37話 なんとか姫はいません
大阪から帰った後も、焦らずゆっくりの狩りが続く。日常だ。
この間、多少経験値ストックの多かった、俺が『知力』をデボが『素早さ』をそれぞれ+1した。
碧は例のごとく、我慢出来ずにレベルアップに使っている。
ぺんぺんは碧はと違って、魔法やスキルを多用する事を考えて、レベルアップに使った。
その為も有って、ぺんぺんのレベルが突出している。
・氏名 鴻池 稔
・年齢 23歳
・Level 65(+5)
・生命力 650(+50)
・魔力量 650(+50)
・スタミナ 21 +6(大地母神の指輪)
・筋力 21 +4(強力の腕輪)+8(力の指輪Ⅲ)
・知力 26(+1) +4(賢者の腕輪)
・素早さ 24 +9(音紋のブローチ)
・魔法 転移・サンダー・ボール サンダー・アロー
サンダー・ウォール サンダー・ストーム
レジスト・サンダー サンダー・インフェルノ
・スキル マップ 盗む 罠探知 罠解除 気配察知
飛燕 蓮華 瞬刃
・経験値 19686
次回UPに必要な値(パラメーター) 312566(+52095)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 358(+216)
・氏名 鴻池 碧
・年齢 20歳
・Level 69(+9)
・生命力 690(+90)
・魔力量 690(+90)
・スタミナ 17 +6(大地母神のカフス)
・筋力 18 +8(力の指輪Ⅲ)
・知力 18 +4(賢者の腕輪)
・素早さ 23 +9(音速のネックレス)+6(瞬きの腕輪)
・魔法 錬金術 ファイアー・ボール ファイフー・アロー
ファイアー・ウォール ファイアー・ストーム
レジスト・ファイアー ファイアー・インフェルノ
・スキル ステップ 瞬歩 空歩 縮地 鑑定
牙突 爆裂突き 輪舞 青龍破
・経験値 12298
次回UPに必要な値(パラメーター) 258202(+246619)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 748(+498)
・氏名 鴻池 ぺんぺん
・年齢 2歳
・Level 70(+10)
・生命力 700(+100)
・魔力量 700(+100) +30(女神の雫)
・スタミナ 18 +6(大地母神のカフス)
・筋力 18 +5(鬼人のタリスマン)
・知力 23 +4(賢者のブローチ)
・素早さ 19 +6(瞬きのネックレス)
・魔法 アイス・ボール アイス・アロー
アイス・ウォール アイス・ストーム
レジスト・アイス アイス・インフェルノ
・スキル ステップ 瞬歩 空歩 縮地
爪斬Ⅰ~Ⅲ 旋風爪
・経験値 70160
次回UPに必要な値(パラメーター) 293205(+282681)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 122(+82)
・氏名 鴻池 デボ
・年齢 2歳
・Level 64(+4)
・生命力 640(+40) +40(大地母神の祈り)
・魔力量 640(+40)
・スタミナ 16 +5(絶倫のタリスマン)
・筋力 15 +4(力の指輪Ⅱ)
・知力 20 +4(賢者のブローチ)
・素早さ 19(+1) +6(瞬きのネックレス)
・魔法 ストーン・ボール ストーン・アロー ストーン・ウォール
ストーン・ストーム ストーン・インフェルノ
ヒール ミドルヒール ハイヒール
エリア・ヒール エリア・ミドルヒール エリア・ハイヒール
クリア ミドル・クリア ハイ・クリア
・スキル 超音波 怪音波 忌音波
HPドレイン MPドレイン Mixドレイン
天駆 宙駆 瞬転
・経験値 18385
次回UPに必要な値(パラメーター) 317319(+52887)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 922(+834)
デボについては結構悩んだ。ぺんぺん同様にレベルを上げて、MPとHPを増やして魔法とスキルを使える回数を増やそうかと考えたのだが、『ドレイン』が有るのである程度そちらで賄えると考えて、パラメーターを上げる事にした。
デボは初期と違い、今では戦闘中に普通に『ドレイン』を利用できるように成っている。『素早さ』などのパラメーターを上げる事で、より一層『ドレイン』を実行しやすくなると思う。
その方が、より効率が良いのではないかと考えた訳だ。今のところ、それが正しかったかはハッキリ分からない。+1程度では変化が少ないからね。
ただ、それが積もり積もればハッキリした形で現れると思う。それを期待してのパラメーター上げだ。
碧に関しては、もう多くは言わない。他系統のスキルや魔法を修得する事だけ止められればそれで良い。レベルアップは、全体として効率低下には繋がらないから。
そんな感じで、狩りに勤しんでいた訳だ。
1日に300匹以上のモンスターを虐殺する日常だ。数瞬後に、黒い靄と成って消えるとは言え、血や体液、肉片が飛び交う、そんな日常だ。
改めて考えると、完全に麻痺している自分に気付く。
『大阪ダンジョン』で時折すれ違う、ベテラン『冒険者』達のアノ冷たい目に自分達も成っているんじゃないかと心配になり、鏡を覗いてしまう。
見た感じは別段変では無いと思うのだが、『狂人は自分が狂っている事が分からない』と言う様に、自分が変になっている事には気付かないのでは無いかと考えてしまう。
だが、それと同時に、『自分がおかしくなっているのでは無いか、と考えるって事は、おかしくなっていない証拠なのでは』とも考える。
後はこの二つがループだ。多分こんな事を考えすぎる者は、精神的に参ってしまい、精神科にて薬漬けにされて結果、更におかしくなるのだろう。
多分碧の様に、全く気にせずに『殲滅だ~♪』とやっている方が精神的には持つのだと思う。
と言うより、それが出来る者には関係の無い心配で、それが出来ないが故に無駄に悩んでいるんだけどね……
まあ、自己分析出来ているし、それから鑑みるにさほど重くは無いので大丈夫ではある、と思う。そう言う事にしておこう。意識をそらせ。考えちゃ駄目だ、考えちゃ駄目だ…
…某アニメで『逃げちゃ駄目だ』って言うセリフがあるけど、アレってこう言う場合にはマイナスだと思う。人間『逃げ道』が無くては潰れてしまうから。
と、まあ、そんな事を考えつつも狩りと言う名の虐殺を続けた訳だ。
そんな中で、レベル78帯を探索中に大型の『部屋』を発見した。ドーム空間の様に広大では無いが、通常の『部屋』の何倍もある。
「……アレなに?」
「……ヒュードラとか、八岐大蛇って感じだな」
この大きな『部屋』の中心より少し奥にとぐろを巻いた巨大な多頭の蛇が居た。分裂した部分だけで4メートルはある。
その根元の胴体から尻尾は、とぐろを巻いている為ハッキリした長さは分からないが、軽く20メートルは越えているだろう。
「胴体、ムッチャ太いよ。60…70センチは有るよねアレ」
確かに、胴体の太さはかなりある。南米などに居るアナコンダなどは、長さだけは長いが、太さは意外に細い。直径20センチも有れば、超大物だ。
だが、こいつは半端なくデカい。ドラム缶より心持ち大きいサイズと考えれば、その大きさが分かってくれると思う。
さすがに、分裂している頭部に続く部分は、直径30センチに満たない大きさではあるが、それでも充分に大きい。
「4、5、6、7、8……8だよ、八岐大蛇だよ。…おなかの中に草薙剣か何か入ってないかな?」
首の数を数えた碧がアホな事を言い出す。
このダンジョンのドロップに関しては、法則性がある。
武具のドロップは、それを使っているモンスターからしかドロップしない。
つまり、ど~見ても剣なんて使いそうに無いこの『八岐大蛇(仮称)』から剣がドロップするはずが無い。
コレが自然界に居る生き物であれば、他の生き物を補食して、その装備品が体内に残っているって可能性も有るのだが、ダンジョンモンスターは種族が違っても互いに捕食し会う事は無い。
故に、体内に武具が有る可能性は無いと言う事に成る。
でも、面倒だから説明しないよ。
「……アレって、中ボスぽくないか?」
「うん、完璧に中ボスだよ。ずっとあの位置から動いてないんでしょ?」
その通りだ、『気配察知』のエリアに入ってから15分、1歩たりとも動いていない。
他のモンスターは、隠れて待ち伏せするタイプ以外は、ダンジョン内を常に徘徊している。
アイツは別段、擬態等をしている訳でも無く、何らかの物陰に隠れている訳でも無く、『部屋』の中に彫像の様にとぐろを巻いた状態で留まっているだけだ。
何より、『気配察知』スキルによって脳内マップに表示される光点が、倍近く強いんだよ。
この間の礼儀知らずの女性『冒険者』の件で、光点の輝度が対象の状況によって変化する事が分かっている。
つまり、アイツは普通のモンスターとは違うと言う事だ。単にHPが異常に多いとか、一時的にHPに補正が掛かっているって事なら良いんだが、特殊個体で有る可能性も否定出来ない。
ペンペンペンペン
考え込んでいた俺の左肩に飛び乗ってきたぺんぺんが、いきなり強めに俺のホホを叩きだした。
「どした?」
肩の上で、未だにペンペンペンしているぺんぺんを手で持って眼前に持ってくると、ぺんぺんは壁際から『部屋』の中を右前足で指さす。
碧と二人、意味が掴めずに首をかしげながらも壁から頭半分だけを出して『部屋』の中をじっと見ると、ソレに気づく。
「水晶柱?」
ペン
俺の呟きに、ぺんぺんが肯定のペンを俺の腕にした。
「えっ? 何?」
まだ気づいて居なかった碧に、ソレを教えてやる。
「八岐大蛇の後ろを見て見ろ、奥の壁際」
「あっ! …アレって水晶柱?」
一瞬大きな声が出掛かって、慌てて口に手を当て小声に戻る。…どうやら大丈夫の様だ。ひょっとしたら、ゲームの様に『部屋』に足を踏み込まないと反応しないのかも知れない。
「静かにな。…ど~見ても水晶柱だよな、アレ。大きさも外観もダンジョン入り口にあるアレと同じだ」
「って事は、ここまでが一つのエリアで、あの水晶柱がゲームなんかで良く有る転移ゲートみたいなヤツって事かな?」
『転移』がレベル8で修得出来るのに、『転移ゲート』的なモノに必要性が有るとは感じない。
もちろん、それはあくまでもゲーム的に考えればなので、ソレがこのダンジョンに通用するかは分からないんだけどね…
「アレがなんなのかを確認するには、八岐大蛇擬きを殺さないと駄目って事だろ」
「だね。勝てると思う?」
「気配察知の光点の事から考えても、どう少なく見積もってもレベル80は越えてると思う。レベル100でも驚かない」
「だよね~。後回しにしよう」
「……いや、後回しにはしない!」
「えっ! 嘘! お兄ー、どうしちゃったの? 変な物食べた?」
「アホか、勘違いするな。根本的にアイツに挑まないって事だよ。ここまでのエリアで充分稼げるのに、危険を犯す必要が無いだろ?」
俺がそう言った瞬間、碧からブーイングが出た。
ペンペンペンペン
ツンツンツンツン
ぺんぺんも俺の手を叩き続け、デボは俺の頭に飛び乗ると、頭頂部をクチバシで突き始めた。
デボ、やめれ。ハゲる、ハゲる。
「反対の人、はい!」
碧が右手を挙げると同時に、ぺんぺんの右前足も挙がり、俺の頭上でも風が大きく動いたのが感じられた。
何時もの三面楚歌だ。
「あのな、明らかにヤバゲだろ? アレ。ヘタしたら死ぬぞ。死んだら、貯金も全部国に没収されるか、あの親戚連中に取られるんだぞ」
貯金の話の部分で、碧の表情がピクリと動いた。お金大好きな碧的には、貯金を他人に奪われると言う事は絶対に許せない事のバズだ。
だが、碧のくだした結論は単純だった。
「大丈夫。死ななきゃ良いの。死ななきゃ」
……遙か昔、2年半以上前に同じ様なセリフを聞いた気がする。成長してねー!。
その後、必死に小声で説得するが、3人を翻意させる事は出来なかった。
『説得』とか『詐欺』なんて言うスキルがあればな~って思ったよ。有れば、3倍問題を無視しても取ったかも知れない。
結局、この『八岐大蛇(仮名)』は後回しにする事にし、他の分岐へと向かう。
その後、3週間にわたって他のエリアを探索した。その間、幾つかのマジックアイテムも入手し、僅かなりともパラメーターを上げている。
『知力』を+8する『叡智の○○』、『スタミナ』を+10する『ゼウスルの耳飾り』などだ。
魔法系やスキル系のアイテムは残念ながら入手出来てはいない。ポーション類や、金属系は手に入ったが、現状過剰在庫になっている。
一気に売る訳に行かないので、無駄に溜まってるんだよ。
『鍛冶』を修得すれば、『アダマンタイト』だの『聖銀』だのも色々使い道が有るのだが、『鍛冶』はユーザースキルにかなり依存する様で、作業に時間が掛かる上に、先ず個々の道具から作って行く必要がある。
そんな感じで、かなり面倒なシステムになってるので、じっくり腰を据えてやろうとしないとモノに成らない。
だから、俺達も修得せずに居る。実際、組織的にやっている者達以外の、一般『冒険者』で『鍛冶』を修得している者はほぼ居ないはずだ。
だって、『鍛冶』を実行する為には、ダンジョン内にハンマーや金床などの道具を持ち込み、一定の場所で30分以上作業をする必要がある。
現実の鍛冶と比べれば格段に早いのだが、ゲームなどの鍛冶と比較すれば10倍近くの時間が掛かり、手間に関しては桁違いに掛かる。
そんな訳で、とてもでは無いが、4~6人程のパーティーで実行するのは割に合わないんだ。
家の様に、専用ダンジョンで、出窓部分を使用すれば格段に使いやすくはあるのだが、1つ作るのに30分以上掛かると言うのは変わらない。
半農状態の現状では、躊躇してしまっている。
せめて、『錬金術』の様にユーザースキルにかかわらず、最初から一定品質のモノが作れれば良いのだが、そうで無いのが痛い…
俺としたら、新規エリアへ行かなくなったら修得して、色々やってみようと思っている。ユーザースキルしだいと言う事は、考え方を変えればやり甲斐が有ると言うことでも有るのだから。
で、問題が発生した。
「行き止まりだね、次はどこ行く? かなり引き返さないと駄目だよね。ここら辺全部行ったし」
行き止まりになっている通路で立ち止まり、碧がため息をついている。
今までなら、俺の反応も同じだっただろう。また数キロ引き返すのか、面倒だな、って感じで。
だが、今の俺は違う。正直途方に暮れている。
だって、ここで未探査領域が完全に無くなったのだから……
俺は、脳内マップをぐりぐり動かして、まだ行っていない部分が無いか3回確認した。結果は無情にも1ヶ所を除いて全て探索済みとなっている。
…………
「あのな、ここで終わりだ」
「はぁ? またソレ? お兄ーもちゃんと多数決には従ってよね。危なくならない限り、いける所まで行くの! ね、ぺんぺん、デボ」
デボとぺんぺんをわざわざ両手に持って、俺に向かって突き出す。
その掌の上で、2人が俺をジッと見ている。
「……いや、そう言う意味じゃ…無くも無いけど。…あのな、ここで行ける場所は全て行ったんだよ。行ける所は無いの」
碧の顔が驚きの為に伸びた。人形浄瑠璃の様にアゴがカタンと下に落ちる。
ぺんぺんとデボの首は、仲良く右に傾いていた。写真に撮りたくなったよ。みょ~に可愛いんだ。あ、碧は除く。
「まじぃ?」
「マジ」
「ホントに?」
「本当に」
「ど~すんの? コレで終わり? 普通こんな…あっ! 八岐大蛇!!!」
チッ、気づきやがったか。忘れてれば良いモノを…
まあ、碧が忘れていても、ぺんぺんが絶対覚えていたと思うけどな。
「……ああ、後はあそこだけだ。ゲームだったら、アイツを倒せば奥へ通じる扉が開くってのがパターンだよな」
「うん、じゃあ行こう! なんとか姫を助けに行こう」
なんとか姫って… 奇稲田姫な。ってか、姫居ないぞ。ここ出雲じゃないし。
「却下。アレに安全に勝てる保証があるのか?」
「…なせば成る!!」
「アホかぁ!! 成せなかったら死ぬだろうがぁ!!」
「……でもさ、でもさ、ここまで来てストップってヤダよー!」
碧がホホ袋を膨らませてブーたれる。可愛くないぞ。全然。
「別に、アレに挑まないとは言ってないぞ。慌てて行くなって事だ。時間を掛けて準備して、やれそうなら挑もうって事だよ」
正直な所、諦めてくれるのが一番良いのだが、ソレは無理そうだし、俺もあの『水晶柱』には興味がある。
また、コレまでの経緯を考えて、徐々に強いモンスターが現れると言う、ゲーム同様のシステムからして、あの『八岐大蛇(仮名)』が絶望的に対処出来ないモンスターだとは考えられないと言うのも有る。
それに、試したいこともある。
ソレを試して駄目だったら、パラメーター上げを実施して、かなり強くなってから挑むという事にして時間を稼ごう。
「うん、分かった。じゃあ、経験値を稼ぎまくるぞ~。経験値を寄こせ~!」
仏頂面から一気にやる気に満ちた顔になった碧は、どこぞの妖怪の様な事を言い出している。
デボは、そんな碧の頭上に移動してあくびをしている。ぺんぺんは俺の肩に移動してきて、ホホに身体をこすりつけている。
俺はため息をついてる。四者四様だ。
「取りあえず、パイロ・キャタピラーの所へ行くぞ」
「え? なんで? パイロ・キャタピラーってレベル50台じゃなかったっけ?」
「ドロップ品が欲しいんだよ」
俺はそれだけ言うと、最短コースを脳内マップで探しながら移動していた。




