春の収穫祭-3-
「準備はいい?」
その問に私は白いマントの彼ーー長いから白マントでいいやーーが立てた計画を頭の中で反復しながらコクンと頷いた。
「……」
「……」
静寂が訪れた。
ドキドキと心臓がうるさい。
あぁもう! やるならさっさとひと思いにやっちゃって!?
こう、待たされるのが一番緊張するんだよぉー!!
と、内心愚痴りながら、緊張を解すため深呼吸を繰り返していると、その時がきた。
「きた、今だ」
小さな合図とともに背中をトンと押され、私は足音をたてぬようにしながら、かつダッシュで目的地の看板へと向かった。
コケそうになりながら看板の後ろに滑り込み、看板から少しだけ顔を出し、顔が見える距離にいるあの3人組を見た。
「おっまえ! さっさと手、離しやがれ!!」
「しつけーなぁ!!」
「早く渡せよ!!」
うん。バレてなさそうだ。
ホッと息を吐きながら、振り返って白マントの方を向き、指で丸を作ってみせた。
それに気付いた彼は頷き、目をスッと細め、3人組のほうを見て手を叩いてパンッと大きい音を出し、サッと壁の後ろに隠れた。
うわー、すっごいいい音したなー……あれは痛い。
なんてどうでもいいことを思っていると、作戦通り路地にいる3人組の男がバッと同時に白マントがいた所を見た。
「なんだ!? 今の」
「お前見てこいよ」
「はぁ? お前が行けばいいじゃねーか」
「嫌だよ、サツかもしんねぇーじゃん。俺、まだ捕まりたくねーよ」
「んなの俺も一緒だっつの!」
「どっちでもいいけど、早く行けよ」
「「お前もな」」
「え、何勝手にお前行かないことになってんの?」
「何リーダーきどってんの?」
「い、いいじゃねーかよ! 一回これ言ってみたかったんだよ!」
早く行けよ。
思わずそうツッコンでしまいそうになったのは私だけじゃないはず。
と、そんなこと思ってる場合じゃなかった。
あの3人組があの場から離れないから作戦二に移らないと。
そう思いスクっとその場を立った。
普通ならここで「誰だお前!」的な反応があるはずだが、実際のところあの3人組は言い合いに夢中で私の存在に全く気付いていない。
気付いているのはお財布をずっと自分の胸に抱え込んでいる優しそうな男の人ぐらいだろう。
私は白マントが言ってた通りだな。と思いながら男の人に向って『隙を作るから逃げて』とジェスチャーで伝えた。
え? ジェスチャーでそんなことが伝わるのかって?
フッフッフッ、実は私、こう見えてジェスチャー得意なんですよ。こう見えて。
あ、伝わったみたいだ。
すっごい不安そうな顔でコッチ見てるけど。
なんくるない。なんくるない。
私に全てを任せなさい。
そう胸を張っていると余計に不安そうな顔で見られた。
なんで!?
とにかく、これで作戦の用意は整った。
あとは、やるだけだ。
再び看板の裏に隠れながら、よし! と気合いを入れた。
長くなりそうなので、ここで一旦きります!