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――「嘘」と「運」が、私の生存戦略。

「嘘が得意で食えないヒロイン」と「直情型で振り回されるヒーロー」の組み合わせが好きです!

最悪、の一言に尽きる。



つい数十分前まで、私は新宿のビル街で、クライアントの無理難題に満面の笑みで「承知いたしました。御社の利益を第一に考えます!」なんて真っ赤な嘘(お世辞)を吐いていたはずだった。

ところが、今回の案件も終わりが見えてきたし、とりあえずひと息つこうと社内の自販機でコーヒーを買おうと移動しようとした次の瞬間に視界が歪み、気付けば私は見たこともない鬱蒼とした森のど真ん中に放り出されていたのだ。


「……は? へ??え???ドッキリ?? 夢にしては解像度が高すぎない?」


意味不明な状況に思考はフリーズ。どのくらいその場に立ち尽くしたかも分からない。

しかし、ヒールのほとんどないパンプスが腐葉土に沈む感触、鼻を突く野草の生臭さ。これは現実だ。

改めて状況を整理しようとした矢先、背後から「グルル……」と地響きのような唸り声が聞こえた。嫌な予感に振り返れば、そこには体長3メートルはあろうかという、毛むくじゃらの化け物がいた。


「嘘でしょ……今の私、武器どころか名刺入れしか持ってないんだけど」


絶体絶命。けれど、私の脳はフル回転する。

叫んで逃げても追いつかれる。そもそも逃げるには気付くのが遅すぎた。なら、せめて「弱者」に見えないように……。私は震える膝を隠すように立ち上がり、無様に死ねるかと精一杯の威嚇を込めて強気な仮面を被った。


だが、化け物が前脚を振り上げた瞬間、やはり痛みと死を覚悟して目を閉じる。せめて痛みなく一瞬で死ねますように!来世は大金持ちの家の猫になれますように!!


――ドォォォォン!!


空気を震わせる轟音。

目を開けると、化け物の巨体が横倒しになり、その上に一人の男が立っていた。


「……おい、生きてるか。ガキ」


見上げるほどの大男だ。返り血を浴びた顔は、岩を削り出したような強面で、正直化け物より怖い。けれど、その瞳には「お人好し」の色が混じっている。ような気がする。多分。きっと。じゃなきゃ詰む。

私は一瞬で男の身なりや纏う雰囲気を観察した。営業部エースの矜恃に掛けて!この男は強い。そして、扱いやすい(ちょろい)。


「助けて……いただいたのですね。お兄さん」


正直年齢は謎だか見た目的に明らかに歳上だろう。

私はわざと少し声を低くし、怯えた少年のような表情を作った。ショートヘアに、オーバーサイズの仕事用ジャケット。泥にまみれれば、性別なんて曖昧になる。

ここがどんな場所か知らない以上、女だと悟られるのはリスクが高い。


「……あ? ああ、運が良かったな。こんな場所を一人でうろつくなんて、死にたいのか、お前」


男はガサツに鼻を鳴らし、化け物から意外なほど身軽に飛び降りたかと思うと大きな手を私の頭にポンと置いた。岩のような硬い手のひら。


「ガキ」と呼ばれたことに内心でほくそ笑みながら、私は最高に「健気で賢い少年」の嘘を演じることに決めた。

【リアのサバイバル・ログ】

• 第一印象: 凶悪な外見。中身はお人好し

• 生存戦略: 「健気な美少年」に擬態して、彼の良心に全力ダイブ。

• ターゲット評価: 物理攻撃力100、対人防御力不明(恐らく低い)

• 今後の課題: まずは私の安全を確保。常識の擦り合わせは必須

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