反抗期-3-
っとー……シウォルさん、近くの広場って言ってたよね?
「んー……あ! いたいた!」
シウォルさんの家を出て近くの広場に入り、キョロキョロとソフィアを探すと、噴水近くのベンチに腰掛けているソフィアの姿を見つけた。
「おーい! ソフィアー!!」
手をブンブンと振りながら近付いていくと、それに気付いたソフィアはギョッとし、「恥ずかしいからヤメテ」とひと言そうおっしゃった。
「ひどっ!! 」
「で、聞いたんでしょ?」
唐突にそう聞かれた。
少し戸惑いながらもコクンと首を縦に振った。
「そう……、実を言うとさ、あの人がお母さんが亡くなって私を家に1人置いて仕事に逃げたこと、そんなに怒ってないのよ。
まぁでも私が逆の立場だったとしてもあの人と同じ事は絶対にしないだろうけどね。
気持ちは分からなくはないのよ。
……気持ちは」
そう言って自嘲気味に笑うソフィアの顔がシウォルさんと重なって見えた。
それが一層胸を締め付けた。
「この前ね、私が夜遅くまで出掛けて帰ってくるとあの人が久しぶりに家に居たの。それでね、帰ってきた私を見て何て言ったと思う?
『こんな夜遅くまでどこ行ってたんだ』ですって。
笑っちゃうわよね、今まで放ったらかしにしといて今更? って感じ」
そう言って可笑しそうに笑った。
「その時ね、人に言えないくらい本当に酷い事言っちゃったの。
言った後にあの人の傷ついた顔見てすっごい後悔したんだけどさ、今日もまた気付いたらまた同じ事やっちゃってた。
なんかあの人に行動を制限されるとこう、イライラしてきて反発したくなるのよね」
そう言って噴水をじっと見た。
ああ、そうか、ソフィアはシウォルさんが仕事に逃げた事を許す許さないの段階はもう超えているんだ。
けど、超えた先で反抗期の壁に今どうしたらいいか分かんなくなってるんだ。
シウォルさんを父と認めることに反発しているんだ。
「ソフィアはシウォルさんのことお父さんって認めてる?」
「……無理ね。なんとなく感じるんだけど、あの人をお父さんって呼べる日はきっと来ない」
それはきっとこの先変わることは無いと、やけにハッキリとした口調でそう言った。
さて、これはどうしたもんかな。
反抗期こじらせまくってる。
そう考えている時、彼女のその瞳がゆらゆらと揺れていることに気付いた。
私は気を引き締め、そこに望みをかけることにした。
「ソフィア、反抗期ってさ、どんなものだと思う?」
「え……?」
私の突然の問にソフィアは少し戸惑ったように首を傾げて、私の方を見た。
「反抗すること?」
「うん。私さ、その反抗って家族に対してしか出来ないと思うんだ、ソフィアはさ、近所の人とか私相手に反抗期発動させて怒鳴ったり、『ほとっいて』とか言える?」
ソフィアの目を真っ直ぐに見てそう聞いた。
ソフィアがふるふると首を横に振る。
「そうなんだよ、そういう事他人には言えないんだよ。
親ってやっぱり特別なんだと思うよ。
親相手だから言えることってあるんだよ。
……皮肉なことにそれがどんなに酷い事でもね、親には何故か言えるんだよ」
「何が言いたいのかっていうと、ソフィアはもうとっくの前にシウォルさんをお父さんって認めているってー……」
「、認めてない!」
言葉を遮り、食い気味にそう怒鳴った。
その後、ハッと気付き、小さく「ごめんなさい」と謝った。
「大丈夫。でも、もう少し時が過ぎてからでもいいから考えてみて」
そう言うと黙り込んでしまった。
やがてソフィアは小さくコクンと頷いた。
「さ! じゃあ帰ろうか!」
「ええ。……ティナ、ごめんなさい。
今日は楽しく遊ぶつもりだったのにこんな事になっちゃって」
そう言って申し訳なさそうな顔で謝った。
「いや、そんな謝られるような事じゃあー……」
「何かお詫びをさせて」
えー、お詫びねぇー……
「あ! じゃあ、今度私の家に遊びに来てよ」
身を乗り出しそう提案すれば、ソフィアは目をパチパチと瞬かせた後、ふふっと笑い出した。
「ほんっとティナって変わってるわよね」
「え、ちょ、そこで貶しちゃうー!?」
「何言ってんの、褒めてるのよ」
ジトーっとソフィアを見れば、ソフィアはベンチから立ち上がり、「帰るわよ」とひと言言ってサッサと歩きはじめた。
「ちょっ、待ってー!」
置いていかれないように走り出した。




