2人の出会い Part2
暇なら読んでみて下さい。
ささっ
( ^-^)_旦~
小学校低学年くらいの少年が鳩にエサをあげている。けれど、鳩たちは見向きもせずに他の場所へ向かう。
「なんでだろう?ぼくがわるいのかな」
少年は帰り道をとぼとぼと歩いて帰って行く。少し歩いたところで振り返ると、鳩たちは一斉にエサに群がっていた。
「やっぱり、かなしいな…」
★
懐かしい夢を見た。レンがまだ小さかった頃の夢。動物たちとの触れ合いを純粋に求めていた頃。
レンは幼い頃から動物が大好きだった。けれど、何故か動物たちに嫌われた。
触れあいたくて飼育係になっても、エサを食べてくれないのですぐ外された。親が犬や猫カフェに連れて行ってくれても、どの子も遊んでくれなかった。
大人たちはたまたまだ、とか動物にも機嫌の悪いときはある、とフォローしてくれていたが、そんな日々を過ごせばさすがに子供でも嫌われていると気付く。
こちらも嫌いになれたら楽だったのだが、どうしても嫌いになれなかった。やっぱり彼らが大好きなのだ。
『あの頃は、ストーカーみたいだったな』
レンは苦笑する。
近づけば逃げられるから、離れて気付かれないように見つめる日々。一方的な愛。まさしくストーカー状態……
★ ★ ★ ★
そんな日々を過ごしていると、ある噂が耳に入ってきた。
「ねぇねぇ!となりの小学校に、どうぶつ組の組長がいるらしいよ!」
「どうぶつ組ってなに?」
「なんかね、いろんな動物を子分みたいに引き連れてあるいてるんだって!」
「へぇー!すごいね!」
「アタシたちと同い年だっていってたよ。アヤカちゃんっていう女の子」
「みてみたいねー」
それが本当なら、すごくうらやましいな、と思った。そんな子となかよくなれたら、ぼくも動物たちといっしょに遊べるだろうか、と。
ある日、暇だったこともあって鳩のエサを片手にとなりの小学校近くの公園まで行くことにした。もしかしたら、組長さんに会えるかもしれないと思って。
そこで、いつものごとくエサをあげていたが当然食べてはもらえなかった。いつものように見つめるだけの時間。そんなとき、遠くから猫や犬を引き連れた女の子が近づいてきた。
もしかしてあの子が、うわさの組長さんかなと思っていたら、こちらにドンドン近づいてくる。動物たちは大人しく座って待っていた。
「ねぇ、鳩にエサあげてるの?」
エサをあげるの手伝うよと言ってくれたのだが、大丈夫だよと断った。レンが名前を知っていることに驚いていたが、動物に好かれる人とと嫌われる人でちょうどよくなるかもと言われて、ちょっとだけやってみたくなった。
「ねぇ、わたしが先にあげてみるね」
「うん。わかった」
アヤカちゃんがエサをあげると、鳩は喜んで食べる。
「次はあなたの番だよ。わたしもここにいるから」
「う、うん」
レンがあげると、やっぱりいなくなってしまう。
「やっぱりだめみたい…」
「……あっちにも行ってみよう!」
移動してあげてみても同じだった。
「うまくいかないね」
「………ブルプル………」
何度か繰り返してみても、やっぱりだめだった。こんなに動物に好かれる子といっしょでもだめなんだ。そう思ったとき
「くっそー!なんなのアイツら!」
いきなりアヤカちゃんが怒りだした。
「ど、どうしたの?」
「なんで!どうして食べてくれないの!」
「アヤカちゃんのは食べてるよ?」
「あなたのを食べてない!同じものあげてるのにー!」
「ボクはいつも食べてもらえないから、気にしないで」
「でも、食べてほしいでしょ」
「それは…そうだけど。けど、学校の飼育係になっても食べてもらえなかったし、ムリして食べてほしくないよ…」
「………」
「むかしからなんだ。ねこカフェでもみんなきてくれないし、逃げられちゃうんだ」
「…………」
「……1回だけでもみんなにさわってみたい…けど…」
「……………」
なんだか、自分で言ってて泣きそうになってきた。
「でも、だいじょうぶだよ。見てるだけでも楽しいから。それにくらくなるから、もう帰ろう?」
アヤカちゃんに気を遣わせないように言った。すると、荒かった鼻息を整えるようにしてアヤカちゃんが言った。
「わかった。またいっしょにやってみよう」
「えっ。そんなことしたらアヤカちゃんがみんなと遊べないよ?」
「かんけいないね!そんなやつとは遊ばなくていい!」
えっそうなの?と思った。ボクなんか遊びたくても遊べないのに…と
「それとも、わたしと遊ぶのはいや?」
「そんなことないよ」
「じゃあきまりね。名前をおしえて!」
そして、お互いに名前を教えあった。
「じゃあ、またね!」
といって帰って行くアヤカちゃんを見送ったあと、レンも家へと急いだ。
★ ★ ★ ★
『今思えば、初登場から嵐のようだったな』
その後、カッパ公園でアヤカとよく遊ぶようになり、一緒に妖怪探しをするようになっていく。
本当にアヤカはレンと遊ぶときは、まるで動物たちは敵だと言わんばかりの勢いだった。当時のレンには全く理解できなかったが。
会ったばかりの男の子と、可愛い動物たち。遊び相手としては比べるまでもない。なのに、あの時アヤカは迷わずレンと遊ぶことを選んだのだ。
今なら、四六時中付きまとわれるアヤカのツラさも理解できるが、あの頃は不思議でたまらなかった。
アヤカと遊ぶのは楽しかった。他の友達からは、動物に嫌われてかわいそう、何しても無駄だと思うという同情の空気が伝わってきた。
アヤカだけが、何とかなる!嫌われるのはおかしい!と親身になってくれたのだ。
『だから、乗り越えたられたのかもな』
おそらく、アヤカに会わなければレンはどこかで心が折れて、今頃動物たちを無視している。そうでなければ、心のバランスが保てなかったろう。アヤカがいたから、嫌われていてもレンの代わりにアヤカが怒ってくれたから、そこまで嫌じゃなくなった。
だから、アヤカが『妖怪を探したいの!』と言いだしたとき、自分も何か手伝ってあげたいと思った。まさか、自分にだけ見えるとは考えてもいなかったが…
『何とか妖怪の姿を見せてやれないか』
動物との触れ合いではなく、それが今のレンの1番の悩みだ。
★
懐かしい夢を見たこともあって、レンはカッパ公園に来てみた。公園はあの頃とほとんど変わっていない。時代の流れで遊具が減ったくらいだろうか。
ん?
なにやら芝生エリアから鳩の鳴き声が聞こえる。5羽や10羽じゃないな…
芝生エリアに移動してみると、鳩タワーいや横たわっているから鳩大文字焼きを見つけた。
見ようによっては人が鳩に襲われているように見えるのだが、こんなことできるのは1人しかいないので、相変わらずだなと思いながらレンは去って行く。
その後、公園を出るときにアヤカの『焼き鳥』と『このヤロー』という微かに聞き取れた言葉に、レンは微笑んで帰って行った。
読んで頂きありがとうございます。
(・∀・)