表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら薬草だった件 ~最強の根を張るのは、異世界の大地の上で~  作者: parade


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/9

一話「芽吹き、そして困惑」

読みにくい部分があれば、遠慮なくドンドン感想で言ってもらえたら助かります!


 最初に感じたのは、土の重さだった。


 全身が土に包まれている。いや、正確には「全身」という概念が崩れていた。手がない。足がない。ただ、何かが──細くて繊細な何かが──土の中に向かって伸びている。


 *根だ*、と莉子は思った。*あたし、根が生えてる。*


 パニックにならなかったのは、たぶん莉子の生来の性格のせいだ。まず状況を観察する。感情は後でいい。それが神崎莉子という人間の──いや、もはや人間ではないが──処世術だった。


 ゆっくりと、感覚を広げていく。


 根は深く、土の中を走っていた。水分を感じる。ミネラルを感じる。土の粒子一つ一つの大きさまで感じ取れる気がした。地上には茎がある。葉が数枚。そして──蕾。


 *花、か。*


 莉子は、異世界の土の中で、静かに自分の状況を整理した。


 転生した。植物に。それはわかった。


 問題は、植物は動けない、ということだ。


--- 


 しかし、莉子が「動けない」という問題に頭を悩ませていたのは、最初の三日間だけだった。


 四日目の朝、地面を揺らす足音とともに、声が聞こえた。


「ここだ!見ろよレイン、こんな場所に見たことのない花が咲いてる!」


「騒ぐな、ガリ。珍しい植物には毒があることも──」


 *人間だ!*


 莉子は茎を精一杯伸ばした。葉を広げた。意識を地上に向けた。


 見えた。


 視覚も変わっていた。目はないのに、光の波長を葉で感じ取ることで、ぼんやりとした「像」が見える。赤みがかった大きな影と、青みがかった細長い影。二人の人物が自分を見下ろしている。


「……なんだこれ。赤い花びらに、金色の筋。図鑑で見たことないぞ」大きい影が言った。声は若く、少年のものだ。


「私も知らない」細い影が答えた。こちらは女性の声。冷静で、少し低い。「だが、この魔力の密度は異常だ。ただの野草ではない」


 *魔力?*


 莉子は、自分の「内側」に意識を向けた。


 あった。根の奥の奥、大地から吸い上げるものの中に、水でも栄養素でもない何かが混じっていた。熱くも冷たくもないが、確かに「そこにある」感覚。蕾の中でそれが渦を巻いている。


 *これが、魔力か。*


 莉子は、生前の癖で思った。*まず、把握しよう。*


---



 少年の名前はガリウス。十六歳。鮮やかな赤い髪を持つ、見習い冒険者だ。


 女性の名前はレイン。二十二歳。青みがかった黒髪の、薬師であり魔法使いでもある。ガリウスの「お目付け役」として冒険者ギルドから派遣されているらしい。


 この情報を莉子が把握したのは、二人が自分のそばでキャンプを張り、三時間以上話し続けたからだった。


「明日、この花を街に持って帰ろう。ギルドのマスターに見せれば、懸賞金がもらえるかもしれない」ガリウスが言った。


「根ごと抜く気か?」レインが眉をひそめた(光の像からなんとなくそれがわかった)。「希少植物かもしれないのに」


「だって、鉢植えにして持ってけばいいじゃないか」


 *──ちょっと待ってください。*


 莉子は、初めて「意思を外に出す」ことを試みた。


 方法はわからない。でも、生きている以上、何か手段があるはずだ。植物だって、外界に働きかける。花を咲かせ、香りを放ち、実を結ぶ。だとすれば、自分にも──


 蕾が、ぽん、と開いた。


 「うわっ!」ガリウスが飛び退いた。「今、急に咲いた!」


「……夜に咲く花か」レインが近づいてきた。光の像が大きくなる。「いや、違う。昼間は蕾だったのに。まるで、何かに反応したような──」


 *そう、反応したんです。あなたたちの会話に。*


 莉子はもう一度試みた。今度は香りを使って。根から吸い上げた魔力を、花びらに集中させる。香りとして、言葉の代わりに放出する。


 できた。


 甘くて、でも鋭い、独特の香り。莉子がイメージしたのは「待って」という感情だった。


「レイン」ガリウスが言った。「この花、なんか……ヘンな感じがする。怒ってる、みたいな?」


「植物が怒るわけが──」レインは言いかけて、止まった。長い沈黙。「……いや、ありえないとは言い切れない。伝説の『意思持ち草』は、魔力を持つ植物の中に極稀に存在すると記録にある」


 *意思持ち草!それだ!*


 莉子は今度は「嬉しい」をイメージして香りを放った。さっきより柔らかく、丸い香り。


 ガリウスが、おそるおそる近づいてきた。赤い影が、目の前まで迫る。


「……もしかして、おまえ、頭いい?」


 莉子は、花びらを一枚、彼の鼻先で揺らした。


リコ(神崎莉子)── 転生した花。声なし、でも意思あり。根が命綱。元は植物オタクの女子高生。

ガリウス ── 赤髪の見習い冒険者。脳筋気味だが心は優しい。リコを「うちの花」と呼ぶ。

レイン ── 青髪の薬師魔法使い。クール系。植物の知識が深く、リコとは相性抜群。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ