊あった。
・・・
何か罠があるのかもしれない・・・警戒しながら小屋に入る2人。しかし、特に異常は発生しない。そして、テーブルの上にあった2冊の本の上にはメモがあった。
=小屋にようこそ=
地下2階の休憩室に力を使いすぎたので、ここにはパンしかありません。追加はありません。この小屋は、魔物が入れないようにしてあるので休憩所として使えます。
神様より
(手抜き・・・したニャ)
メモを読んだカートは直観的に思った。ラムシュンドもメモを見て呆れているようである。
「恐らく・・・オークと壮絶なバトルをした後、ここに来ると思っていたのだろう」
ラムシュンドはそう言うと、メモの下にあった本を手に持った。
本の表紙には、
“タヌキのための身体強化スキル”
“猫のための土魔法”
と書いてあった。どうやらそれぞれ1冊ということらしい。
「それぞれ1冊ずつらしいな」
ラムシュンドはそう言うと、
“猫のための土魔法”
と書かれた本をカートに渡した。
「土魔法・・・?」
カートは表紙を見て首を傾げた。
「覚えてしまった方が早い」
ラムシュンドはそう言うと、もう一冊・・・
“タヌキのための身体強化スキル”
の頁をめくり始めた。
「そうだニャ」
カートも同様に頁をめくり始めたのであった。
・・・
名前 ラムシュンド(Lv.6)
HP 3010/5510
MP 3700/18700
魔法 神聖 :プリフィケーション(Lv.1)
火属性 :ファイヤーボール(Lv.3)
風属性 :ウインドアロー(Lv.2)
スキル 身体強化
称号 タヌキの英雄
名前 カート(Lv.6)
HP 2500/4500
MP 8760/14760
魔法 付加属性 :ヒール(Lv.2)、ライト(Lv.-)
火属性 :ファイヤーボール(Lv.3)
土属性:アースウォール(Lv.1)
スキル なし
称号 猫のブレーン
2人はそれぞれステータスを確認していた。そして、ラムシュンドには身体強化のスキルが、カートにはアースウォールが追加されていたのを確認したのである。
ラムシュンドは身体強化をタッチしてみると、予想通り、画面が切り替わった。
=身体強化=
魔力を使って身体能力をアップさせることが出来る。自動発動するスキル。元の身体能力に比例して向上する。
(ほう・・・これは使えるかも)
ラムシュンドは思わずにやけた。
一方、カートはアースウォールをタッチしてみると。こちらも画面が切り替わった。
=アースウォール=
地面操作を行い、土の壁を作ることが出来る。レベルが上がると、壁の強度向上、及び作れる高さが拡大される。
(ニャんと!拠点を作るにはちょうどいいニャ)
カートは頷いていた。
「新たな能力を試してみよう」
「そうだニャ」
2人は小屋を出て、再び草原に戻った。
・・・
「早速、コボルトがやってきたニャ」
小屋の前に出ると、コボルトが小屋に向かって走っているのが見えた。恐らく、小屋の中にいると、魔物は2人を感知できないのだろう・・・小屋に出た途端、急にこちらに向かって走ってきていた。
「では・・・早速ニャ」
そう言うとカートは
「アースウォール」
コボルトの走っているちょっと手前・・・すなわちカート達寄りに発動させた。
「ギャン!」
コボルトは、突然現れた高さ1.5mの土の壁に激突した。勢いがついていたらしく、走ってきていたコボルト全てが倒れていた。様子を見に行く2人・・・。
「気絶しているだけ見たいだな」
ラムシュンドはコボルトに軽く触れて確認すると、コボルトを摘まみ上げた。
「おや・・・軽い」
恐らく60㎏はあるだろうコボルトを親指と人差し指で軽く摘まんで持ち上げていたのである。
「それが身体強化ニャのでは?」
カートが様子を眺めながら言った。
「そうみたいだ」
ラムシュンドはそう言うと、気絶しているコボルトを放り投げた。コボルトは、途中にあった川を越え、焼け野原になった森(だった所)に消えていった。
(ありゃ・・・あっけなく飛んで行ってしまった)
ラムシュンドは自分の力・・・身体強化の力に驚いていた。
(壁に損傷はないニャ)
壁を調べていた。流石に、コボルトがぶつかったくらいでは損傷はないらしい。
(とりあえず、蹴りでも入れてみるかニャ)
カートは、壁に飛び蹴りをしてみたが、全く損傷がない。ショートソードで切りつけてみると、表面に僅かに亀裂が走った。
(これは、何回か繰り返したら壊れるニャ)
そのとき、背後から迫ってくる気配に、カートは慌てて右に避けた。直後に壁は粉砕された。
「私の蹴りには耐えられないらしいな」
粉砕した壁にはラムシュンドが立っていた。
「いきなり蹴るニャ!」
「すまん・・・つい」
怒るカートに平謝りのラムシュンドであった。
・・・
小屋に戻った2人は、テーブルの上あったパンと以前、大量に作っていた干し肉(角のあるウサギの肉)で食事をしていた。水は、地下2階休憩室で水筒に入れた水である。魚を焼いたものもあったが、テーブルにあったパンには合わないと思った2人は、パンと干し肉にしたのであった。オークはアイテムボックスに入っていたが、まだ解体前だったのである。
「疲れた・・・ここで寝る」
ラムシュンドはそう言うと、ベッドに大の字になって寝てしまった。
(いつも、不用心とか言っているのに・・・)
カートはそんなラムシュンドを見ながら、周囲に魔物が近づく気配がないことを感じていた。
(俺も寝るかニャ)
カートは空いているもう1つのベッドに向かった。
何だかんでレベルアップしていく2人・・・。