生きた心地がしない
「はぁ……悪役令嬢かぁー……」
確かティナ=シーナって主人公がハッピーエンドになると攻略対象たちに主人公をイジメていたことがバレて没落人生スタート。
まぁ、お決まりだよねー。
バットエンドなら、『マリンschool』でとち狂った攻略対象に海に突き落とされてティナ=シーナは海の藻屑となる。
え、どっちも最悪だけど、バットエンドの酷さじゃない!?
何?海の藻屑になるって……!
ってか貴族の娘を海に突き落としちゃダメだろ!
はぁ、『マリンschool』行きたくないなぁー。
もう生きた心地がしない。
「今からプール習いに行こうかな」
そう呟いていると、後ろから「お嬢様」と聞き慣れた声がした。
「え!?リリィ!?」
バッと後ろを振り向くと、私専属の侍女のリリィが扉の前に立っていた。
「い、いつから……?」
「そうですねー……、お嬢様が鏡の前で叫んでいた辺りからですかね。何を叫んでいたかは聞き取れませんでしたが」
それだいぶ前っ!!
居たなら声掛けて!?
でも聞こえてなくって良かった。
結構危ないこと叫んでたからね。
「あ、 リリィ、『マリンschool』の抽選対象から外れるにはどうしたらいいの?」
そもそも『マリンschool』に行かなきゃ主人公がハッピーエンドだろうがバットエンドだろうが関係ないじゃん。
私、頭いいー!!
「……っ」
「リリィ?」
沈黙した侍女を不思議に思い見ると、リリィは少し口を開けて驚いた顔で私を見ていた。
これがアホ面っていうのか。
「ッハ! す、すみません! お嬢様が侍女に意見を求めるなんて今まで絶対にしなかったので、少し驚いてしまいました」
少しか?
と思ったけど黙っておこう。
ってか私、めっちゃ嫌なヤツじゃん。
12歳でそれって……、さすが悪役令嬢。
「それで、『マリンschool』の話でしたよね?」
そう確認するリリィに私はコクリと頷いた。
「えっと、『マリンschool』は自分から応募しなければ抽選の対象にはならないかと」
「本当に!?」
よっしゃー!!
「まさかお嬢様『マリンschool』に応募しないおつもりですか!?」
心の中でガッツポーズをしていると、リリィに「嘘でしょ!?」的な顔で聞かれた。
「え、うん」
ダメなの?