10話 第三のユーザー登録者
グリーン・ゴブリンが現れるように成って5日が経過した。
その翌日には俺の経験値のストックは120を越え、ついにレベル2へとレベルアップを果たした。
ただ、スキルにしろ魔法にしろ、レベル3以上で無いと新規に修得は出来ない為、この時点では意味はほぼ無かった。
一応、生命力と魔力量は10ずつ増え20と成った。
その後も、増減しつつもレベル6以上のモンスターが現れ、それによって本日ついにレベル3に成る事が出来た。やっとだよ。長かった…
レベル2からレベル3に成るのに必要な経験値は、俺の場合は130だった。平均より10程多い。
そして、修得する『スキル・魔法』は、色々考えた上で、『サンダー・ボール』を選んだ。
何より、遠距離攻撃の手段が欲しかったので、『スキル』では無く『魔法』を選択した。
そして、それなりに攻撃力が強く、状態異常である麻痺を発生させる可能性のある雷系である『サンダー・ボール』と相成った訳だ。
今後は、攻撃魔法は雷系を修得していく予定だ。
そして、この『サンダー・ボール』を修得した事で、次回のパラメーターUPまたは魔法・スキル修得に必要な経験値は3倍の6と9に成った。
うん、予定通り3倍に成っても大した数字じゃ無い。OKOK。
そして碧は、その間入手した経験値から32・39・47・57を消費して『スタミナ』『筋力』『知力』『素早さ』をそれぞれ+1した。
『スタミナ』の値を上げたのはこれが初めてだな。何でも、これからはある程度バランスを取りつつ、『素早さ』特化で行くつもりらしい。
また、この間、新規のモンスターも結構現れていた。
☆キラー・クリケット
・レベル 4~6
・体長 1メートル
・攻撃方法 噛みつき
・使用魔法・スキル 無し
・弱点 頭・腹部
・魔石 白(ランクA サイズ1)350円 バッテリー
・その他のドロップ品 なし
・その他の特徴 巨大なコオロギ 短距離の飛行が可能
・棲息ダンジョン名及び深度 ほぼ全てのダンジョンに湧く 地上入り口近く
☆エッジ・ラット
・レベル 2~5
・体長 60センチ(尻尾を含まず)
・攻撃方法 顔両サイドに有る刃物状の角 噛みつき
・使用魔法・スキル 無し
・弱点 頭・腹部 火属性
・魔石 橙色(ランクA サイズ1)230円 製鉄
・その他のドロップ品 なし
・その他の特徴 大型のネズミ 10匹以上の集団で行動 身体に油分が多い
・棲息ダンジョン名及び深度 ほぼ全てのダンジョンに湧く 地上入り口近く
☆オーク
・レベル 7~10
・体長 170センチ
・攻撃方法 武器(剣・槍・棍棒・弓) 体当たり 牙
・使用魔法・スキル 無し
・弱点 頭・腹部 雷属性
・魔石 薄い焦げ茶(ランクA サイズ2)280円 半導体
・その他のドロップ品 剣・槍・棍棒・弓 下級回復薬
・その他の特徴 二作歩行する豚 ある程度の知能有り
・棲息ダンジョン名及び深度 ほぼ全てのダンジョンに湧く 表層部
この3種で、キラー・クリケットはドデカいコオロギだ。まんまコオロギ。しかも、それが飛ぶんだよ。
ま、ダンジョン入り口付近は天上が低いんで、事実上低空飛行で余り意味は無かったんだけどさ。これが、広いダンジョン内だったら面倒かも知れない。
エッジ・ラットは、顔の両サイドに10センチ程の鎌状の角が出ている無毛のネズミで、集団でわらわらと襲ってくる。
オークは、二足歩行する豚だ。焦げ茶色の短毛に被われており、猪と言っても良いかもしれない。
このオークは、様々な武器を持っているのが特徴で、弓の様な飛び道具を持っているケースも有るとか。今のところ剣と棍棒持ちにしか遭遇してないけどね。
特定のRPGや小説などだと、所持武器によって○○ファイターとか○○アーチャーなんて細かく分かれているケースも有るが、ここではそう言う分類はされていない。
あえて言うなら、剣持ち○○、槍持ち○○と言った表現だ。
で、個人的にはこの3種類の中ではエッジ・ラットが一番面倒だった。なんせ、数が多いのよ。20匹近い数が一度にどかーっと来やがって。
挙げ句の果てに、個体差が大きくって、小さいヤツは経験値が2しか無い。手間だけ掛かって得るモノが無いモンスターだった。
現状では、グリーン・ゴブリンが一番効率が良いかもしれない。死にやすくて攻撃力がさほど無く、入手経験値は結構ある。そして、ある程度纏まった数で現れる。
オークも、経験値的には悪くないんだが、武器が豊富すぎて危険度が高い。それに、あまり集団では行動していないので、効率の良い狩りが出来ない。
それと、オークだゴブリンだと言っているが、あくまでも勝手に名付けられたもので、RPGのアレと同じだと言う事ではない。
単に、外観が似ていて、そう名付けられただけのことだ。だから、オークが女を襲って孕ませようとする事は無い。女騎士も安心ってヤツだ。
実際、女性冒険者の一番の敵は別の男性冒険者らしい……
だから、女性でダンジョンに潜る者はかなり少ない。無論ゼロでは無い。金銭的に困った若い女性が潜るケースも有る。
そう言った女性達が複数でいわゆるパーティーを組んで潜るケースも有るらしいが、男性パーティー以上に内部トラブルが有る様だ。
俺は、別のダンジョンへと潜ると成ったら、基本一人で潜るつもりだ。他者とパーティーを組む気は無い。トラブルの原因だからね。
碧が成人すれば、碧と二人で潜るかも知れないけど、まだ3年あるので当分先だ。
3年後、碧と二人で潜れるように死なないように気を付けないとな。
とまあ、そんな決意をしながら、地下室を出ようとした時、異様な光景を見ることになった。
それは、地上への出口で有るサビたタラップに小さな白い塊がへばり付いて居たのだ。
数瞬、状況が分からず固まったが、状況を認識した途端大慌てでそこへと走った。
そして、ぶら下がっている白いモコモコを下から掬い上げるようにして確保する。
「お兄? どしたの、急に走って」
俺の不審な動きに、水晶柱でパラメーターアップをやっていた碧から声が掛かった。
俺は無言のまま振り返って、両手に乗せた白いモコモコを碧に見せる。
「ほぇ? 何でぺんぺんが居るの?」
「知らんよ、何か、タラップの途中にぶら下がってたんだよ」
「嘘ぉぉ!! チョ、こら、ぺんぺん! 何してんの!」
多分、落ちたのでは無く、自分で降りようとしていたんだと思う。もし落ちたのなら、鳴き声を上げて助けを求めたはずだからな、それが無かったって事は自分の意志で降りようとしていたって事だろう。
碧の判断も同じだったようで、速攻でぺんぺんをしかりだした。
だが、ぺんぺんは、反省の色は無く、地下室内をキョロキョロと俺の掌の上から眺めている。
基本的に、ぺんぺんは頭が良く、普段は怒られれば見て分かるような反省の態度を取るのだが、今回はそれが無い。
正確には誤用だが、いわゆる確信犯ってヤツだと思う。怒られるのは分かっていてあえて来たんだろう。
生後一ヶ月経たない子犬に何を言う、って思うかも知れないけど、ぺんぺんはかなり賢い。飼い主バカじゃないよ。マジな話。
だいたいの俺達の会話を理解している。買い物に付いてくるか?と家の中で言うと、とてとてと自分で先に歩いて車の前まで行って座って待ってる。買い物の準備を全くしない段階でだ。
そして、俺が寝転がってテレビを見ていて、チャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばすと、リモコンをこちらに前足で弾いて渡すことも良く有る。
俺達二人は、ひいき目無しで『超頭の良いワンコ』だと確信している。
だから、碧は真剣に怒るのだが、今日に限って言う事を聞かない。
終いには、俺の掌から腕を伝って腰、足と、爪を立てて猫のようによじよじと降りてしまった。さすがに飛び降りられるだけの身体はまだ出来ていない。
「もお! そんなに言う事聞かないなら、ミルク抜きにするからね!」
床に降り立って、歩き出した所で碧が晩御飯抜きを宣言すると、ピタッと止まって、碧を仰ぎ見る。
「ミルク抜き!」
10秒程碧の顔をじっと見るぺんぺん。
「ミルク抜き!」
……にらめっこが続いた。
そして、ぺんぺんは振り返るようにして俺の顔を仰ぎ見る。
「ミルク抜きだってさ」
そう言ってやると、てててと俺の足下まで来て、俺の右の靴をペンペンんし始める。
「俺にしてど~すんだよ」
何故か俺の靴をペンペンるすのでそう言ってやると、そのまま頭だけ振り返って碧を見るが、5秒後俺の方に向き直って、前足でのペンペンを再開した。
どうやら、俺に取りなして欲しいようだ。碧の方を見ると、未だ口をへの字にしている。
仕方が無いので、しゃがんでぺんぺんを抱き上げると、碧の前まで持っていく。
「ほら、ぺんぺん、ごめんなさいは」
そう言うと、ぺんぺんは掌の上でうなだれてシュンとする。
「反省した?」
シューン
「もう、ホントに危ないんだからね、こんなマネ二度としちゃ駄目だよ、絶対。今度したら3食ミルク抜きね」
シューンとしていたペンペンは、最後の3食ミルク抜きでビクッっとして碧を見上げた。
育ち盛りに3食抜きはキツいようだ。
「全くもー」
そう言いながら、碧は俺の手からぺんぺんを抱き上げると、まだ終わっていなかったのか水晶柱の柱へと向かった。
「ねぇ、お兄ー、私取るとしたらどの魔法かスキルが良いと思う?」
どうやら、パラメーターの設定は終わっていたが、今後の『魔法・スキル』の選択の為にリストを見るようだ。
「出来れば『回復魔法』が欲しいな」
「えぇー、回復はポーションで良いじゃない。錬金術有るんだから。攻撃系の魔法かスキルが良い」
錬金術はな… まだ材料が手に入らないから作れる段階じゃ無いんだよな。低級回復薬の材料は『スライムゼリー』と『トレントの樹液』だ。
どちらも表層モンスターのスライムとトレントから取れるはずなんだけど、出口付近にはまだ出て来てくれてない。
両方とも移動は得意では無いタイプのモンスターなので、ここまでは出て来てはくれないかも知れない。
「錬金術を使うんなら、最終的には『鑑定』のスキルも取らないと駄目だぞ。品物の名称が分からないと錬金出来ないからな」
「…それも有るのかー、でも、鑑定も単独系統だよね。×3だよね」
『盗む』『罠解除』『罠発見』『気配察知』の様にいわゆる『盗賊系スキル』として系統化されているものも多いのだが、『鑑定』は『錬金術』や『転移』と同様単独系統に成っている。
『錬金術』と同系統でもおかしく無い気がするが、錬金術は『スキル』では無く『魔法』のカテゴリーだ。
『調合』のスキルがあるのだが、これともセットに成っていな。意味不明だよ。
ただ『鑑定』は、『錬金術』の為だけで無く、ドロップアイテムの鑑定や宝箱の中身の鑑定などにも使える為、必須スキルの一つで有ることも確かだ。
しかし、最初の段階では特定の攻撃手段を手に入れることも重要ではあるんだよな。モンスターを殺せなきゃ全てが始まらないのだから。
「こういう時、人数が少ないと不便だな。せめてもう一人居れば何とか成ったのに」
このダンジョンに置いては、戦力としてのパーティーでは無く、スキルや魔法を分け合うと言う意味でのパーティーで有る事が多い。
それ故に、その中の一人に問題が発生した時には、パーティーが壊滅したり、パーティー自体を維持できなくなるケースも多くなる訳だ。
「猫の手は借りられないから、ぺんぺんの手を借りる?」
そう言って碧は笑った。おれも肩をすくめて笑う。
あと一年もして成犬になれば多少は戦力には成るだろうけど、魔法やスキルを分け合うと言う観点からは意味が無いんだよな。
そんな事を話していると、碧に抱えられたぺんぺんが碧の手に抱かれたまま右前足を伸ばして水晶柱にペンした。
その瞬間、青い光がぺんぺんの前足を被い、その甲の部分に俺達の時と同じように⇔マークが表示され、ゆっくりと消えていった。
…………
俺と碧はしばし固まった。
「……人間じゃ無くても良いのか?」
「ユーザー登録出来ちゃったんだ…」
硬直から解けた俺達は、互いに顔を見合わせ、そして俺達に交互に顔を向けるぺんぺんに向き直る。
「ユーザー登録出来たけど、魔法やスキルとか修得出来るんか? さすがに無理か?」
「さすがに…無理だよね。ってか、ステータスって見れるのかな? ぺんぺん、ステータス出してみて」
そう言うが、幾らぺんぺんが頭の良い犬だとは行ってもそこまでは無理だろう。……でもま、試すだけは試すか。
「ぺんぺん、ほら、こうやって、ステータス、って言えばこんな風にコレが出てくるから、やってみ」
実演してみせるが、さすがに無理だろうと思いながらの、一応やってみよう、と言うものだった。そもそも『ステータス』って言えないし。
これが猫だったら、犬よりは人間の言葉に近い音を出せるんだろうが、犬の声帯では無理だ。
「やっぱ無理だよね」
そう言って、碧は力なく笑っている。
そんな中、ぺんぺんは碧に抱きかかえられたまま、自分の右前足をじっと見ていた。そして、次の瞬間、その前足の上に半透明のホログラムスクリーンが浮かび上がった。
「「出た!」」
思わずハモった俺達は顔を見合わせ、次いでそのままぺんぺんのホログラムスクリーンをのぞき込む。
だが、当然ながらこの表示は本人以外は見られない為、ただの白いスクリーンになっていた。
しかし、ここまで来れば可能性は有る。
「ぺんぺん、ここに何か書いて有ると思うんだけど、それって俺達には見えないんだよ。それを俺達にも見せようって思ってくれるか」
この表示はデフォルトでは他者には見えないようになっているが、見せようと意識すれば他者にも見せることが出来る。
むろん、そこまでの意味を生後1ヶ月足らずのぺんぺんに求めるのは…あ、見えた。
そこには、俺達のステータスと同様にこう書いてあった。
・氏名 鴻池 ぺんぺん
・年齢 0歳
・Level 1
・生命力 10
・魔力量 10
・スタミナ 03
・筋力 03
・知力 09
・素早さ 04
・魔法 無し
・スキル 無し
・経験値 1
………
「碧さんや、これ、おかしくないかのう?」
「ぷぷぷぷぷっ、た、正しいよ。間違いないよ。ぷぷっぷ」
碧のヤツは、笑うのを必死にこらえながら言い切りやがった。
……ってか、おかしいだろう!!!! 何で、生後1ヶ月にも満たない子犬より俺の方が『知力』が低いんだよぉぉぉぉぉ!
100歩譲って、ぺんぺんの頭が良いのは理解してるし認めるけどさ、俺より高いのは変だろぉぉぉぉぉぉ!
心の中でそんな絶叫を叫ぶ俺に、ぺんぺんはさも気にするなとでも言うように、俺の手をペンと一叩きした。
…………人間の尊厳って何だろ?
たっぷり5分程落ち込んだ俺は、気を取り直して、ぺんぺんが初期『魔法・スキル』の修得が可能か試すことにした。
まだ半笑いな碧の手からぺんぺんを奪い取ると、水晶柱の上に連れて行く。
「ぺんぺん、力が欲しいって思いながらこの上に手を乗せるんだ。で、さっきみたいなスクリーンが出て来たら、また俺たちに見せたいって考えるんだ、良いか?」
そう言って、ぺんぺんを見るとぺんぺんは右前足を伸ばして水晶柱の上面にペンと前足を乗せた。
すると、白一色のホログラムスクリーンが表示され、次の瞬間には文字が浮かび上がった。
「うん、さっすが、ぺんぺん、知力9はダテじゃ無いね。ぷっ」
おにょお~れぇ、何時か仕返ししちゃるからな、覚えてろよ碧。
……気を取り直して覗いたホログラムスクリーンにはこう表示されてた。
・ファイアー・ボール
・エアー・バレット
・ショルダーチャージ
・咆哮
・爪斬
・空歩
・金剛
「お兄ー、…これってさ、犬用だよね」
「ああ、種族によって選択できるものが選ばれてるって感じだよな」
実際、この最初の段階で選択できるものは、それぞれの個人の特性に合った物なのじゃ無いかと言う話は昔からあるらしい。
ダンジョンの事を個人で纏めていた冒険者のブログにその事が書かれていた。
つまり、俺の場合で行くと、
・ファイアー・ボール
・アイス・ボール
・ストーン・ボール
・ライティング
・唐竹割り
・牙突
・転移
の7個は元々才能があり、これに無い水系統・風系統・雷系統・闇系統は得意では無いことになる。
ただ、このダンジョンのゲームシステムでは、魔法にしろスキルにしろ、誰が使っても同一の力が出る事に成っている。と成れば特性に対する優劣は発生しないことになる。
この辺りのことが、この理論が否定される理由だとブログ管理人は語っていた。
だが、今回のぺんぺんの初期選択リストを見ると、明らかに犬でも使えるモノに限定されているのが分かる。
と成れば、あながち間違いでは無いのかもしれない、なんて言う風にも考えたくなる。
ただ、単に、種族に有ったモノの中からランダムに7個選ぶ、と言うシステムの可能性も高いんだけどね…
ペンペンペンペン
思考の水底に潜っていた俺は、ぺんぺんに俺の手を叩かれる事で意識の水面へともどって来た。
「どうした?」
ペンペンするぺんぺんに声を掛けると、ぺんぺんは左前足で右前足の上に浮かんでいるホログラムスクリーンの文字列を指し示した。
「…何が書いてあるか、読めって事か?」
さすがに知力9でも日本語までは読めなかったらしい……
ぺんぺんは、そうだとばかりに俺の手を一度ペンと叩いた。しょうが無い、知力8の俺が読んでやろう…
「上から、火の玉を出して相手にぶつける魔法、次が風のって言うか空気の塊を敵にぶつける魔法、3番目が敵に体当たりしてダメージを与えるスキル、4番目は大声って言うか吠えて相手の行動を邪魔したり一時的に動けなくするスキル、5番目は爪で切り裂くスキル、6番目は何歩か空中を歩けるスキル、最後が一時的に動けないけど身体が硬くなってダメージを受けなくなる守りのスキルだな」
全てを話し終わった瞬間、魔法やスキルを修得した時に出る淡く赤い光が右前足から出て、ホログラムスクリーンが消えた。
「えっ、もう選んだの?」
碧が驚きの声を上げる。だが、誰かさんも似たようなことをしたよなぁ~、と俺は声を大にして言いたい。
「ねえ、ぺんぺん、なにを選んだの?」
あ、俺もそれは気になる。ステータスを表示してもらおう。
そう思っていると、俺の手の上に居たぺんぺんが、突然その手の上から飛び降りた。
「あっ!ばぁ…」
慌てて手を伸ばそうとする俺をよそに、ぺんぺんは空中を3回程踏みしめて、階段を降りるようにして床へと降り立っていた。
「ふっふぁー、っちょっと、ぺんぺん! ビックリさせないでよ。心臓が止まるかと思ったじゃない!」
息を止めていた空気を一気にはき出した碧は、床に降り立ったぺんぺんを捕まえると、額に弱めのデコピンを3回繰り返していた。
どうやら、ぺんぺんが選択したのは『空歩』だったようだ。
…今日は、色んな意味で濃い一日と成った。




