第14話 ダンジョン地下3階(その1)
オークとの遭遇・・・
「行くしかないだろう・・・」
「そうニャ」
ラムシュンドとカートは森に入っていった。しばらくすると、森の奥から物音が聞こえる。
「何かいるニャ」
カートが小声で言うと、ラムシュンドは頷いた。
ショートソードを手にして進んでいくと、見覚えのある顔が現れた。
「豚ですね」
「豚だニャ」
顔だけ見れば、まぎれもない豚なのだが・・・何故か2足歩行をしている。そして、体長2mくらいでかなり大きい・・・。豚を巨大にして2足歩行させたような姿であった。そして、ラムシュンドとカートの知識には、これが、オークという魔物であるという知識があったである。
(たしか、こいつは人間を攫って繁殖するとかいう記憶があるが・・)
ラムシュンドは、波高の記憶と思われる知識を確認していた。
「これは食えそうだニャ」
カートは、2足歩行の豚・・・オークの知識は名前以外ほとんどなかったが、豚=食用という認識であった。
そんなラムシュンドとカートのことをどう理解したのか、2足歩行の豚・・・オークは、ラムシュンド目掛けて右手に持った斧を振り上げて襲い掛かってきた。ラムシュンドは、近くにあった木を利用して、突進を躱すと、ショートソードを首に突き刺した。血しぶきを上げてオークは、数歩歩いた後、ばったりと倒れたのである。
「こいつも解体できるのか」
ラムシュンドはカートを見ながら言った。
「多分出来るニャ」
カートはそう言うとオークの死体をそのままアイテムボックスに入れた。
「解体は?」
不思議そうに見るラムシュンドに、
「川でも見つけてからその傍でした方がいいのニャ」
流石に森の中で解体するのは危険で、かつ、水のないところで解体するのは、オークの大きさを考えれば無理な相談だった。
「森を歩くとオークに当たる・・・」
「そんなこと言っているからまだ出たのニャ」
森を進んでいくと、頻繁にオークに遭遇した。ファイヤーボールを使うと、森に被害が出て、最悪森林火災になる・・・と思った2人はファイヤーボールを使わずに戦った。ラムシュンドにはウインドアローもあるのだが、森の中ではオークを確実に捕らえるのは難しい。結果、全てショートソードを使って切り倒したのである。
やがて2人の前方にやや開けたところが見えてきた
「あれは・・・」
2人が見たものはオークの集落だった。
「乗り込んでいってやっつけるかニャ」
「いや・・・結構な数がいそうだ。ということは、オークを率いているものがいると思う・・・」
「上位種ってやつかニャ?」
「そうだ」
何せ2人しかいないのだ。1匹、2匹ならどうにかなるが、大勢で攻めてこられたら勝ち目はない。
「ファイヤーボールで攻撃するのニャ」
「森が火災になるだろうが・・・」
「この集落の周りだけ燃えるように、木を切っておくのニャ」
カートはオークの集落の外側に集落を囲むように木を切ったエリアを作り、その後、ファイヤーボールで攻撃しながら、集落周辺の森ごと焼いてしまうというものだった。
「ラムシュンドにはウインドカッターがあるしニャ」
ラムシュンドは顔を引き攣らせていた。
(ウインドアローなんだけど・・・)
・・・
この階は森になっているせいか、人口太陽がどこかにあるらしい。時間が経つと、夕方になり、やがて夜になった。
2人は自動調理器で作ったおにぎりと肉の塊を食べた後、集落から一定の距離をとりながら、森の中に延焼を防ぐ地帯を作っていったのである。ここのオークは夜になると、集落に戻るらしい。木が倒れるときの音で、オークがやってきそうなものだが、何故かそのようなこともなかった。
作業を始めて、6時間・・・やっと、集落を一周し終わったのである。
「ちょっと疲れた・・・」
作業はラムシュンドのウインドアローを使って行ったため、ラムシュンドの魔力はほとんど残っていない。一方、カートの魔力は充実していた。
「ラムシュンドは切った木を集落に放り込んでいってくれニャ。俺はそれにファイヤーボールで火をつけるニャ」
HPは十分残っていたので、黙ってラムシュンドは頷いた。
「それ!」
ラムシュンドが、木を集落に向かって投げる。
「ファイヤーボール」
カートがそれに火をつけていく。
結果として、火だるまになった木が集落を襲った。
ラムシュンドとカートはそれを繰り返す。倒した木は少しずつ場所がずれていくので、結果として攻撃は少しずつ移動しながら行われていった。オークの集落は、木で出来ている建物ばかりだったので、集落はたちまち火の海になった。更に、周辺の森に火は飛び火したのである。
一周どころか半周もしないうちに、集落からは巨大なキャンプファイヤーのような火が上がっていた。
「そろそろ、オークさんがやってきそうな気がするのニャが・・・」
オークも当然逃げ出すはずで、その一部と遭遇するだろうを思っていたのである。
実際、3匹のオークが、木が投げ込まれる先を目指して突撃してきたが、いくらかMPが回復したラムシュンドと木に着火させていたカートが放ったファイヤーボールが直撃して周囲の森に火災を起こしながら倒したのであった。
・・・
キャンプファイヤー状態になった集落にわざわざ火をつける必要なくなったので、カートも木を集落に向かって投げ込んだ。
「俺にはちょっと重いニャ」
ラムシュンド違い、HPは少ない分、力も少ないらしい。といっても、2人とも、普通の人間ではあり得ないような怪力で木を投げ込んでいるのだが、本人たちは気がついていない。
一周して、全ての木を投げ込んだ時には、完全に昼になっていた。不思議と3匹のオーク以降は、襲ってくるオークはいなかった。
「この階に安全な場所はない。大変だが地下2階の休憩室に戻ろう」
実は、2人徹夜状態だったため、かなり眠い。タヌキは夜行性のはずなのだが、この世界にきてからは昼間活動しているので、もはやタヌキの生活ではなくなっていたのである。
「仕方ニャいニャ」
一方カートも疲労がたまっていたが、この森に留まるのは危険であることは理解していた。
2人は、残った力を振り絞り、何とか地下2階への階段にたどりつた。そして、地下2階に戻り、途中に現れたゴブリンを蹴り飛ばして何とか休憩室に戻ったのだった。
「もうダメ~。寝る!」
「同じく~」
ラムシュンドとカートはベッドにダイブした。
どうしても、オークの村を襲わせたくなってしまうのです・・・。でも、ダンジョンの中でしょ・・・意味あるのだっけ?