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勇者は悪女を娶りたい

作者: まっちぃ

転生モノや悪役令嬢モノ、乙女ゲーム要素もありません

あの日貴方と出会ってから私は自分の生き方に疑問を持ち始めた。

王族として第一王女として生まれた私は理想と憧れの対象であり、多少のワガママは許される立場。

でも、本当の意味で愛されたのは私の異母妹であり聖女としての神託された子だった。両親も幼馴染も宰相も他の貴族もほとんどが彼女を愛した。

そしてワガママの言う私はいつしか要らない子、成長するにつけて悪女と噂された。

私はただ、自分を見て欲しかっただけなのに。

愛されたかっただけなのに…



ある時全世界が恐怖に慄いた。

魔王が降り立ち魔族による破壊行動が全世界で起き始めていたから。

そんな時1人勇者が平民から選抜され聖女、魔導師、騎士と選ばれ魔王を倒すための旅が始まる。

最強だと謳われた勇者により魔王は倒され、全世界の人々が歓喜に包みその勇者を温かく迎えパレードを開いてお祭りさながらの熱気に包まれた。

聖女生誕の地である国は勇者を迎い入れて聖女の両親である国王と王妃、あたりには国中からの貴族国外の王族を招きいれての謁見となった。

「勇者よ大義であった。お主の望みを叶えてやろう。なんでも申せ」

そうは言ってみたが勇者一行以外のほとんどが分かっていた。聖女は勇者に好意を持っていると、勇者もきっと聖女を妻として迎いたいと望むと…

「…おそれながら申し上げます。私は…この国の王女を妻として娶りたいと考えております」

ばっと顔を上げる聖女の目は恋する乙女の如く輝いていた。国王も周りの人達も至極当然だと頷いて、

「では、勇者よ。そなたにはこの国の王女であり聖女として苦楽を共にしたユリア姫を妻としてー…」

「いえ…、私が妻として娶りたいのはこの国の第一王女マーガレット姫です!」

その瞬間辺りがざわめき始めた。



「すまん、勇者よ。ワシの耳がおかしくなってしまったらしい。…もう一度言ってみてくれ」

「マーガレット姫を妻として娶りたいです」

どうやら勘違いではないらしい。国王は頭を抱える。

よりにもよってあの出来損ないを…

「勇者様、こう言っては何ですがマーガレットはこの国では悪女とよばれているワガママな姫です。きっと勇者様も会えば分かるとおもいますがあまり出来が良くありません…どうか誰からも愛されるユリアを妻として娶った方がいいですわ」

頭を抱えた国王を心配そうに見つめ勇者に優しく諭すように言ってくる。

「…出来が良くない…ですか…」

衝撃な勇者の申し出に肩を震わせたいた聖女のユリアはゆっくりと勇者の方を見て、

「勇者様、確かにお姉様はとても素敵な方ですが私の方が勇者様をお慕い申し上げております…どうか私を妻として頂けませんか…?」

首を軽く傾げる様は美しく、周りの人々はため息すらこぼしてー…

「うるせぇなぁ!」

突然豹変しジロリとユリアを睨みつけ、最恐であった魔王を倒した勇者から発せられた殺気に背筋が凍る。

「さっきから聞いてりゃ出来が良くないだの悪女だの生意気言ってんじゃねえよ!…アイツは確かにワガママではあるが誰よりも優しくて努力家で真面目でとても負けず嫌いな女だよ!あんたみたいな誰にでもいい顔をする八方美人なヤツよりよっぽど魅力的だ!」

あまりの暴言に唖然としたが、すぐに我に返り。

「無礼だぞ、貴様…誰にモノを言っている…」

「はっ!知ったことじゃないね。少なくとも実の娘を出来損ない扱いするアンタにはこれで十分だよ!」

怒りに震える国王に勇者は、

「あんたは俺を覚えていないんだな…」

ポツリと呟いた言葉に怒りに満ちたいるが冷静になろうと隣で聞いている宰相が怪訝そうにする。

「何の話だ…?」

バンッ!


扉が音を立てて開き、目線をそちらにやると肩で息をした王族特有の銀髪と碧の瞳をした女性が立っていた。

「何をしておる!貴様は呼んでおらんぞ‼︎」

睨みつける国王を無視して勇者を見つめる。

「マーガレット…」

やっと会えた愛しい女性。

美しい碧の瞳に涙を溜めていた。

「クロウ…やっと、帰ってきた…」

クロウと呼ばれた勇者は自分の胸に飛び込んできたマーガレットを抱きとめて強く抱きしめる。

「おかえりなさい、クロウ…お疲れ様…すごく、すごく会いたかった…」

引き離されたあの時からずっと…

「見なさい!クロウ!」

身体を離したマーガレットはクロウの前にある物を取り出す。それは一つのパン。

近くで見れば所々歪になっているがちゃんとした美味しそうなパンの香りが漂っていた。

「これもしかして…お前が作ったのか?」

「もちろん!」

クロウは自分と出会った頃のマーガレットはほとんど掃除もましてや料理なんて出来なかった。

パンを作るにも最初は真っ黒焦げの炭と化したパンしか出来なかった。

「もう!世間知らずのお嬢様なんて呼ばせないわ!この城に連れ戻せられた時はいっぱい料理して食べられる草とか野宿の仕方も勉強しました、これでいつ家無しとなっても大丈夫です…」

さすがにそれはさせたくないと思いながら嬉しそうに胸を張る彼女が愛おしくて仕方なかった。

マーガレットは自分が勇者に選ばれるずっと前に家出をして自分と出会い城に連れ戻される前までは一緒に暮らしていた。その間にいつしか愛し合うようになり恋人同士となったのだ。

「俺は勇者として選ばれる前に会っているはずです。嫌がる彼女を無理やり連れ戻したくせに何がワガママで悪女だ⁉︎コイツの本質を見抜こうとしない奴らが何を偉そうに…」

国王や王妃、周りの人は呆然として勇者と第一王女を見る。


「っ…ふざけるな!私は誰からも愛される聖女なんだから勇者たるあんたは私を好きになって私だけを愛したらいいのによりにもよってこんな女と…!」

あたりに響き渡る声に今度こそ絶句した。

聖女が髪を振り乱し姉たるマーガレットを睨みつける。

あまりにも見たことのない取り乱しっぷりに国王も恐る恐る名前を呼ぶ。

「ユリア…」

「だいたいあんたも国王だろ!その権力を使って私と勇者を結婚させなさいよ!」


「愛されてるのね、クロウ…」

「うれしくねぇよ、大体勇者である俺にしか興味ないビッチを好きになるわけねぇよ」

ヤキモチを焼くマーガレットを優しく抱きしめるクロウはヒョイっと横抱きをする。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。

「ヤバくなってきたし、そろそろ行くか?勇者になってようやくお前を守れるだけの力を得たんだ。」

「…愛の逃避行…?」

「もちろん、今度こそお前を離さない、愛してる…」

「私も今度こそあなたの側を離れないから…」

短く口づけを交わす。


後ろから聖女たるユリアの罵声が聞こえきたがそんなことはお構いなしに謁見の間から飛び出す。

聖女の命令で近衛兵が後ろから追いかけてきたが勇者の走る速度には敵わずすぐに見失う。



それから第一王女と勇者は国を出て辺境の地に流れ着きそこで小さな家を建てて夫婦として子供にも恵まれて幸せに暮らしましたとさ。







早くに終わらせた感はありますがこんな感じで初めての完結した話を書きました。

読んでくださりありがとうございますm(._.)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様も自覚している通り、最後か駆け足ですね。でも内容はこんなハッピーエンドがあってもいいなと思いました。面白かったです。 我儘で嫌われ者でも一応第一王女なのに、城から脱走させてしまうと…
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