なにが書いてあるんだろう
今日も相変わらず暑い。こんな日は家でアイスでも食べてゴロゴロするに限る。
「花音?咲ちゃんが来てるわよ。」
なんでいつもこうなるのだ。
「知っているかい藤沢。裏山にある、謎の石碑を!」
「それよりなんで咲まで私のアイス食べてるわけ」
「え?おばさんが食べて良いって」
絶対今度お母さんからアイス代を請求しよう、ケチだと言われても絶対そうしよう。
「で、その石碑がなんなのよ。あんた暇なの?」
「藤沢はそうやってすぐ私を暇人にしようとするよね!酷いと思う!まあ暇なんだけどね。」
暇なのかよ。というツッコミ待ちをしている顔だ。言わないけど。
「そう、それでね。この町には実はとんでもない秘密があって、それがその石碑に書かれていると…」
「咲さ、もうお祭りまで二週間しかないんだよ?準備とかしなくて良いの?」
屋台の基礎的なものは神社側が用意してくれるとは言え、小物とかはこちらで揃えなければならない。
「あー、それなら大丈夫。輪ゴム鉄砲なら私が家でチマチマ作ってるからさ」
そういうとどこから取り出したのか、割り箸で作った鉄砲を手に持ち花音の額目掛けて発射した。
「もう私の優雅なる夏休みを返せ!!」
流石にちょっと腹が立った花音が大きな声を出すと、咲は言い訳がましくこう言う。
「いや、今回の石碑の件はねー、実は依頼人がいるのだよワトソンくん。」
「ワトソンじゃないです」
またこいつの思い通りのツッコミを入れてしまった、と反省したのも束の間、誰かが花音の家の中に入ってきた。
「お、お邪魔しまーす…」
そこに現れたのは、クラスメイトの眼鏡っ子・鈴原由奈だった。
「鈴原さん?なんでうちに?」
「ふふーん。私が呼んだのさ。」
また咲が勝手なことをしたらしい。
「ごめんね。私、邪魔だよね。やっぱり帰るよ。」
「いやいやいや!ごめん!鈴原さん、話を聞かせて!」
こうして三人は由奈の持ってきたスナック菓子を頬張りながら話を始めた。
「さあ、由奈。花音に全部話しちゃって!」
「てかさ、鈴原さんと咲ってそんな仲良かったっけ。」
由奈は確かに小さい頃からずっと同じ学校で同じクラスだが、花音も咲もあまり喋った記憶はない。
「ん?私はこの町の人全員友達だと思ってるよ」
咲には敵わないなあ、と思わされる。
「藤沢さん、砂町さん。それじゃあ話を始めるね。知ってるかもしれないけど、私、読書が大好きなの。この町唯一の図書館があるでしょう?あそこによく通っているんだけどね。この前本棚の奥で古びた本を見つけたの。しばらく誰も読んでないんだろうな、って感じの。それでね、その本にこんな紙が挟まっていたんだ」
由奈はくしゃくしゃで、所々破れた紙を机の上に置いた。そこには、こう書かれていた。
『百鬼夜行が来る!』
「なにこれ。気味が悪いね。」
花音は嫌な顔をすると、咲が口を挟む。
「それでね、私が独自に調査していた時につかんだ情報なんだけど、裏山の石碑ってもうなにが書かれていたか掠れて読めないじゃん?どうやら『百鬼夜行』に関する記載があったっていう噂なのさ。この紙と石碑。無関係だとは思えないだろう?」
「そもそも百鬼夜行ってなんなの?」
由奈はどこぞの民俗学的な本を取り出し、説明を始める。
「百鬼夜行っていうのは、簡単に言えば妖怪たちが列を成して行進することを言うんだよ。だけどこれだけじゃこの紙に書かれてる言葉の意味はわからないよね。」
「だからさあ藤沢!」
咲が満面の笑みを浮かべている時は碌なことが起きないのだ。わかっている。わかっているのに、回避する術がない。
結局このクソ暑い中、彼女たち三人は裏山の石碑の前までやってきてしまった。花音はこの石碑をちゃんと見るのは初めてだったが、確かに掠れていてなにも読めなかった。
「オカ研初の、未解決事件かこれは?」
そもそも今までの事件がしょうもなさすぎただけだろう。結局カラスが鳴き始める時間となり、オカルト研究部にしては珍しく解決に至らずの解散となった。
「来週の月曜は学校に集合ね!屋台のこと話し合おう!」
そう言い残すと咲は爆速で夕闇へと消えて行った。
「藤沢さん」
珍しく由奈から話しかけてきたので花音は目を丸くした。由奈は目をキラキラさせながら、こう言った。
「屋台の件って、私も参加して良いんでしょうか??」




