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40話 初めから

 今俺達は入り口から一番近い『部屋』の中に居る。

 入り口は、デボの『ストーン・ウォール』で塞いであるので完全に安全だ。

「…で、お兄ー、これって、ど言う事?」

「…ゲーム的に言えば、『2周目』ってヤツじゃないか?」

「やっぱりそうなる?」

「多分な。…後は、レベルアップやパラメーターアップに必要な経験値の値が元に戻っているか、それを確認するべきか」

「あっそうか、必要経験値は元々のままって可能性も有るんだ」

 そう言うことだ。

 ……俺達が、何について話しているかって言うと、先程入り口の水晶柱に触れて、自分たちのステータスを見た際、異常を発見したんだ。

 ぶっちゃけると、レベルが全員1に成っていた。

 参考に、俺のステータスを上げると、こんな感じ。


  ・氏名 鴻池 稔(こうのいけ みのる)

  ・年齢 23歳

  ・Level 1

  ・生命力 650

  ・魔力量 650

  ・スタミナ 21

  ・筋力 21

  ・知力 26

  ・素早さ 24

  ・魔法 転移・サンダー・ボール サンダー・アロー

      サンダー・ウォール サンダー・ストーム

      レジスト・サンダー サンダー・インフェルノ

  ・スキル マップ 盗む 罠探知 罠解除 気配察知

       飛燕 蓮華 瞬刃

  ・経験値 1


 ご覧の通り、レベルと経験値が1になって、他のパラメーターは全てそのままだ。

 念のためだが、上記は通常のステータス表示で現れるモノで、マジックアイテムなどによる増分は加算されていない。

 マジックアイテムや武具はそのまま所持しているし、この『部屋』へと来るまでに使用して問題無く使えることも確認済みだ。

 更に、魔法やスキルを選択しようとして表示されたのは、以下の物だけ。


  ・ファイアー・ボール

  ・アイス・ボール

  ・ライティング

  ・ブースト(パワー)

  ・パワースラッシュ

  ・牙突

  ・鍛冶


 ついこの間まで、100を越える選択肢があったのが、僅か7個になっていた。…ユーザー登録初期と同じだ。

 これらは、碧達も同じで、原因として考えられるのは、ステータス表記の一番下に書かれた文字列だと思う。

 そこには、こんな風に書かれていた『鴻池(こうのいけ)ダンジョン(レベル2)踏破者』と。

 そこから考察した結果が、さっきの会話だ。

 ゲームで良く有る、一度クリアーして、そのセーブデータで最初から始めると、一部のパラメーターや武具を引き継いだ状態で開始出来るってパターン。

 それの、ダンジョンごとバージョンなんじゃ無いかと考えた訳だ。

 無論、さっきの会話に有った様に、パラメーターアップに必要な値が元の状態なら、全く変化無いのと変わらないのだけどね。その場合は、ただレベルが1表示に成って、今まで貯めていた経験値がごっそり無くなっただけって事になる…

(うち)のダンジョンって、レベル2だったって事でしょ。ここのレベルってどうなんだろう?」

 称号のように表記された部分に、『レベル2』と書かれている。と成れば、他のダンジョンにもレベルが有ることに成る。

 複数のダンジョンが有るゲームで、良くあるシステムと同じだな。ゲームだったら、そのレベルを自分たちのレベルが越えないと入れないってやつだ。

 だけど、ゲームのパターンから言うと、出て来るモンスターもダンジョンレベルで全く違うのが普通だ。

 だが、いま世界中に有るダンジョンは、多少の違いは有れど、大多数は同じモンスターが同じ深度で存在している。

 と言う事は、ゲームと同様で有れば、同じレベルのダンジョンだと言う事に成る。だが、それは『ゲームと同じで有れば』と言う前提条件の上でだ。

 かなりゲーム的なシステムなのは間違いないが、ゲーム程の親切さが無いのも間違いない。ゲームで有れば、クソゲー扱いされる様な設定もあるし。

「……なにをもってレベル表記しているかしだいだな。ゲームみたいにモンスターの強さで変わってくるなら、ここはレベル2に成る。でも、他の条件、…例えば、深さによって変わるなら、実際に潜って確認するしか無い訳だ」

「結局分からないって事?」

「そ、ゲームみたいに入り口に看板でもあれば良いんだけどな」

「う~ん、モンスター湧き湧きキャンペーン中じゃ無きゃ、奥まで潜って確認出来るのに」

 どんなキャンペーンだよ、と思ったが、突っ込まないぞ。スルーだ。

「ま、それは良いとして、で、皆、何を修得した?」

 あの場は、直ぐ近くに自衛官が居た為、詳しい話が出来なかった。その為相談も出来ず各自の選択に任せたんだ。

 俺は『ブースト(パワー)』と言う自分にだけに使用出来る付与魔法の『筋力』増加魔法を選択した。

 当然、同系列に、『ブースト(スタミナ)』『ブースト(インテリジェンス)』『ブースト(スピード)』が存在する。

 括弧内表記がステータスの表記と違うのが、若干違和感を感じるのだが、これもモンスターの名称などと同じで、多数決(?)で決まったモノなのでどうしようも無い。

 碧が修得したのは『呼び戻し』で、投槍用のスキルの前提となる、投げた武器を手元に引き戻すスキルだ。この後、同系列で投槍系スキルがある。

 ぺんぺんは、俺が以前から願っていたブレス系を選択した。風属性ブレスの一番下である『ウインド・プチブレス』だ。

 これは、ただ強い風を出すだけのブレスで、攻撃力は無いに等しいが、吹き飛ばしによって飛行系モンスターをたたき落としたり、集団で居るモンスターとの間合いを開けたり出来る。

 まあ、この後に続く『ブレス』『ハイブレス』『メガブレス』を修得する為の第一段階だ。

 そして、デボは、『斬翼』と言う初の攻撃系スキルを修得した。これは翼に魔刃を発生させて、対象を切るスキルの様で、この『部屋』へと来るまでに、ジャイアント・バットを真っ二つにしたのを見ている。所で、これってさ文法的には『翼斬』が正しいんじゃ… まあ、良いけどね。

 同系列には、同様の攻撃系スキルが続く。基本体当たり系だ。

 一応、これで確認作業が終了した。

「んじゃ、行こうか。でも、経験値が150越えたら一旦入り口まで戻るからな。レベルアップ出来るか確認する必要があるから」

「分かった。でも、転移は使えないでしょ。歩いて戻るの?」

「いや、今日は行きが徒歩だから、使おうと思えば使える。…でも念のために使わずにおこう」

 『転移』は1日に2回しか使用出来ない。通常は、往復で使い切るのだが、今日は往路に『転移』は使用しないので、1回余裕が有ることに成る。

「んじぁ、あんまり離れすぎない所で狩る? でも、レベル5以下だと結構な数殺さないと150越えないよ」

「自衛官のことも有るし、帰りの転移のことも有るから、効率は良くないけど出口周辺のゴミ掃除をまずやろう」

「あー、了解。帰りの問題があったんだね。シールド展開で何とか成る気もするけど、念のためだね」

 シールドも広さに限りが有るし、転移位置に何かが居た場合、転移位置はズレるらしいので、思わぬ方向から攻撃を受ける可能性がある。

 シールドは下策だ。

「あのな、何もバカ正直に水晶柱の所へ転移する必要は無いだろ。俺は、ここをポイントしたぞ」

「…その手が有ったか。お兄ーのくせに」

 くせにって何だくせにって。何時かきっちりいっちゃる。絶対。何時か…

 取りあえず、今居る『部屋』を転移ポイントに設定して居れば、間違っても自衛官からの攻撃は無いだろう。

 モンスターが居ても、レベルはたかが知れている。例えレベル20帯のモンスターが10匹居ても対処は問題無い。

「んじゃ、行くぞ。数が多いから油断はするなよ。ぺんぺん、数が多すぎる時はプチプレスで吹き飛ばしよろしく」

 それだけを言って、俺達は出入り口を塞いでいた『ストーン・ウォール』を破壊して進んでいく。

 大量に居るサーベル・ドッグを切り刻みながら進む。

 買い取りカウンターのおっさんは、3倍ほどだと言っていたが、実際は4倍近い密度になっている。

 ひょっとしたら、時間経過で増え続けているのかも知れない。

 この時点で、ダンジョン爆発直後の密度を超えているので、これ以上増えればダンジョン外へ溢れ出す可能性が高い。

「これこれ、これよ~♪ こ~じゃなきゃ♪」

 俺の心配を余所に、碧は嬉々として殲滅していく。

 今まで溜まった鬱憤を、全て解き放っているんだろう。半月近いブランクなど全く感じられないキレを見せている。

 ぺんぺんも、『アイス・アロー』と『爪斬』を交互に使用しながら、自然回復を考慮しつつ殲滅している。

 デボも、新しく修得した『斬翼』の練習を行いつつ、『ドレイン』系で回復も行っている。

 ハッキリ言って、指示やアドバイスなど全く必要無い。

 以前やっていた、『入り口周囲の間引き』と同じだ。数が多少多かろうが強さのレベルが違う。

 その後、目標の経験値150は直ぐに入手出来たが、その時の位置関係から、別系統の通路を通って入り口へと帰った。その為、帰ってきた時には、取得経験値は300を越えていた。

 1時間と掛からず帰ってきた俺達を見て、自衛官2人は諦めて帰って来たんだと思った様だ。

「無事で何よりだ。やっぱりかなり多いのか?」

「あ、はい。まだレベル5帯までしか行ってませんけど、普段の4倍ですね。一応そこら辺までのヤツらは殲滅してきましたから、しばらくはここまで来るヤツは居ないと思いますよ」

 まだ何か話しかけられそうだったので、とっとと目的を果たすことにする。

「んじゃ、確認しますか」

 そう言って、俺がぺんぺんを、碧がデボを左手に持った状態で、同時に水晶柱に触れた。

 ………

 結果は、レベルアップ出来た。しかも2つだ。

 どうやら、レベルアップ関連は完全に初期化されたらしい。

 つまり、まだまだパラメーターを上げられるって事だ。頭打ち解消だ。

「よし、じゃ、行くか」

「行こ行こ、祭りだ祭りだ♪」

「それじゃあ、また行ってきます」

 自衛官2人に軽く手を上げながら、それだけ言うと俺達はまたダンジョン内へと入っていく。

 後ろかから、「お、おい!」と慌てた声が聞こえたが、スルーだ。最近、色々スルーする頻度がかなり高くなってる気がする。

 精神的に成長(鈍化)して来た兆候かも知れない。ダンジョンに潜り続けるのなら、悪いことでは無いと思う。

 そこからは、罠の無い表層部は駆け足で、ひたすら突き進み突破していく。

 さすがに碧も「魔石を拾おう」なんて言い出しはしない。碧も成長したもんだ。キリ丸のあだ名は返上か?

 この間俺は、入手したての『草薙剣』と『ブースト(パワー)』の使用方法を検討していた。

 『草薙剣』の魔法刃は、かなりの切れ味を見せる。いや、切れすぎる。

 グリーン・ゴブリンやオークなどの武器持ちに対峙した際、相手の剣すら切り裂いてしまう程だ。

 こう聞くと、凄いじゃ無いか、最高だな、なんて思うかも知れないが、実際は違う。

 良く、漫画やアニメなどで、敵の攻撃を剣ごと受けて、敵の剣が切れてぽろりと落ちて、敵が真っ二つなんてシーンが良く有るが、アレは嘘だ。有り得ない。

 なぜなら、この世界には『慣性の法則』ってヤツが有るから、敵の剣撃を途中で切り裂いても、切れた剣はそのままのベクトルで飛んでくる。

 つまり、飛んで来てグサリだ。更に、切られた剣の下半分は、同じ軌道をそのまま動く訳で、間合いによってはやはりそれによってザックリと切られる可能性がある。

 間違っても切り結んだ位置で、真下に落ちたり、動きが止まることは有り得ない。切れ味が良ければ良いだけ、速度を失わずにその切れた剣が襲ってくる。

 実際、最初に俺がそれを経験したのは、グリーン・ゴブリンの棍棒だった。

 向こうのスイング速度が遅かったことと、こっちの思考速度が格段に速かった関係で、ギリギリで躱すことが出来たんだが、結構危なかった。ギリだった。

 その後は、魔法刃(以下魔刃)を出す、消すと言う行為を瞬時に行える様にする訓練を自分に課している。

 敵の武器攻撃や、受け止めるべき攻撃の時には魔刃を消し、それ以外には魔刃を展開するって事だ。

 言葉にすればそれだけのことだが、実行するとなるとそんな簡単なモノじゃ無い。

 その訓練もあって、俺の攻撃は基本剣によるモノが中心となっている。細かなフォローは、デボとぺんぺんに頼んだ。

 この殲滅行動は、モンスター密度の件も有るが、俺達の移動速度が高速なことも有り、30分で200匹を楽に越える数を屠っている。

 こんな状況を俺Tueeeなんて言うのかも知れない。ま、レベル帯が違うだけの話なんだけどね。

 そんな、疑似俺Tueeeをしながら、第一目標のファイアー・ボアまで別段問題無くたどり着く。

「居た!肉だ、肉!!」

 碧は遠方にファイアー・ボアの姿が見えた瞬間、『縮地』を連続使用してカッ跳んで行って側頭部から脳を一突きして、一撃で屠っている。

「うっきゃー、何で肉落とさないのよ-!!!」

 大声で文句を言いながら、足下の何かを蹴飛ばしている。

 どうやら、ドロップ品は『牙』か何かだった様だ。

「こら、碧、罠があるんだから、あんまり勝手に遠くへ行くな」

「お兄ー!! 肉!!」

 ……会話が、成立していない。

「分かった分かった。焦らなくっても、いくらでも居るって。この先にも2つ光点が有るから」

 実際、『肉』は直ぐに手に入った。全て部位ごとに分けて、ジップロックに入れて俺のリュックに放り込んである。

「取りあえず、ファイアー・ボアの肉はOK~。次はコカトリスだね」

「分かった、コカトリスまでは全然問題無いだろう」

 今まで戦って見て、数が多くても問題無くやれている。コカトリスの居るレベル20帯程度なら、全く問題ないだろうと俺も判断した。

 その後も、基本は同じだった。ただ、時折良さげなドロップ品がある時だけ、ぺんぺんかデボが回収して俺の元に持って来てくれる。

 このモンスター密度の高い環境での戦闘では、ぺんぺんのプチブレスが活躍しまくりだ。

 ブレス系は、他の魔法と違い、MPを消費することで魔法効果を維持することが出来る。

 つまり、ブレスを吐き続ける事が出来るって事だ。

 また、広範囲に放射したり、狭めてピンポイントで威力を高めたりが比較的容易に出来る。

 その上で、首を動かして方向も随時変えられる訳だ。

 現状の攻撃力の無いウインド・プチブレスでも、その効果は甚大だ。

 特に、飛行系には特効で、キラー・ビーなどは、壁や天上にぶつかって落ちた所を、俺達が美味しく頂いたりする。

 う~ん、やっぱりブレスは良い。最初から取って居てくれれば…… まあ、今更だ。

 と言う事で、コカトリスの居る当たりへ向かおうと思ったのだが、ぺんぺんから横槍が入った。

 突然走り出し、罠がある所へ一直線に向かったんだよ。

「ぺんぺんストップ!! 罠がある!!」

 慌てて静止を掛けると、ぺんぺんは罠の手前で停止する。

 この罠の位置は、先程の戦闘前に全員に言ってあった。自分だけが知っていても、戦闘中はフォロー出来ない事が多いので、緊急時以外は戦闘開始前に罠の位置は教えてから戦闘に挑む様にしている。

 だから、ぺんぺんもその位置を知っていた訳だ。……何がしたいんだ?

 ぺんぺんは、その罠の手前の地面をひたすらペンペンペンし続けている。

「なに? そこに有る罠がどうかしたの?」

 ペンペンペンペンペン……

「…一応、罠を調べてみるか。……炎系の地雷だな。この罠がどうかしたのか?」

 ぺんぺんの訴えたいことが分からなかったので、何かこの罠が特に危険な罠なのかと思って、個別確認をしたんだが、ごく普通の罠だった。

 こう言う時は、喋れない事がもどかしい。『念話』とか『以心伝心』的なスキルが欲しいよ。見た事無いけど…

「……ひょっとしてワープ罠を警戒してるの?」

 あっ、そうか、そう言えば、前回の『女性冒険者』も今回の芸能人達もこの帯域で罠にはまってるんだったな。

 とは言っても、範囲はドーナツ型で広大だから、そうそう同じ罠にはぶつからないと思うけどね。

 だが、碧の発言後、ぺんぺんの地面をペンペンする動作が一旦停止したが、直ぐに再開された。

「うん? 近いけど不正解って事か? …………まさか、ワープ罠を探せって事か?」

 ペン

 ……どうやらそう言う事らしい。

「何でだ? まさか女優達を助けにって事じゃ無いんだろ?」

 ペン

 ……う~ん分からん。誰か、ドリトル先生を連れてきてくれ。

「あっ! 分かった! つまりアレだね。ワープ罠を使って、ショートカットしようって事でしょ」

 ペン

 ぺんぺんが大きな動作で地面を一叩きした。正解だったらしい。……『転移』代わりにワープ罠を利用か。確かに無くは無いか。

 最悪対処出来ない様な場所なら、瞬時に『転移』で逃げれば良い。

 前回のアノ『女性冒険者』と同じ罠が発見出来れば、一気にレベル60帯へと行けると言う事だ。

 レベル60帯まで、ここから向かうのは現状では無理に近い。だが、MPやHPが充分にある状態であそこに行けたら、しばらくの間対処することは出来ると思う。

 例え、今のモンスター増殖状態でもだ。

「グリフォンの肉~♪、肉~♪、美味しい肉~♪」

 既に碧は行く気満々だ。

「グリフォンは肉のドロップ率は低いから、時間が掛かるぞ。状況次第じゃ、手に入らなくっても転移で帰るからな」

 一応、釘は刺しておこう。普段ならともかく、今回は長時間レベル60帯に居続けることは出来ない。

「…分かった。幸運値マイナスのお兄ーが居るから、期待しない方が良いね」

 誰の幸運値がマイナスだよ。

「取りあえず、肝心のワープ罠を見つけないと話にならないからな。一応条件を付けるぞ。HPの残のことも有るから、30ヶ所確認して駄目だったら諦めてコカトリスの所へ行く。OK?」

「しょうが無いか。了解」

 と言う事で、罠探し開始だ。

 ………

 このダンジョンの罠密度はそれほど高くはない。

 ただ、アイアン・アントやファイアー・ボアの居るエリア帯として考えると、その帯域がかなり広い為、結果として罠の数も膨大な数になる。

 だが、別段全ての罠をチェックする必要は無い。聞いた情報から考えて、床面に設置されるタイプの罠だと思われる。

 つまり、壁設置タイプは無視出来ると言う事だ。これだけでも半分近くに成る。

 更に、常時使用している『罠探知』は、罠の全ての構造物まで光点として脳内マップに表示される。

 だから、穴の構造の有るモノは落とし穴なので、これも除外出来る。

 更に、穴では無いが、余計な構造物(槍など)を持つモノも除外可能と言う事だ。

 結果として、通路上の表面のみに光点が存在する罠だけを当たれば良いことになる。今まで『地雷罠』と思い込んでいた種類だ。

 と言う事で、俺達はそんな罠を見つけては『罠探知』を個別に掛けて罠の種類を確認していった。

 ……イヤ、確認していこうとした、が正しいだろう。

 なぜなら、僅かに2つ目で『ワープ罠』と表示されるモノを発見したのだから……

「…良いけどさ、早すぎない? これって、むっちゃくちゃいっぱい有るって事?」

 俺も一瞬碧の考えに賛同し掛かったが、今の位置を脳内マップで見て、一つの考えが浮かんだ。

 それは、前回の女性冒険者はともかく、今回の撮影グループは、アイアン・アントを撮影する為に早朝の時間を選んだぐらい考えてここに入っている。

 つまり、移動も最短コースでアイアン・アントの居る場所へと向かったと考えるのが合理的だと思う。

 その上で、到着後多少の移動を行ったとしても、その最短距離でたどり着いた場所からそれほど移動したとは考えにくい。

 そして、俺達も効率を考えて最短コースを取ってこのエリアへと来ている。そのコースは多分同一だと言う事だ。

 で有れば、俺達が探したエリアに、彼らが巻き込まれた罠が有る確率は圧倒的に高い、と考えても良いんじゃないか?

 と言う考えを、碧達に言うと、碧は微妙そうな顔をしていたが、ぺんぺんとデボは賛同してくれた。

「ま、いいや、取りあえず行こう。行けは分かるさ、ってアゴの長い人も言ってたし」

 いや、それ言ってた人は、政治の世界で迷いまくってるけどね…

 俺達は、何時もの転移用の、四方を各自が向いた体勢を取り、武器をぬいた状態で一斉にワープ罠に飛び乗った。

 その瞬間、地面に魔法陣と呼んでも良い様な幾何学模様が現れ、次の瞬間、慣れ親しんだ『転移』の感覚を感じた。

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― 新着の感想 ―
そうか、これかかれた当時はまだご存命だったんだなぁ 顎の長いひと
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