春の収穫祭-5-
ほのぼのです。
「で、どうして剣を向けられた時に逃げなかったの?」
くるりと方向転換をして私と向かい合った彼が青色の目を細めてそう言った。
顔が整って、金髪で青い目とかこの人容姿完璧じゃないっすか! 横に並んじゃいけないやつじゃん。
「いやぁー……それがそのぉー……足に少々コードが引っかかってしまってー……」
待って、改めてみると私ドジだな。
自分の不甲斐なさを再確認しながらそう小さい声で言うと、彼は最初「は?」と首を傾げていたものの、私の足に絡まったコードを見るなり「クッ……!」と吹き出した。
「フフッ……アハハハ!」
盛大に、でもどこか上品に笑い声を上げた彼は暫く笑い続けて全く話にならなかった。
イケメンって爆笑していてもカッコイイから罪だよねー……。
「ふぅー……ごめんごめん、でも久しぶりにこんなに笑ったよ」
ソレハヨカッタ。
笑いすぎて出た涙を拭いながら遠くをみている私に気付きそう謝りながら私の足に絡まったコードを解き始めた。
「ところで君の名前は?」
あ、そう言えば言ってなかったっけ。
「えっと、改めましてティナです。さっきはありがとう!」
「ティナね、俺はウィル。こちらこそありがとう。こんなにワクワクしたのは久しぶりだ」
白マント……ウィルはそう言って楽しそうに笑った。
ハハハ、私は胃がキリキリしたけどね。
「ティナは1人で祭りに? ……あ、解けた」
「おおー! ありがとー!!」
自分の足からコードの感触が消え、私は足をぷらぷらとさせた。
「うん! 1人で来たー……あぁーー!!」
重要な事に気が付いた。
「どうしたの?」
突然叫んだ私に大して驚いた様子もなく、ウィルはそう尋ねた。
「どうしよう! 私、あの優しそうな男の人に道を聞くのが目的だったのにそれ完全に忘れてた!! どうしよう!? 私、迷子決定だよ!」
やっちゃった……今からでも追いかけたら間に合うかな?
「案内しようか?」
「え?」
「俺が案内しようか?」
「ほ、本当に!? いいの!?」
え、聞き間違えじゃないよね……!?
「いいよ。どうせ街をブラブラしていただけだしね」
そう言って微笑んだウィルに私は心を込めてお礼を言ったのは言うまでもない。
「どこに行きたいの?」
2人で路地を出、人混みに流されそうになりながらウィルは私にそう尋ねた。
「えっとねー、金魚すくいが出来る所に行きたい」
そう言えば首を傾げられた。
そりゃそうか。
それから私は歩きながら、熱を出し苦しんでいるクリスを金魚をたくさん取って喜ばせようと思っていることをウィルに話した。
「…なるほど。ティナは弟思いだね。」
そ、そんなに褒められたちゃー恥ずかしいじゃんー!
「いや、そんなに恥ずかしがらなくてもいいかな?」
「え、あれ? 声に出てた!?」
「うん。バッチリ出てたよ」
「うそぉー!?」
全く自覚してなかった。
無自覚って怖いね。
「うん。俺はティナが怖いよ」
……あれ?
〜おまけ〜
ティ『ね、まさかだけど、あの路地に居た時も心の声、出てた?』
ウ『いや、出てなかったよ。でもその代わり行動に出てたかな』
ティ『行動に!?』
ウ『面白かったよ』
ティ『う、嬉しくないー!!』