お父様とお母様
ティナ視点に戻ります。
「ラララリアットォ〜♪ ルルル〜♪」
歌を歌いながら広い廊下をスキップしている私は何を隠そうこの屋敷の主人の娘である。前世の記憶持ちのね。
「ティナ」
後ろから女性の優しい声に名を呼ばれた。
「あ、 お母様!!」
この私と同じ茶色の長い髪を後ろにサラッと流している優しそうな美人さんはマリア=シーナ。
私の生みの母親だ。
「丁度よかった。今からティナの部屋に行こうと思っていたの」
そう言ってフワリと笑うお母様は同性すらもキュンとさせる魅力の持ち主だ。
「私の部屋に、ですか?」
「ええ。ティナに紹介したい子がいるの」
優しく私の手を引いて歩き出すお母様に内心戸惑いまくりながらも私は取り敢えずお母様に付いて行くことにした。
「ここってー……」
お母様に連れてこられた先はお父様の書斎だった。
え!? 紹介したい子ってお父様!?
そ、それはないよね、うん、ナイナイ。
一瞬浮かんだ予想をパッパッと振り払っていると、隣に居るお母様が扉をコンコンとノックした。
「あぁ。早かったな」
扉をガチャリと明け、顔を出したのは黒髪の見た人を一瞬冷たそうなイメージを持たせる、これまたイケメンさんはイリア=シーナ。
お察しの通り、私の父親だ。
「ふふふ。向かう途中で偶然会ったの」
「そうか」
そう言って2人は微笑み見つめ合い始めた。
アツアツだ。
今はこんなんだけど、実は少し前まで、この2人は喧嘩ばかりしていた。
原因はお父様がお母様と私の半径3メートル以内には絶対に入らなかったことにある。
え?この2人が喧嘩しているところが想像つかない?
そうだなー……、
『私はいいとして、ティナまで避ける意味が分かりませんわ!』
『違う!避けてない!』
『じゃあ何でですの?』
『それはー……』
『、もういいです!』
『マリア!』
こんな感じ。
これを目の前で見た時私は悟った。
ゲームのティナ=シーナはこれを見て育ったからあんなひねくれた性格になったのだと。
それと同時に私は私は考えた。
どうしたら両親の仲が戻るのかと。
考えても何も出てこなかったので、取り敢えず、2人に話し合ってもらおうと思い、私はお父様とお母様を自分の部屋に呼んだ。
それから、まぁなんとか2人を仲直りすることに成功した。
ちなみに、お父様がお母様と私の半径3メートル以内に入らなかったのは、「マリアとティナの3メートル以内に入ってしまうと、周りに誰が居ようが2人に抱き着いてしまう。そうしてしまうと、シーナ家の当主としての威厳か無くなってしまう」って考えたからだそうで、お父様のその言葉に対し、お母様が「当主としての威厳なんかよりも私はイリア様に抱きついて欲しいです」
と、爆弾発言をしたことでこの喧嘩は収束した。
わー!めでたしめでたしー!
じゃないんだよねー、これが、
いやーさ、2人の仲が直ったのはものすごく嬉しいんだけどさ、イチャイチャするのは2人っきりの所でやって欲しいのよ。
子供の前でイチャイチャしないで欲しいのよ。
『イリア様、アーン』って!!
コドモ、ココ、イル!!
「はぁー……」
「あ、ゴメンゴメン。ティナ、おいで」
小さくため息を吐いた私に気付いたお母様と見つめ合っていたお父様は平謝りしながら少しかがみ、私をヒョイッと持ち上げた。
「わー!!」
13歳で高い高いはさすがにー……と思ったが、一応嬉しそうにキャイキャイ言っといた。
一応ね。
「あ、イリア様、あの子は……?」
お父様と私を微笑んで見ていたお母様のその一言にお父様は「ああ」と頷き、私を床に降ろした後、お母様と私を書斎の中へ入るよう促した。
次はいよいよマリアが言っていた『紹介したい子』の登場です!