料理が必要なのは当然です
皆さん、料理を御存知でしょうか?
歴史や起源は分かりませんが、子供の私でも料理の必要性は知っています。
人は料理が出来なければ簡単に死んでしまいます。
肉は火を通さずに生で食べれば体調を崩します。
小さく分けなければ口に入れることも出来ません。
毒を持ったものは毒を取り除かなければ食べることは出来ません。
食材は冷えた場所に置いたり、塩に浸けなければ直ぐに腐ってしまいます。
中途半端にやってしまい、命を落とした人たちも多くいます。
使用する器具も沢山種類があります。
例えば、鋭い包丁と、呼ばれる刃物。
熱を通しやすい金属で出来た様々な物がある鍋。
液体を攪拌したり掬ったりするおたま。
食事をする時に使うフォークやスプーン、箸などもあります
ほかにも状況に応じて硬いものを砕いたり、穴を開けたり、剥がしたりする道具が多種多様に存在しています。
これらは、今まで生きてきた先達が子孫に教え、進歩させてきたものです。
生きるために不可欠で、優れた料理を出来る人は称賛されます。
数名程ですが料理をしている人に、付いて行ってどのような料理をしているのか見てみましょう。
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付いていくとは言いましたが、子供だと同行の許可を得る必要があります。
男性が2人に女性が1人…男性は壮年のベテランと思われる方とまだ若い力溢れる方、女性は壮年の方と同じくらいの年に見えますね。見た感じは家族でしょうか?話しかけてみましょう。
「すいませーん、今から料理をされるんですよね?同行しても構いませんか?」
話の邪魔をしてしまったようです。不思議そうな顔でこちらを見ていますね。
「…ん?お嬢さん、料理をするには年が若くないか?今からする料理は危ないんだ、やめておいた方がいいぞ。」
「そうよ…まだ、子供でしょう?料理は大人に任せて子供は遊んで体力をつけなさいな。」
至極真っ当な説教ですね。納得は出来ますがもう少し粘ってみましょう。
「いえ、その…遠くから見学させてほしいのです。将来、私も料理をするので勉強のために…」
大人にお願いする時は、上目遣い、真摯な態度、可愛らしい理由。
これさえ有れば良識のある大人なら、認めてくれます。
「いや、しかし…どうしようか、アン?」
「まだ、小さいし…何かあった時が怖いわ…今日のは特に危ないから…」
かなり硬いですね…しかし、女性の名前はアンですか。略称か本名かは分かりませんが有難い情報です。
もう一押しと言った所でしょうか?
「構わないのでは無いですか?理由はまともですし、遠くからなら危険も少ない、経験も大事だと思います。」
おや?今まで無口だった若い方が援護射撃をしてくれました。
有難いですこれなら…『お願いします。アンお姉ちゃん。』と言う恥ずかしい台詞を言わなくてすみそうです。
まだ、話し合ってますが肯定的な雰囲気です。多分…大丈夫でしょう。
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あの若い方のおかげで同行が許可されました。
条件として安全な場所まで離れること、終わるまで邪魔をしないこと等を約束させられました。
これらの約束事は当然ではありますが、あまり離れると料理が見られないので危険でも気づかれない範囲で近づくつもりです。
そして、同行を許可してくれた3人の方は家族ではなく昔から交流のあった家の幼なじみだとか…若い方は弟の様な者だとか…
色々話してくれました。名前も壮年の方がロブ、若い方がカイン、女性の方がアンと言うそうです。
それぞれに持ち場を決めていてロブさんは雑多な道具で下準備をして、アンさんが包丁で切り、カインさんが焼く。といった、ラインが出来てるそうです。
今回は毒などは無いけど、とても大きくて活きがいいから危ないんだとか。
どんな料理が見られるか楽しみですね。
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さぁ、やって来ました。これから皆さん料理をされるそうなので、少し離れて様子を見たいと思います。
「おっし、2人とも準備は出来てるな?そろそろ見える頃だ気を引き締めてかかれよ!」
「はーい」「もちろんです。」
気合いもあり、意思の疎通も出来ています。素晴らしい料理が見られそうです。
あれは…やっと出てきましたか。本当に大きいですね。体高は大人3人分でしょうか…黒い毛皮白い斑点、目はより赤い方が美味しいとされる…
「来たぞ!今回の獲物、ベリーベアー!先にアイツの気を引いてから叩く!行くぞ!」
ロブさんはこの3人の中でリーダー役でしょうか、掛け声も様になっていますし相手の確認をしつつ指示を行っています。
相手の気を引くのはこちらを意識しての事でしょうか?そうだとしたら、とても親切な方です。心の中で応援しましょう。
アンさんの包丁捌きは、とても素晴らしいものです。
ロブさんとカインさんが気を引いてる間に暴れ回るベリーベアーの後ろをとって短い足を切りつけています。
足の健を切るように短い間に何度も切りつけて…
立っていられなくなったベリーベアーが四足歩行になりました。
しかし、動きが鈍くなって無いところを見ると傷はもうは塞がったのでしょうか?
ベリーベアーは直ぐに後ろを向くとアンさんにタックルや噛みつき等を仕掛けていますがギリギリ避けられています。
ロブさんやカインさんは足の傷に調味料をかけてこれ以上塞がらない様にしてから、ベリーベアーの側面をとって熱を通した鍋や肉叩きで殴りかかっていますが…余り効いて無いようです。
作戦を切り替えて、カインさんで注意を引きつつアンさんの付けた傷にロブさんが調味料をかけて動きを鈍らせています。
数回繰り返して、ベリーベアーの動きがやっと止まりましたね。
皆さんがトドメを刺そうと猛攻を仕掛けています。
あっ…鍋がとばされてカインさんが転がっていきます。ベリーベアーの最期の一撃でしょうか?
アンさんとロブさんがカインさんに急いで駆け寄っていきます。自力で立ち上がった所を見ると軽傷の様です。
持っていた鍋が凹んでいるので、鍋で咄嗟に身を守ったのでしょう。
ですが、素晴らしい料理でした。皆さんには感謝しなければなりません。
これから命をいただくベリーベアーにも。
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このように、一部の穀物や香辛料しか栽培出来ない人間にとって
料理とは生命力が高く直ぐに傷の塞がる動物達を相手にする上で必要なものです。
火や熱を纏う鍋、硬い毛や鱗にも通る包丁、傷の治りを妨げる調味料など、多くのものを先達は作ってきました。
料理とは文化で文明であり、人が生きていく上で必要な技術であると思います。
〜ある世界ある学校の生徒の日記より~