00・面倒事は嫌いです
おい、考えても見ろよオレ。
前までどこに通ってた!?そう、夢も何もない青春臭い男子高校だ!
寮の自分の部屋に篭りながら頭を抱えながら一人の少女姿の雨宮 水人が扉に寄り掛かっていた。
さっきまで何にも気付かずに顔を冷水で洗い、歯を磨き、ゴボゴボと嗽をして少しランニングに行こうと考えていたのだ。しかしなんだ?外に出たら女だらけだ。
寝惚けてるのか?と考え頬を抓る。
「いひゃい………へッ?」
痛いと呟いてから自分の声にはっとする。
変に女っぽい。確かになんか自分の声に近いのだが、女だ。完璧だ。
「おいおいおい!ちょっと待ってくれ!」
走って洗面所の扉を開けると、変に小奇麗だった。もっと色々散らかってただろ!?と突っ込みながらお目当ての鏡に走り寄る。
ガッと鏡の端を掴むとソッ…と恐る恐る覗き見る。
誰だこいつと一瞬考えたが間違いないと確信した。元から女っぽい肌色と言われていた真っ白い肌に今の状況に驚いたように瞳を大きくしたオレだ。地毛の茶髪がまた肩とちょっとくらいと結構長い。変にサラサラ言ってたのはこれかと勘付いた。
ペシペシと頬を少し叩く。引っ張る。
「マジッ!?」
ガッと頭を掴むとそう叫ぶ。誰だって一日寝てたら性転換してたら驚くだろう。
それにしても、背もかなり縮んでるなと思い立つ。脚は結構長いのだろう。身長は…鏡を掛けていた高さからすると150cmくらいか。うんと頷く。
それに…パジャマ代わりにしているジャージの胸の部分が少し膨らんでいる。
「…む、胸なの――」
「おはよー!ミッちゃん!」
「キャァァアアアアアアアアア―――ッ!!!!?」
ガシッと胸を背後からいきなり掴まれて悲鳴を上げる。ムニュと聞こえたのは聞き間違いだきっと。
手を振り払うと素早く振り向く。
一瞬、目を疑った。物凄く頭を抱え掛けた。唖然に口を開けてしまう。
「うふふ、少し育ったんじゃないの?」
同室の奴だ。少しウエーブが掛かっているあの髪に不気味な笑顔。一言で言えば美人なのだが、面倒な性格は変わっていないみたいだ。男の時も嫌に引っ付いて来たが女だとこうなるのか。
「お、おい逸迩!何するんだ!」
同じ部屋になってからまだ半年経っていなかったが、結構中の良い友達だった篭目 逸迩(今女)に怒鳴るように言う。正直心臓止まるかと思ったのだ。それくらい良いだろう。
「逸迩?誰それ。わたし逸美だけど」
「ぶっ」
思わず吹いてしまった。おいおい名前の語尾を美に変えるだけで女っぽく見えるんだぜ!?迩を美に変えて逸美かこの野郎。死ねオレ。
「ど、どうかしたの?」
何でもないと手を振りながら壁に頭を軽く打つ。
痛いな、軽く。夢か、夢だな。この三階から落ちたらこの夢は覚めるだろうか。こんな夢を見るオレの頭も治るだろうかと本気で考える。
バカ考えろ。一日で騙すように同室の男子生徒を女にすり替え、オレを女子校に移せば良いだけじゃないか。そして顔も体も整形すれば良いだけじゃないか。…何日寝ればそれは起こるんだよ!違うだろ!平凡返せこの野郎!
「ちょ、頭そんなに打ち付けてどうしたの!?」
「自分を取り戻す!!!」
ガンガンと頭を5回ほど打った時に肩を逸美(自称)に掴まれ壁から引き離された。
「なんか今日可笑しいよ?」
あははと苦笑しながら言う友人に言われた一言に地獄に落とされた。可笑しい?そうか可笑しいか、オレ。確かに、こんな夢見るなんて終わってるな。死ぬか、夢の中だとしても。目覚めたら精神科行こう。
走り出そうとすると逸美に体を抱き締められる。
「今度は何!?」
「自分を探しにちょっと飛んで来るんだ!!飛ばせてくれ!一回だけで良いから!!頭から行くから!」
「だぁ〜めッ!!」
見事に体をいきなり離され無様に床を転がる。あぁ、部屋の良い匂いがリアルだ。死にたい。飛ぼう。
体を起こそうとすると今度は馬乗りされた。女子の体だからか、逸美の体が重い。
「退け〜〜!」
ジタバタと動くが前に進まない。逆に体力が失われる。
腕に力を込めようとするが如何せんアホみたいに華奢化してしまった体では動けない。
それどころか脇に這う感覚にゾッとする。逸迩の時にもやられた悪夢再来。
「コチョコチョ〜」
「いにゃぁああぁ〜〜〜!!!許して無理無理無理〜〜!!!」
絶叫が響き渡った。
え〜〜…新作です。
如何でしょうか?出来ればまだ出したかったのですが生憎時間がありませんでした!
水子ちゃんはこれから自分の趣味の外見になっていくので心配なくw
次回予告
『水子…ねぇ』
当たり前の男子生活がいきなり壊されたら誰だって思うだろう。何でこうなった?と。
『水子さん、おはようございます』
今まで男だった奴が女に。そして逆もあると来た。主にそれは先生達の事だが。
とりあえず散々悩んだ挙句、オレは校舎に向かう事にしたんだ。
次回、雨宮 水人の性変化第一話!『華麗なる学園生活?』に面倒な事は嫌いだこの野郎…。