33話 無知?未知?
俺達は強くなった。2年前のレベル18帯でウロウロしていた時と比べれば格段だ。
パラメーター的には計10~13ポイントしか変わらないが、レベルは一気に上げてある。
更に、魔法やスキルもそれなりに増えた。そして、何よりもユーザースキルの上昇は自認する所だ。
ステータスとしてはこんな感じだ。
・氏名 鴻池 稔
・年齢 23歳(+2)
・Level 60(+48)
・生命力 600(+480)
・魔力量 600(+480)
・スタミナ 21(+3) +3(大地の指輪)
・筋力 21(+3) +4(強力の腕輪)+4(力の指輪Ⅱ)
・知力 25(+4) +2(知者の腕輪)
・素早さ 24(+4) +3(風紋のブローチ)
・魔法 転移・サンダー・ボール サンダー・アロー
サンダー・ウォール サンダー・ストーム
レジスト・サンダー サンダー・インフェルノ
・スキル マップ 盗む 罠探知 罠解除 気配察知
飛燕 蓮華 瞬刃
・経験値 189957
次回UPに必要な値(パラメーター) 260471(+250724)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 358(+216)
・氏名 鴻池 碧
・年齢 20歳(+2)
・Level 60(+44)
・生命力 600(+440)
・魔力量 600(+440)
・スタミナ 17(+3) +3(大地のカフス)
・筋力 18(+3) +4(力の指輪Ⅱ)
・知力 18(+3) +2(知者の腕輪)
・素早さ 23(+2) +3(疾風のネックレス)+3(疾風の腕輪)
・魔法 錬金術 ファイアー・ボール ファイフー・アロー
ファイアー・ウォール ファイアー・ストーム
レジスト・ファイアー ファイアー・インフェルノ
・スキル ステップ 瞬歩 空歩 縮地 鑑定
牙突 爆裂突き 輪舞 青龍破
・経験値 8092
次回UPに必要な値(パラメーター) 258202(+246619)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 748(+498)
・氏名 鴻池 ぺんぺん
・年齢 2歳(+2)
・Level 60(+43)
・生命力 600(+430)
・魔力量 600(+430) +30(女神の雫)
・スタミナ 18(+3) +3(大地のカフス)
・筋力 18(+3) +5(鬼人のタリスマン)
・知力 23(+3) +4(賢者のブローチ)
・素早さ 19(+4) +3(疾風のネックレス)
・魔法 アイス・ボール アイス・アロー
アイス・ウォール アイス・ストーム
レジスト・アイス アイス・インフェルノ
・スキル ステップ 瞬歩 空歩 縮地
爪斬Ⅰ~Ⅲ 旋風爪
・経験値 89957
次回UPに必要な値(パラメーター) 293205(+282681)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 122(+82)
・氏名 鴻池 デボ
・年齢 2歳(+2)
・Level 60(+43)
・生命力 600(+430) +40(大地母神の祈り)
・魔力量 600(+430)
・スタミナ 16(+3) +5(絶倫のタリスマン)
・筋力 15(+3) +2(力のネックレス)
・知力 20(+3) +2(知者のブローチ)
・素早さ 18(+3) +3(疾風のバンダナ)
・魔法 ストーン・ボール ストーン・アロー ストーン・ウォール
ストーン・ストーム レジスト・ストーン ストーン・インフェルノ
ヒール ミドルヒール ハイヒール
エリア・ヒール エリア・ミドルヒール エリア・ハイヒール
クリア ミドル・クリア ハイ・クリア
・スキル 超音波 怪音波 忌音波
HPドレイン MPドレイン Mixドレイン
天駆 宙駆 瞬転
・経験値 173614
次回UPに必要な値(パラメーター) 264432(+254547)
次回修得に必要な値(魔法・スキル) 1107(+1019)
下層に入ってから、それなりのマジックアイテムをドロップするモンスターも現れたし、『宝箱』からも入手出来るようになった。
それらを装備する事で、トータルとして数値はかなり上がっている。
上記のステータスには、パラメーターをアップさせる装備アイテムしか載せていないが、それ以外に『シールドリングⅡ』『MシールドリングⅡ』『破毒のペンダント』なども装備している。
つまり、かなり強くなった、訳だ。
だが、全く未知の場所飛び込むとなれば、そうそう簡単にはいかない。
翼竜のトゥプクスアラに似たモンスターが居たように、それ以外にも未知のモンスターが居る可能性が高い。
ほんじゃ、行こうか。なんて進む訳にはいかないんだよ。
「お兄ー、何してんの、とっとと行くよ!」
俺の考えなど無視して、碧達は既に急斜面を下っていた。
「アホかぁ! もうチョット警戒しろよ!」
「だ~いじょうぶ、大丈夫。お兄ーは気にしすぎ。悪・即・斬だよ」
大丈夫って、何を根拠に言ってんだよ。それ以前に『悪』って何だ、用法を誤ってるぞ!
だいたい、平和に暮らしてる(?)ダンジョンに勝手に入り込んで、そこに居る住人を虐殺して、薬や宝石類を奪い取っていく俺達こそ『悪』だと思うけどね…
それはともかく、索敵は俺が担っているので、慌てて碧達に続く。
坂が急なので、碧とぺんぺんは『空歩』を使用し、デボは『天駆』を使って降りていく。
俺だけは、空中機動出来るスキルを有していないため、ズルズルと滑り降りるしか無い。何か悔しい。
ちなみに、デボの『天駆』は翼のあるモノ向けのスキルで、体重や構造にかかわらず空が飛べる。
上位に『宙駆』『瞬転』が有り、『宙駆』は『天駆』の高速版で、『瞬転』は短距離の瞬間移動スキルだ。ガーゴイル達が飛んでいられるのも、このスキルがあるからなのだと思う。
このスキルのおかげで、ダンジョン外では瞬間的に高度2メートルを飛ぶのがやっとなデボも、自由に空中が飛べるようになっている。
飛べるのがよっぽど嬉しかったのか、『天駆』を修得した直後は多用しすぎてHPが20を切る所まで行って俺達を慌てさせた。懐かしい思い出だ。
斜面を滑り降りていると、半分を超えた地点で脳内マップにエネミー反応が現れた。
「1時の方向40メートル! 1匹居るぞ!」
位置的には、森の中に入って20メートルちょいの位置だろう。
碧達は俺の位置を確認して、先に行き過ぎないように位置を調整する。
斜面を滑り終え、前方に有った大きめの木の幹に手をつき勢いを止めた頃には、エネミー表示は20メートルを切る地点に近づいていた。
「15メートル! 近寄って来てる!」
「ぺんぺん、デボお願いね」
碧の魔法は火属性魔法なので、森の中では使えない。槍依存スキルの遠距離系も一定以上木が密集している森では使いづらい。
だから、氷属性と、土属性魔法を使うデボとぺんぺんに頼んだ訳だ。俺はまだ体制が整っていないので、一歩遅れている。
念のため『飛燕』を使う準備をしている中、『アイス・ストーム』と『忌音波』が放たれた。
初見の敵と考えて、MPやHPの節約は考えずに放ったようだ。
「ラプトル!?」
碧の声を聞きながら、木の横から飛び出して対象を視界に入れると、『忌音波』の麻痺効果に掛かったらしいそのモンスターに、氷の結晶体が何本も突き刺さっている所だった。
「ステゴケラス!?いやティロケファレ!?」
どちらも体長2.5メートル程のラプトルなどと同じような二足歩行をしている恐竜で、頭部に平らなドーム状の突起が有る。
この手って、他にも数種類居るんだけど、ぱっと見では区別が付かない。
「お兄ー、アレなに? ハゲのラプトル?」
「いや、違う、ティロケファレって言う恐竜に似てる……」
「えーっと、未確認モンスター?」
「ああ」
俺がそう言った瞬間には、碧は『縮地』でティロケファレ(?)の前まで移動し、のど元から頭頂部を狙って突き刺していた。
碧も念のために強いスキルを使用したようで、1秒程のタイムラグの後、刺された頭部が内部から爆発した。『爆裂突き』だ。
「オッケー。お兄ー、周囲大丈夫?」
「ああ、他に反応は無いけど、ステルス系が居る可能性が有るから油断はするなよ」
「了解。ぺんぺん、デボ警戒よろしく。『ステータス』……今のヤツレベル60台だよ」
碧は自分に入った経験値からティロケファレのレベルを推測したようだ。
今の戦闘は、ぺんぺんとデボも入れての3人での戦闘だったため、経験値は分散している。だから、経験則から自分の得た割合を想定して出した値なのだろう。
「60台か… さっきまでのエリアは55以下だったよな。50から55。アレが『はぐれ』なら良いんだけど…」
このダンジョンは、ゲームのように決まったモンスターが場所ごとに居るって事は無い。
そのエリアにそぐわないレベルのモノが居る事もままある。それを通称『はぐれ』と言う。
「一応、この森がレベル60以上のつもりで行くぞ」
「了解、MP制限無しでガンガン行こう!」
ぺんぺん達も同意したようで、前足と翼をしゅたっと上げている。
ぺんぺんとデボは、基本声を出さない。デボも「チュン」とすら鳴いた事が無い。
意志を伝えるのは、今のように翼や前足を上げるか、近い位置ならペンペンと叩くかすりすりとすり寄って伝える。
しかし、ホントに声出さないんだよな~。まあ、良いけどさ。
さて、気を取り直して、って言うか気を引き締め直して行くぞ。
…………
結論から言おう、ここは『恐竜天国』だった。
出て来るモンスター、出て来るモンスター全てが『恐竜型』だった。
しかも、全て未登録だ。サイカニア、ディノニクス、ステゴサウルス、ランフォリンクスなどと言う図鑑に乗っている姿にそっくりなモンスターのオンパレードだ。
ただし、サイズは図鑑とは違い、たいていが2.5メートル程の全長しか無く、全体として小さい。
サイカニア当たりは、他にも似たような恐竜が幾つも居るので、微妙ではある。
だが、今成されている恐竜の分類自体も、かなりの所で幼獣と成獣を別物として登録しているという話もあるし、僅かな個体差を別種として登録しているという話もあるので、細かな事を言う事じたいが無意味ではある。
それに、恐竜そのものでは無く、あくまでもそれに似たモンスターなので、更に無駄な思考でもある。
「ステゴザウルスはレベル62だね」
何度か戦い、相手の強さや特徴が分かったため、今回は碧が単独で戦い、それによってそのモンスターのレベルを正確に調べた訳だ。
このステゴザウルス擬きで、今のところ出会った全ての恐竜型モンスターのレベル調査が終了したのだが、全て60台前半だった。
「完全にレベル帯域が変わったって事だな。こんな話は全く聞いた事が無いから、このダンジョンが特殊って事なのかも知れないな」
5レベル分が一気に飛んだって話は聞いた事が無い。
5レベル分と言えばかなりの変化だ。俺達のように大きな余裕を持って活動している者で無ければ、致命的な事態になっていた可能性も有る。
やっぱり俺の判断は正しかったんだよ。ここに来る必要は無かったんだ。2を選ぶべきだったんだよ…… ま、対応出来ては居るけどね…
「うぇ~! また皮だよ。恐竜って皮か牙ばっかじゃん!!」
どうやら、ステゴザウルス擬きのドロップがまた『皮』だったようだ。碧は口をへの字にさせて憤懣たらたらだ。
しかも、この『皮』だが、サイズが大きいんだよ。通常の『大皮』と同じぐらい有る。
その為、かさばるし、重いしでとてもでは無いがリュックに入れて移動など出来ない。半分放置覚悟でその場に置いておき、帰りがけに回収出来たら持って帰るってことにするしか無い。
「ここさ、『部屋』って絶対無いよね。と成れば宝箱も無い可能性が高くない?」
「可能性は否定出来ないな… でも、宝箱は有るかも知れないぞ。このドーム空間が1つの『部屋』なら、1個だけは有る可能性は有る」
かなり無理のある設定ではあるが、無いとも否定は出来ないのも事実だ。
「この広さで1個だけー? うぅー、ヤダなそれ」
イヤだろうが何だろうが、どうしようも無い。
「なら、戻るか? 俺はそのほ…「それはヤダ!!」」
被せる程にイヤですか、はぁ~。
結局、3対1でそのままこのエリアを探索する事になる。民主主義は辛いよ。
その後は、出て来た洞窟を起点に、ドーム中心を通って反対の壁面まで向かい、その後外周に添って一周回った。
時折存在する木の無いチョットした広場などでは、トゥプクスアラ擬きと、ランフォリンクス擬きと言う翼竜型が頻繁に襲ってくるので、上空の警戒も必要だった。
ただ幸いなのは、ラプトルの様に大集団で襲ってくるモノが居なかった事だ。
それと、森の中に、蛭などの面倒な虫も全く存在していなかった事も有りがたかった。
この『森』は地面まで掘って確認したんだが、全く虫が存在していない。
有るのは『木』と『草』と『モンスター』だけだ。それに気付いた時点で、それまで感じていた違和感が分かった。
人間の感覚って凄いと思う。そんな、通常意識していないモノが居ないだけでも、それを『違和感』という形で感じてくれる。
視覚情報に特化した生き物である、人間という種の特性なのかも知れない。
そして、この空間の探査はこの日一日では出来なかった。一旦あの洞窟出口まで戻り、そこにポイントを打ってその日の探索を終了した。
その晩、念のために『ダンジョン管理機構』や海外のダンジョン関連のサイトをくまなくチェックしたが、やはりあの恐竜擬き達は登録されて居なかった。
本来は、新種なら写真や動画を取った上で報告すれば報償金が出るのだが、「どこのダンジョンのどの当たりに?」と聞かれた場合、返答出来ない。よって報告する事が出来ない訳だ。
この新種は、報償金もだが、それ以上に名誉の方が大きい。記録として発見者の名前が残るのだから。
この当たりは、新星や恐竜の化石などと同じかも知れない。
俺としては、別段名誉云々は興味が無いが、恐竜型の…と言う所だけ少し引っかかっている。恐竜好きとしては、例えモンスターで有るとは言え、それに名を残す事に憧れが幾らかある。
ま、出来ないんだから、諦めるけどね。ちょっと残念。
碧は、名誉より「報償金が~!」とそっちの方を残念がってたよ。平常運転だな。
翌日は、昨日に続き残りのエリアをローラー作戦で調べていく。
この辺りは、通常のトンネル形と比べて効率が悪い気がする。
木が多くて視界が限定される事も有り、一度に広範囲を確認出来ないため、実質4メートル幅でローラーを掛けている状態だ。
もっと広い範囲でやっても良いのだが、見えていない木の裏側に地下へのトンネルが空いている可能性も有るし、『宝箱』が隠れている可能性も有る。
この下層エリアに現れる『宝箱』は、『上級宝箱』で、それなりに良いモノが入っているケースが多く、見逃す訳には行かないんだよ。
碧が今使っている『龍槍』も『宝箱』から手に入れたモノで、『自己再生』能力を持ちHPを消費して破損が自動的に治る。
更に、『ブースト(パワー)』のスキルをこの槍が持っているため、この槍を通して碧はこのスキルを使用する事が出来る。
こんな感じで、かなりの良い品なんだよ。俺の、材質がチタンだと言うだけのロングソードとは全く違う。
デザインも、柄に龍が絡みついたような浮き彫りがしてあって、格好いいんだよ。ゲームに出て来そうな槍だ。
この『龍槍』以外にも、筋力を+5する『鬼人のタリスマン』とか、HPを+40する『大地母神の祈り』なんて言うブローチも見つかっている。
と言う訳で、絶対に『宝箱』を見逃す訳には行かないんだよ。
それ故の精密ローラー作戦な訳だ。
このドーム空間は、広さ的にはチョットした自然公園程のサイズだ。午前中だけとは言え、2日も有れば十分に探索可能な広さだ。
だから、その日も焦らずにじっくりと調べていた。
だが、午前10時半を越え、残り1/8程度を残すだけとなるとさすがに焦ってくる。
なぜなら、他の洞窟はもちろん、『宝箱』すら見つかっていないのだ。
更に、モンスターのドロップは根こそぎ『皮』『皮膜』『牙』『爪』で、錬金出来るモノも大したモノは無かった。
「むっきぃー!! なんで何も無いのよぉー!! 宝箱、1個も無いじゃん!!」
碧が切れ始めた。
まあ、午前中の最初の時間帯はモンスターも大挙して現れていたんだが、現在は刈り尽くしたのか全く現れなくなっている。
この辺りは、ローラー作戦の弊害かも知れない。近い場所を何度となく通るので、コース取りによっては前半に全てのモンスターにぶつかってしまう訳だ。
そんな訳で、暇をもてあました碧が『むっきー』状態になってしまった。デボの『ハイ・クリア』を使ってもこの状態異常は直せない。
「落ち着け、まだ1/8有るだろ。仮に何も無くっても、経験値的には結構美味しかったから悪くなかっただろ」
ここのモンスターは、レベルが高い割に魔法を使うモノが全く居なかった。そのせいか、対処がかなり楽だった。
欠点は、フィールドが広いせいで戦闘時、囲まれる可能性があった事だ。
洞窟なら、滅多に前後を挟まれる事は無い。ましてや横を気にする機会は無かった。その点は多少戸惑った所だ。
だが、トータルとしては『美味しい狩り場』だったことは間違いない。
「経験値はいいの! 金目の物が無いのが腹立つの! 魔石も『黒』とか有ればまだいいのに、半端なヤツばっかりだし!」
結局碧の怒りの根源はソコらしい… 貧乏の弊害かな?
「あぁーもうイラつく!!」
そんな声を上げながら、前方に有った直径50センチ程の木に『龍槍』を叩き込む。
こらこら、木に当たってどうする。
そう思っていると、『爆裂突き』だったようで、木の幹が吹き飛び、一瞬全体が下に落ちた後向かって右に倒れていった。
「アホかぁ! HP無駄にすんな! それに危ないだろうが! こっちに倒れてきたらどうする!」
碧のアホな行為を注意する。そして、更にまだ言おうとした時、肩に乗っていたぺんぺんが、俺のホホをペンペンペンと叩いてきた。
「どうした?」
そう言いながらも脳内マップにエネミー表示が無いか確認するが、周囲40メートルにモンスターは居ない。
別件らしい。
確認しようと、ぺんぺんへ手の伸ばそうとすると、ぺんぺんは『空歩』を使って倒れた木に向かって跳んで行った。
「なに?」
碧もそっちに向かっていく。
俺もその後に付いていくと、ぺんぺんが立っている倒木の枝の下には『宝箱』が有った。
「宝箱だ!!」
「……木の上に有った?」
その宝箱の位置は、倒れた木の枝と枝の中に有り、どう見ても元々木の上に有ったと思える状態だった。
実際、倒れた位置は既に探査済みの場所で、元々そこに有ったと言う事はまず無い。
俺の疑問を余所に、碧は『龍槍』で一突きして、ミミック判定を終えた後、抱えると俺の所までダッシュで戻って来た。
「はい、罠調べて」
通常のフィールド上に有る罠は常時使用している『罠探知』で察知出来るが、『宝箱』の罠はその『宝箱』に対して別途『罠探知』を使用する必要がある。面倒な話だ。
『宝箱』の罠も通常状態の『罠探知』で脳内マップに表示されるのなら、罠付きの『宝箱』の位置が分かるって事になって便利なんだが、残念ながら無理だ。
俺は地面に置いた『宝箱』に『罠探知』を掛けると、どうやら『麻痺薬噴霧』の罠らしい。即座に『罠解除』スキルを使って罠を解除する。
念のため、再度『罠探知』を実施し、確実に罠が解除された事を確認してから開けた。
「おおっ! 指輪だ! 見た事無いヤツだよね!」
確かに見た事の無い指輪だ。幅広のリングに、紋章印の様な丸い飾りが有り、そこには赤と黒で幾何学模様が刻まれていた。
俺が手を伸ばそうとする、碧が先に取り『鑑定』を実施する。
「おおっ! ブーストスキルの指輪だ! スピードだよ! 大当たりだね!」
はしゃいで、さっきまでの『むっきー』状態が嘘の様に踊り出す。躁鬱の激しいヤツだ。…鬱は違うか、躁怒か?
一通り踊り回ったった碧は、俺達の前に来ると、いきなり叫ぶ様に言う。
「これ欲しい人! はい!!」
叫びつつ右手を高々と上げた。
しゅたっ。
しゅたっ。
碧に遅れる事0.5秒程で、ぺんぺんの右前足と、デボの右翼が上がる。
俺は出遅れた。まあいいか。今回は諦めよう。
その後、すったもんだ有った末、この『ブースト(スピード)リング』はぺんぺんのモノとなった。皮鎧に縫い付けないとな。
そして、その後は予定通りの形で残りのエリアを調べ、翌日から4日間を掛けて樹上を再度調べた。
結果は12個の『宝箱』を発見し、4つのマジックアイテムと、5つのポーション類、3つの宝石を入した。
碧の『むっきー』が生んだ成果だ。




