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Normal   作者: 齋藤
1/1

普通の裏側

右手に包丁、左手に鉈。計り知れない「狂気」を宿した異形のものが近づいてくる。

…このままでは殺られる。何としても生きなければ。だが意思とは裏腹に足は動かない。

…もう終わりだ。俺は「こいつ」に殺られる。…しかし、不意に心にとある感情がよぎった。…殺られる前に殺ればいいと…


ジリリリリリリリリリ。耳に不快な金属音が飛び込んできた。手探りで音の出る根本の電源を切る。針は6時19分。まだ寝られるが、今日は部活だ。俺は布団からゆっくりと出た。


リビングへ行くと、父がコーヒーを啜っていた。「おはよう」父に挨拶をすると、「おう」という曖昧な返事が戻ってきた。そして、興味を失ったかのように、俺は風呂場へ行った。

俺は朝に浴びるシャワーが好きだ。目も覚めるし、何より、髪型が整えやすい。そして、ゆっくり風呂場の扉を開けた。同時に、カビ臭い臭いが鼻に飛び込んできた。いつものことなので気にせず、風呂場の椅子に座った。

キュッ。水の栓を捻る音が風呂場に響いた。そして、ゆっくりと頭を洗う。父が薄毛のせいか、俺も髪が若干薄い。…中学生2年なのにだ。自分の毛髪量に嫌悪感を感じながら、俺は頭を力いっぱい洗った。

時計に目を移すと、6時31分だった。50分には家を出るので、急いで頭を乾かし、リビングへ向かった。

朝飯は基本的には食べない。理由は、腹が痛くなるからだ。そして、俺は体育着を着て、その上からワイシャツを着て、制服のズボンをはいた。

もたもたしていたら、もう時間だ。急いで学ランを羽織り、ヨネックス製の軟式テニスラケットを肩に下げ、鍵を持ったことを確認し、家を出た。


家の扉を開けた瞬間、また一日が始まるという倦怠感が頭をよぎった。ため息が出るのをこらえながら、一歩、重い足を踏み出した。

通学路は、一面畑。夏場は水が撒かれているので涼しくていいが、冬は空気が乾燥しているので、砂埃の量が尋常じゃなかった。道端に山積みになった雑草と、鎌が置いてあった。しかし、寝起きで頭が回らないので、無視した。通学路にある川は、あいかわらず酷い臭いだった。小さい頃は、よく入っていたが、今は入る気も起きないし、考える気も起きない。あぁ、退屈だ。

そんなことを考えていたら、学校の校舎が見えてきた。今日もあの「監獄」に閉じ込められるのか。グラウンドでは、サッカー部の朝から聞くにはやかましすぎる声が響いていた。

昇降口には入り、靴を脱ぐ。かかとが潰れている。そろそろ新しい靴を買わなきゃな、そう思いながら靴を下駄箱に突っ込む。そして、上履きにつま先を入れた。ふと、肩を叩かれたので、振り向くと、眼鏡をかけた痩せた顔が目に入った。「にゃんぱす〜」謎の言葉が俺に飛びかかった。そして、自分も「にゃんぱす〜」と返した。このやり取りも、いつものことだ。彼の名前は、関内翔平。俺の数少ない友人の一人だ。そして、翔平と共に階段を上がり、教室に入った。教室には、数人しか人がいなかった。制服を脱ぎ、体育着姿になった。そして、テニスラケットを持ち、テニスコートへ向かった。




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