表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JOAT -何でも屋-  作者: 多岐川暁
Chapter.V:心から幸せを願う(intermission)
21/30

Act.04

 小雨降る中、依頼通り見つけた人物に駆け寄ると声を掛けた。

「堀口さん!」

 その声に前を歩いていた二人が足を止め振り返る。

 俺の顔を見た途端、山口は驚いた顔をし、堀口はあからさまに顔をしかめた。そんな二人の目は赤く染まっており、泣いていたことが伺える。

 改めて二人の前に立つ俺自身も喪服を身につけていて、スーツの内ポケットから名刺入れを取り出すと二人に対して名刺を差し出した。

 二人とも受け取ってはくれたが、その顔に困惑は隠せない。

「……何でも屋?」

「はい、実はお二人の会社に伺ったのも依頼のためでした。それから、お二人宛にお手紙を預かっています。乾さんから」

 途端に二人は驚きに目を見開く。

「どういうことだ? 乾は君の何でも屋に依頼していたってことか?」

「はい、ご依頼を受けて会社の方へ伺わせて頂きました。内容について話すことはできませんが、この手紙のその依頼の一貫です」

 いや、実際には手紙を渡すのは別件依頼だったが、この際、話しを通りやすくするにはこの説明の方が話しが早い。

 小雨が降っていることもあり、手紙を渡してすぐに立ち去りたい気分でもあった。そもそも、この二人に余り良い印象がないのも理由の一つだ。

 すぐに乾から預かっていた手紙を差し出せば、受け取った堀口がすぐさま封を切り文面に目を通す。

「それでは失礼します」

 そのまま背を向けて立ち去ろうとしたが、呼び止められて足を止める。

「待ってくれ。もしかして乾は、私たちの仲を……」

 その言葉の続きは果たしてどちらなんだと詰め寄りたい気分になるが、それはできない。

「プライバシー保護の観点から依頼を公表することはできません。それでは失礼します」

 今度こそ一礼すると二人に背を向けた。

 手紙に何を書いてあったのかは知らない。ただ乾のことだから、二人を責めるようなことは書かなかっただろう。そんな確信があった。


 乾の依頼が完了して三日、再び乾から連絡があった。空き時間で乾の元を訪れた場所、それは大きな大学病院だった。

 乾は身体中をコードに繋がれ、横たわったまま弱々しい笑顔で迎えてくれた。それを見た瞬間、酷く驚いたことを覚えている。

「依頼をしたいんだ」

 そう言って乾はベッドサイドにある引き出しから封筒を取り出した。宛名は山口と堀口、二人にあてたものだった。

「これを僕が死んだ後に届けて欲しい」

「死んだ後って……」

「八ヶ月前にね、一年の余命宣告を受けていたんだ。でも、昨日次に発作があればもう助からないと医者にも言われてね。だから、これを二人に届けて欲しいんだ」

 確かに会った時から乾の顔色が悪いとは思っていた。けれども、そこまで酷いとは思ってもいなかった。

「お二人に知らせないんですか?」

 思わず強い口調で俺が言えば、乾は困ったように笑う。その笑顔が酷く歯痒い。

「あぁ、もう私の身体は長くない。それだけは分かっているんだ。人間っていうのは死期が迫ると分かるものだよ」

「でも……」

「いいんだ。分かっていたから君たちに依頼したんだ。私からの依頼がこれが最期になる。お願いできないだろうか」

 改めて依頼をお願いされ、俺は何も言えずにただ乾を見つめていた。だが、動揺する俺とは違い、コウは淡々とその封筒を受け取ると、乾が用意していたお金を受け取った。

「確かにお預かりしました。お二人に必ずお渡し致します」

「あぁ、頼むよ」

 それだけ言うと、眠るように乾は目を瞑った。それからさらに二日後、乾の訃報を聞いた。

 遠縁が乾の葬式を執り行うと聞いて、乾の手紙を渡すためだけに俺は斎場に足を運んだ。


 車の扉を開ければ、運転席には俺と同じく喪服を着たコウが座る。

「渡せたか」

「あぁ、渡せた……なぁ、乾さんはあの二人が既に付き合ってたことを知ってたと思うか?」

「さぁな。そこまでは分からない」

「俺は、知らなければ良いなって思うんだよ」

 終始穏やかな乾が裏で何を思っていたのかは知らない。それでも、俺が見える範囲では乾は、本気で二人の幸せを願う人だった。

 いや、良い人だったことはわかる。事務所で無神経な質問をした俺に、ゆっくりと説明だってしてくれた。

 子どもほど年の離れた人間に、色々砕いて説明してくれるのは充分に優しさだ。普通であれば、余程身近な人間でなければ、面倒くさくて途中からおざなりになってしまう。

「ならそう思っておけばいい。あの人は一度だって言及はしなかったんだからな。自分の余命についてもだが」

 コウも乾の顔色の悪さには気づいていて、乾の依頼内容から、もしかしたら先が短いのかもしれないと最初の段階で踏んでいたらしい。

 確かに、そんな前提がなければおかしな依頼ではあった。気づけなかった自分が浅はかだっただけだ。

「なぁ、あの二人、乾さんの死に対してどう思うと思う?」

「どうとは?」

「隠れてこそこそ付き合ってたとか、罪悪感あったりしないのかなぁ」

「別に直接死の原因でもないのに罪悪感も何もないだろ」

「いや、でもさ! 乾さんはあの二人の幸せをあんなに願ってたのに」

「……それなら言うが、乾さんは本当に心からあの二人の幸せを心から願っていたのか? もしかしたら二人の関係を知っていたからこそ、こういう復讐を考えたとも思えないか?」

 確かにそういう考え方もできるから俺も言葉に詰まる。でも、そういう人じゃなかったと信じたい。

「結局、分からないことを考えてたらキリがないだろ。もう依頼は終わった」

 コウは基本的にシビアだ。特に人の死については、どこか淡々としていて時折コウの考え方が分からなくなる。

 それでも、今はコウの言い分を認めたくなかった。

「でも、乾さんはそんな人とは思えない」

「だったらそう思っていればいい。どれだけ考えても既に答え合わせはできないんだからな」

 正直言えば、俺としては余命がないことで追い詰められている乾に気づかず付き合い始めた二人が罪悪感を抱けばいいとすら思う。

 でも、それが正しい希望かと問われたら違うと思える。それは歪んだ考え方だと思うし、願うことでもない。

 なら同じようにコウもその歪みを知っているから依頼者に肩入れしないのかと思えば、恐らくそれは違う。

 考えている内に一体何を考えていたのかわからなくなってきて、整えられた髪を掻きむしる。

「あー、もう、俺は考えるのに向いた頭は持ってないんだよ。くっそー。人間ってマジわかんねぇ」

「別にわからなくても問題ないだろ。少なくとも、分かっていることもある」

「何がだよ」

「トオルは今、お腹が空いている」

 車内に沈黙が落ち、そのタイミングで盛大に俺の腹が鳴った。まるで腹が返事をしたようなタイミングで大きくため息をついた。

「あー、そうだな。確かに腹が減ってる」

「かなり遅くなったが昼食でも取って帰るか」

「もう、何でもいいよ。任せる」

 それだけ言って行き先はコウに丸投げした。結局、コウも考えるのは面倒くさかったのか、車を停めたのはファミレスの駐車場だ。

 だが、エンジンを停めたと同時にコウの携帯が鳴り出す。仕事用の電話だとわかり、俺は少し悩んだ末に背もたれに身体を預けた。

 下手すれば、このまま次の仕事に向かう可能性があることも考えれば、店に入って席を確保しても意味がない。

「はい、JOATです……あぁ、お久しぶりです……はい……」

 一分ほどだっただろう。電話が終わった円城寺は、やはり予想した通り、車を降りることなく先ほど切ったばかりのエンジンを掛けた。

「何だって?」

「これから事務所に西垣さんが来る。トオルが刺された依頼の件について説明してくれるそうだ。それから別件について聞きたいことがあるとトオルをご指名だ」

 別件というのは、恐らく二週間ほど前に線路へ突き飛ばされたことだろう。あの件で犯人が捕まったという報告はない。

 ただ、深く帽子を被りシャツにデニムを穿いたごく一般的な男だったことしかわかっていない。そんなことは警察のデータを見たから分かっている。

 なら一体、今さら何を聞きたいのか分からずに首を傾げるしかない。

「別件って何があった」

「ん? あぁ、あの時コウがいなかったから話してなかったけど、駅のホームから突き飛ばされたんだよ。あやうくミンチになるところだった」

「いつの話しだ」

「刺された怪我が治った日」

「そういうことはもっと早く言え。仕事上での逆恨みの可能性もあるし、円城寺の関係もある」

「あー、そういえばそっち方面もあったか。いや、でもそれなら直接コウに行くだろ。逆恨みの件だって、逆恨み受けるような依頼受けるようになったのだってここ最近だろ。それまで平和なお仕事しか受けてないし」

 だがそれについてコウからの返事はない。黙り込んでしまったコウに視線を向ければ、運転しながら何か考え始めたことだけはわかった。

 これ以上の会話の継続は無理だと踏んで、俺は窓の外に視線を向けた。

 相変わらず小雨は降り続いていて、細かい粒が窓に張りついては飛んでいく。それをぼんやりと眺めている内に事務所のあるビルに到着した。

 駐車場から事務所へと戻れば、着替える間もなく西垣と松葉が現れた。サーバに残っていたコーヒーは焦げ臭くて飲めたものじゃなくて、渋々キッチンでアイスティーを用意するとそれぞれの前に置いてから俺もコウの横に腰を落ち着けた。

 どうやら俺がいない間、西垣はたわいない話しで繋いで待っていてくれたらしい。

「前回、あなた方が受けた依頼人、手嶋のストーカーが刺殺された件ですが、犯人が逮捕されました」

「え? 捕まったんですか!?」

「えぇ、夜のニュースには出るから名前を出しますが、大崎尚、手嶋の元交際相手でした」

「あの子、恋人いたんだ」

 思わずと口にした俺の声に西垣さんは苦く笑う。コウから盗聴器の件も聞いているから西垣としても笑うしかないのだろう。

「大崎は手嶋に振られたんですけど、何度もよりを戻そうとしていたみたいですね。まぁ、ストーカーもちょっと入ってたみたいです」

「うわぁ、ダブルストーカー」

 思わず呟いてしまったが、隣のコウにしか聞こえなかったらしい。コウにはしっかりと一睨みされた。

「それで今回円城寺さんに熱を上げてるのを見て逆上したみたいですね。今までアリバイがあったんですが、そのアリバイを証明した大崎の友人が証言を覆したことで逮捕となりました」

「それは良かったです」

 本当に良かったと思っているのかと問い掛けたくなる顔で円城寺は短く言うと、すぐに次の話題を振った。

「それで、もう一つの件というのは?」

「岸谷さんから聞いていると思うのですが、岸谷さんが駅のホームから突き飛ばされた件についてです。あれから少し経ちましたけど、あの時のこと少しでも思い出せませんか?」

「あー……」

 それだけ言うと言葉に詰まった俺は、ポリポリと頬を掻いた。

 あれから何度も思い出そうとしたけど、落ちてから頬を叩かれるまでの記憶が完全に白い。むしろあの状況でよく自分でも避けたと思うくらいで、とにかく記憶がない。

 一層のこと、監視カメラにことの一部でも映ってないかとハッキングまでしたけど、どうも俺が立っていた位置が悪かったのか、監視カメラには欲しい情報は何も映ってなかった。

 ただ、別のカメラに俺が突き飛ばされた直後、もの凄い勢いで逃げ出す男の姿は映っていた。それが警察が追っている被疑者ということだが、あれは俺から見ても一般的すぎて探せないだろうな、という気がしている。

 とにかく特徴がなさすぎる。まさに日本人の平均的身長にありがちな服装。そして顔はカメラに一切映っていない。

 カメラを切り替えて追いかけてみたけど、駅を出たところでカメラのない裏路地に入ってしまい、そこからの映像はどれだけ探しても見つからなかった。

 恐らく監視カメラのない場所で着替えて、それから何食わぬ顔で一般人に混ざったのだろう。だとしたらあんな特徴のない男、見つけられる筈もない。

 それなら自分の記憶が頼りだとばかりに記憶を探ったが、とにかく犯人を見た記憶がない。

 記憶にあるのはただ突き飛ばされた瞬間の浮遊感と、落ちた時の衝撃、目の前に迫り来る電車の恐怖くらいのもので、それ以上のものはない。

 あの瞬間、誰にとか考えてもいなかったし、目の前の状況に対応するだけで精一杯だった。

「本当にすみません。完全に記憶が飛んでるんですよ。でも、思い出したところで犯人に繋がるようなものはないと思います。犯人確認するよりも目の前のことで手一杯でしたし」

「情報を伏せて自分で調べてるようなことは?」

「してませんよ! もしかしたら、また狙われるかもしれないのに情報伏せる意味がないじゃないですか。捕まえて貰った方が俺としても安心ですし!」

 実際、あれ以来移動は全て車だ。駅のホームに立つにはちょっとしたトラウマになっている。

「他に突き落とされるようなことをした覚えはありますか?」

「少なくとも殺されるほど恨まれた覚えはないんですけどねぇ」

「こういう商売をしているのに? 実際、刺されてもいるのに?」

「いや、手嶋さんの件だったら例外ですよ。そもそも……」

 続けようとした言葉にハッとして口を噤む。

 手嶋が既に数回、精神鑑定を何度も受け直していることを知っている。知っているが、それは警察内での極秘情報で一般人に知られていることではない。

「そもそも?」

「そもそも、刺されるようなことはしてないって言いたいんです。基本的にそんな危ない仕事受けてませんよ。なぁ、コウ」

 思わず隣にいるコウに話しを振ればコウも頷いた。

「えぇ、そもそも事件性に繋がりそうな仕事は受けていません。ただ、恋愛が絡むと難しいのも事実です。今回トオルが刺されたのもそれが原因ですし」

「円城寺さんの顔を使って恋人を別れさせたり、などという依頼はないんですか?」

「ない、とは言いませんよ。ただ、今までで一件だけです。そして、その件では捜査二課の方にお世話になっておりますが、知りませんでしたか?」

 途端に西垣は不快そうに眉根を寄せた。

「それはいつのことですか?」

「一ヶ月ほど前のことだったと思いますよ。確か捜査二課の三井さんという方です。別に何かしたという訳ではなく事情を聞かれただけですよ。危うく詐欺の片棒を担がされそうになったので」

 刑事内でも担当課が違えば情報は共有されないらしいことは知っている。どうやらそれはコウも知っていたらしい。

 というか、多分、コウは機嫌が悪い。刑事相手にしては随分容赦ない物言いをしている。普段であれば面倒は事なかれ主義というタイプなのに、これでは西垣辺りに変に目をつけられてしまう。

 既に西垣の隣に座る血気盛んな松葉は、かなり目つきが鋭くなっているし、ここで事態を畳み込んだ方が賢明だろう。

「あのー、すみません。何か思い出したら連絡させて貰います。俺もそろそろ次の仕事があるんで」

 そう言って壁に掛かる時計を指させば、それぞれが時計に視線を向ける。時間は既に四時を回っている。

 実際、五時半から恒例の犬の散歩の仕事が入っているし、それまでに着替えを済ませて食事も取っておかないと身体が持たない。

「次は何の仕事ですか?」

「え? それ答えないといけないですか?」

 松葉の問い掛けに素で答えてしまい、我に返った時は既に遅い。松葉の目が完全に鋭く睨み付けてきて、慌てて取り繕う。

「いや、その一応、事件に関係ないことはプライバシーの問題もあるから」

「それはこちらで判断する」

「いや、でも……」

 火に油を注ぐつもりはなかったが、さすがに消化が追いつきそうにない。ついコウに助けを求めてしまえば、コウは俺にしかわからない程度に薄く笑う。

 その視線はバカな奴とでも言わんばかりだ。まぁ、自分でもバカをやった自覚はあるので言い返すこともできない。

「捜査令状は? そもそも、こちらもプライバシーを扱う仕事をしている以上、言われたから簡単に情報を渡す訳にはいきません。それなりにご用意をして頂かないと」

 わー、笑顔だ。コウが笑顔だ。大盤振る舞いのような笑顔に背筋が凍えそうだ。

 棒読みのように頭の中で繰り返していれば、コウの言葉に激昂したのか松葉が立ち上がる。

「なっ!」

「落ち着け」

 そんな松葉の腕を掴んだのは西垣だ。やはり年の功か、コウの簡単な煽りに乗ったりはしないらしい。

「すまんな。血の気が多くて」

「いえ、構わないですよ。名前は言えませんが、トオルの仕事は犬の散歩と、ストーカーされてる女性のお迎えくらいです。でも、次回は捜査令状の用意をお願いしますね」

 そこで締めれば、西垣は困ったように笑うとソファから立ち上がる。

「できたら、それが必要ないことが一番ですがね」

「それはお互い様です」

 そこからは軽い挨拶をして二人が事務所を出て行く。だが、去り際、松葉に憎悪を込めた視線で睨まれ嫌な汗をかいた。

 そもそも、そこまで憎しみを込めた目で見られるほどのことをした記憶はない。どうにか愛想笑いで二人を見送ると、扉が閉まった途端盛大なため息をついた。

「何かさぁ、俺、松葉さんに何かしたかなぁ……すげぇ目で睨まれたんだけど」

「睨んでいたな。最初から松葉さんはトオルのことが気にくわなかったみたいだぞ。最初からあんな感じだった」

「えー、俺、あの人に何かした記憶ないんだけど」

「案外、お前を突き飛ばしたのあの人かもしれないな」

 意地の悪い笑みを浮かべながらそう言ったコウに、俺としてはげんなりした顔をするしかない。

「ないだろー。そもそも体格が違うしさぁ」

「やっぱり自分でも調べてるのか」

 先ほどまでの笑みを消したコウに、どうやら真面目なお話に移行したと踏んで俺も再びソファに腰を落ち着けた。

「まぁ、普通は調べるだろ。調べられるんだからな」

「それで結果は?」

「惨敗。特徴なし、顔なし、こんなんじゃさすがに見つけられない。指示されたのか、慣れてるのか、それすらも分からない。でも、一体何だろうな。俺、ヤバいものでも見たのかなぁ」

 ぼやいてみたが、コウはそれに乗ってこない。それどころかソファから立ち上がると机に置いてある日誌を開いて何かを確認し始める。

 こういう時は話しても無駄からすっかり氷が溶けて薄くなったアイスティーを飲んで大人しく待っていれば、コウが音を立てて日誌を閉じた。

「最近……新規依頼が増えていると思わないか?」

「ん? あぁ、確かに増えてるな。そういえば、警察のお世話になってる依頼は全部新規だった気がする」

「……単純に知名度が上がったとは考えにくいな」

「そもそも最近は宣伝もしてないし、基本口コミ状態だったしなぁ。一層のこと、書類に紹介者欄作るのも手かな」

 思いつきで口にした言葉だったけど、それはそれで悪くない気がする。実際、それで人の繋がりも見えてくるし、定期で頼んでくれる人に聞いてみるのも一興かもしれない。

「そうだな。そうしてくれ」

「何か気になることでもあるのか?」

「……まだ分からない。ただ気にはなる」

 再び考え込んでしまったコウを放っておいて、俺は早速書類を訂正するためにソファから立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ