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第九十五話

店長から「無視しろ」「『うるさい』と念じろ」とアドバイスはもらったものの、やはり常に聞こえる囁き声は気持ちが悪かった。 ザワ……ザワ……。 まるで大勢の人がすぐそばでひそひそ話をしているような感覚。 それに、たまに「おい」とか「ねえ」とか、呼ばれた気がして、つい振り返ってしまう。


大学の友人といる時にも、何度かそれをやってしまった。 「継人、どうした?」

「さっきからキョロキョロして」

「誰かいるのか?」 友人たちからも、本気で心配され始めている。


(……やっぱ、これ、普通じゃないよな) 継人は、次に芝モエと会った時、思い切って相談してみることにした。彼女なら、真剣に聞いてくれる気がしたからだ。


「……え? 変な音が聞こえる?」 カフェテリアで向かい合って座るモエは、心配そうに眉を寄せた。

「うん……。なんか、ずっと囁き声みたいなのが聞こえてて。たまに呼ばれた気もするし……」

「いつから?」

「ここ最近かな……。疲れてるだけかもしれないんだけど」


「うーん……」 モエは、顎に手を当てて考え込む。

「最近、なんか思い当たること、あったりする? 環境が変わったとか、変な場所に行ったとか」

「変なこと……」 継人は腕を組む。自分の身に起こっているのが変わったことばかりすぎて、何が「変わったこと」なのか、判断が難しい。


「あのね、私の友達に、ちょっとオカルト好きな子がいるんだけど」 モエは、前置きをして続けた。

「そういうのって、だいたい、どこか『行った』とか、何か『もらった』とかが原因だったりするんだって」

「行った……もらった……」 「あと、廻くんの場合はしないと思うけど、何かを『壊した』とかね」


(もらった……)その言葉に、継人の記憶の扉が、カチリと開いた。 (あ!) ハロウィンの日。店に来た、あの無口な子供。 (あの子にもらった、あの石……!) 虹を閉じ込めたような、不思議な輝きを持つ石。


「あれ、どこやったっけ……?」 継人は、慌てていつも使っているリュックを探る。 (帰る時にバッグに入れて、そのままにしてたはず) 教科書やノートの隙間から、ポケットティッシュにくるまれたそれが見つかった。


「モエさん、これなんですけど……」 継人は、テーブルの上に、ティッシュに包まれた、その石を置いて見せた。

「ハロウィンの時に、バイト先に来た子供に、お礼だって言われて……」


「……!」 その石を見た瞬間、芝モエの表情が、ほんの一瞬だけ、凍りついたように変わったのを。 継人は、気づくことができなかった。

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