We are King
神父は、王の元に行くまで何度も同じ事を話ていた。
この国の王は、私の知る限り最高だ、と。
王の為なら自分の命などゴミ当然に捨てれる、と。
そして、遂に王座と思われる部屋の豪華な装飾の扉の前に付いた。
その時に、神父は今まで口にしなかった事をした。
「いいですかァ?王を侮蔑するな。首を跳ね飛ばされたくなくばな……」
口元などは包帯で見えなかったが、右目の歪み具合で醜い笑顔を作っているのが4人には分かった。
神父が扉を二度ノックすると、向こう側から「どうぞ」と今にも消えそうなか細い声が聞こえた。
「入ります」と神父は口にしながら、右脇に抱えるメアーユが邪魔くさそうに扉を開いた。
部屋に入ると、豪華な装飾は施されているがどこといっておかしい所は無い。
そんな部屋の中央に玉座に座る少女が居た。
「……お、女の子!?」
サハタがつい口にしてしまった。
「何だ、少女だと困る事でもあるのか?」
神父の骨の様な指がサハタの首筋に添う。
「止めて、P3」
「申し訳ございません」そう言って神父は、一歩下がった。
「初めまして、アルマウヴァ王家20代女王イヴ=アルマウヴァ、です。え、と、P3。彼らは何故、此処に」
「はい、この人外の捕獲の手伝いをして頂いた者が2名。メアーユが疲労したので看病していただいたのが2名。計4名に世話になったので是非お礼をしよう、と思ったので連れて参りました」
「そ、そうですか。たまには良い事も出来るんですね」
その王は、赤い髪を両方で小さく括り、所々素肌を晒す服を着ていた。
とても優しい眼をしていた。
「何と、何と!!王から褒美の言葉など……ハッハー!!」
「あの、P3、神父」
シルティーンが小さな声で神父に呼び掛ける。
「アー!?」
どうやら絶頂の気分を貶されたのが気に食わなかったらしくこれまた殺気染みた右目で睨んでくる。
「礼って何ですか。金ですか?」
「いや、違う。お前達今この国に来たばかりで仕事が無いのだろう?」
「え、まァ、はい」
一同が頷く。
「だから、私から仕事をくれてやろうと思ってな。遠回しだが金だな」
シルティーンがその場で大きく歓喜しながら飛び上がった。
「自分、面倒くさいです」
そこへリフルベが手を上げて主張した。
が、簡単に返された。
「別に働かなくても構わないが、ゴミ掃除に巻き込まれないようにする事だな」
「P3!貴方、まだそんな事をやってるの!?」
彼らは、後日分かった事なのだが、神父の言うゴミ掃除とは、この国に必要ないと思った罪人や怠け者を神父自ら処刑しに行く掃討行為らしい。
「すみません―――――では、話を戻す。今回の仕事は、とても簡単だ。この国が所有する鉱山が有るのだがな。そこで少し働いて来い」
「……それって、アルバイトじゃないですか?」
エミルが直球で答えた。
「いや、違う。詳しくは向こうに居る奴に聞きなさい」
そう言って、神父は、4人を部屋から押し出した。
4人は、最後にイヴから「頑張って下さいね」という言葉だけを思い出に残して、その鉱山を目指した。
「さて……人外起きろ。メアーユ、君もだ」
ウイッカと名乗っていた少女だけ脚蹴にしながら、メアーユを持ちあげ、身体を振った。
すると、2人共衝撃で起きたのか、口々に「おはよう」と言っていく。
「おはよう、では無い。王の前だ、ただちに姿勢を整えろ」
「妖精、さん……初めまして、イヴ=アルマウヴァです」
「ウイッカ、妖精じゃないヨー。精霊だヨー」
「あ、ごめんなさい、精霊さん」
「ウイッカだヨー」
「あ、はい、ウイッカ、さん……P3、構えないで」
今すぐ頭を跳ねてやろうかと腕を振り上げていた神父だが、イヴの一言にすぐさま立てなおした。
「申し訳ありません。しばらく席を外します。行くぞ、メアーユ」
「ええー!?私何のために起こしたんですー!?」と喚くメアーユの首根っこを引き摺りながら神父は、部屋を出た。
だが、扉を閉めた途端、すぐさま扉に耳を当て、聞き耳を立てた。
「ウイッカはー、ウイッカ=フィヨードルドっていうんだヨー」
「あ、はい。この度はどうしたんですか?」
この度の事件は、このウイッカという精霊が森から現れたかと思うと、街中の露店やレストランの食べ物を食い荒らすは、公園の遊具や図書館の本をグチャグチャにするはで当初、メアーユが説得係として行っていたのだ。
だが、「それじゃ、ウイッカと鬼ごっこをして勝ったら止めルー」と条件を突き付けられたのだ。
いざ、走ってみるがまったく追いつけず仕方なしに神父を出動させたのだ。
そして、見事捕獲。
今に至る。
「ウイッカ、あの森飽きター。ウイッカ、王様が気に入っちゃったかモー。ねえねえ、ウイッカと遊ぼうヨー」
フヨフヨとウイッカは浮かび上がると、イヴの周りをグルグルし始めた。
「それはつまり友達、ですか?」
「そう、友達だヨー」
その言葉に少しイヴの表情が明るくなった。
「は、はい!遊びましょう。ウイッカさ……ウイッカちゃん!」
「わーい!」とウイッカは部屋の中を飛び回る。
「あ、でも、街の人たちを困らせちゃ駄目ですよ?」
「コマラセルってなんダー?ウイッカ分かんないゾー」
「其処のところは、P3に教えてもらおう!今は遊ぼう遊ぼう!」
「そうだネ!王サマ!!」