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47話 トランスポーター

 言質を取ったつもりが、逆に言質を取られていたという……

 つまり断れない状況を自分で作ってしまっていた訳だ。ホントにアホかと。

 どのみち3対1で負けて、やる事になるにしても、何か情けない、自分が…

 翌日、指定時間に担当官の元を訪れると、簡単なあいさつの後は一気に作戦の話し合いとなった。

 その場には、何時もの担当官以外に、3名のそれなりの階級の者が居た。

 正直自衛隊の階級には馴染みが無いんで、聞き流した。佐だの尉だの曹だの言われてもピンとこない。

 軍隊じゃ有りませんよ~、と言う体で階級名称を変更したらしいんだが、海外では元の大佐だの軍曹だのに読み替えられているから、対外的には意味が無いって話だ。何だかな~。

 階級は聞き流したんだが、一人だけ階級に『陸』でなく『海』が付く者が居た。海上自衛隊の者らしい。

 立体地図で、兵庫県の海沿いに海上自衛隊の施設がマークされていたから、そこの者なのかも知れない。

 この話し合いは、実質俺達への確認だけで、殆ど流されるままに話が出来ていく。

 まあ、逆に言えば、積極的に反対するような部分が無かったと言う事でも有るんだけどね。

 軽い会話が持ち味(?)の碧も、ほぼ聞き役に回っていた。ただし、目には爛々とした光を溜めた状態で。

 俺の目は、ハイライトが無くなって、どよ~んとしていたかも知れない。良くてネジ目だろう。

 この作戦は、有る程度、細かな所まで作り込んだのだが、結局は『転移してみないと分からない』訳で、例外時の対処方法だけがホワイトボードに列記されていた。

 取りあえず、俺が唯一自己主張したのは、『緊急時、どうしても全員を転移出来ない場合は、身内4人を優先する』と言う事だ。

 この計画は、基本新規の者が対象で、新規の『ユーザー登録』とその者達が経験値を得た後のステータスアップが目的だ。

 つまりほぼ全てが、ダンジョンド素人と言う事だ。魔法やスキルについて体感レベルで無知と言って良い。

 そんな者の中には、状況を理解出来ないが故に俺達の指示に従わない者が出る可能性も有る。

 そんな場合を想定して、『転移』実行タイミングに関しては俺が最大の権限を有し、全滅の危険が有る時には、身内優先でその他は出来る範囲内で、と言う事だ。

 多少ごねられるかとも思ったが、意外にすんなり通ったのは俺的には驚きだった。良いのかよ?

 この疑問は、最後に担当官が発した言葉で氷解する。

「色々と早急で、本来なら有り得ない作戦だが、そうせざるをえない状況なんだ」

「国体云々どころでは無い、人類存亡等と言う映画かSF小説に出て来るような言葉が現実として飛び交っている」

「君達民間人にまで、作戦参加を要請する事態になって非常に心苦しいが、こちらの転移持ちだけで作戦が実行出来るようになるまでの間、お願いする」

 …どうやら、本当に切羽詰まった状況のようだ。多分、俺達に伝わってきてない所で、致命的な状況が発生しているのかも知れない。

 その致命的な状況が、日本国内で無い事を祈りたい。

 『国体』か、確か、歴史で習ったな。ポツダム宣言あたりだっけ? 『国体の護持』とかってヤツ。

 あの時の『国体』は天皇制がメインだったはず。でも今の『国体』は普通に政治的国の形で良いんだよな? 中卒だからチョット自信が無い。

 今の自衛隊が、「天皇制をトップに置いた政治形態を…」なんて言うはずも無いし、多分間違ってないはず。

 中卒男に難しい言葉は使わないで欲しいよ、全く。

 何にせよ、この異常なまでの早い作戦の決定と作戦の実行、その理由が官僚達が、官僚的行動すら出来ない程の状況だったと言う事なのだろう。

 最悪の状況だ。だが、最悪の状況で尚、最悪の行動を取らないだけまだマシだとも言える。

 バカが、最後の最後までバカな事をして国が滅びたなんて幾らでも有る話だ。

 そこまでバカでは無かったって事だ。今はその事だけでも感謝しよう。……『良いとこ探し』ってヤツだな。

 担当官の所を出た後、俺達は一旦宿舎へと帰った。そして、休憩室に(たむろ)していた畑山氏を捕まえる。

「畑山さん、作戦手伝って」

 突然言われて、目を白黒させる畑山氏。ま、そうなるわな。

「……また、転移か? でも、君らもう自分たちで転移出来るはずだろう?」

「今度、自衛隊をユーザー登録する作戦が決まったの。で、(うち)のお兄ーだけだと1日1回でしょ。で、畑山さんにも頼もーって事なの」

 碧の話を聞いて、周りに居た多の『冒険者』達もざわつき始めた。

「一応、自衛隊の転移持ちも参加してくれる予定なんですが、向こうの転移持ちは他にも色々任務を持っているみたいで、余り数が出せないみたいなんです」

 俺も、少し碧のフォローをしておく。

「畑山さんが参加する時には、自衛隊は6人ぐらいに成ると思います。基本、ヤバゲだったら即転移で逃げますから、前回と同じですよ」

「と言う事で、よろしく~♪」

「……えっと、決定事項?」

「私的には!」

 満面の笑みで、良く分からない断言をする碧を、畑山氏は困った顔で見てから俺に視線を移した。

「引き受けてくれば有りがたいんですが、無理なら結構です。ただ、正直、こんな作戦をしなくちゃ成らない程度にはヤバい状況になっているって事は認識しておいてください」

 俺は、一応、この作戦を提案してから、決定されるまでの流れを全て話した。

 全部を語り終わると、周囲からもうめき声や、大きく息を吐く音が聞こえる。

「民間から提案された作戦を、1時間と掛からず実行を決めて、翌日には実行するだと? 有り得ねーだろー」

「こりゃー、坊主が言うように、余所でかなりヤバい状況になってる可能性が高いな…」

「マジか」

「彼の、自分たち優先って件が認められたって事は、自衛隊員の身の危険を無視しても戦力が欲しいって事よね」

「いよいよもってヤバいって事だな」

 皆も俺と同様に危機感を感じたようだ。

 この中で、唯一危機感を感じていないのが、俺の身内って事がチョット悲しいけどね…

「んじゃあ、俺も協力するか。ポイントは消しちまったが、一度連れて行ってもらえれば問題無い。まあ、しばらくは連携の問題で、代わりにって訳にはいかねーが、慣れれば大丈夫だろう」

 どうやら、近藤のおっさんも協力してくれるようだ。おっさんはレベル60帯以上で活動していたみたいだから、しばらく俺達込みでやっていれば、俺と入れ替われるようになるだろう。

 出来るだけ、こっちの人員は少なくして、その分自衛隊を多く運びたいからな。

 本来なら、別のグループを形成出来れば一番良いんだが、聞いた所、やはり俺達のレベルが突出して居るみたいだ。

 次が近藤のおっさんで、それ以外の大半がレベル50帯で活動している者らしい。とてもでは無いが、もう1チームは作れそうに無い。

 自衛隊も、レベルは高いし魔法やスキルの数も豊富なんだけど、パラメーターが極端に低い者が大半らしいので、短時間に多くの行動を求められる様な作戦には向かない。

 なんと言っても、今回の作戦は、ウォール系魔法などの実質的な発動速度が関わって来るからね。

「近藤さんの件は、自衛隊側と話してみます。取りあえずは今日の昼過ぎにやってみて、それ次第ですから」

「分かった。頼むわ」

 先ずは、今日の午後2時に実施する、1回目の作戦が成功するかどうかだ。仮に失敗しても、次に対処出来る様な問題で有れば言い。

 一番マズいのは、根本的に解決が出来ない様な問題が発生した場合だ。その場合は、完全にこの作戦は頓挫する事に成る。

「で、畑山さんは、どうする?」

「……やらないって訳にはいかなそうだね。分かったよ、やるよ」

 碧のだめ押しの確認で、畑山氏はため息を付きつつ参加する事を決めてくれた。

 まあ、これだけの雰囲気を作られちゃ、イヤだとは言えないよな。そんなつもりは無かったけど、完全に搦め手だった。ごめん。でも俺も似たような立場だから。

 その後、この場に居た真島と言う29歳の『転移』持ちも参加する事を約束してくれた。彼も近藤のおっさんと同じ様に、ポイント取りからだ。

「んじぁ、私達午後の準備が有るからこれで~」

 俺は、近藤のおっさんと、真島氏に「その際はよろしくお願いします」とだけ言って、2階の自室へと帰った。

 自室では、念のため前回よりも多めのポーションを準備する。今回は、自分達だけでは無いので、彼らの分も必要だからだ。

 身につけているベルトのホルダーは数が限られている。だから、その範囲内で選択する必要がある。

 たいていの事は、デボの治療系魔法で何とか成るのだが、同時に複数がダメージを被り、かつ状態異常まで受けた場合など、どうしてもデボだけでは対処が追い付かない可能性も有る。

 そんな時の為に、ポーション類は必須だ。

 色々な状況を想定して、持っていくポーションを選んでいると、碧がノックも無く入って来た。

「お兄ー、まだ準備終わってないの? 遅すぎ!」

 そんな事を言う碧の腰を見ると、普段と同じポーションがそのまま入れられている。やっぱり何も考えてないな。

「まだ時間はあるだろ? 顔合わせやらブリーフィングも11時からだ」

 その後碧も交えて、ポーションの選択を再考し、持ち替えさせた。

 そして、全員の装備を細かな所までチェックしていく。やるべき事をやっておいてこそ、安心してそれらを使えるってものだ。この辺りは絶対に手はぬかない。俺()

「転移結晶が使えたたら良いのにね」

 装備確認中、唐突に碧がそんな事を言い出した。

 『転移結晶』は以前言ったとおり帰還限定の転移アイテムだ。ダンジョン内から水晶柱の前に、使用者だけを1回だけ転移出来る。

 『大氾濫』後、地上で魔法が使用できることに気がつき、『転移』を試した為『大阪ダンジョン』の転移ポイントを消してしまった事に気づいて慌てた俺は、『転移結晶』で『大阪ダンジョン』入り口へ転移しそこのポイントを取り直そうとした。

 だが、転移出来なかった。全く発動してくれなかったんだ。

 他のアイテムが全て動作している中で、何故か『転移結晶』のみが動作しなかった。

 当然理由は不明だ。だが、一つの仮説は出来た。

 それは、転移ポイントの水晶柱が複数有る事で選択不可能状態になっているのでは無いかと言う事だ。

 今までは、1つのダンジョンに水晶柱は1つだった。だから、その水晶柱が転移ポイントとして使用された。

 だが、現在は、地上全体がダンジョンに近い状態になっており、そこに複数の水晶柱が存在している事になる。世界中で665個の水晶柱がある訳だ。

 通常なら、最短距離のモノを選択しそうだが、元々そう言った機能が必要無い品だった為、そう言った形での選択が出来ないのではないかと言う事だ。

 実は、これは携帯電話でもあった話だ。東京などの高層ビルの上に上がった際、余りにも多くの基地局に強い電波状況で繋がる為、それらを選択出来ずに結果として通話不能に成っていた時期がある。

 それと同じ状況では無いかと俺達は考えた。これが正しいかどうかは分からない。間違いないのは、現実に地上では使用出来ないと言う事だけだ。

 ちなみに、もう一つ仮説がある。それは、ダンジョン1つが1つの異世界で有って、その異世界間ではマジックアイテムは使用出来ないと言う考えだった。

 当時はこの考えの方が正しい気がした。この地上という世界からは、各ダンジョンの水晶柱は見えないと言う理屈なら、『転移結晶』が使えない理屈にどんぴしゃだ。

 だがこれは、昨日俺達が地上から転移出来た事でその理論の半分が崩壊してしまった。アイテムでは無いが、魔法で転移出来たのだから。

 そんな訳で、結局何故使えないのかは不明のままだ。

「転移結晶か… あれは、使えたとしても、1人1個だからな。俺らもストックは30個も無いだろ? 専用ダンジョンを持ってた俺達ですらこれだぞ、他の冒険者はもっと少ないはずだ」

「…そっか、行きだけでも使えれば、1日に1回多く転移出来ると思ったんだよ。どのみち使えないんだけど」

 確かに、日に日に高レベルモンスターが出て来るという現状では、一日でも早いうちに、多くの者を水晶柱の前に運ぶ必要がある。

 遅くなればなるほど、作戦が実行出来なくなる可能性が高いからだ。

 まあ、使えないものの事を考えても仕方ない。出来る方法で何とかするしか無い訳だ。

 一通り準備が終わった段階で、時間的にはかなり早いが俺達は駐屯地へと向かった。

 受付で、時間まで2階の立体地図の部屋に居る旨を伝えて、俺達は昨日来た部屋へと向かった。

 その際、数名の自衛官が先に居たので、黙礼だけをしておく。

 そして、地図やホワイトボードを見ると、多少の変化が有った様だ。

 特に、昨日には予定されていた、ダンジョン入り口周辺への攻撃が中止され、航空戦力による掃討と、ダンジョン入り口を除く周囲への砲撃に変わっていた。

 水晶柱を壊しては、俺達の作戦に支障が出るからだろう。

「パイロ・キャタピラーとかブラック・ワームがたくさん居れば、炸裂弾Ⅱが作れるのに… 炸裂弾Ⅰじゃ弱すぎるよね」

 ホワイトボードを見ていた碧が不満げに呟いた。

 八岐大蛇擬きを殺した時使った『炸裂弾Ⅱ』だが、当然その下位の『炸裂弾Ⅰ』が有る。だが、残念な事に、思いっきり中途半端な品で、ダンジョンでも使えないわ、地上での攻撃にも使えないと言う代物だ。

 爆発力は、破片手榴弾程度で、爆発自体は大したことはない。ただ、やたらと煙が出る。

 錬成が出来た時、喜び勇んで使用したら、ダンジョン内が真っ黒い煙で何も見えなくなってしまった。それ以来使用していない。

 その後の『炸裂弾Ⅱ』は煙は無いが、今度は威力がありすぎてダンジョンでは殆ど使えなかったという問題有り品だった。

 それでもⅡは、恐竜型モンスターが居たホールや、八岐大蛇擬きで使えたのだからまだマシだ。

「Ⅰは駄目だな。材料はレベル20帯のモンスターだから今でも多少は手に入ると思うけど、威力が弱すぎ。煙幕弾として使った方が良い位だ」

「だよねー」

 仮にこの地上に、高レベルモンスターなどが溢れかえるようになれば、レベル50台のパイロ・キャタピラーなどはいくらでも狩れる状態になるだろう。

 だが、その状態は事実上の人間社会の壊滅を意味している訳だ。

 爆撃用の武器を大量に入手出来る状態になっている頃には、爆撃じたいが出来ない状況になっているって事だ。無慈悲だな…

 結局最善は、現在保有する弾薬が尽きる前に、より多くの『冒険者』を作る事だ。

 出来れば、ストーム系の全体魔法を修得出来るレベル16までに出来れば、十分な戦力に成ると思う。

 今回の作戦も、それを目標としている。

 まあ、俺達は水晶柱へのトランスポーター兼その際の護衛だけなんだけどね。

 自衛隊自体の経験値稼ぎは問題無い。包囲網での戦闘でいくらでも稼げる。現状の、ユーザー登録していない状態での戦闘がもったいないぐらいだ。

 一応、ユーザー登録が終了したものは、多くの経験値が稼げるような部隊に回される事になっている。

 爆撃砲だろうが、ヘリからの機関砲掃射だろうが、ミサイル発射ボタンポチッとなだろうが、それによってモンスターが死ねばそれを実行したものに経験値が入る。

 モンスターの数が多いだけに、経験値が溜まるのもあっと言う間だろう。

 その辺りの確認は、既にD徽章(きしょう)者達が確認済みだそうだ。

 そんな感じで、その場で時間を潰していると、時間前だが迎えが来た。

 とは言え、移動したのは同階の2つ離れた部屋だ。

 部屋に入ると、20人程の若い隊員が集まっていた。

「多すぎない?」

 俺もそう思った。1回で連れて行けるのは多分7人が限界だ。体格の良い者が多ければ6人以下になる可能性も有る。

 それから考えれば、3回から4回分の人間が集まっていると言う事に成る。

「ここに居る者は、今後の者も集まっている。無駄なブリーフィングを何度もせんで良いように現時点で集まれる者は全て集めた」

 奥に居た何時もの担当官が碧の呟きに気づいて、理由の説明をしてくれた。

 ここの施設に来て思ったんだが、自衛隊ってやっぱり他と違うんだよ。

 普通、こんな感じで集まってたら、実際に会議なり何なりが始まる寸前まで、ピーチクパーチクおしゃべりをしているのが普通だが、全く私語が無い。

 もちろん、こんな場以外では普通に喋っているが、プライベート外の所ではホントに無駄話をしないんだよな。

 これって、普段からそうなんだろうか? 今が実質戦時で有るせいでこう成ってるんだろうか?

 仮に、後者であったにせよ、それが出来る事が凄いんだけどね。自分たちの学生時代の事を思い出すと…… とてもでは無いが無理だと思える。これだけでも尊敬に値すると思う。

 とは言っても、あの三佐だっけ? あんな人も居るから、一括りには出来ないか。

「少し時間は早いが、全員集まったようだから始めよう」

 担当官が、そう切り出すと、俺達は前の席に担当官と並んで、他の隊員達の方を向いて座らされた。

 ……非常に恥ずかしい。

 デボとぺんぺんも、机の上にちょこんと乗っている。やはり、半数以上の隊員の目線はデボとぺんぺんに向いている。

 だが、その目には、好奇心はあれど侮蔑の表情は無い。有る意味アノ三佐のおかげだろう。ありがとう三佐。貴方の尊い犠牲は役立ってます。

 そんな記者会見のような状態で、ブリーフィングが実施された。

 それは、実際に行われる事の細かな説明だ。

 どういった体勢で転移を行い、その後どうするか、どういった場合にはどう対処するかを細かく説明していく。

 そして、途中途中に質問タイムを設け、それに対して俺ないし担当官が答えるというものだ。

 俺達自身が実施するウォールによる壁の作り方も詳細に説明する。

 今回は、最終的には4重の壁を作る予定だ。今回は俺達は水晶柱でパラメーター操作をする必要が無いから、その時間に壁の増強が出来る。

 一通り、細かな部分までの話が終わった頃には、既に1時間近くが経過していた。

 結構時間が掛かったのは、彼ら自身が全くの素人で、ユーザー登録関連の事まで説明とアドバイスを求められたからだ。

 そんな訳で、一旦、昼食をはさみその後は簡単なフォーメーションの練習を実施する。

 ちなみに、昼食は彼らと同じ食堂で食べた。量が少し違うだけで、宿舎の物と同じだった。

 昼食後のフォーメーション訓練は、『転移』実施時の隊形を実際に取ってみて、その上で転移時、近くにモンスターがいた際の対処方法を考えられるだけの例を想定して試していく。

 事が自分たちの命に直結する事なので、全員マジメに訓練を実施している。

 学校の避難訓練程度しか、この手の訓練の経験が無い俺と碧は多少引き気味でその訓練を続けた。

 だってさ、いい大人が、アサルトライフル構えて「バババババン」とか口で言って見えない敵を討つマネを延々やるんだよ。しかも超まじめな顔で… 引くぞ。

 12時半から1時半までの1時間をこの訓練に使い、後の30分は各自の準備となった。

 俺と碧は、地味に疲れた身体を休めると共に、用足しを終えて、早い時間から作戦を待った。

 俺は、やはり他人の命を預かる事にそれなりの緊張感を感じているのだが、碧はもちろんぺんぺんもデボも平常運転だ。

 緊張している感じが全く無い。ぺんぺんに至っては、目の前を飛んでいたモンシロチョウらしいモノを追いかけて遊んでいる。

 外見からすると、普通の事なのだが、日常を知っている身からすれば、『鋼の心臓かよ』としか思えない。

 羨ましいやら、怖いやら…

 そうこうしている間に直ぐに時間が経ち、転移する7人全員も集まった。

 それ以外にも、他の日に実施する者達と、更に何故か今回の事に何も関係ない者達30人以上も集まってきた。仕事は良いのかよ?おい。

 明らかに仕事がある中で、これだけの者が集まるって事は、それだけこの作戦が期待されてるって事なんだろう。

 裏返せば、それだけ現状がマズいって事なのかも知れない。

 そんな、多くの期待を背負って、俺達は時間と共に『転移』を実施した。

 取りあえず、7人で試したのだが、問題無く『転移』は発動した。

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