第15話 ダンジョン地下3階(その2)
「では行こうか」
「行くのニャ」
休憩室の扉に手を掛けながら言ったラムシュンドの言葉にカートが答える。地下3階がどうなっているかは不明である。オークの集落への攻撃がどの程度効いているのか・・・。
「地下3階で、オークがお出迎えだったりしてニャ」
地下2階を進んでいく途中に現れたゴブリンを蹴り飛ばしながらカートが言った。
「そんなこというと・・・」
ラムシュンドは不吉な予感がした。
・・・
「ありゃ・・・本当にお出迎えだニャ」
ラムシュンドとカートが地下3階に降りた直後、まさに階段を取り囲むようにオークが勢ぞろいしていた。
「こりゃ、肉には困らニャいな」
「食える状態ならな」
ラムシュンドとカートは。ファイヤーボールを連打した。もはや森がどうなろうが知ったことではない。目の前のオーク達をどうにかする必要があった。突撃してくるオーク達、背後に地下2階への階段という避難口を確保しているとは言え、ファイヤーボールが直撃したオーク以外が突進を止めることなく襲ってきた。範囲魔法がないので、ひたすら、ファイヤ―ボールの連打である。やがて、ファイヤーボールの連打により、森が燃えだした。しかし、近くまで来たオークにショートソードで対処するしかなくなっていた2人は、それどころではなく、ひたすら、オークと討伐していたのである。
「・・・襲ってくるオークがいなくなったニャ」
カートはHPの限界なのか、フラフラである。
「・・・そうだな。やっと・・・」
ラムシュンドは、倒したオークが砦のように積み重なっているのを掻き分けて森を確認すると、
「森がない・・・」
「ニャに言ってるのニャ」
ラムシュンドの言葉に呆れながら、カートも森を確認するが、
「森がニャい!」
何と、森は、大火災を起こし、全て焼失していたのである。そして、森の先に川が流れており、その先が草原になっていること。そして
「川の先に何かあるニャ」
カートは小屋のようなものを発見したのであった。
「しかし・・・このままだと歩けないな」
森の焼失したときに発生した熱で全体が熱くなっており、とても歩ける状態ではなかった。
「せめて、道があればニャ」
カートが呟いた。
(道・・・ひょっとして)
ラムシュンドは、ありったけの魔力を注ぎ込み、
「ウインドアロー」
を川に向かって放った。吹き飛んで行く森だったもの・・・中にはオークやそれ以外の魔魔物の残骸もあったと思うが・・・放たれたウインドアローは一直線の道を作った。
「すごいニャ川まで道が出来たニャ」
「もうダメ―・・・」
驚くカートの脇で、魔力切れを起こしたラムシュンドがその場にへたり込んだ。
・・・
「まさか、ラムシュンドを背負っていくことになるとはニャ」
早く森を抜けたかった2人は、休憩室に戻るという選択はせず、カートがラムシュンドを背負って運んで行くという選択をしたのだった。幸い、森の魔物は殲滅状態だったので、襲われはしなかったのであるが・・・。
(地下2階に戻ると、地下3階の状態がリセットされるのだろうな・・・たぶん)
前回、2人が、オークの集落を囲むように攻撃したはずだったのだ。被害がないわけがない・・・はずだった。にも拘わらず、再び来てみると大量のオークが出迎えていた。
(つまり・・・地下3階は回復していて、しかも魔物は昨日のことを覚えている)
ここで一気に先に進まなければ、更に事態が悪化するような気がしたしたラムシュンドの提案で、そのまま先に行くことにしたのである。
・・・
川は浅かった。一番深いところでも、膝くらいまでしか水深がない。流れもそれほどきつくなかったので、カートは、ラムシュンドを背負ったまま、一気に川を渡ったところで、ラムシュンドを降ろすと、草原に大の字になって寝転んだ。
「疲れたニャ」
降ろされたラムシュンドは、慌てて周囲を見渡す。
(・・・???)
何かを見つけたラムシュンドは、とりあえず、落ちていた石を拾って投げつけた。そして、石が何かに当たった瞬間、
「ギャン!」
犬のような何かがのたうち回っていた。
(コボルト!)
3匹のコボルトが草原に潜んでいたのである。幸い、ラムシュンドは、カートに運ばれていた間にMPがいくらか回復していたので、
「ウインドアロー」
「ウインドアロー」
「ウインドアロー」
を立て続けに放った風の矢によってコボルトは討伐することが出来た。
「カート・・・魔石だけ回収してここから移動しよう・・・」
ラムシュンドは、そう言うと、さっきカートが見つけた小屋を指さした。
「わかったニャ」
カートは、だるそうに起き上がった。
やっぱり・・・ですね。ダンジョンなので、1日で復活してました。