春の収穫祭-2-
「それ、俺にも協力させてくれない?」
路地にいる男3人組に狙いを定め、ペットボトルのフタを開ける準備をしていると、突然後ろから声を掛けられた。
「ひょお!?」
驚き過ぎて、今まで出したことのないような声が出た。
バッと振り返るとそこには白いマントを着た、私と同じぐいの背の男の子が立っていた。
「しぃー……」
男の子はそう言って私の口に人差し指をあてた。
いや、誰のせいだよ。
と言いたかったが、実際路地に居る3人組にバレてはマズイので黙って睨むだけにしておいた。
クスクスと笑われたけどね。
確信犯だろっ!!
「それで、ホントに協力する気?」
気を取り直して、小さい声でそう問うた。
「うん。それ、あの路地にいる3人組にかけるんでしょ?」
「うん。あの男の人が逃げる隙を作ることしか出来ないだろうけど」
炭酸ジュースごときであの3人組が尻尾巻いて逃げるなんて、よほどの潔癖症じゃない限りありえない。
「じゃあ、その逃げる隙を俺が長くするよ」
「そんなこと出来るの!?」
「うん。要は、その炭酸ジュースをあの男の人にかからないようにしつつ、あの3人組に直撃できるようにすればいいんでしょ?」
サラッと涼しい顔でそんな事を言った。
いや、うん、それが1番難しい気がするんだけどなっ。
「ここからでも……?」
ここから路地にいる3人組の場所まで結構距離あると思うんだけどー……。
「無理かな」
「……へ?」
即答でそう答えた彼に私は開いた口が塞がらなくなった。
「でもそうだなぁー……あの辺から狙えば成功すると思うよ」
そう言って彼が指さした先は、路地にいる3人組の近くにある壊れた大きな看板だった。
「ち、近すぎない!?あそこはさすがにヤバイんじゃぁー……」
「そうだね。もしかしたらバレてあの男の人よりも先に顔に痣をつけることになるかもね」
そこまで言うと、どうする?
と試すような目で私を見てきた。
……クッソぉー!!
「っ行こう!」
そんなの行くしかないじゃんかよぉー!
殴られるのは嫌だけど、あの男の人があの3人組に殴られるところを見てるだけの方が嫌だ!!
殴られるなら一緒に殴られようぜっ! コンチキショー!!
そう心の中で叫んでいる頃にはもはや誰に文句を言っているのか自分でもよく分からなくなっていた。
「じゃあ、俺が合図を出すから音を出さないようにあの看板まで走って」
私の百面相を見てクスクスと笑いながらそう指示を出す隣に立つ彼に、私は路地にいるあの3人組よりも先にこの手の中にある炭酸ジュースをぶっかけてやろうかと本気で悩んだのだった。
もう少し春の収穫祭が続く予定です!