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42話 接触編は無いけど発動編

 昨日は、芸能人2人を、図らずも助けてしまった訳だが、あの後1時間半程表層部の間引きをやってから帰った。

 その頃には、映画関係者はもちろん、他の『冒険者』達もほとんど居なかった。計算通りだ。

 そして、受付嬢達から色々聞かれないうちに手続きだけ済ますと、とっとと家へと帰った。夕方には着いたよ。予定外も良い所だ。

 で本日、あの後どう成ったかを知る為にニュースを見ていたんだが、世界中のダンジョンでモンスター増加が発生しているのは間違いないらしい。

 無論、国内の他の4ヶ所も同様で、自衛隊による閉鎖が行われていた。

 そう、本日付で、日本のダンジョンは一時閉鎖になったんだよ。ま、しょうが無いか。

 一応、状況が回復するか、固定されるまで様子を見るらしい。

 元の状態に戻る可能性と、現在の状況が標準になる可能性と、更に多くのモンスターが発生する可能性を考慮しているらしい。

 しばらくは、完全に様子見する以外無い訳だ。

 で、ついでに、昨日の2人の事も確認してみた。なんで無事で居たかとか疑問点があったからね。

 結論としては、昼に放送されたワイドショー系番組によれば、女優が初期修得した『惑いの歌』と言うスキルを使用して会敵したモンスターをなんとか回避したらしい。

 『惑いの歌』はデボの『超音波』などと同様に状態異常を与えるスキルの人間版だ。

 スキル名で分かる様に、歌の形で発動し、混乱の状態異常を与えるのだが、よくまあ、レベル60のモンスターにレジスとされずに済んだよな。半端な確率じゃ無いぞ。

 この種の状態異常スキルや魔法は、使用する側の『知力値』が関わって来るだけで無く、対象の『知力値』も関わって来る。

 つまり、相手の『知力値』が高いとレジスとされる確率が高いって事だ。彼女はあの時点でレベル1だった訳だが、相手はレベル60台のグリフォン…

 それ以外にも、アノ行き止まりに行くまでには、擬態で隠れていたオクトパス・スライムも居たはずだ。それすら回避したって…どんだけリアルラックが高いんだよ。

 普通死んでて当たり前なんだよ。生きてる訳無いんだよ。普段ですら生き残れないのに、今回の様なモンスターの大増殖状態で生き残れるって、どんな守護霊が付いてるんだよ。百太郎さんか?

 そんな感じで、理不尽を感じながら見てたんだけど、彼らは俺達との約束は守った様で、助けた者(俺達)の事に付いては一切喋らなかった。

 転移後、入り口に移動するまでの移動中、口が酸っぱくなる程言い聞かせたんだが、正直男優の方は信用していなかったんだよね。

 典型的な、元アイドルって感じで、怯えてビクビクしているくせに、言葉の端々に尊大さがチラ見えるタイプだった。

 「俺達を助けたって成れば、有名に…」「テレビで、君らの事を言ってやるよ…」「事務所から礼金ぐらいは…」と、まあこんな感じだ。

 女優の方はマトモだった。礼金に関しても、男優と違って、自分が出す前提で「お礼をしたいんですが…」と言ってきたしね。断ったよ、面倒なんで。

 しかし、この子…なんとかマナ? この子は変わってる。いくら本格的にダンジョンに潜る気が無いにしても、初期修得で『惑いの歌』なんて言う状態異常系スキルなんか取るか?普通…

 でも、そのおかげで生き残れた訳だから、結果オーライってヤツなんだろうけどさ。変わってるのは間違いない。

 ちなみに男優…覚える気が無いんで知らない…男優で十分だな、この男優は、『ファイアー・ボール』を初期修得していたそうだ。

 言うまでも無く、全く使用出来なかったらしい。まあ、グリフォン相手なら、どうせ効果は微妙だから使わなかったのは正解では有るんだけど、『使わなかった』と『使えなかった』は全く意味が違うからな。

 この男優は、間違いなく『使えなかった』だろう。

 この男優がヘタレなのは間違いないが、だからといって責めるのは無理だ。

 ダンジョンに初めて入ったその日に、レベル1でレベル60帯へ放り込まれれば誰でもまともな対応は出来ないよな。俺も無理だったと思う。

 その点についてはしょうが無い。

 だから、チビってた事は指摘せずにスルーした。俺()配慮が出来る人間なんだよ。俺()

 誰かさんが、俺の配慮を台無しにしてくれたけどね…


 ダンジョン内のモンスの数が異常に増えて、一週間が経過した。

 その間、状況は全く変わらなかった。つまり、以前の約4倍の密度のままだと言う事だ。

 その調査結果を経て、『ダンジョン管理機構』や『冒険者』達からダンジョンの解放を求める声が出始めた。

 碧もその一人で、政府のメールアドレスにその旨のメールを送ったらしい。

 世界レベルでも、閉鎖を行った所は少なく、逆に更なる『冒険者』を動員した国すら有った。

 日本の閉鎖措置はかなり保守的だが、ダンジョンの一般開放自体が世界で一番遅かった位なので、一貫性はあると言える。

 ダンジョンに関わる者に取っては慌ただしい日々だったが、一般人にとっては当初は不安を感じていたが、モンスターの数があれ以上増えていない事が分かると、何時も通りの無関心へと戻っていった。

 俺と碧は、漠然とした不安を抱えてはいたが、大丈夫と思っていた。いや、大丈夫だと思い込もうとしていた。

 だが、また、変化が起こった。

 ダンジョンの発生だ。4回目の発生と言う事に成る。

 今回は、初めて日本には発生しなかった。アメリカは今回も1つ増えた為、計6個で世界最多のダンジョン保有数を維持する事になった。

 そして、今まで一度もダンジョンが発生しなかった、某半島南国家にも今回3個のダンジョンが発生した。

 そのダンジョンは某国の首都中央部に1つ、首都外苑部に1つ、半島南部に1つが発生し、ダンジョン対策部隊が組織されていなかった事もあり、50人近くの死者を出す大惨事となった。

 また、同様の事は他の国でも発生しており、特に初めてダンジョンが発生した国の被害が大きかった。

 以前からダンジョンが有った国も、今回は少し多めの被害を出している。理由は、ダンジョン内のモンスター密度が以前より遙かに高い状態でダンジョンが発生したからだ。

 ダンジョン発生からの一週間は、各国共にかなりの騒ぎとなっていた。

 今回ダンジョンの発生しなかった日本も、間接的にはこの騒ぎの影響を被っている。

 特に大きな混乱をきたしたのは、航空会社と旅行代理店だった。

 レベル3の渡航中止勧告が出された所が何カ所か有り、それに伴うキャンセルが大量に発生した為だ。

 特に、二昔前に比べればかなり減った某半島南国家への旅行者だが、未だにある程度の数がおり、それが全てキャンセルとなった為全体としての数を多くしてしまった。

 この間の業者の損失はかなりの額となっている。世界規模での損失は甚大だった。魔石を使用している企業については、今のところはストックが有る様で大丈夫の様だが、閉鎖が長期化すると生産に支障を来すだろう。

 そして今回の件は、経済だけで無く人々の心にも暗い影を落としている。

 今回のダンジョン発生騒動は、今までの発生スパンよりかなり短いものだった為、次の発生に不安を感じる者が増えて来ているのだ。

 何時、どこに発生するか分からないと言う事は、対処のしようが無い。それ故に、ストレスから体調を崩す者も増え始めていた。

 そして、体調を崩すにまで至らないにしても、大半の者が漠然とした不安を抱えながら過ごす事になった。

 そんな中、『ダンジョン管理機構』が今回増加した分の正確な数を発表した。その数153ヶ所だ。

 よって、現在のダンジョン総数は664ヶ所となる。世界の国の数は200に満たないので、国の数で割っても1国に3ヶ所有る計算になる。

 日本は5ヶ所なので、平均より2個多い事になる。…(うち)のダンジョンが残ってれば6ヶ所でアメリカと同じだったんだけどね。

「ど~せ、増えるなら、また(うち)に出てくれれば良いのに」

 ニュースを見ながら碧は、あれ以来10回以上言っているセリフをまた口にした。

 そうで有れば有りがたいのは確かだけど、突然発生した場合対処出来たかどうかは疑問ではある。

 以前までの様な『ダンジョン発生』なら、対処可能だったと思う。

 だが、現在の様な、モンスターの数が異常に多い状態で発生された場合には、対処出来ずに逃げるしか出来ないだろう。

 米子の様に、俺達の目の前でダンジョンが発生したら、その時点で装備を身につけ、モンスターが外に出て来る前にこっちから打って出られる。

 だが、先にモンスターに出て来られると、装備無しの状態で、更に魔法が使えない状態での対峙と成る訳で、レベル2程度のモンスターでも3匹以上になったら対処出来ない自信が有る。

 『冒険者、ダンジョン出たら、ただの人』だ。

 ダンジョン外では、デボとぺんぺんは完全に無力となる。場合によっては足手まといにすら成るだろう。飛べないし、小っこすぎて移動速度が遅いから…

 ……改めて考えると、家のダンジョンが復活しなくて良かったと実感する。

 なんだか、いつの間にか碧に感化されていた様だ。俺の座右の銘は『安全第一』『効率こそ全て』、金より命が大事だ。ここで、もう一度原点に戻ろう。安全第一、安全第一、効率こそ全て。……良し。

 ()に染まった自分をリセットし直していると、碧が変な目で見ているのに気付いた。

「なんだ?」

「……お兄ー、大丈夫? ブツブツ独り言言い出す様に成ったら末期だよ」

 ……いかん、口に出ていた様だ。……独り言はマズい。しかも、小声でブツブツはマズい。完全に危ない人だ。

 独り言が許されるのは、漫画やアニメの主人公だけだ。アレを現実でやったら、病院に担ぎ込まれて4種類以上の薬を処方される。

「大丈夫だ… 碧の悪口を言ってただけだから問題無い」

「何よそれ! 問題有り有りだよ!!」

 怒った碧から、ティッシュボックス(ほぼ満タン)が飛んできて頭にヒットしたが、どうやらごまかせた様だ。独り言はマズい、気を付けよう。

 色々と心を落ち着ける為に、ぺんぺんのブラッシングを続ける。

 ブラッシングの様な単純作業は、心を落ち着かせるのには最適だ。更に、毛並みが心地良いし、ぺんぺんの機嫌も良い。良いこと()くめだ。

 デボは鳥(?)なので、ブラッシング出来ないのが残念だ。風呂上がりに拭いたり、ドライヤーを掛けてやるのがせいぜいだな。

 まったりとした時間が流れる。こんな時間が持てるって多分幸せな事なんだと思う。

 家の心配も、(当座の)お金の心配もする必要が無く、心穏やかでいられる事は、本当に幸せな事だ。

 そうで無い時が有っただけに、それを実感出来る。

 ただ、最近、()に染まっていた為、『肉』『金』を追い求めてしまっていた訳だ。気を付けよう。

 うん、俺の第三の座右の銘に『心穏やかに』を追加しよう。

「お兄ー!! ダンジョンが!!!! 緊急速報!!! 溢れた!!!」

 その日の、いや、その日から、俺達の『心穏やかな時』は失われた。


 俺が23歳で碧が20歳の初春が、世界の終わりの始まりと成った。

 混乱の為10日後に成って分かった事ではあるが、この日『大氾濫』が発生する前に、ニューヨークのど真ん中に新たなダンジョンが発生した。

 そして、その後10分と置かずに、世界中のダンジョンより、時を同じくしてモンスターが溢れ出した。通称『大氾濫』だ。

 ダンジョン発生時、ダンジョン爆発時共に出て来るモンスターは全て表層モンスターだった。

 どちらの場合も、増殖しているのは表層のモンスターだけで、それより深い場所に居るモンスターは増えていなかったのだが、今回は違った。

 初日は、レベル2からレベル10程のモンスターが千単位で溢れ出てきたが、翌日になるとレベル9からレベル25のモンスターが混ざりだした。

 そして、3日後になると、レベル30代のモンスターすら混ざるように成った。

 こんな状況だった為、日本でも初日でダンジョンを封鎖していた自衛隊は突破されていた。

 これに関しては、自衛隊を責めるのは正しくない。完全に想定外の自体だったからだ。

 この『想定外』は原発事故の際のような言い訳としての『想定外』では無い。確とした意味での『想定外』が発生してしまったのだ。

 それは、『ダンジョン外で、モンスターが魔法を使用する』と言う事と、『使用された魔法の威力が格段に強かった』と言う2つの想定外だった。

 自衛隊は、あの日以来ダンジョン閉鎖に伴って、常時30人体勢での警戒が続けられていたのだが、突然現れた100を越えるレベル2~5モンスターに対して、出入り口ホールでの対処は不可能と判断し、ホールの閉鎖を行った。

 そして、ホール上部壁面に設置された『銃眼』と呼ばれる城などに作られた『矢狭間(やはざま)』と同様の隙間からの銃撃と、手榴弾などの投擲に切り替えた。

 元々この建物は、こう言った場合を想定して作られており、自衛隊の行動もそのマニュアル通りに実行されたものだった。

 受付ホールとの間の巨大な鉄扉には、別途複合装甲化されたシャッターが降り、上部のワイヤーネットのみだった開口部も、同様のシャッターで閉ざされた。

 そんな閉鎖空間に溢れたモンスターに対し、上部の銃眼から出された複数の重機関銃から大量の弾丸が放たれ、てき弾や各種手榴弾も投げ込まれた。

 いかに、銃弾の効果が薄いとは言え、口径が桁違いの50口径ではひとたまりも無かった。

 この間、余りにも多いモンスターの為に、弾薬が不足する事を考えて、緊急輸送も行っており、応援要請も出している。ここまでの自衛隊の行動に非はなかった。それは間違いない。

 そして、銃撃音と爆音、更にモンスターの絶叫が鳴り響くホールはにヤツらが現れた事で、事態は急変する。

 現れたのはレッド・ゴブリンやレッド・スライムだ。

 移動速度の遅いレッド・スライムは、他のモンスターにへばり付いて移動してきたらしい。

 そして、現れたこれらのモンスターも、当初は他のモンスター同様に出入り口から出て来た所を撃ち抜かれて黒い(もや)と成っていたのだが、数に押されホール内に出て来る個体が現れ始めた。

 無論それらも、他の場所の銃眼より放たれた音速の3倍の銃弾にて狙われるのだが、いく体かは一定時間殺されずに済む個体が現れる。

 そして、そんな個体より魔法が放たれた。明らかにダンジョン外で有るにもかかわらず、魔法が発動したのだ。これが第一の『想定外』だ。

 更に、この建物は前記の通り、この様な事態も考慮して作られている。故に、ダンジョン出入り口部分から魔法が放たれても大丈夫な強度を持っていた。

 だが、本来充分に防ぐ事が出来るはずの壁や複合装甲シャッターが、魔法によって次々とダメージを受けていった。

 別段、手抜き工事をした訳では無い。この様子を見たダンジョン入場経験を持つ自衛官は言った「…魔法の威力が強すぎる」と。

 これは、この映像をテレビで見た『冒険者』の全員が同意する言葉だった。

 放たれた『ファイアー・ボール』の威力が、『ファイアー・ランス』に近い威力を持っていたし、レッド・スライムの『消化液』の威力も明らかに『溶解液』レベルに成っていた。これが、第二の『想定外』だ。

 そんな『想定外』のコンボによって、レッド・ゴブリン達が現れて20分と掛からず複合シャッター及び鉄扉が破壊され、建物内へとモンスターが溢れ出した。

 建物内も、防火扉状に複数の障壁が作られていたが、それも次々と突破されて行き、鉄扉突破から40分程で建物外へと溢れ出す。

 この40分を使って、施設内の職員の待避、そして、地域住民の避難が行われた。地域住民の大半が着の身着のままで、財布すら持ち出す余裕が無かった者もいた程だ。

 これらの事態は、日本の5つのダンジョン全てで発生しており、ほぼ同様の事態となった。

 特牛(こっとい)と阿蘇に関しては周辺住民が少なかった事も有って、比較的避難は容易だったが、他の大阪、米子、盛岡は街に近く、且つ平野部と言う事で、避難はもちろん溢れてくるモンスターの一時封鎖すら出来なかった。

 その為、毎秒1匹ずつというレベルでダンジョンより溢れ出るモンスターが、その地域に溢れるのは時間の問題となった。

 そして、ダンジョンから発生するモンスターの数が今のままであると仮定すれば、日本中に、いや、世界中にモンスターが溢れかえる事になるのは、誰の目にも明らかだ。

 実際、この10日間、ダンジョンから出て来るモンスターの数は全く変化を見せていない。

 変化は、徐々に高レベルモンスターが混じる率が多くなってきていると言うだけだ。

 既に、レベル50代のモンスターも見受けられるようになっている。

 そして、そんな情報を送っていたテレビ局関係者も、次々とモンスターに襲われ、固定カメラの映像しか無い場所も多くなってきた。

 既に大阪周辺の民間人は完全に無人と化している。戦時中の疎開以上だ。

 だが、この時点で、京都でキラー・ビーの目撃情報が上がっているので、完全な安全地帯は無いと考えるべきだろう。

 ただ、この時点で、1つの希望が報告された。それは『人間もダンジョン外で魔法が使える』と言う事だ。

 無論これは、ダンジョンでユーザー登録して、魔法を修得した『冒険者』のみの事である。

 この事をテレビで見る前に、俺達は知っていた。ぺんぺんが家の中で『空歩』を使ったのを見たからだ。

 それを見て、俺達も試すと、ダンジョン内と同様に使える事が分かった。

 そして、モンスターと同じ様に、明らかに魔法の威力が増している事も分かった。

 この件は、直ぐに地元テレビ局へと伝えた。何故テレビ局なのかというと、『ダンジョン管理機構』への連絡が出来ない状態になっていたからだ。

 通信インフラが、方々でパンク状態になっており、一部は物理的に壊れている場所もあって、なかなか繋がらない。

 インターネットもかなり重くなっており、メールなどに信がおけない状況だった為、一番通信手段を有しているであろうテレビ局へと連絡を取った訳だ。

 自衛隊に連絡が付けば良かったんだけど、付かなかったんだよね。一応、メールは送った。

 そんな訳で、この発表は俺達の報告がベースなのかも知れない。その辺りはフィードバックが無いので不明だ。

 そんな、社会経済が事実上停止してしまった状況で、俺達は今のところはまだ、以前と同じレベルの生活を維持出来ていた。

 他の家と違い、米などを日常的に纏め買いしていたのが功を奏した。

 既に、6日程前から、買い占めなどの騒動が発生し、スーパーなどからは生鮮食料品や消費物が完全に無くなっている。

 輸送や製造ラインもどんどんと停まって行っている為、補充はなかなかされない。

 やはり、キラー・ビーが100キロ以上離れた場所で発見されたのが、大きかった。アレで、ある程度離れた場所でも、出勤を拒否する者が出始め、徐々に業務不可な会社が増えた。

 その結果が、この広範囲での物資不足だ。まあ、日本はまだ良い。暴動や略奪なんてほぼ発生していない。海外は、わざわざ言及するまでも無いだろう…

「アノ国、今頃ど~してるかな?」

 碧がアメリカの略奪シーンを写しているテレビを見ながら呟いた。

「あの国?」

「ほら、お隣さん」

 ああ、アノ国ね。……ここ十数日は、多分アノ国から「日本がー」という声が聞こえなくなった、記念すべき期間だろう。

「我が国に3つのダンジョンが発生した事で、国民一人当たりの数では日本を超えた! とか言ってたあそこね」

「そ。死者50人、重軽傷者200人以上出してるのに、そんな事言ってたあの国、どう成ったと思う?」

「大丈夫じゃ無いか? 成人男性に兵役が義務付けられてるから、戦えるだろ」

「……お兄ー、本気で思ってないでしょ」

 ……

「ま、人の事より、自分たちの事だな。正直、日本もどう成るか分からないぞ。俺達4人だけなら生き残れなくはないと思うけど、生活ってなったら成り立たなくなるからな」

 実際、既に経済は停止状態に近い。そして、解決のめどは全く立っていないと言う最悪の状況だ。

 関係ない国の心配なんかしている場合じゃ無い。

「距離的にも、飛行系モンスターがいつ来てもおかしく無いもんね」

「風次第だな。あとは、コウモリ系が日中飛び回るかって問題もある。グリフォンとか出て来たら、1日で軽く1千キロとか飛びそうだろ?」

「有り得るね。……Gも飛んでくる?」

「来ると思っとけよ。当然BGもな」

 碧はちゃぶ台に突っ伏し、その勢いで頭の上にいたデボが放り出された。

 デボが抗議のクチバシを碧の頭頂部にお見舞いしている。……平和だ。でも、多分あと僅かしかこの平和は無いのだろう。

 どうするかな、この後。座右の銘をある程度返上して、行動に出るべきだろうか?

 …困ったな。

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