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全ての始まりの夏

「ということで、夏休みだからといってハメは外さないように。街に出る時も、暗くなる前に帰ってくるなど気をつけること。わかりましたか?」


そういうと先生は号令をかけて帰りの挨拶を済ませると、そそくさと教室から出ていってしまった。それを合図に花音は教室を出て屋上に向かう。柵を乗り越えると、またも花音は身を投げる。


 

「だから、この作者はこう考えていました」


どうやら授業中のようだ。構わない。花音は教室を出る。また、身を投げる。


 繰り返す。何度も何度も。百年前に戻るなんてきっと途方もない回数をこなさないといけないだろう。だけど、負けられないんだ。みんなの笑顔を守るために。繰り返していくうちに周りの子たちの見た目はどんどん幼くなっていった。だが、もちろん花音の見た目はずっと高校三年生のままである。中学生くらいまで遡った時、流石にちょっと騒ぎになった。それもそうだろう。クラスの女子がいきなり先程までと全然違う身長で現れたんだから。それでも気にしない。花音は脇目も振らずに何回も、何回も死んだ。やがて花音が生まれる前まで遡った。花音が生まれる前の時代に突入してからは、復活地点が自宅の前固定になった。それでも何度も学校に忍び込んでは、飛び降りを繰り返した。何十回、何百回と。もう数えるのもやめた。やがて知っている建物は減っていき、町というよりも村と呼ぶべき風景に変わっていった。そしていよいよ、目的の場所まで辿り着く。


 花音はまだ母親も祖母すらも生まれていない、新築の自宅へと忍び込んだ。カレンダーを確認する。間違いない。今日だ。花音はとっくに限界を迎えた体で、必死に裏山へと向かう。体の状態が保持されるということは、死ぬ前の体の疲弊をそのまま引き継いでいる。もちろん、そんな状態の花音が万全なわけがない。それでも、今日やらないと。

 裏山にたどり着いた花音は、わかってはいたが少し驚いた。あの石碑がない。やはり建てられる前なのだろう。あたりも暗くなり始めたその時、複数人の声が聞こえた。


「おい、本当にこんなことやるのかよ」


まだ幼い、男の子の声が暗い森に響いた。

暗闇の中でただ葉が何かを伝えるかのようにガサガサと揺れていた。


「任せてよ。きっと大丈夫だから。」


鈴を転がしたような甲高い女の子の声が隣から聞こえる。五人の足音はそこで止まると、丸い円陣を描いた。


「こ、怖いよ」


「大丈夫だって。私に任せて」


咄嗟に近くの茂みに隠れた花音は、何か恐ろしいものが始まる雰囲気を感じ取った。おそらく小学生くらいであろう彼らは、お互いの手を取り合い円を描いた。今だ、今しかない!花音は少年たちの元へと駆け出す――


「ちょっと待ったーーーーー!!!」

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