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結末は分岐しだい  作者: きと
6/6

第一章 六.最終関門『森』

*あらすじにも記載していますが、この小説は【エンドラン】をリメイクした小説となります。

*同じ登場人物、似たような話となっていますが、作者は同一人物です。


*誤字脱字等見つけましたら、教えていただけると嬉しいです。



 一つ進むたびに起きる胸騒ぎ。これ以上、進むことを踏み込むことを拒絶している感覚。

 すばるの両親もあの街も本当は一つに繋がっているのではないか?

 それに、これは杞憂かもしれない。けれど、俺の記憶がないこともなにか関係しているのではないか。だから、時の番人であるしゅうがいるのではないか。

 どうして、俺には十歳以前の記憶がない? 家族の情報もない?

 これ以上、俺はこの世界へ踏み込んでいいのだろうか。

 胸騒ぎは止まらない。嫌な予感だけが、ただずっと渦巻いているのだ。


「森ついたー!!」

 街を抜け、数キロ歩くと失っていた草花たちが再び姿を見せ、さらに歩を進めるとその分だけ木々の数も増えていき、数時間も歩けば森らしき入口へと到着した。

 通ってきた道に、歩道はない。これが能力者だけがわかる感覚ってことだろう。ここに取り残されたら、俺は間違いなく遭難する。

「いよいよ、ここからが正念場かな」

 先導していたしゅうが足を止め、俺たちへ振り返る。

「この森は、神木様の管轄にある。当然〝エンドラン〟へ入るための資格があるかどうか審査もある」

「でも、森だよ?」

「そう、森。だから、何が起こるかわからない。資格がないと判断されればずっと迷うことになるかもしれない。どうやって〝エンドラン〟の入り口が発生するのか僕にはわからない」

「まじかよ」

 ただの森、されど恐ろしき森。俺だけ、除外されるとか本当にないよな。

「まぁ、なにが起こるかわからないから、臨機応変に対応して、全員五体満足で辿り着くように健闘を祈る」

「いざってときは時間を止めるから、訑灸兄ぃ全力で逃げようね」

「逃げるが勝ちっていうもんな。簡単な足止めは俺がするから」

 すばるといざという時のシミュレーションをこそこそ話し合い、森の中へと足を踏み入れる。

 見たところ何の変哲もないただの森。人間おろか鳥一匹、生き物の気配すらない。

「それが余計不気味なんだけど」

「何もいないね……」

 奥地へ進み始めて一時間経っただろうか。それは突如として訪れた。

「すばる、悪いっ」

「え、うわっ」

 わずかな気配を感じ、すばるの左腕を掴んで後方へと下がる。

「グルルルル」

 俺たちが今までいた場所には一匹の獣が牙をむいて立っている。それを筆頭に周囲にも数匹の獣の姿が確認できる。

「ここからってやつ?」

「訑灸兄ぃ、ありがとう」

 俺たち間一髪。危うく獣に喰われるところだった。

「狼…ではなさそうだね」

 しゅうの言うように狼と呼ぶにはどこか違う。この獣は〝神木〟からの刺客であり、試練ということか。

「足止め、気絶までに留めてなにがなんでもこいつら殺すなよ。うまく逃げる!!」

「訑灸兄ぃ、見えるオオカミさんは少し止めておくね! ――ストップ」

 すばるの合図と共に、近くにいた獣たちの動きが止まる。そこだけが切り取られたかのように確かにその空間だけが止まっている。

「次の襲撃がいつ来るかわからない、行くよ! ――ファスト」

 しゅうが走り出したと同時に俺たちもここから距離を取るために走り出す。

「は、早いーっ!!」

 それも、通常では出せない速度で。すばるが、自分の速さに酔いそうだ。

「僕の能力で通常より速く走れるようにしてるから。距離を作るならこっちがいいでしょ?」

「そうだけどさ、前もって教えろよ」

 想像と違う速度で動き出したら、人間はパニックになるんだよ!

「――!」

 右側から、かすかに感じた気配。

 咄嗟に銃を抜くと、左手で構え威嚇射撃を一発。これで、退散するとは思えないけれど、こちらは気付いてるという証明になる。警戒はするはずだ。

「まぁ、あれでは終わらないよな」

「そんなに単純ではないからね」

 走り抜けた先、広い湖のある場所に抜けた。ここは、使えそうだ。

「なぁ、しゅう」

「うん、僕もきっと木更と同じこと考えてる」

「なら、決まりだな」

「なになに、なにするの?」

 しゅうとアイコンタクトを取るとすばるの不思議そうな声。もちろんここは彼の力も必要だ。

 俺は、わくわくしている少年に作戦を説明する。

「わかった! 大仕事は僕に任せて」

「頼もしい限りだな、それじゃあ向かい打ちますか」

 湖を背にこれから襲ってくるだろう刺客を俺たちは待ち構える。

「グルルルルーーガウォッ!!」

 木々の間を抜けて一斉に出てきた数頭の獣たち。ざっと数えること五匹ってところか。

 湖を背にしたまま、俺たちは右側へ避ける。

「まずは、俺から!」

 俺は銃を構え、数発の威嚇射撃。威嚇するためだけだから、獣は狙わない。

「グルル」

 威嚇射撃は効果があったようだ。散り散りになっていた獣たちは一斉に俺たちへ飛び掛かる。

「次は僕かな」

 獣たちが足を踏み込む瞬間に、しゅうが獣たちへスピードを乗せる。一気に跳躍が伸びた獣たちは予想を遥かに超え、俺たちの頭上を飛び越え湖に向かい一直線。

「すばる、今だ」

「うん! ――ストップ!」

 どこまで浅瀬かわからない。だから湖の中心に近いところですばるに彼らの動きを止めさせ、それと同時にしゅうの能力も解除する。

 するとどうなるか? 答えは簡単。獣たちに勢いはなくなり、すばるによって一時的に動きを止められた獣たちは完全に速度を失う。湖へ真っ逆さまというわけだ。

「解除」

 すばるの言葉と同時に獣たちは予定通り大きな水しぶきを上げ水の中へ落ちていく。そして、俺たちは五匹全てが泳げることを確認すると最後の足止め。

「――スロウ」

 速度を上げることができるなら、当然下げることもできる。獣たちにはゆっくり湖の中で泳いでもらうため、〝スピード〟の能力で動きをスロウ化させる。

「これで、当分の足止めにはなるだろ。っていうか、もう来るな」

「今のうちに、先へ進もう」

 周囲に変な気配がないか確認し、俺たちは先を急ぐ。


「ところで、しゅうは〝エンドラン〟へ行ったことがあんの?」

「あるもなにも家族はそこにいるからね」

「しゅう兄ぃまさかの〝エンドラン〟生まれなの??」

 あれから目的地の分からない森の散策を進めること約一時間。

 何気なく訊ねた疑問により新事実発覚。聞かなかったのは俺だけど、まさか住んでた人?

「生まれも育ちもそこだね。十八で番人に目覚めてから、家族に外の世界も知るべきだって追い出され、大した教養もないからって理由で高校にねじ込まれた。そこで木更に会ったんだよ」

 この言葉に、ものすごい違和感を覚える。

「しゅう兄ぃはつまり今いくつなの?」

「二十一かな、木更の三つ上」

「嘘だろ…。なんか訳ありそうと思ってたけど、能力者だけじゃなくて年上ってことまで隠してたのかよ」

 違和感の正体。年齢詐称はダメだろ。

「いや、入学時の年齢は偽ってないし、そもそも年齢を訊かれたことがないんだよ? 自分から言うわけないだろ」

「まさか、三つも上の奴だとは思わないじゃん。まじかよ、えー」

「しゅう兄ぃも訑灸兄ぃにとってお兄さんだったね」

「なー。世の中ほんと、なにがあるかわかんないよな」

 まぁ、年上だからとなにかするわけでも、なにか変わるわけでもないけれど複雑。

 いわれてみたらそうだよな。なにをするにしてもスムーズに進んだのは成人している人間がいたからだ。未成年だけでは引き留められてもおかしくはなかったかもしれない。

「すばるはどうなんだ?」

「僕? 生まれたのは〝エンドラン〟らしいけど、すぐに出たからわかんない」

 守り人だからと言って〝エンドラン〟に滞在しているわけじゃなく、各地を転々としているらしい。

「どうなってんだろうなー。それ以前にちゃんと着くんだよなー」

 だいぶ歩いた。あたりも暗くなり始めている。もともと森の中、多少薄暗い。これ以上、暗くなると動きも取りづらくなりそうだ。

「前回来たときは、ここまで迷わなかったんだけど。やっぱり、湖に落とすのはまずかったかなぁ」

「勘弁してくれよ、今更どうにもできない」

 獣の足止め方法はあれ以外、互いに大きな怪我もなく簡単なことはないと思う。それをダメと言われたら、お手上げだ。

「追っかけてこないから大丈夫だと思ったんだけど」

 ここまでは、歩いてないはずなんだけどなぁというのは経験者。

「どうするの、訑灸兄ぃ?」

「どうするって言ったってなー」

 ――手間取っているみたいだね。

「は?」

「どうした木更?」

 急に聞こえた声。ここにいるのは俺たちだけであたりに誰かの姿はない。

 急に立ち止まった俺に、しゅうが不思議そうに振り返る。

「声が、……聞こえる」

「僕、聞こえないよー?」

 すばるがきょろきょろと辺りを見回しているが、もちろん人影はない。

 それでも、確かに俺の耳には聞こえたんだ。とても澄んでいてきれいな少年の声。

 ――仕方ないから、案内してあげる。この子についてきて。

 その言葉と同時に現れたのは一羽の蝶。光り輝く羽を持ち不思議な姿をしている。

「この蝶について来いって」

「光るちょうちょだー」

「すばる、ちょっと待って」

 しゅうが止めるも虚しくすばるは蝶に近づいていく。それはなにをするわけでもなく、彼の周りをくるくると飛んでいる。まるで誘っているかのようで。

「罠かもしれない。それでも、声がしたんだ。この蝶にかけてみない? しゅう」

「はぁー、木更が言うならそれでいいけど、もしもの時は自己責任」

「わかってる」

 俺だけが聞いた声に不快感は一切なかった。だから、この蝶を信じていいと思う。

 俺は蝶に伝える。

「俺たちを〝エンドラン〟まで、案内してくれないか?」

 ――ヒラリ

 蝶は、俺たちの周りを一周すると、道を示すように先へ飛び始める。

 ――ふふっ、お安い御用さ。ボクは先で君を待っているよ。

「――え?」

「訑灸兄ぃ? 置いていくよ!」

 最後に聞こえた声は、俺を呼んでいて。

「今行く!」

 どいうことだ。



 ヒラリヒラリ、光る蝶に誘われるがまま、知らない間に彼らはその土地へと足を踏み入れる。

 目的地はすぐそこに。そして、彼らの、彼の本当の物語が始まるのだ。


 ――君は大切な子。だから、誰よりも加護があらんことを。





森でーす! やっと森まで来ました。三人の連係プレーの炸裂です。

このあたりの話を書いてるときは手元に原作がなく、森を経由した記憶だけを頼りに書いていたので、展開が大きく違っています。

手元に原作がない話はあと数話続きます、その間の物語はだいぶ変えました! だって、記憶にない☆


それでは、第二章『エンドラン編』でお会いしましょう!



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