反抗期-1-
反抗期。
その一言でこのモヤモヤを片付けれるほど、私はまだ大人じゃない。
「お嬢様、朝です。起きてください」
ノックをして、そう言いながらリリィが部屋に入ってきた。
「あ、リリィー! おはよー!」
「ですから! 二度寝はダメですと何度言ったらー……はい?」
ツカツカとベットに向かって歩く足を止め、リリィはソファーに座っている私の方を見た。
「こっちこっち! もう起きてるよ」
どこ行ってるのさ。
「え、ええー!? 朝は意地でも自主的にベットから出ないお嬢様が!? ま、まさか昨晩徹夜しました!?」
「え、ちょっ、なんでそうなんの!?」
私が起きてたら徹夜したことになるってどうよ。
「今日はソフィアの家に遊びに行く日だからワクワクして早く起きちゃったの!」
お茶会で私たちは3日後、ソフィアの家に遊びに行く約束をしたのだ。
「あ、そういうことでしたか」
なーんだ。
と納得の表情を浮かべた。
なんだろう。この頃リリィの私に対する評価がおかしい。
3日前、お茶会から帰宅し、リリィの小言をスルーして大広間のふっかふかのソファーにゴロンと横になっていると本を片手にクリスがやって来た。
クリスは私の顔を見て、「楽しそうだね」と微笑みながら一言そう言った。
それから2人にソフィア=フランシスという家の門番をしているシウォルさんの美人な娘さんと友達になったこと、その子と遊ぶ約束をしたこと、お茶会にいた貴族達にヒジョーにイライラしたことなど話して聞かせると、クリスには声を立てて笑われ、リリィにはため息を吐かれたのを覚えている。
「じゃあそろそろ行こっかなー」
「もう行くのですか?」
「うん! ソフィアの家隣街だから今から行かないと約束の時間に間に合わないから」
「……まさかと思いますが歩いて行くつもりだったりします?」
笑顔で聞いてきた。
「えとー……うん」
リリィの笑顔がピシリと固まった。
「お嬢様、馬車という交通手段があること存じてますか?」
「あ、ああー! その手があったか!」
「どうしてですかね? 私今お嬢様の口から『出掛けるから馬車出して』という言葉が出てきてほしいと切に願うのは」
リリィのため息とともに漏れたその呟きに私は笑って誤魔化すことしか出来なかった。
レンガ造りの2階建ての家の扉に付いているドアノックを3回鳴らした。
あれからリリィを説得して白いワンピースに着替え、馬車に乗り隣街のソフィアの家に無事到着したのだった。
あれ? 遅いなー……居ないのかな?
暫く待っても扉が開く気配はない。
「うるっさい!! 私がどうしようと、あんたには関係ないじゃない!」
そんな声と共に扉がバンッと大きな音を立てて開いた。
いや、さ、遅いなー、とか思ったけどさ、こんな派手なお迎えは想像してなかったなぁー。
と、家から出てきた人物と目が合った。
「あ……」
ソフィアだった。
いや、まぁソフィアしかいないんだけどさ。
「……っ」
ソフィアは一瞬目を見開いた後、気まずそうにサッと私から視線を逸らし、声を掛ける前に走ってどこかに行ってしまった。
「ソフィア!!」
次は男の人が出てきた。
そう、お察しの通りシウォルさんだ。
「え、あ! お嬢様!? どうしてここにー……」
「シウォルさんこそ」
今日って仕事休みなのかな?
「と、取り敢えず狭いですがどうぞ」
そう言ってシウォルさんは家に入るよう促した。
反抗期……私もあったなぁ笑




