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11話 MP自然回復力の為です

 昨日、ぺんぺんが冒険者登録するというイレギュラーがあり、結構ドタバタすることになった。

 その日の夜は、スキルが迷宮でしか使えない事、使えば生命力を消費する事を教え込んだ。

 特に、スキルが迷宮でしか使えない事は、しっかり教えないと空歩が使えるつもりで高い所から落ちて死ぬ危険があるから最優先だった。

 そして、スキルは、生命力が0に成る状態では使えないとは言え、最悪生命力1には成るので、そうならないようにその関係もしっかり教え込んだ。

 ま、端から見ればかなり珍妙な状況だったと思う。なんせ、二十歳(はたち)と17歳の人間が、生後1が月に満たない子犬に『言葉』で延々説明しているんだから…

 でも、ぺんぺんは理解した。なんせ、知力9だから。俺より1多いから……

 その流れで、ホログラムスクリーン上の数値を教える必要も出て来て、『数字』も教えた。

 ノートを切って10枚のカードを作り、0から9までの数字を書き込み、それを使っての教育となった。

 知力9はダテではなく、あっと言う間に覚えたよ。テレビにでも出て、『天才ワンちゃんぺんぺん』なんて形で稼げるんじゃないかと思ったりもした。

 そんなこんなで、昨晩はぺんぺん一色で染まった夜だった。

 そして今日は、何時も通りの日常だ。ダンジョンに潜る(1.5メートルだけど)のが日常ってのも、なんだかな~って感じだけどさ。

 現在の俺達のステータスはこんな感じ。


  ・氏名 鴻池 稔(こうのいけ みのる)

  ・年齢 20歳

  ・Level 3

  ・生命力 30

  ・魔力量 30

  ・スタミナ 11

  ・筋力 11

  ・知力 08

  ・素早さ 10

  ・魔法 転移・サンダー・ボール

  ・スキル 無し

  ・経験値 3

    次回UPに必要な値(パラメーター) 6

    次回修得に必要な値(魔法・スキル) 9


  ・氏名 鴻池 碧(こうのいけ みどり)

  ・年齢 17歳

  ・Level 1

  ・生命力 10

  ・魔力量 10

  ・スタミナ 10

  ・筋力 13

  ・知力 13

  ・素早さ 19

  ・魔法 錬金術

  ・スキル 無し

  ・経験値 50

    次回UPに必要な値(パラメーター) 69

    次回修得に必要な値(魔法・スキル) 2


  ・氏名 鴻池(こうのいけ) ぺんぺん

  ・年齢 0歳

  ・Level 1

  ・生命力 10

  ・魔力量 10

  ・スタミナ 03

  ・筋力 03

  ・知力 09

  ・素早さ 04

  ・魔法 無し

  ・スキル 空歩

  ・経験値 0

    次回UPに必要な値(パラメーター) 2

    次回修得に必要な値(魔法・スキル) 2


 碧のヤツは、昨日俺が覚えたサンダーボールを実際にみて、早く魔法を覚えたくなったようで、素早さを20に上げたらパラメーターアップは一旦止めてレベル上げに専念するそうだ。

 取りあえず後19で素早さは上げられるから、今日中には問題ないだろう。

 あと、問題はぺんぺんだ。

 なんせ、生後1ヶ月経たない子犬を戦わせる訳にはいかない。例え知力9だとしても…

 これが、初期に取ったのがファイアー・ボールなどの魔法であれば別だったんだが、ぺんぺんが選択したのは空歩、移動系のスキルだった。

 当然、攻撃力は無い。そして、肉体は生まれて間もない子犬。戦闘力は0だ。ラディツからゴミ扱いすらして貰えないレベルだ。

 これが、RPGとかだったら、パーティーに組んだ状態で何もさせずに経験値だけ手に入れるパワーレベリングも可能なのだろうけど、このダンジョンのシステムではそうはいかない。

 一応、このダンジョンの『ゲームシステム』にもパーティーの概念はある。

 それは、RPGや小説のようなパーティー登録によってパーティーとして処理されると言うものでは無い。

 一定の範囲内で、一定の範囲に居るモンスターと同時期に戦闘を行った者が自動的に処理されるシステムだ。

 そして経験値の振り分けは、8割近くがモンスターに止めを刺した者に入り、残りはそのモンスターとの戦闘に参加した者に振り分けられる。

 重要なのは『戦闘に参加した者』と言う事だ。つまり、ただその場に居ただけでは経験値は貰えないことになる。ま、当たり前っちゃー当たり前のことだよな、現実として考えれば。

 せめて、ペンペンが修得したのが回復魔法だとか、支援(バフ・デバフ)魔法であれば、『戦闘に参加』になるのだが、空歩では……

 ま、回復魔法も支援(バフ・デバフ)魔法も初期選択リストには無かったけどさ。

 取りあえず、ぺんぺんのレベルアップとかは大きくなるまで保留だな。

 よし、じゃあ、今日も頑張りますか。

「ってこら! 何でぺんぺん連れて来てるんだよ」

 何故か碧のヤツがぺんぺんを片手に抱えた状態でタラップを降りてきていた。

「えぇー、なにいってるのぉ? ぺんぺんも登録出来たんだから成長させてあげなきゃ駄目でしょう?」

 ……そんな事をのたまう碧に3分間掛けてパーティーと経験値のシステムを懇々(こんこん)と説いてやった。

「マジ?」

「マジ」

「「………」」

 碧はもちろん、ぺんぺんも碧の腕の中で数分前のやる気に満ちた様子は消え、だらーっと脱力して落胆を全身で表していた。

「ぺんぺんは見学な。大きくなった時の参考に今は見とくだけ。絶対ネットに近寄ったら駄目だからな」

 念のためにしっかり釘は刺しとく。

 と言う訳で、今度こそ本日のおつとめ開始だ。ポチッとな。

 ガチャッっと言う音と共に音楽が流れ始める。今日も新しいテープを入れてある。

 曲を流し始めて直ぐはモンスターは現れない。ここの所の平均では5~6分って所だろうか。その間はダンジョン内を見据えつつ曲を聴くことになる。

 今日は、15分近くモンスターが現れなかった関係で、結構長い音楽鑑賞と成った。

「ね、これ何のアルバムなのかな?」

 今回のカセットは、現時点で3曲目が掛かっている。どうも1曲1曲が普通の曲より長めだ。

 そして、バックで使用されている音楽機器が同じ事と各曲のボリュームが一定で有る事から、1枚のアルバムをそのまま録音したものだと思える。

「一曲目は完全にインストルメンタル、2曲目は半分インストルメントルで途中からいきなり歌詞、三曲目は急にロック調…」

「歌詞は全部英語だけどさ、多分歌ってるのは日本人だよ。日本語英語っぽいもん」

「2曲目はともかく、3曲目は…何だ?」

「サディステック? サ…サイキック? タイガー? サイキックって超能力だっけ? アニメのアルバム? そんな感じはしないけど」

「ノリは良いな。歌詞はともかく、俺は好きかも。モンスター寄せにも良さそうだし、ほら来た」

 好き勝手に音楽寸評をしていると、本日の第一モンスター来襲だ。

「クズ魔石だ… 来なくて良いのに」

「魔石はクズでも、経験値には成るんだから良いだろ」

 そう言いながら、丸まってタイヤのように成って転がってくるイエロー・キャタピラーに包丁槍を構える。

「でも、10円だよ。うりゃぁ! 同じ経験値なら他のが良いよ。ホイッ!」

 碧は喋りながら、転がってくるイエロー・キャタピラーの側面を斜めから包丁槍で突き刺し、輪状態から普通の芋虫状態に戻った所で頭部に一撃を加える。

 頭部への一撃は、ワイヤーネットの隙間から腕を突き出して繰り出している。

 完全に手慣れたものだ、俺は全く手を出す暇すら無かった。

 痙攣をしばししていたイエロー・キャタピラーは、間もなくして黒い(もや)となって消えた。

 その、イエロー・キャタピラーを継起にその後は次々とモンスターが現れ始める。

「岩めんどいからお兄ーやって」

 そう言いながら、包丁槍を使って俺の方にリビング・ロックを転がして寄こす。

 確かに、リビング・ロックは口を開かないと包丁槍じゃ攻撃できないんだけどさ、『めんどいから』って…

「ま、良いけどさ、『雷撃』」

 俺はワイヤーネットから少し右手を出し、リビング・ロックに向かっててサンダー・ボールを放つ。

 サンダー・ボールは至近距離から転がされて来たリビング・ロックに直撃すると、どうやら一撃で殺すことが出来たようだ。リビング・ロックは口の部分で半分に割れて動かなくなった。

 ちなみに、魔法やスキルの発動に詠唱は必要ない。イメージするだけでOKだ。だが、やはり、言葉にする方がイメージし易く発動も容易な為、あえて名称を唱えるのが一般的らしい。

 実際、その方が周囲の者にも何をしようとしているのかが分かり、パーティー連携の助けにも成る。

 俺は、『サンダー・ボール』は長いので『雷撃』と縮めて使うことにした。こっちの方が何か格好いいし。重みがある気がする。

 次の雷系魔法『サンダー・アロー』の場合は『雷槍』と呼ぶつもりだ。矢と槍、微妙に違うけど、同じ貫通属性って事で問題無いはず。

 雷矢(らいし)雷矢(らいや)、より雷槍(らいそう)の方が響きが良いからってのが実際の理由だけどね。

 リビング・ロックが黒い(もや)と成って消えるのを確認しながら、俺はそのまま近づいてきていたキラー・クリケットに向かってサンダー・ボールを放つ。

 今の俺のMPは最大値30なので、一回の消費量が2のサンダー・ボールは15発連続で打てる。

 一応、緊急時のことを考え、MP14以下にはならない範囲で使用することにしている。大群が来た時とかの用心だ。安全第一安全第一。

 キラー・クリケットはさすがに一撃では死ななかったが、麻痺の状態異常に掛かったのか、痙攣状態でしばらく動かなくなった。

「お兄ーのアホー! あれじゃ届かないじゃん、届く所でやってよ!」

 碧からのお叱りです… 遠すぎて包丁槍が届かない。もう一撃サンダー・ボールを打っても良いんだけど、さすがにMPがもったいない。反省…

 結局キラー・クリケットは麻痺が解けて、のこのこと近寄ってきた所を一突きして仕留めた。

 そんな朝1時間の戦闘で、碧は23の経験値を手に入れ、69の経験値を消費して素早さを+1し、20へと上げた。

 これで、碧の『素早さ』は俺の倍と成った訳だ。思考速度も倍だ。動体視力も倍だから、動いてるモンスターの急所へもズバズバ当てている。パラメーター効果恐るべし…

 俺も20の経験値を入手したので、やっとパラメーターを上げる事にする。

 と言っても、合計23しか無い為、6・8の計14を消費すると次の10は足りないため、2ポイントしかアップできない。

 そして俺が割り振ったのは『知力』だ。2ポイント全てを使って10にした。

「ぷぷっ、お兄ー、そんなにぺんぺんに負けてたのが悔しかったんだ。ぷぷぷぷぷっっっっ」

「アホかー!!! ちゃうわい! 知力が上がれば、MPの自然回復量が上がるんだよ! 攻撃手段としての『サンダー・ボール』はもちろん緊急時の逃走手段としての『転移』も両方魔法だからMPが重要なの!!」

「そうでちゅか、そうでちゅか、分かりまちたでちゅよぉ。ぷぷぷぷぷっっっ」

 おにょれぇ~、なにが『でちゅか』だ。何時か『ギャフン』と言わせちゃる。絶対だ。

 吹き出している碧を、ぐぬぬぬの表情で睨んで居た俺の靴をぺんぺんがペンペンしてくる。

「おお、ぺんぺん、お前は分かってくれるんだな」

 そう言って、ぺんぺんを両掌にのせると、そのぺんぺんの右前足の上にホログラムスクリーンが浮かぶ。

 そのスクリーンには、ぺんぺんのステータスが俺にも見える形で表示されている。つまり、俺に見せようとした訳だ。

「どした?」

 何をしたいのか分からずそう口にすると、ぺんぺんが左前足でホログラムスクリーンの一角を指さす。

 そこは経験値の部分だ……あれ?

「……なんで経験値が入ってんだ?」

 何故か、0のはずの経験値の値が2と成っていた。

 ぺんぺんは間違いなく戦闘には参加していなかった。足元をチョロチョロはしていたけど、攻撃は無論、空歩すら使っていない。だが、何故か2の経験値が入ってる… 何故だ。

「えっ、どうしたの? 経験値が入ってるってぺんぺんに? お兄ー戦わないと入らないって行ったよね?」

 そう言いながら近寄ってきた碧は、回り込んでぺんぺんのステータスをのぞき込んだ。

「ホント、2に成ってる… 昨日空歩取った後間違いなく0だったよね」

「ああ、0だった、確認したよ。間違いなく」

 何でだ? 戦わないと経験値が入らないのは複数の所で検証されて間違いないはず。…でも入ってる…

「何かしたか?」

 思わずぺんぺんにそう聞いてしまう。当然ぺんぺんが答えられる訳もなく、首を右に20度程傾けるだけだった。

「ね、お兄ーが言ってたことが間違いって事は「無い」」

 即否定してやる。

「じゃあ、どうして?」

 そう言われると……何でだ? ぺんぺんが特別? いや、そんないい加減な話はない。ま、確かにぺんぺんの頭の良さは規格外だけど、それとこれは関係が無いはず。何か理由があるはず…

 戦闘… 支援… 回復… 応援?違うな… 観察?いやそれで良ければ以前の検証で分かるか… 牽制?うん!?

 牽制! ぺんぺんは俺達の足下をチョロチョロしていた。それにモンスターが気を取られることがあったとしたら… それは立派な牽制と成って、戦闘に貢献したことになるのでは無いだろうか?

 あり得る、ってか、それしか無い!

「分かった! 分かったよ、牽制だ、足下を動き回って、それが牽制になってたんだ。つまり、戦闘に参加したことになってたんだよ」

「な~るほどぉ~、納得。それなら分かる。ダテに知力値を+2してないね。ぷぷぷぷっっ」

 おにょれ~、まだ言うかこやつは~。

 無視だ無視するんだ。

「で、ぺんぺん。そのポイント使うか? 力を強くしたり、早く動けるように少しだけど成るぞ」

 パラメーターをアップできるのは1ポイントだから、さして体感的には変わらない気もするが、子犬の現状だけにその1ポイントで大きく変わる可能性も有る。

 ぺんぺんは、しばらく俺と自分のスータスを交互に見たあと、ステータスの一点を左前足で指した。

 そこはレベル表示の所だった。

「…えっと、レベルアップの為に取っとくって事か?」

 俺の問いには、ステータスの表示されたホログラムスクリーンを消すことで答えた。どうやらそのつもりらしい。

 ひょっとしたら、魔法が欲しいのかも知れない。

「ぺんぺんってさ、吠えないよね。ってか、声聞いたこと無い。喉に問題とか有って声出せないとかじゃないよね?」

「確かに吠えないけどさ、俺は声聞いたこと有るぞ」

「嘘! 何時?」

「3日前、寝てて突然目が覚めたのか急に周囲をキョロキョロして、『ふぁ?』みたいな声出して、そのまま突っ伏して寝た」

「まじっ! ぺんぺん喋れるんだ、良かった! って、何でお兄ーだけぺんぺんの声聞いてるのよ、ズルい! ほら、ぺんぺん声出して、ね、ほら~」

 俺の掌に乗るぺんぺんの額を、碧はつんつんして声を出させようとするが、ぺんぺんはその指に甘噛みしている・・・ 声を出す気は無いようだ。

 俺が聞いた時も、多分半分寝ぼけていたんだろう。ひょっとして、夢を見ていてそれと混同していたのかも知れない。

 なんせ、知力9だから、夢ぐらい見るだろうし・・・・・・

 その後、ぺんぺんの声を聞こうとちょっかいを掛ける碧を無視して、俺は外に出ると、畑の草刈りを開始した。

 畑は・・・ 全然進んでいない。

 一日の大半はこの畑の草を刈って、根を掘り出しているんだけど・・・進まん! 全く進まん!

 ススキって最悪の植物だな。茎は堅くて密集している。あげくに根は竹の地下茎と同じようにビッシリと張り巡らされてる。

 開墾には最悪の植物だよ。

 畑の入り口から15メートル程先に、細めの木が生えているのだが、それを目標にしていたが、現状終わったのは僅かに2メートル分だけだ。

 畑自体は、幅20メートル、奥行き40メートルが2枚有る。その内の2メートルだ・・・ 先なげー。

 ま、2枚の畑を全面開墾するつもりは今のところは無いんだよ。家庭菜園が出来れば十分だから、1枚だけを開墾するつもりだったんだけど、半分で良いかな、なんて考える今日この頃。

 頑張るしか無いか。ってか、頑張った。腰イタ。

 その後は昼前と夕方の狩りで、俺が25、碧が27、ぺんぺんが6の経験値を得た。

 碧とぺんぺんはそのまま貯金。俺は、午前までの残と合わせて34に成った経験値から、10・12を消費して、『知力』と『素早さ』を1ずつ上げた。

 これで俺のパラメーターは、11が並ぶことになる。

 一歩一歩成長しているな、良い感じだ。

 次は、そろそろ講習のことを考えようかな。今晩碧に相談するか。

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