異世界召喚の現実
俺の名は佐川 大吾。
朝日の眩しい中スーツに身を包み仕事場へと向かう途中である。
歩きスマホはマナーが悪いとわかりつつも、昨日の残した仕事をスマホにまとめつつバス停へと向かう最中だ。
今日はいい天気だ。
多少早い時間なのだが、人気が少ないとはいえこの天気だと、少なからずランニングしている人や犬の散歩をしている人等がいつもは見受けられるのだが、今日に限っては誰も見かけない。
それどころか人の気配すら一切ないのは不自然だと感じられた。
(……なぜ誰にも会わない? 朝早すぎたか? しかし時間は6時を指している。 誰にも会わないのは妙だな)
と考えてはみたもののたまたまだと仕事にひと段落つけて、スマホでの動画鑑賞に戻り、疑問を忘れてバスを待つ。
起床が早かったせいか少し眠気を感じ、バス停のベンチで少し仮眠を取ることにした。
……
ハッと目を覚まし寝過ぎたかと焦りを覚えて起きると、
そこは広い大草原だった。
「は? これは夢か…」
頬をつねってみるが痛みがあるだけで夢が覚める気配は無い。
辺りを見回すと少し行った先に森があるのと、かなり先だが街のようなものが見える。
「どちらかにせよ情報収集は必要なようだな。 俗に言うこれが異世界なんたらとかいう話か。 アニメや小説ではよくあるが、まさか俺が巻き込まれるとはな」
と、ボヤきつつも物語の主人公となり、これから小説のようなアニメのような展開を想いに少し胸が躍った。
この想いに意識を取られたのは改めて考えると大失態だった。
街に向かい步を進めようとすると頭に大きな激痛が走った。
「な……、え?」
グラグラと景色が揺らぎ、顔に硬いものが当たる。
これが地面だと気がつき、全てを悟ったときにはもう全て遅く目の前に小さな体格のモノが何匹か集り、それに袋叩きにされた。
遠くなる意識の中で そうだよな、現実は非情なものなのだったなと悟るが、全ては手遅れだった。
BAD END