拾ったのは、生意気で危なっかしい「野良猫」
ヒーロー視点。楽しんで貰えたら嬉しいです!
「ったく、今日は厄日か?」
依頼の帰り道、予定にないフォレストベアの気配を感じて、俺は舌打ちした。放っておいても良かったが、風に乗って妙な匂いがしたんだ。
鉄の匂いでも、獣の匂いでもない、鼻をくすぐるような……。
茂みを飛び出すと、そこには今にも魔物に叩き潰されそうな「子供」が立っていた。
腰が抜けて動けないのかと思いきや、そのガキは真っ青な顔をしながらも、鋭い眼光で魔物を睨みつけていた。その姿が、まるで袋小路に追い詰められた野良猫みたいに見えて、俺の体は勝手に動いていた。
魔物の後ろ回り込み横薙ぎに大剣を一閃。巨体が崩れ落ちる。
「……おい、生きてるか。ガキ」
声をかけると、そのガキはひどく驚いたように俺を見上げた。
……整った顔だ。泥を被ってはいるが、抜けるように白い肌と、吸い込まれそうな大きな瞳。中性的というか、都会の貴族の坊ちゃんが迷い込んだような浮世離れしたツラ。
「助けて……いただいたのですね。お兄さん」
掠れた、けれど鈴を転がすような声でそいつが言った。
情けない悲鳴を上げるどころか、すぐに俺に礼を言う冷静さ。俺の強面にビビって泣き出す奴が多い中で、こいつは肝が座ってやがる。
「……あ? ああ、運が良かったな。こんな場所を一人でうろつくなんて、死にたいのか、お前」
あまりに華奢な肩を見て、つい世話焼きな性が疼いた。
薄汚れた、見たこともない奇妙な服。親とはぐれたのか、それとも身寄りのない浮浪児か。
震える細い肩を見て、思わず俺はそいつの頭に手を乗せた。髪は男にしては少し長いが、柔らかくて、触れると壊れそうだ。
(……チッ、放っておけねぇな)
「おい、名前は?」
「リア、と言います」
「リアか。いいか、俺はガナッシュだ。……行く宛がないなら、街までついてこい。お前みたいなヒョロいガキ、またすぐ別の魔物の餌食になるからな」
リアと名乗った「少年」は、一瞬だけ驚いたように目を丸くし、それからふわりと——どこか企んでいるような、けれど美しい微笑みを浮かべた。
俺はその笑顔に、柄にもなく心臓がトクンと跳ねたのを感じたが、「こりゃあ、放っておいたら死んじまう弟分ができたな」と自分に言い聞かせ、無理やりその違和感を握りつぶしたんだ。
【ガナッシュの精神ログ】
• 発生したバグ: リアの笑顔を見た瞬間、一時的な心拍数の異常上昇(原因不明)。
• 理性の防壁: 98%(違和感を握りつぶすことに成功。……したつもり)。




