桃色のペトリコール
掲載日:2026/10/15
目から溢れた水が
足元を濃くする
鼻を突くペトリコール
微かに香るあなたの残り
溶けて混ざり合って
歪むわたし
薄く灰に化粧された
対のカップそっとひとつ
変わらず綺麗なラックに
置かれたまま
笑っていたあなたの
影を残して
わたしを見る写真が
あなたを濃くする
幾度も胸を襲うスコール
部屋に残るあなたの形
好きが零れ溢れて
ただただ唇を嚙む
赤や桃に化粧された
想いをそっと
変わらないあなたに
目を向けたまま
微笑み返すわたしに
傷を残して
傷を白で隠して
外に目を向けてみる
色がある世界も
どこか淡く静かで
遠く甘い熱を
誰かと鎮めてみる
なにも満たされぬまま
渇き求め
交わる度
濁っていく
……誰かじゃダメだった
抱えた想いを
愛と呼んで
遠くなっても
世界は彩を取り戻すから




