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(異世界で)初めての野宿と生着替えの攻防戦

野営?ナニソレ??

その日は森の中なこともあり暗闇での移動は困難(主に私が)との判断でそのまま野宿することになった。


初めて見る謎の器具。いや、キャンプなら昔した事はある。それに毎年夏は友達とBBQをしていた。ただ火は着火剤で一瞬だし。炭があるし。テントは簡単に建てれた。ただ日本で見慣れたそれらは当然のようになかった。何がなにやら分からずガナッシュの後ろをウロチョロするだけの私。(邪魔だとは言われなかった)日本では考えられないほどの無能感。しかしいつか独り立ちする日を考えるとこのままではマズイ。野営の仕方を至急覚える事を心のメモに刻む。


そしていつの間にか出来上がる初めての謎肉(多分魔物)を焼いただけの野営飯。


ガナッシュが豪快に食べているところを覗き見しつつ、私はナイフとフォーク……の代わりの枝を使い、骨から肉を綺麗に剥がして口に運ぶ。


「……ん、少しクセがあるけど意外と美味しい」


現代日本での会食やマナー研修を思い出せば、これくらいは朝飯前だ。まぁ夜だが。


「……リア」


「はい、兄貴?」


ガナッシュが、なぜか肉を握りしめたまま、震えるような声で私を見ている。その瞳は、まるで絶滅寸前の生き物を見るような眼差しに満ちていた。


「お前……そんなに食い方が綺麗で、背筋も伸びて……。本当は、どこか遠い国の、高貴な生まれなんだろ?」


「えっ、いや、ただの一般人ですよ」


「隠さなくていい。その気品……きっと、国を追われた非運の貴族か何かだったんだな。苦労したんだな、一人で……!」


ガナッシュの目には、うっすらと涙が浮かんでいる。


(待って。勝手に設定盛らないで。ただの営業職の癖だから!)





この世界に来て数日。


私は「ガナッシュの弟分」というポジションを完璧に確立しつつあった。ガナッシュとのやり取りも気安いものになりお互いの気配に慣れてきたと思う。ガナッシュという男は見た目の割に私には(私しかいないけど)理性的で当初懸念していたような乱暴様子もない。それどころか獣道と野宿に不慣れな私を気遣う優しさまでみせてくれる。

時折、兄貴分としてまだ子供だと思われてる弟分を立派な男にしようと無茶な要求もしてくるが。(……これがありがた迷惑か)どう考えてもガナッシュの剣は私には振り回せない。私の成長期は止まってるからどんなに食べても横にしか増えないよ。



「リア、お前細すぎるぞ。ほら、肉をもっと食え」


「ありがとうございます、兄貴。でも私、少食でもうお腹いっぱいなんです」


にこりと笑って、固い干し肉を半分ガナッシュの皿に戻す。彼は「そうかぁ?」と首を傾げながら、私の分まで豪快に平らげてくれる。……よし、成功。日本の柔らかお肉と比べるとこちらの干し肉は毎回食べていると私の顎がもたない。そして野菜が食べたい。甘いものが食べたい。




問題は、衛生面だ。そう、こんな風にね。




「おいリア、今日は川の近くで泊まるぞ。数日風呂に入ってねぇし、お前も薄汚れてる。水浴びでもすりゃさっぱりするぞ」


「……えっ」


焚き火の準備をしながら、ガナッシュがさらりと爆弾を投下した。彼はそのまま、自分の革鎧を脱ぎ捨て、分厚い胸板をさらけ出している。


「ほら、脱げよ。背中ぐらい流してやる」


(……死ぬ。ここで女だとバレたら、私の生存戦略が水の泡だ!)


私は瞬時に脳内シミュレーションを開始。逃げるのは不自然、拒絶しすぎるのも怪しい。


「……兄貴、実は私、小さい頃にひどい火傷を負って……体を見られるのが、その、すごく恥ずかしいんです」


私は俯き、声を微かに震わせた。必死で絞り出した「悲劇の少年」ムーブ。


「だから、一人でこっそり洗わせてください。兄貴みたいな立派な体に憧れてるから、自分の貧相な体を見るのも嫌なんです」


上目遣いで、少しだけ潤んだ瞳を見せる。


ガナッシュは一瞬、呆気に取られた顔をしたが、すぐに「……ああ、悪い。デリカシーがなかったな」と、大きな手で自分の後頭部をガシガシと掻いた。


(よし、勝った……!)


「気にするな、リア。男には誰だって人に見せたくねぇ傷の一つや二つあるもんだ。……お前がいつか、自分を誇れるようになるまで、俺は無理強いしねぇよ」



そう言って、彼は私に背を向けて川へ向かった。

……その背中が、あまりに真っ直ぐで優しくて。



嘘を重ねるたびに、胸の奥が少しだけチクリと痛むのを、私は「気のせいだ」と自分に言い聞かせた。

【リアの工作ログ】

• ミッション: サバイバル術の獲得と水浴びからの正体露見の回避。

• 工作内容: 「見られたくない火傷跡(架空)」の設定を追加。心理的ブロックの構築。

• 収穫: この「火傷跡」設定は、服を着替える時の「覗き見防止」にも使える。便利すぎる。

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